くじら浜
 夢使い







いつも山の音を聞いていた   2010年02月21日(日)

ピンと張った縦糸の合間を
小さい輪っかのついた横糸車を起用にすべらせ
トントントン
と、締めていく

機を織る母のよこには大きな窓がついていた

老眼鏡に指をやり
縦糸と横糸でできた地味な柄を確認するように
母は紡いだ糸たちに顔をすりつける

そして
また、ピンと張った縦糸に横糸をすべらせ
トントントン
と、打ってゆく

一息ついて、母は窓からおでもり山を見上げる

夕日で真赤に燃えるおでもり山には
たくさんの母の音がある

お茶を飲み
背中をさすって
目をこすり

そして
また母は、トントントンと
山に向かって打っていく







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