カタルシス
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2006年11月18日(土)  フリーズ・フレーム 

以前『天才たけしの誰でもピカソ』にアラーキーがゲストした日の放送を見た本家で 彼が撮る“人間”の写真に父が反応を示したという妹からの報告を受けた 昭和の色濃い街角に遊ぶ無邪気な子供達の姿をとらえたものだったらしい 何はともあれうちの父が そういった文化的なものに興味を持つのは珍しいことなので 番組の最後に案内していたという荒木経惟写真展に父を誘ってみようか!という話になった

土日のうち父の休みと私の空いてる日が被る日程を確認したら一番近いのが11/18(土)だったので 私の予定が入らないうちにと サクサク決行日と定めてしまう 普段忙しくしている母もこの日なら大丈夫というので 父母と我々姉妹の4人で散策の日となった当日の今日 空は青く快晴 陽の暖かさと風の肌寒さが心地よく相まって散策には打ってつけの陽気だ

目指すは両国・江戸東京博物館
館内常設展の一角でその写真展は開催されているらしい 江戸博へは何度も行ったことがあるので道のりは手慣れたものだが 普段は企画展へ直行してしまうので1階から館の下に潜り込むような経路をとっていた しかし今回は常設展が目的なので久しぶりに正面入口のチケット窓口まで上って行くことにする この階に上がってくるのは何年振りのことだろうか

土曜日だったためか社会科見学と思しき小学生?の団体が1組あり ちょうど我々と同じタイミングで入館するようだったので チケット売り場から常設展入口までをつなぐ長いエスカレーターを 彼らの最後尾についていく形になった 先頭に先生と思われる男女の大人 つづいて生徒が20人前後 その後ろにスーツ姿の若者が一人場違いな様子で佇んでいたが これは先生ではなく見学ツアーの添乗員か何かだろう 所在なげな雰囲気を漂わせるその風貌から察するに 今年の新入社員なんじゃなかろうか?という青年である

「キミと同じくらいかね」と妹に耳打ちすると
「私より若いんじゃね?」と苦笑いで返す妹

確かに見た目には妹くらいに見えるけれども うちの妹くんは実年齢より若く見える子なので 年齢で考えたらズレが出てくるかも知れない ええと そうだな 年の頃なら22〜4ってくらいではなかったろうか(年齢当てなんかどうだってイイ)

常設展の入口は5階にある ここから入って軽く一巡りしたら1つ下のフロアに降りる メインはその降りた方のフロアで主たる展示はこちらの階に陳列されているが 今回は「常設展」を見に来た訳ではないので上のフロアも下のフロアも素通りを決め込んで目的の展示会場を探した 詳しい場所は分からないがこの中で開催されているには間違いないハズなのだ

下のフロアに降りてすぐの位置にその場所はあった が 階段を降りて真後ろのブースだったので死角になっていて 無駄に周囲を徘徊する手間をかけてしまう 見つかってみればあまりに近くだったので「捜索」していた自分たちがバカらしくなった
そこは以前 石碑や発掘された遺物の展示に使われていた一角で 今は時折こうやって開催されるイレギュラーな催し物の為にスペースをあてているようだ その頃は我らが東村山から出土した「元弘の碑」のレプリカなども展示されていたのだが ご記憶の方は多くなかろうと思う 何分地味な一角だったことでもあるし(苦笑)

アラーキーの写真展そのものは入場無料のため自由に閲覧できたので 4人それぞれ自分のペースで展示作品を見て回った 作品は全てがモノクロで統一されていて 年代の古今に関わらない平坦なテンションで壁を埋め尽くしている 戦後の復興期まっただ中といった風情もあれば 今も尚この目で見ることができる風景もあった 荒木のファインダーは実に淡々とその「場面」をとらえ 印画紙はそれを美しく再現する(大判のものはプリント出力だった模様:提供Canon)

今まで自分が抱いていた彼の作品のイメージは「淫靡」や「生々しさ」といった ある種「写真であるが故の嫌悪感」を伴うものであったのが 今回目にした多くの作品に見られた「客観」であったり「親しみ」であったりする穏やかな視線は これまでの印象を大きく塗りかえるだけの力を持っていて 私の中における彼の立ち位置には確実な変化が起きた
しかし だからといって今までのイメージが間違っていた訳ではない 「淫靡」も「生々しさ」も確かに彼のカメラが生み出す世界だが それが彼の全てではなく 一部でしかなかったのだと知るに至る

