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井戸の中 6 2012年09月16日(日)
しだいに重力がなくなっていくような錯覚に陥った。
闇の中をひたすら歩いていると、確かに前に進んでいるはずなのに、まるで空に向かうエスカレーターに乗って上に引っ張られているような、あるいは水の中を目をつむって泳いでいるような、踏み込んだ足の感覚がまるでないことに気づいた。
ぼくとナナは互いにその存在を確認し合うように、握り合った手に力がはいった。 どこに続いているのかな、とナナがつぶやいた。 ぼくは何も応えなかった。
しかし、ふたりがどこに向かっているのか、ぼくは知っていた。
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