独り言
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2006年12月25日(月) |
from delivery |
男は共同墓地から胎内へと舞い戻り、新たな出生を迎える
子宮口の先で待っているのは薄汚れた世界だと知っている
「…構うもんか」
「医者もナースも信用ならねぇ」
「誰にも取り上げさせたりしない」
無理矢理引きずりだそうとする医者の手を振り払い、ナースの顔にゲロぶちまける
そして床に転げ落ちながらニヒルに微笑み最初の一言
「人が生きるか死ぬかって時に、その資本主義丸出しの金縁メガネは勘弁しろよドクター」
医者は見下ろしこう返す
「お前はガキだから知らないんだろ?」
「…金縁メガネをかけて見る世界は最高だぜ!!」
医者は続けて
「格好つけんのもいい加減にしろ」
「お前だって資本主義の恩恵を受けて生まれてきたんだろ」
「…いや、お前自身が資本主義の恩恵そのものさ」
男は床に唾を吐き捨て、ドアを蹴り開ける
そして去りゆく途中で背中越しに次の一言
「ご忠告ありがとうドクター」
「あんたはいつだって正しいよ」
「…でもこれでその忠告も無駄になる」
男は体液で湿った指で両の目を潰し、ありったけの力で耳を引きちぎる
こうして男は、何物にも汚されない、汚す事の出来ない孤立無援の世界を手に入れた
いつ逝ってもおかしくないリスクと引き替えに
繰り返す幼稚なニヒリズム
分娩室から共同墓地への旅が始まる
赤子の様に泣き叫ぶ手法はもう通用しない
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