2003年06月07日(土) |
クラブ選手権 東海予選 名古屋グランパス戦 |
03年06月07日14:00開始 安久路グラウンド 日本クラブユース選手権 東海地区大会 対 名古屋グランパスユース ※40分ハーフ
▼布陣 −−−−獅子内−−阿部−−−−−
−大瀧−−−−−−−−−−谷野−
−−−−−真希−−枝村−−−−−
−篠田−−高柳−−村越−−森安−
−−−−−−−海人−−−−−−−
交代:後半10分:谷野 →柴田(そのまま右MFに) 後半36分:獅子内→八木(そのままFWに)
名古屋グランパスエイトユース:
−永芳−−−−津田−−−−上原−
−−−−−−−稲垣−−−−−−−
−−−深谷−−青山−−高橋−−−
−−小寺−−−諸江−−−JB−− JB:ジョシュア・ブラーツ
−−−−−−− 森 −−−−−−−
交代:後半26分:永芳→小出、後半31分:高橋→上村 ※基本的に3−4−3。
▼試合展開 どのバスに乗っていいか分からなかったものだから、暫く迷った後、時間もなく仕方なくタクシーへ。そこで安久路が「アクジ」と読むことを教えてもらう。ううむ、安久路は「悪事」の異名だろうか? 民俗学的好奇心に駆られるところである。もっとも、学者ではない私には駆れただけだが。 会場の安久路グラウンドには観客席などはないが、裏側が土手になっており、意外と見やすい。昨年同様、総体県予選決勝と重なったが、会場には50名以上が集まっただろうか、昨年よりも増えた印象。名古屋の熱心なサポがゴール裏に陣取り、試合前にはエールを送っていた。初夏ながら曇りの天気で風も涼しく、なかなかのコンディション。
さて、昨年も東海準決勝でぶつかった名古屋グランパス。Jrユース時代に高円宮杯(U-15)を制した昨年の3年生が抜ける影響は大きいかに思われたが、現在東海プリンスは暫定で2位。しかも、上位の静学・ジュビロ・エスパとは対戦済みの上、これから静岡県勢同士での潰し合いが予想されるため、圧倒的に優位な立場にいる。清水とは、中日本も含めて現在3戦3勝。プリンスでも阿部が退場になる荒れた試合をモノにしている。名古屋の監督も、そのことを意識してか、試合前に今までの戦績は関係ない、全力を尽くすようにと強調していた。 3年生僅か3名(小出・諸江・深谷)というチームだが、下級生、特に2年生が充実。この学年は、世代別代表選手を各所から集めたジュビロに隠れた感もあるが、グランパスも良い補強をしている。岐阜(小寺・津田・遠藤・立道・水崎)、和歌山(稲垣)、徳島(高橋)、岡山(永芳)、オランダ(ジョシュア、監督の息子さん)と各所から集まった精鋭が、森・上原の下部昇格の選手と組み合わされたチーム。1年生も、先発したFCみやぎバルセロナ出身の青山を軸に、和歌山・鳥取・徳島・岐阜(・オランダ)と各所から人材を募っており、小学生の時から将来を嘱望されている今年のJrユース3年生が昇格する翌年以降は、飛躍が期待される。 一方の清水エスパルス。私の予想など大きく外れ、思い切った布陣を組んできた。前の試合の三好FC戦で活躍した獅子内・谷野をそのまま先発。一方で、森安を右SBに回し、まだチームに慣れていない谷野をフォローする気遣いを見せた。真司は顔を見せていたものの今日は練習着姿のままで、試合復帰はお預け。
[前半] 開始1分、相手ボランチのパスが弱すぎたのを枝村が拾い、距離25Mから早くもオープニングショット。春先の清水は両サイドMFがウィングに近い位置を採ることで、4−2−4になってしまい、中盤が消える場面も多かったが、この日は谷野・大瀧がバランスを意識し、中盤の4人が一定以上の運動量を保つ。更に球際に激しく体をぶつけることで、出だしから支配率で優位に立つことに成功した。
