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2003年09月17日(水) 高円宮杯・Jユース杯 展望(前編:総論+高円宮杯展望)

 今年は時期が重なったので、高円宮とJユース杯の展望を一度にまとめてみる。べ、別に2回書くのが面倒くさかったわけじゃありませんよ…?

清水エスパルスユース

東海地区第一代表、3年連続4回目(高円宮杯)[静岡県] 監督・築館範男


 クラブ選手権は、5試合8得点6失点で3位。予選から今ひとつ調子が上がらない中、GK山本海(3)を軸に辛抱強い守備で勝ち残っていたが、磐田との激戦の影響か(休養日はあったのだが)、準決勝では緊張の糸が切れたように惨敗を喫し、後味の悪い終わり方になってしまった。しかし、Jrユースで全国2位になったメンバーが多く残っていた昨年に比べ、今年は戦力的に劣ると思われていただけに、十分な健闘だったと言えよう。ただ、全国という舞台の中で、様々な課題が見えたのも事実である。
 個人的に気になったのは3点。1対1の脆さ、中盤の運動量の不足、選手層の薄さである。しかし、これらは単独の問題ではなく、それぞれが密接に関係した複合的な課題と言える。即ち、1対1の脆さを補うべく、コレクティブな陣形を形成するため、豊富な運動量が要求される。よって消耗が激しくなるが、交代できる選手(特に消耗の激しい中盤センター)がいなかった。東海では、例年より多くの選手が起用され、むしろ層は厚いように思われたが、残念ながら全国で戦うには、最低限必要となるフィジカルを満たしていない選手が多かった。このあたりは、良い経験になっただろう。また、攻守の要(特に精神面で)である大瀧(3)と高柳(3)が1対1に劣勢になることで、チームが機能不全に陥ることも多かった。
 当然、これから秋冬の大会で、これらの課題を解消できるかがポイントとなる。しかし、何度か話していることだが、平均年齢の低い清水は、ここからの伸びが期待できる。東海である程度できたことで、クラブ選手権では油断もあったように思えるが、全国を経験して痛感した自分の足りない部分を、選手個々人が如何に還元していけるか注目していきたい。


■選手名簿
別記参照方。


■基本フォーメーション(名前の横は学年)

−−−−−−−鈴木2−−−阿部3−−−−−−−
      (篠田悠1)
−大瀧3−−−−−−−−−−−−−−−谷野1−
(鈴木2)             (高野一1)
−−−−−−−枝村2−− 山本真1 −−−−−−
      (大瀧3)
−篠田大3−−高柳3−−−村越2−−−森安3−
(岡村2) (石垣1)
−−−−−−−−− 山本海3 −−−−−−−−−


 最大の注目は、スペイン・エスパニョールからの帰国した篠田悠(1)・高野一(1)の動向。両名とも既にユースの練習や練習試合に合流しているようだが、登録の問題がいつクリアできるか。篠田悠は、阿部(3)との強力2トップが否が応でも期待される。高野一も有力な右MF候補であり、初めての全国と思えない溌剌さだった谷野(1)らと競うことになるだろう。どこでもできる山本真(1)や森安(3)のポジションを含めて、多様な組み合わせが想定される。春夏の準レギュラー組では、クラブ選手権で良い動きを見せた、岡村(2)・高野美(1)の両レフティが楽しみ。更に、ユースと同じくクラブ選手権ベスト4を果たした、Jrユースからの抜擢もあるか。注目は層の薄いボランチを務められる、長沢に池田、岩本。


■出身現役Jリーガー・チームプロフィール
別記参照方。


■出場までの軌跡(高円宮杯)
04月05日:○10−0 日生第二高校(三重) 得点:大瀧3、枝村2、八木2、山本真、森安、岡村
04月12日:●1−3 グランパス (愛知) 得点:森安
04月19日:○6−3 東邦高校  (愛知) 得点:森安2、八木、石垣、大瀧、枝村
04月26日:△1−1 四中工高校 (三重) 得点:枝村
04月29日:○1−0 岐阜工業高校(岐阜) 得点:枝村
 −−2ヶ月近い中断−−
06月25日:○2−1 静岡学園高校(静岡) 得点:阿部、森安
07月05日:○4−1 藤枝東高校 (静岡) 得点:阿部2、森安、八木
07月16日:○4−1 ジュビロ磐田(静岡) 得点:鈴木、大瀧、阿部、枝村
07月19日:○4−0 各務原高校 (岐阜) 得点:枝村、阿部、大瀧、山本真

[参考・クラブ選手権]
5試合3勝1分1敗、得点8失点6(3位)
 得点者:阿部3、森安2、枝村2、鈴木
 得点占有率:阿部140%、森安120%、鈴木100%、枝村40%