作品は他にもテーマを変えて違う場所に展示されていて 艶めかしい和装モデルのカラーポートレートや ごく最近の身近を撮ったスナップ写真なども見ることができた
色がつくとやはり「生々しさ」が前面に浮き出てくる 色味然り 被写体然り ただその「生々しさ」は「活き活き」にも置き換えられるように見え 彼が撮っているものは「人の生き様」なのだと理解した

⇒●荒木経惟 -東京人生-

写真展を見終えたところで場所移動

両国では手頃な店が分からないので浅草まで歩いてみることにした
隅田川沿いをのんびり歩きながら1つ目の橋で対岸に渡る だまって真っ直ぐ吾妻橋に出るまで進んで行くのが一番シンプルな行き方ではあったが 吾妻橋へ出てしまうと嫌が応にも人混みの激しい界隈を通り抜けねばならなかったので どこでもいいから手前で渡っておこうという単純な道理を働かせた 後になって調べてみたら一番距離のある道を選んでしまったようだったので 分かっていたようでそうでもなかったんだなと 軽く自嘲が漏れた

浅草に着いたのは午後1時を回った頃だったろうか とにかくここいらで昼食にありつこうと店を物色するものの 決め手に欠いてウロウロとするばかり そうこうしているうちにランチタイムが終わってしまう店も出始めるわ お腹は空くは疲れるわで しびれを切らし始めた父にドキドキしながら 結局浅草に到着してすぐの界隈で候補にしていた中華店に落ちつくことになった 時間的には間に合っていたのでランチメニューが注文できたが 我々が注文をしている間に空きテーブルからランチ専用のメニューを片付け始めたので 店側にしてみたらギリギリ入店の客だったらしい(苦笑)
香港點心の店という看板が出ていた割には中華系店員の喋る言葉はみな北京語 大陸か台湾かまでは聞き分けられないが わざわざ「香港」と銘打たれている店だったので若干気になった まぁ 現実問題どうでもいい話ではあるが
ランチの定食を4種類頼み おかずを皆でつつき合う家族食い 食べ終えたら午後3時を回っていた

帰宅して本家から夕飯にお呼ばれするまでの間に 一人で『デッドゾーン』23話を消化 ショーン扮するグレッグ・スティルソン議員候補の出番はあまりなかったが(しかもコールガールとのベッドシーンだけだったし)今回は今までになく内容が好きな話だったので それはそれで楽しめた ギャングのボスに囲われている高級コールガールとその運転手(身の回りの面倒もみる)の小さな物語

主人公ジョニーは警察の取調室で尋問を受けていた 容疑は「殺人」もしくは「殺人幇助」
元フィアンセの結婚相手で友人でもある保安官の○○はジョニーは何らかの形で事件に関わっていると確信しているが 彼の人柄を知っているだけに 何にどう関わっているかが分からない 何しろ事件の前後に大物マフィアのボスと一緒にいるジョニーの姿を彼自身も目撃しているからだ
彼は悪いことはしていない それは確信できるのに 何故マフィアと一緒にいたのか 何故何も話してくれないのか…

謎めいた断片をつなぎ合わせていって 最後には全てのピースが綺麗に収まる筋書きだった きっかけは些細なこと でもそれが誰かの運命を大きく方向転換させる力を生み出して 希望と絶望を同時に巻き起こす
ハッピーエンドと思えばハッピーエンドなんだけど ただハッピーと思うには切ない 始まる前に消えた想いの行き場はどこにあるのか

ううう 今回の話はちょっと 本気で好きだったかも… 議員候補が絡んでこその歯車だが 登場はなくても充分成り立っていただろうに(苦笑)

我 地上波放送ヲ 切望ス

本家に呼ばれて軽く夕食を済ませたあと 早めに引き上げてきて妹とDVD鑑賞

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『ロストストーリー〜現代の奇妙な物語〜』

7本の短編オムニバスで副題に「現代の奇妙な物語」と銘打たれてました が ちょっと宣伝の方向性と内容は違う感じです
第一の目的はベタニーだったんですが ヒュー・ジャックマン ケイト・ブランシェット キーラ・ナイトレイ ジョシュ・ハートネット ジェフ・ゴールドブラム マイケル・ガンボンなんかも顔を連ねていてオイシイ1本でした
大分早いうちにオチが読めてしまったけど ヒューとガンボンさんの出てくる話が好きだったな 最後までセリフなしで通したらもっと良かったのに あとはちょっとダークだけどジョシュの話とケイトの話も雰囲気読めた ベタニのはちょい設定に無理がある キーラ(15歳の役!)のは主旨が理解できず 最後の話は深読みした自分がアホに思えてくるシメでした いや そのオチも仮定してたけどまさか本当にそうくるとは(^^;)
 

『フリーズ・フレーム』2004年/イギリス・アイルランド

 


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