Leonna's Anahori Journal
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気がつくと、少し前から食卓の端に数冊の本が載っている。ほとんどが文庫本ではなく単行本。あれ、コレなんだったっけ、と、少し考えたら思い出した。例によって八重洲地下街の古書店で買ってきた古本だ。
いつ頃だったか、もう一ヶ月くらいまえになるかもしれない。一週間か十日のうちに二度、用事で八重洲地下街を通ったことがあって、結局本屋の前を素通りすることが出来ずに、二度とも三冊ずつ購入して提げて帰ってきたのだ。そして、いつものように購入本としてジャーナルに書いておこうと思ったきり忘れていたのである。 -- まず、最初の三冊。 「巴里の空はあかね雲」 岸惠子(新潮社) 「昨日」 アゴタ・クリストフ(早川書房) 「病床六尺」 正岡子規(岩波文庫) これはたしか、八重洲古書館で買った本だ。このときは、立ち読みした岸惠子の文章にたちまち魅了されてしまったのだった。これらの文章は、昔々資生堂の「花椿」に連載されていたもので読みおぼえのある文章も多いのだが、しかし、今読んだ方が断然切実で心にしみてくる。たとえば、イヴ・シャンピ(別れたご亭主。映画監督)が亡くなったときの心情を綴った一編とか。この正直さ、哀切さは、書き手の文章の上手さや個人的な魅力に頼ったものでは決してないだろう。
さて、次に二度目の三冊。
「その日の風」 中村汀女(求龍堂) 「菊帝悲歌 後鳥羽院」 塚本邦雄(集英社) 「立原正秋」 高井有一(新潮社) この三冊はR.S.ブックスで買ったもの。R.Sは歌人、詩人などの本に面白いものが多いので要注意なのだ。買いすぎてもいけないが、たまに覗くと珍しい本に当たることがある。求龍堂刊の中村汀女は箱入り本で発行は昭和五十四年。美本で、白檀のようないい匂いがする。これで八百円だった。 「立原正秋」は、少し前に会ったとき「実は昔、立原ファンだったんだよ、それですっかり影響されて薪能まで観に行ったんだけどチンプンカンプンだった」と話してくれたいとこに送ってあげようと思って。 -- 八重洲地下街で古書を買うと、そのあとは日本橋まで歩いて、地下鉄の通路にあるスターバックス(普段はスタバには入らないのだが)でお茶を飲みながら購入本をめくってみるという、いつの間にかそういう習慣ができてしまった。しかしこれをやっていると帰宅が遅れてしかたがない。
なので二度目(R.Sブックスの帰り)は、今日は寄らずにまっすぐ帰るゾと強く自分に言い聞かせながら歩いて行った。すると、いつもはそう混んでいないスタバのカウンター前のハイチェアが全部ひとで埋まっているではないか。それで、なんだか妙に納得した気分になって、すぅーっとまっすぐ家へ帰ってきた。
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