■試合日程と展望
[高円宮杯・全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会]
■コンサドーレ札幌ユースU-18(北海道代表:6勝1分、2年ぶり2回目)
 最近の大会:03年クラブ選手権・グループリーグ4位(予選敗退)
       02年Jユース杯 ・ベスト16
       02年高円宮杯  ・不出場
 最近の対戦:●0−2 2000.08.02・クラブ選手権準々決勝
 対戦の予定:09月27日(土) 12:00 藤枝市総合運動公園球技場

−−−−−三浦−−酒井−−−−−
−−−−−−−石井−−−−−−−
−小川−−斉藤−−鈴木−−石郷−
−−−松下−−吉田−−眞田−−−
−−−−−−−蛯沢−−−−−−−


 札幌ユースと対戦したのは、ここ5年間だと2年前、深沢の代のクラブ選手権のみである。高円宮杯出場権を賭けたこの試合、先制された清水の攻撃は札幌の堅守に跳ね返され、最後は新居のスピードから追加点を奪われて、万事を休している。この年、札幌は準優勝、清水は何とか5位決定トーナメントを勝ち抜いて、改めて高円宮杯出場権を掴んだ。清水は阿部と当時中学生の枝村・鈴木、札幌では鈴木(3)・酒井(3)・石郷(3)・吉田(3)が、当時の激闘を直接知る者である。
 札幌のスタイルは、当時と同じ3−5−2でのカウンター。しかし、前線の突破力に頼りがちだった2年前と違い、今年は鈴木と斉藤(2)が組むボランチ2枚に展開力があるため、左右中央に巧みに散らすハーフカウンターに注意する必要がある。最終ラインのフィードも良い。カウンターは強固な守備力があって初めて成立するものだが、上背はなくとも3バックで粘り強く守ってくるだろう。何より警戒すべきは、GKの蛯沢(3)。長身な上に俊敏な反応があり、当たり出すと厄介な存在である。他では、清水が獲得競争で敗れた(らしい)藤田(1)に注目。機を見て、攻撃的なポジションで使われてくるはずだ。

[WHO’S THE KEY]
●阿部文一朗 1985.04.02生 [182cm/75kg]
 W杯のアンリ並にポストとバーにぶつけまくり、静岡の国体敗戦(4強は上出来だと思うが)の戦犯に挙げられたブンだが、動き自体は決して悪くなかった。精神的に引きずる部分があるだけに、早めに立ち直ってもらうことが第一。札幌のゴール前の人垣を崩すには、阿部の突破力は欠かせないからだ。MFも含めて誰がフィニッシュを担うのか曖昧だった静岡選抜と違い、清水でのエースの座は明確。阿部はただ、シュートを打てばいい。

●山本海人 1985.07.10生 [188cm/78kg]
 展開は清水優勢が予想されるが、ただでさえ高いDFラインを更に押し上げた時、それはむしろ札幌の狙い所。広大な裏のスペースにカウンターを仕掛けてくるだろう。しかし、これは海人の大胆な飛び出しと足技の披露するところ。むしろ危険なのは、ボランチ鈴木の非凡な威力を誇るミドルシュートである。兎角、集中力が途切れがちなのが気になる海人であるが、有利な展開にも油断せず、任務を完了してもらいたい。


■滝川第二高校(関西第二代表:予選Bブロック2位、6年ぶり3回目)
 最近の大会:03年高校総体 ・ベスト16
       02年高校選手権・ベスト4
       02年高円宮杯 ・不出場(関西大会ベスト4)
 最近の対戦:なし
 対戦の予定:09月28日(日) 12:00 藤枝市総合運動公園球技場

−−−−−岡崎−−瀧原−−−−−
−−−新井−−−−−−中杉−−−
−−−−−稲垣−−中根−−−−−
−柏木−−河本−−三村−長谷川−
−−−−−−−上杉−−−−−−−


 公式戦でクラブ勢と高校勢とが対戦する機会は、この高円宮杯しかないが、4年前(第10回)に初出場を果たした清水と、前回出場が6年前(第8回)の滝二では、当然ながら今回が初顔合わせとなる。今年の滝二だが、春のFBS杯では国見・市船を破って優勝し、プリンスではガンバと激戦を繰り広げるなど(順位決定戦では滝二がメンバーを落としたため、参考にならない)、好調が伝えられる。高い個人技を基盤に、ポジションチェンジとショートパスを繰り広げる小気味良いサッカーを展開するチームで、似通ったスタイル同士、正面から四つに組むことになるだろう。
 上記布陣は、あまり当てにならない。基本はボックスの4−4−2なのだが、4バック+2ボランチを土台にして、前線の枚数は様々な変化があるらしい。しかし、チームの正に大黒柱となるのは、GK上杉(3)−DF河本(3)−MF新井(3)−FW瀧原(3)という強力なセンターラインで変わらない。上杉がU-18代表候補、他の3人は国体兵庫選抜に選ばれている。上杉・河本は共に185cm前後の巨躯を誇り、総体優秀選手にも選ばれた主将の新井は、小柄ながら突破力と技術に秀でた滝二らしい司令塔。瀧原は180cmを越える長躯を活かして前線の核となるが、むしろ警戒すべきは周囲を衛星的に動く岡崎(2)の方かもしれない。セカンドストライカーは他にも木島(2)、橋本(2)ら候補が多く、勝負の機を見て交代投入してくるだろう。