しかし、名古屋の3トップの完成度も高く、時には中盤の組み立てに加わりながら、速攻の場面では前線に3人を残すことで容易に数的同数を作っていた。正直、清水のトップに見習わせたいほど(苦笑)。特に両ウィングの上原・永芳が、不安定の清水両サイドを崩しに掛かる。 清水が押し気味に進めながら、最初の際どい場面は名古屋。10分、名古屋は右(篠田サイド)からの展開でボランチを押し込むと、3列目の高橋がスルスルと上がって、フリーでパスを受ける。慌ててチェックに行くボランチを軽く左にスライドして交わすと、正面から15Mミドル。球足の重い良いシュートだったが、海人が正面で捉えてCKに逃れる。結局、これが名古屋の前半唯一のシュートとなった。永芳の右CKは、海人が高さを活かしてキャッチ。 その後、枝村がCKゴールを狙ったボールを、GKが際どく掻き出す場面もあったが、名古屋は15分。大きく左に開いた永芳から戻したボールを受けて、稲垣が突破を図る。谷野が戻って追い掛け、待ち受ける村越と挟撃するが、PA手前でチェックに来た村越の逆に切り返し、PA内に侵入。そこで追走する谷野の手に押し出されるような格好で稲垣が激しく倒れたが、判定はノーファウル。PKもらうには、倒れ方が不自然に派手過ぎたか。 清水は中盤で優位に立ちながら、180cm級が3枚並ぶ名古屋最終ラインを崩せずにいたが、20分。深谷へのパスを読んだ村越が一瞬早く体を入れ、交錯しながら奪取。深谷が倒れたことで余裕の得た村越は前線の動き出しを待つと、狙い澄ました50Mアーリークロス。PA内に走り込んだ阿部は、一瞬マークを外して頭から突っ込むも当たり損ね。しかし、左大外からフリーで回り込んだ大瀧が、こぼれ球に左足から投げ出すように飛び込むと、ダイレクトボレーで、しかし丁寧にコントロールショット。ゴールに押し込んだ。1−0。先日の磐田戦に続く、素晴らしい村越のキックが、先制点を呼び込む。
その後、高橋や永芳にPA内まで切り込まれる場面もあったが、全体としては清水が余裕を持って攻勢。谷野の突破で深谷のイエローを誘い、大瀧のアーリークロスはマークを外した阿部に僅かに合わず、さらに谷野とのワンツーで右サイドに流れた阿部がタッチライン沿いにドリブル突破を仕掛ける場面もあった。谷野は後ろの永芳へのマークが遅れる場面も目立ったが、対面の相手キープレーヤー、深谷を攻守に巧く抑えていた。 33分、サイドスペースを狙った相手ロングフィードを、村越がスピードを活かして先に反応。名古屋FWは諦めて守備ポジションに戻ったため、村越はフリーになった。様子を見て、今度は縦に低くロングフィード。待ち構える阿部はDFと同体の状態から力で押し退け、速さでPA内で前に出ると、やや斜めに後ろから走るボールを強引にボレー。GK、僅かに触れて軌道を逸らせ、CKに逃れる。 大瀧のCKはGKに防がれるが、続けて36分にも大瀧のクロスをDFがブロックし、左CK。枝村のキックはファーでDFがタッチに逃げ、大瀧の右CK。際どいボールだったが、GKがいち早くパンチングでPA外まで叩き出す。しかし、枝村がこれを拾い、左スペースに流れてボールの入れる先を探しながら、軽いインサイドフックから一気に加速。大きく回り込んで左サイドを10M余り突破、クロスを入れたがDFがクリアする。
更に39分、名古屋のロングフィードを海人が足で止めると、残り時間を考え、溜めながらラインを上がらせる。十分に時間を稼いだ後、60M余りは飛んだボールに阿部が競り合うが、クリアしたのは名古屋DF。しかし、落としたボールは森安が拾い、右肩で相手をスクリーンしながら内側へとドリブル。待ち構えるDFの直前で左横に急加速し、右45度から左足で20Mミドル。丁寧な低いシュートは横っ飛びするGKの手すら通り抜けたが、ファーポストに嫌われた。 この後、真希が奪ったボールを交錯しながら入れ替わった獅子内がドリブルシュートを放ったが、GKが正面で受け止めて、1点のリードのまま前半を終える。
