夢見る汗牛充棟
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2000年01月01日(土) ちいさなうた(まとめ)

2000年1月1日〜:ちょこまかした詩のまとめ

2002/12/06(金)

ぬくぬくとした
冬が少し奇妙でも
山茶花は垣に灯る
移ろいは仄かに確かに
ひとをとりまいている



領国  2002/12/07(土) 17:26:04

あなたはわたしの王でない
わたしはいま点を結び囲いを作った
あなたを遠くへとり除けば
わたしは深く息をすることができる



のぞみ  2002/12/08(日) 14:51:47

ちいさな草花がここいらに咲いている筈だ
今は闇が深くてよく見えないが
微かな明かりを待ち望んで揺れていることだろう
風が運ぶ微かな気配も逃さぬようたましいを澄ませ
小さな花を踏み潰してしまわないように



雨あがり  2002/12/09(月) 20:24:30

雲がきれた隙間から鋭い月が覗く夜
濡れた黒い舗道を走りながら
空を仰ぎ大気を吸う吸う吸う
冴えた冷気は背骨を強くし
凛とたましいを張り飛ばす



ちいさい   2002/12/10(火) 20:08:35

とても好きな景色というものがあります
ほんの些細なひとひとの日常ですが
出会うと嬉しくなるものです
いつまでも変わらぬものであるような気がします
永遠に変わらぬものであるように祈ります
祈りながらどこかで信じていないような気がします
だから祈りを含めてそれらはきれいなのかもしれないけれど
ふと見えなくなるその日は寂しいのです



ま・いいか  2002/12/11(水) 17:36:33

路面が落ち葉と花弁で埋まる朝
箒で掃き集めると悪戯者の風の子が
塵取りの中を攫ってはやしたててゆく
こんちくしょうと呟く
まあ俺でも見て安らげよと
言いたそうな山茶花から
新たな花弁がはらはらと降る
苦笑いして力が抜けた



ないものねだり  2002/12/12(木) 20:05:22

煙突から煙が流れてゆく
煙は雲になりたそうに
空と平行して流れてゆく

雲を横切って飛び去る鳥
屋根瓦の上で温もる雀
鳥になりたそうに見つめるわたし



帰り道  2002/12/13(金) 20:53:06

天と地は黒く狭間に点々灯る輝き
闇のなにを恐れて人は灯を欲しがる
人は人を恐れて闇を掃っている



旅立つ帆船1  2002/12/14(土) 20:55:30

船は透きとおる水晶細工に似て
揺れるたびに澄んだ音をたてた
天に楽の音が満ちる夜
宙の深淵に祈りは吸い込まれる

旅立つ帆船2  2002/12/15(日) 17:15:48

僕が見た帆船は
トトキの丘をふわりと発った
船の縁で貴女が遠くを見ている
見送る僕には切符はない

旅立つ帆船 3 2002/12/16(月) 19:05:57

僕が見た帆船は
白々として天にあった
漆黒の清かな夜の天に滑り
ゆるゆると翔け往き星になった



ひそか  2002/12/17(火) 17:13:05

砂で符牒のような絵をここに描こう
君のためだけに描いたから
風よ去り際には吹き払うがいい



きん  2002/12/18(水) 22:17:01

うつくしいきもちを
留めておけません
やさしくやわらかなまま
密封できないのです
なぜわたしのこころだけが
金ではないのでしょう?創り手よ
かれらにはひとしく
変わらぬこころを込められたのに



一滴  2002/12/19(木) 19:21:00

ことのはの隠した 
うつくしいたましいは
あふれてこぼれた水の欠片
滴は大きな海に辿り着き
わたしを見つけてくれるだろう


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