[WHO’S THE KEY]
●大瀧義史 1985.05.05生 [165cm/57kg]
 主将、小柄、クラッキ、レフティ、闘志、柔らかいスルーパス…、大瀧と滝二・新井との対決は運命的だ。長短緩急自在のキックを宿し、ユースに入ってサイドのプレーに磨きを掛けた大瀧に対し、新井はドリブル突破をもう一つの武器に、トップ下での働きに傾注している。パスサッカーの核としての責任と、ポジションチェンジの流れで時として陰でサポートに回る責任と、二重の責任をより大きく果たすのは、どちらになるだろうか。

●岡村総一郎 1986.11.01生 [170cm/54kg]
 互いにスタイルの似通っているだけに、拮抗した試合も予想される。こうした展開を破る鍵となるのが交代選手だが、前述の通り優れたセカンドストライカーを揃える滝二に対して、清水では左サイドの岡村を推したい。元よりスピードには定評のあった岡村だが、身長の伸びと比例してドリブル突破の破壊力は増している。何より短い時間でミッションコンプリートするのに必要な、勇気と闘志が彼にはある。


■国見高校(九州第二代表:予選Aパート1位、4年連続9回目)
 最近の大会:03年高校総体 ・優勝
       02年高校選手権・準優勝
       02年高円宮杯 ・優勝
 最近の対戦:なし
 対戦の予定:10月04日(土) 12:00 藤枝市総合運動公園球技場

−−−−−平山−−兵藤−−−−−
−−−−−−−渡邉−−−−−−−
−内藤−−藤田−−中村−−川口−
−−−地崎−−坂上−−益永−−−
−−−−−−− 関 −−−−−−−


 国見とも初顔合わせとなる。強すぎるせいか、どうにも嫌われ者の国見だが、フィジカル偏重でロングボールの放り込みばかりとか、マンマークDFで戦術に乏しいとか、イメージで語られていることが多い。しかし、国見のサッカーはそれほど単純なものではない。フィジカルにしても中村(3)や兵藤(3)などサイズでは見劣りする選手も多く、日々の鍛錬の賜物である。また単調な放り込みについても、あれだけ早いタイミングで長いボールを蹴り込むのは、相当の基礎技術が要求される。育成年代において、これほど徹底して基礎運動能力と基礎技術を磨いているチームはないだろう。
 ということで、国見に勝つには最低限の基礎能力を選手各自が身につけていることが前提となる。今年の国見は188cmの平山(3)がクローズアップされることが多いが、むしろ平山が落としたボールに突っ込んでくる兵藤・渡邊(2)を止められるか。優勝した高校総体では、この2人で全得点19点中13点を奪っている。国体を怪我で欠場した兵藤の負傷が長引いたとしても、左サイドの守備に課題を抱える清水にとっては右WB川口(3)の突破力も脅威。守備は、今年も2ストッパー+1スイーパーの配置が健在。ある程度、2トップが抑えられるのは仕方がなく、むしろ盛んなポジションチェンジを経て、MFが上手く前線と絡むことができるか。ポジションチェンジは築館戦術の特徴でもあり、大いに期待したい。

[WHO’S THE KEY]
●山本真希 1987.08.24生 [175cm/68kg]
 総論では余り触れなかったが、国見の心臓と言える存在が中盤の中村北斗。真希は清水の中で最も国見らしさも持つ選手で(坊主だからというだけでなく・笑)、高い基礎技術と運動能力、早いタイミングでの大きな展開が持ち味としている。しかし、国見戦では+αの部分、枝村らとの盛んなポジションチェンジや、走り出したら止まらないドリブル突破を存分に披露し、マンツーマンDFの達人である中村を混乱に陥れたい。

●村越大三 1986.05.15生 [177cm/67kg]
 都倉(川崎)、大久保(仙台)、岡本・藤井(磐田)という各チームのエース相手に勇戦し、大いに名を上げた村越だが、平山・兵藤・渡邊というU-18代表トリオは、間違いなく最強の相手。朝練の個人練習で磨かれた国見ドリブラーは昔から評価が高いが、清水で地上戦1対1最強の村越が対抗できなければ勝利は覚束ない。また、対国見戦の負けパターンである蹴り合いに陥らないように、正確で意図のあるフィードを望む。


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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