バカ恋
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■ 雨降りカタルシス ■


梅雨入りしたそうで。

今日は少し肌寒いです。



人は誰しも、秘密にしておきたい過去や、

封印したい記憶が在る筈。

厳重に鍵を掛け、闇の奥深くに葬りたい残酷な現実。



其の、捨てた記憶のスイッチが入る瞬間が在る。

まるで、ライトに照らされたように、ぽっかりと、

其の部分だけが浮かび上がる。

あたしの場合、今日みたいな梅雨の入り鼻の、

雨を待つ、曇り空が其れだ。



身体中の体温が奪われたみたいに寒気がして、

背中に冷たい汗が滲んで来る。

思い出す度に鳥肌が立って、吐き気までしてくる。

汚れた心、汚れた身体。



思い出したく無いのに。



とは云え、遥か遠い日の出来事。

幼い記憶は少しずつ、風化しつつ在る。

蘇るのは、肌に絡みつくような不快な湿気と、

ピアノと、履き潰されて汚れた茶色い紳士靴。



此れからもっと時が経てば、

幸せな記憶で埋め尽くされれば、

譬え、また雨が降ったとしても、思い出さなくなるかな。

雨と一緒に、記憶も流れて行くかな。









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