名古屋 清水エスパルス 1(1) シュート 8(4) ×枝村、×高柳、○枝村、◎大瀧、×谷野、○阿部、×森安 ○獅子 3(0) 右クロス 3(1) ×森安、◎村越、×森安 2(0) 左クロス 6(0) ×阿部、×真希、×大瀧、×真希、×大瀧、×枝村 1(0) 右側CK 3(0) ×大瀧、×大瀧、×大瀧 0(0) 左側CK 3(0) ×枝村、×枝村、×枝村
[後半] 後半は前半とは逆に、速攻から名古屋の稲垣がオープニングショットを放って始まる。清水もサイドを使って攻めるが、攻勢の名古屋は6分、左からの崩しを防いでカウンター。中央やや右寄りで高橋が受けると、チェックに来た高柳とのリョウタ対決は、素早く切れ込んで体を入れた高橋の勝利。置き去りにして篠田が戻りきらない右サイドのフリースペースに抜け出し、速く低く鋭いセンタリング。これをニアに走り込んだ稲垣が、加速する勢いのまま豪快にボレー。至近距離から海人のニアを撃ち割った。1−1。 早い時間帯に同点に追い付かれ、清水も枝村が獅子内とワンツーから、もう一度獅子内にスルーパスを通すなど、試合のスピードを上げる。しかし、勢いは俄然、名古屋。清水が前に入れるパスに対し、各ラインが積極的な動き出しで先を取り、次々と一つ前に出てアンティシペーションに成功していく。9分には、スペースに転がしたスルーパスに対し、篠田が完全にボールウォッチャー。恐らく何人かはオフサイドだったかと思うが、自分の裏を警戒してボールを見送る篠田の背後から、青山が30M以上走って猛然と追い掛けると、タイミングを見計らってラインギリギリからダイレクトで右クロス。だが、逆サイドから詰め寄せた森安が高い打点で何とかクリアする。 名古屋の勢いに押された清水は、とにかくクサビのパスを読まれてしまうため、長いボールに頼らざるを得ない。一方の名古屋も、3トップの特性を活かし、縦に速い攻撃で攻める。繋がないサッカーは、やはり精度が低い。名古屋は上原のアーリークロス、清水は途中投入の柴田がスペースで受けて早いタイミングでクロスを入れるが、共にDFが跳ね返し、シュートのない状態が続く。やがて、同点から10分が過ぎたあたりから、名古屋の足が止まり始める。
20分、真希がマークをスクリーンして、枝村がチェンジサイド。篠田のパスから大瀧が縦に抜け出し、流れの中では両チーム含めて久々にサイドを深く抉る(ボールはCKに)。22分には、森安が中盤で奪うと、中央阿部とのワンツーから中に切れ込む。混戦のままPA内に侵入したところで小さく右に叩き、そこで真希が右30度からダイレクトシュート。威力はあったが、枠の上に外れた。同点シュート後、実に16分過ぎて両チーム初めてのシュートである。 24分、中盤で真希が奪うと、右に軽く開く柴田へ。これを見た枝村、中央から加速すると奪い取るかの勢いで柴田とスイッチし、そのまま右サイドに流れる。スピードに乗ったままの鋭い切り返しでDFを交わすと、最終ライン裏のスペースを斜めに走らせる、スルーパスとセンタリングを組み合わせた完璧なボールを送る。ファーに抜け出した阿部は、GKのいないサイドに詰めるだけであった。2−1。
その後も清水のペース。直後の25分には、真希がドリブルで20M中央突破してシュート、GK正面。29分、枝村が阿部とのワンツーで中央突破、獅子内がクサビに入って左に流すと大瀧がスペースを突いてクロスも、DFがカット。 対する名古屋は、3人目の3年生小出を右CBに入れ、ジョシュアを右MFに上げる特攻体制。30分にはカウンターから、慌てた大瀧と篠田が中央に寄ったアンバランスを見逃さず、右スペースに展開。ジョシュアが抜け出してサイドを抉ると、意表を突いて殆ど角度のない位置から痛烈な10Mシュート。しかし、コースのないところから海人の牙城を崩すことは能わず、正面でキャッチ。 更に32分にも、清水最終ラインを柔らかく越えるロビングパスで、ここまで完全に消えていたエース津田が、ついに裏を取る。PA内右20度で構えると、これをダイレクトボレー。しかし、余りに難度の高かったシュートは大きくファーに外れる。
