白日の独白
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2005年12月19日(月) 黒い水のようなものだ。

母がポストや掲示板を気にしているのは、其処に死んだ女性の手掛りがあると思ってのことらしい。
しかし死んだ女性が何処の誰であり、自殺の理由を僕達は知る必要はないし、またその立場にもない。
そして人が死んだことを知らない住人には、その事実さえ知らせる必要もない。
それが現実的であり現実だった。

そういった種類の情報の欠如は、母を少し苛立たせているようだった。
僕も母の苛立ちは理解できる。
けれど同じように苛立つことはない。
ぐにゃりとして担架に乗せられた死体を眺めた所で、何処まで行っても知らない人間なのだ。

無意識的に無感覚に無関係だと切捨てられる僕は、冷酷で共感能力や感受性の欠落した人間なのかもしれない。
或いは加速度的な現実にうまく適応する為に身に付けた対処法なのかもしれない。
母のような人間と僕のような人間のどちらが一般的なのかを僕は知らない。
例え僕が少数派であったとしても、僕は一向に変るつもりはない。
だからと言って安住できる訳でもなく、時々僕は寄る辺ない気持ちになる。
安全で清潔であると言われても、黒い水を飲むことが中々できないのと同じように。


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