2006年04月18日(火)  「イグナシオ」 花村萬月

イグナシオ
花村 万月〔著〕
角川書店 (1999.2)
通常2-3日以内に発送します。

芥川賞受賞作品「ゲルマニウムの夜」が、本作の焼き直し作品だそうな。
作者本人も認めたらしい(あとがき参照)
長々続く作品はあんまり読まないタチなのに、なぜか、王国記だけは読んでいる。宗教、暴力、エロと、三拍子そろっているからかなぁ。
そんな訳で、この作品「イグナシオ」は王国記シリーズを読むだけの時間がない人にお勧め。
オチもスッキリ決まってて小気味よいです。
性描写も最近みたいにどぎつくないし。
話の舞台は、私にとっての聖地「魔都・新宿」だからってのもある。
(女神転生オタクがここら辺で発病してしまうのですよ…えぇオタクですから)
歌舞伎町の描写を読むだけで、胸がキュンキュンしております。
…あぁ、早くトウキョウに帰りたい(そんな私は山口に居ます)
時代背景も学生運動とか、三島由紀夫とか、燃えてる時代です。
危ない人ととられるかもしれないが、私もあの時代に生まれたかった…。火炎瓶投げたり角材振り回してみたかった…。

脱線した。

主人公は、ハーフの孤児・イグナシオ。天使降臨と言わんばかりの美少年だそうな。
修道院内の施設で育っており、友人一人をバットで撲殺後、修道女と契りを交わし脱走。そして新宿へ出るわけです。
そこでは学生運動参加中の道産子娘と知り合ったり、バイト先のホモマスターに犯されそうになったり、ヤクザの親分に気に入られて、自殺願望のある妹を任されたり…凄まじい人生ですね。
ところどころ宗教絡みな描写はあるものの、王国記ほど言及してない。
どっちかっていうと、神様を信じてますし、この主人公。
最後はどうなるかっつうと、いい男のサガを地でいってますな。
愛しい女共を残して、銃弾の的となるのです。はい。
死して屍になるまで、あっという間の激走です。
読んでるこっちも瞬きすら出来ない。おもしろかった。

現代物の小説はほとんど読まないのですが(読書しているときくらいは、現実逃避したいから)花村作品は食指が動く。
それは先も言った「宗教・暴力・エロ」だから。
暴力には重きを置いてないが、宗教とエロは響きますねぇ。
これがまた、禁欲万歳の基督教だからまたおもしろい。

そうそう、「酸欠金魚」という表現が出てくるのですが、すごく気に入った。




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