一方の清水は35分、大瀧が縦に入れたボールを、引いてきた阿部が簡単に横に叩き、枝村がそれを受けてドリブル。阿部の空けたスペースに突入すると25Mミドルを放ったが、右に外れる。続いての相手の攻撃を素早くカットした獅子内が、そのままドリブルで勝負して強引に相手最終ラインに割り込むと、20Mミドル。GK、一度こぼしたが、何とか再キャッチ。獅子内はこの突破で足を攣り、八木と交代する。 この交代後、清水は長いボールでサイドスペースを狙い、リスクレスな攻撃で試合をクローズに掛かる。ロスタイム、自陣から森安?が大きくサイドへ蹴り込む。前掛かりの名古屋最終ラインだが、十分に守備範囲。…が、左CBの小出、これをかぶる。競り合うのを諦めた八木は、抜け目無く裏のスペースで待ち受けており、じっくりと味方を待つと、丁寧にラストパス。ゴール中央に駆け上がった枝村が豪快に叩き込み、勝負を決める。3−1。枝村はそのまま名古屋ゴール裏でアップを続ける味方に走り寄り、ハイタッチで歓喜を共有化。危うく遅延行為で警告を受けそうになる(笑)。 その後は、更に時間稼ぎの傾向を強め、大瀧が巧くコーナーフラッグ付近でキープし、そのままタイムアップ。無事に一発で全国大会出場を決めた。
名古屋 清水エスパルス 4(2) シュート 7(4) ×村越、×真希、◎阿部、○真希、×枝村、○獅子、◎枝村 7(2) 右クロス 6(1) ×谷野、×柴田、×柴田、×柴田、×真希、◎枝村 2(0) 左クロス 6(1) ×大瀧、×獅子、×大瀧、×大瀧、×大瀧、◎八木 2(1) 右側CK 0(0) 0(0) 左側CK 4(1) ×枝村、×枝村、○枝村、×枝村
▼試合結果 清水エスパルスユース 3−1 名古屋グランパスユース 得点:前半20分:清水 ・大瀧義史 (村越大三・右クロス、阿部文一朗:ポストプレー) 後半06分:名古屋・稲垣 順 (高橋良太・右クロス) 後半24分:清水 ・阿部文一朗(枝村匠馬・右クロス) 後半39分:清水 ・枝村匠馬 (八木和秀・左クロス) 警告:前半05分:清水 ・阿部文一朗(ラフプレー) 前半22分:名古屋・深谷朋宏 (ラフプレー)
▼選手寸評 山本海人 6.5 セットプレー・クロスでの高さは、頼りになる。この日はフィードも安定。
森安洋文 6.5 序盤は戸惑いがあったが、徐々に安定。特に逆サイドのクロスの対応が○。 村越大三 7.0 そのスピードで敵ドリブラーに対処。大胆な奪取と繊細なフィードで貢献。 高柳亮太 5.5 毎度スピード系には弱い。安定してるが、自分の限界を悟るにはまだ早い、 篠田大輔 5.0 突破に対する脆さは変わらず。失点後、攻撃参加に消極的だったのも残念。
谷野由紘 5.5 動きは上々も、組織に有効なプレーに繋がらず。守備の位置取りに当惑も。 枝村匠馬 7.0 まだできるはず。攻守の切替時に一瞬、立ち止まって考える癖が直れば…。 山本真希 6.0 受験前の躍動感が戻ってきている。体を張った動きで枝村に余裕を与えた。 大瀧義史 6.5 従来の巧さに加え、運動量だけでなく強引な突破まで。波が少ない選手に。
獅子内善雄 6.0 動いてる割には消えてる時間も長いが、その泥臭さが貴重なアクセントに。 阿部文一朗 6.5 体格に頼らず、ポストもシュートもダイレクト意識が高い。吹っ切れたか。
柴田和也 5.0 クロスは入れたが、突破して抉れたはず。今日は冷静というよりも消極的。 八木和秀 5.5 柴田以上に消極的な姿勢が目立つも、得点場面の裏の狙い方は唸らされた。
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