2006年02月05日(日) |
【オンライン中編】傍らのミス=フォーチュン |
ブシィ=ナスカさんは、おそらく私の3倍速で活動されているヒトなのではないか? と常々思います。 シリアスもコメディもそつなくこなし、しかもイラストもお上手ときている。 うらやましいにもほどがある。 でもって、そのコミカルなセンスを見ていると、能の回転も私の10倍速くらいありそうで、お会いしたことはないけれど、私が「はじめまして」と言う間に、氏名年齢生年月日住所はたまたどこが一番美味しいラーメン屋かまで説明が終わっているような気がします。(^ー^; (あくまでも勝手な想像なのですよ↑) そんな人から、毒吐き辛口感想を求められると、きっと、これでごちそうさま! しばし、冬眠に入ろうかな?
以下、A&Bから、またまた抜粋です。 大いなるネタばれなので、それを覚悟して読んでください。
*** キャラクターの個性が光るコミカルでちょっぴり切ないファンタジー。 ブシィ=ナスカさんの作品は何作か読ませていただいているのですが、この手のものは本当にうまい! というか、独特で楽しいです。 どちらかというと、個人的にはシリアスなほうが好みですけれどね。 テンポがあって読みやすく、また、こういうセンスはたまらなく好きです。 一人称ですが、主人公が弁護士であるせいか、くだけちった笑いではないのです。 『笑い』には、頭わるそうな笑いもありますが、こちらは頭いさそうな笑いです。 (頭わるそうな笑い……と書きましたが、それは書いた人が頭悪いという意味ではありません。わかるとおもいますが、念のため)
>「おれ近いうちそっち行くねんけど泊めてあと住所教えてよろしく」 > 句読点を打たない人間は嫌いだ。
一発で笑いました。 主人公の一史だけでも充分に楽しいキャラです。 九段への態度なども、並大抵の主人公でないことがわかります。
時々、ゲームや漫画などが出てきます。 知らなければ知っている人ほどに笑えないところはあるのですが、しらけるほどではありません。 かなりポピュラーなもので押えられていて、ゲーム名を知らなくても充分に理解できるからです。
個人的に、一番好きなのは『病院』のシーンです。 普通、九段のようなキャラは、病院で診察されて正体を明かされるのを嫌がるものです。それが、この手の定石かな? と思っていました。 が、彼女はCTスキャンという科学のメスを受ける。そして、その結果が……。 いや、ここはいくらネタばれでも伏せておきます。 でも、ここで大受けしたことだけは告白します。
この辺りを読んでいると、昔子供の頃に読んだ『長靴下のピッピ』を思い出しました。 強烈な個性と強さ・独特の話術で、あたりを大騒動にしてゆくピッピと九段の姿が重なっていました。 大きく違うのは、ピッピは変わった子であるけれど謎はなく、九段はどうやら人間ではなく、しかも謎がある……ということです。 この謎解きが、話の中心であることは誰から見ても明らかです。 謎解きと一史の秘密は後半に持ち越されます。 で、ここから辛口になっていきます。
読んでいて、明らかに前半と後半では、話が違うと思いました。 まず、テンポが違うと感じました。 前半はひたすら明るく軽く、後半はコミカルな面を残しつつも、ゆったりとした流れになっています。 一から八までに行った場所・起きた事件などに比べると、それ以降は会話や心情を語るシーンが増えて、動きが減ったような感じがします。 九で一気に解明された謎を説明するのに躍起になっているような印象があります。 ひたすら謎の説明に終始しし、その隙間にお話を進めている感じです。
キャラクターのイメージが違います。 たまに一史らしいセンスを見せるものの、前半の強烈な個性は薄れて、別人のようにすら感じます。 九段のほうは相変わらずですが、秘密を知って以降は悲劇的なヒロイン色が強くなり、前半で笑ったのは何だったのだろう? という気持ちにさえなります。 また、謎が解けてから九段の最期までは実にあっけなく、一史が九段を守るためにもっと何かどたばたがあってもいいのでは? と思いました。
このギャップが面白いと思う人もいるかも知れませんが、私が読んだ印象では、後半が前半を殺し、前半が後半を殺していると思います。
まず、前半で『謎解きの結果が悲劇的である』という伏線が弱く、読者はただひたすら愉快な気分にさせられています。 私は『長靴のピッピ』気分です。だから、この結末には、ピッピが死んでお話が終わったような、感動よりも、「そんな……」気分が、どこかについて回ります。 そして、あまりにも一史が『謎』にこだわっていない、もしくは、謎解きのチャンスを読者にあたえていないかな? とも思います。 前半も終盤に来ると、少し謎を引っ張られたような、答えの前にコマーシャルが3回も入ったような気分になり、ピッピ気分でいるべきか、この謎を探るほうに集中するべきか、悩んできました。 謎を思えば、コミカルなやり取りも答えが引き出せそうにないので、少し疲れてしまいます。 難しいことを考えずに楽しもうとしても、やはり謎が気になります。 一史自身の謎も含まれているので、なぞなぞだらけが前半なのです。
後半です。 この結末・謎は、本当はかなり私のツボ設定でした。 でも、前半のノリで行くと、話に入りきれませんでした。 一史は九段を犬飼から助けるどころか 「ああ、バキューンとやってくれ」 とでもいいそうです。 死についてナーヴァスな一面を見せてはいますが、玄関でうずくまっている九段を足蹴にして出て行く男でもあるので、ピンときません。 突如、「ココは当然救うでしょう」という王道に戻ったような気がします。 理由は『忘れてしまった過去』ですが、それを知るのも後なので、一史も普通の人になっちゃった……って感じがするのです。 あ、ここでいう普通の人というのは、普通の人の『正論』に対抗して弱気を助ける普通のヒーローってことです。 また、前半の軽快感が死んでしまっているのも、後半が生きないところです。 十二の後半。このあたりは、もしもシリアスなお話の中にあったとしたら、ものすごく惹き付けられる部分だと思います。 でも、一史が切々と語れば語るほど、逆に裏切られたような虚しさを感じます。
あと、時々空欄があるのは、わざとなのかな? 『殺す』という言葉を伏せているのかと……。 私のPCは、太文字を痩せたままにしたり、フレームを消したりするので、もしかしたら特殊文字が消えているのかな? とも思い、一応確認。
ブシィ=ナスカさんの『コミカル』と『シリアス』な両面を充分に味わう事のできる作品だったと思います。 でも、おそらく『コミカル』ならコミカル、『シリアス』ならシリアスにまとめたほうが、もっと面白くなったかな? と思ったお話でした。
*追記*
感想を書き終えて、しばらくこんな流れのお話って他にあるかな? などと考えておりました。 で、思い浮かんだのは………。
『はくしょん大魔王』(^0^; 全体を通してコメディだったけれど、最後の最後で涙の最終回でした。 どこが違うんだろ、うーん。はくしょん大魔王が3話で終わったような感じ? 『ドラえもん』だって、コメディですけれど、ときに泣ける感動ものもあるしな。 『サリーちゃん』だって最後は魔法の国に帰る悲しい終わりだし。
コミカルなお話に悲劇的要素があってはいけない……ということではないですよね。 どこに焦点があるのか? って事なのかもしれません。 両面を持っているのって、かなり難しいのかも? どっちかにしてよー! という気分でしたが、果敢に挑戦するのも面白い??
|