カタルシス
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先日観た『モーリス』に出ていたルパート・グレイヴスがちょっと気になったので 彼の他作品を調べて目をつけた『ディファレント・フォー・ガールズ』を借りてきた
ルパートの共演に『ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のスティーブン・マッキントッシュ(他『メンフィス・ベル』等にも出演) 私の知る英国俳優の数少ない内の一人であったし 何よりもこの作品における彼の役どころが面白そうだったのだ
性転換を果たしたキャリアウーマン
それが彼の役
はっきり申し上げてマッキントッシュ氏 華奢ではあるが 骨ばっていてまかり間違っても女性的にはとても見えない その彼が女性を演じるというのだから 興味が沸かない方がどうかしている
舞台は英国ロンドン 広告代理店で有能なコピーライターとして働く女性キム 経済的に自立したキャリアウーマンの彼女だが 実は性転換した元男性である 一方 バイク便で日銭を稼いでは 稼いだ端から借金の返済に充てねばならないその日暮らしの青年プレンティス 結婚を考えるくらいの彼女がいながら どうもまだまだ子供っぽい
そんな2人がある日街中でばったり遭遇するのだが 彼らはなんと高校時代の同級生だった
キムは当時「カマっぽい」とからかわれていた少年カール 典型的ないじめられっ子で プレンティスはケンカとロックが大好きな不良少年だった しょっちゅういじめられているカールを助けてやるのも カールを助けるのが目的というより いじめっ子が気に食わないといった感だ 冒頭に入っている学生時代のシーンからは そんなプレンティスに密かな想いを抱くカール少年の様子がうかがい知れる
卒業から17年 お互い連絡を取り合うこともなく それぞれの違った人生を歩いてきたハズが偶然にも再会を果たした プレンティスは懐かしさと好奇心から何度もキムを誘い彼女の話を聞くのだが 次第に彼女のことをちゃんと理解しようとし始める まるで学生時代に戻ったかのように友好を深める彼らだったが キムにとっては淡い想いを抱いた相手 プレンティスにとっては昔よく連れて遊んだ風変わりな友人 両者の意識の違いは明白だった
自分よりもキムとの約束を優先するようになった恋人を訝しがる彼女に「男友達だよ」と言うプレンティスだが 「私より男友達が大事なの?女だったらまだ解るのに!」となじられて複雑な顔をする
そんな中 キムの自宅に招かれロマンティックなディナーを共にしているうちに 彼女に性的欲求を感じた自分に混乱し ヤケになって表で騒いでいるところを通報され公然猥褻罪で逮捕されてしまうプレンティス 護送中に警官に暴行を振るったと身の覚えのない罪に問われてしまう彼を救えるのはキムの証言だけなのだが 性転換者であることが公になることを怖れた彼女は身を隠してしまうのだった
裁判の日を目前にして行方をくらませたキムを 躍起になって探し回るプレンティスだったが そのうち全てが今までいい加減に過ごしてきた自分の自業自得と悟るようになる 居所を探し当てたキムにもそのことを伝え穏やかに去って行くプレンティス その背中を見送るキム…
物語の大筋はこんな感じ
ここまできたらもうキムは証言台に立つんだろうなと安直に想像したが その後の予想を越えた大団円には少々驚いた この手のイギリス映画で初めて見たハッピー・エンドかも知れない!(笑)
劇中でそうと断言してはいなかったが 「自分はゲイだと思っていたわ」とか「私もストレートよ」というような発言から察するに おそらくキムは“性同一性障害”だったんだなと 性転換者はイギリス行政上では パスポートや運転免許証などの身分証明書には転換後の性別が記されるそうだ ただ 出生証明書の性別は変更できないので(ドイツなどは変更できる)法的に"異性(つまり転換前の同性)"と結婚することはできないとのこと シビアな話ではある
キャリアウーマンのキムを演じたマッキントッシュ氏は やっぱりゴツい人だったのだが このくらいの女性なら欧米には普通にいそうだし 声や喋り方なんかまるっきり女性と変わらなくてビックリ うーん 彼がああなるとは想像してなかったゾ…
そしてルパートの方は『モーリス』から10年 ちょっと太って冴えない感じになっていた 顔そのものは幼い感じなんだから ベストウエイトを維持すれば良いセンのハズなんだけどなぁ… 勿体ない
『正体』千綿ヒデノリ
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