カタルシス
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2005年12月15日(木)  聖者の眠る街 

どうにか仕事が落ち着いたので 慌てて飛び出て映画を見に行きました
前売券持ってるのに時間がつくれなかったんです!公開期間が16日までなんです!!ギリギリなんです!!!

渋谷シネマライズにて『ミリオンズ』鑑賞

『トレイン・スポッティング』や『シャロウ・グレイヴ』など ドラッグや暴力・金に溺れる若者の姿や 人間の根底にある私欲のようなものの存在を シニカルにだが軽快なタッチで描き出すことで知られる英人監督のダニー・ボイルが ガラリとその趣旨を変えて手がけたハートフルムービー

今までの作風を知っている人ほど「どうした?何があった??」と驚くこと必至な これまでの真逆をいくような今作は 世間的にもやはりその部分に疑問を持たれたようで 多くのプレスからの質問に応じた監督曰く「自分の子供に堂々と見せられる映画をつくってみたかった」とのこと

うん 確かにトレスポやシャロウはあまりお子様向けじゃないもんね(苦笑) 私もシャロウはダークな笑いで面白かったけど トレスポはぶっちゃけ苦手だ… 他に見てるのは『ツイン・タウン』 見ていないけど有名なのは『ザ・ビーチ』『普通じゃない』『28日後…』辺りでしょうか どれもこれもやっぱり何かシュールな系だよねぇ 英国人特有のひねた視点なのか 監督の特性なのか ブラック過ぎるユーモアが彼の作品の枕詞だそうですよ

・・・と 閑話休題 『ミリオンズ』に話を戻します

監督の今までの傾向を考えたらかなり頑張って子供向けにつくってます 軽快な場面展開などはとてもコミカルで楽しい感じ 冒頭に更地から家が建つまでの様子をCGでタラララ〜っと見せてくれるんですが それだけで「可愛いv」と思える映像になってました



主人公のダミアンって男の子がちょっと変わり者というか 素直で正直な子なのに 他人には見えない「聖人」が見えてしまう子なんですな 一言でいうなら「聖人オタク」なんですわ
見えるから知識がついたのか 知識があるために見えるのか とにかくありとあらゆる聖人の名前と聖人とされる由来をキチっと覚えている そしてことあるごとに引用したり話したがって周囲のひんしゅくをかったり 家族にも呆れられてしまっています 解りやすく言うなら「ひかれちゃう」子
それでも 聖なる人物の姿が見え言葉を聞くことができる故なのか それとも元来そういう性格なのか とにかく真っ正直で人一倍純真な男の子です

対するお兄さんのアンソニーは 子供のクセに大人びているというか マセている…いやスレている?ような子で 大人の前では「年相応の子供」を演じているといった感じの男の子 悪人ではないけれど 俗物に対する私欲がちゃんとあって 「正しいこと」よりも「得なこと」を優先するタイプです

そんな兄弟がある日突然大金を手にしたら・・・ 2人がそれぞれに取った行動は?

「ドラッグ」と「暴力」は排除されていましたが 「不思議ちゃん」と「皮肉」と「人間の欲」に関してはさすがのボイルとしか言いようがない 絶妙なまでの絡み合いでした

英国ポンドが欧州ユーロに通貨変換するという設定で(実際はまだポンドのまま) 廃棄される旧紙幣を奪った強盗団のカバンの1つが幼い兄弟の元に転がり込んでくる訳ですが 完全変換の期限までに換金しなければ ポンドはただの紙切れになってしまうので 期間内に使わないと価値がなくなってしまいます 本当だったら全額ユーロに換金してしまいたいところですが 一気にそんな大金を換えたりしたら強盗に遭った紙幣だとバレてしまうので 子供の彼らだけではどうにもできません やむを得ず彼らは期限内に使い切る方向で頭を捻ります

亡き妻を想いつづけながら2人の息子を大切に育てている父親や 引っ越したばかりの新しい街と住人たち 父親に新たな恋を運んでくる聡明な女性や 学校の友達 そして兄弟に迫る強盗一味の影

途中 聖人たちの登場はなくても良かったんじゃないか?と若干思いましたが ことあるごとに彼らの啓示を受け 次なる行動を選択する少年の人格描写のためには やはり必要な存在だったのかな?と思い直しました 死んだ母親が聖人になっていると思って何とか彼女の姿を見ようとして信心してみたり 「聖人オタク」という設定一つで色んな要素が取り込めていたんだなぁと ちょっと感心
 
ボイルの作品を見たことがあって尚且つ「ちょっと苦手」と思っていた人には超オススメ 逆に今までのボイル作品が好きだという人には物足りない映画かも知れません

さて あなたはどちら?笑
 

『聖者の眠る街』1993年/アメリカ

 


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