2008年03月22日(土)
不甲斐ねぇ・・・。 風邪でダウンするなんて右腕失格だ。
風邪くらいじゃ休んだこと無かった。多少引いていてもお優しい10代目に心配をかけることなく隠しとおせる程度だったからだ。が、今回ばかりはやべぇ。 熱は38.5度あるし、頭はクラクラするし寒気はするし喉は痛いし咳は出るし鼻も詰まってるし吐き気だってする。なんだか節々も痛い・・・。 風邪の症状をコンプリートさせている俺は10代目が電話で仰られた『今日は暖かくしてゆっくり休んで、ね?ちゃんと暖かいもの、しっかり食べるんだよ!』という命令を遂行できることができないことに気付く。 まず、俺は料理なんてそんなにやらねぇので冷蔵庫は基本的に空っぽだ。何か食料を買いに行こうにもそんな気力体力がない。 仕方がないので昨日大量に買った風邪薬と栄養ドリンクと飲んで気休め程度にうがいをしてのど飴を嘗めて布団にもぐった。
今日が学校で良かったか・・・。学校なら野球バカと芝生頭がいてなんとか10代目をまもってくれるだろ。・・・ヒバリのヤローもいるがあいつは頼りになんねぇ。
10代目・・・何してるかな・・・。 刺客なんかに襲われてねぇよな・・・。 野球バカのヤロー、電話で指示したとおりしっかり10代目を守りやがれよ! すみませんすみませんすみませんすみませんすみません・・・、10代目。 風邪なんかでダウンして貴方をお守りできないなんて右腕失格です! ・・・でも、すみません、こんな俺ですがどうか貴方の傍にいさせていさせてください・・・。
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ヒタリ。 冷たいものが額に当たった感触がしてうっすらと意識が戻る。 どうやらいつの間にか眠っていたらしい。 うっすらとかすむ目を開けると10代目の姿が見える気がする。
「じゅ・・・だいめ・・・。」
これは夢だ。10代目は今学校で一生懸命勉強をなさっているはずだ。 野球バカと昼ごはんを食べて、少し頬を赤らめて笹川と他愛ない話をして・・・。 風邪のときは大抵妙な夢をみてしまうけど10代目の夢を見れるなんて俺はラッキーだ。でも相変わらず喉は痛いし頭はクラクラするし寒気もその他モロモロも続行中。もしかしたら俺、死ぬのか?
「・・・すいません、おれ・・・右腕失格ですけど・・・貴方の傍にいたいです。死んでも幽霊になっても傍にいたいです・・・すきです、だいすきです・・・。」
俺は夢の10代目に必死で訴える。かすむ目でよくは見えないけど10代目はくすっと笑ってるような・・・。そして俺の頭をその細い両腕で包み込んで胸に抱きこんできた。
「うん、俺も大好きだし傍にいたい。でも、死んじゃだめ。」
あれ・・・?夢にしてはリアルだな。 10代目の声はしっかり聞こえるし抱かれている温度は暖かい。やけに現実味がある。
「死んで幽霊になっちゃったら触れないじゃない。お粥を食べさせてあげることもぎゅっと抱きしめることも手を握ることも頭を撫でてあげる計画も実行にうつせないよ。」
10代目がそこまで言ってやっと俺は覚醒する。
「じゅ、じゅじゅじゅじゅーだいめ!!?」 「うん、おはよう?獄寺くん。」
何でここに?いや、確かに以前合鍵は渡していたけど学校は? ガバっと時計を見てすでに学校の終わる時間まで自分は寝ていたことにようやく気付く。
「やっぱり、思ったとおり。何もゴハン食べてないでしょ?まって、母さんにお粥作ってもらったの持ってきたから暖めてくるね。」
そういって10代目は台所に行った。 お、お母様にまでご迷惑をかけるなんて・・・なんて情けないんだ、獄寺隼人!!! 軽く眩暈を起こしながら自己嫌悪に陥っていたら10代目がお粥を持ってきてくださった。
「はい、熱いからきを付けてね?」
ふぅふぅと冷ましてくださりお粥を乗せた蓮華を俺の口の前に持ってきてくださる。・・・これってもしかして・・・?
「はい、あーん。」
!!!!!!!じゅ、10代目!!!!!!!? それは幾らなんでも反則です・・・!決して風邪の所為ではない赤い顔で固まっていると「食べないの?」という10代目の不安げな声が聞こえてきて慌ててお粥の乗った蓮華を口に入れる。
「あっつ!!」 「あぁ、ゴメン!!冷まし足りなかった!?」
猫舌な俺はせっかく10代目が冷ましてくださったお粥ですら火傷してしまう。・・・はぁ、情けねぇ・・・。
「いえ、すみません・・・。」
何やってんだ、俺・・・。風邪でダウンして10代目をお守りできず、おかゆを持ってきてもらって冷ましてもらって食べさせてもらっておいて火傷するなんて・・・。 俺は見るからにしゅんとうなだれていたんだろう。10代目は俺の頭を撫でてくださった。
「何で君が謝るのさ?また余計なこと考えてるんでしょ。」 「余計って・・・だって俺、せっかくじゅーだいめがお粥を食べさせて下さったのに猫舌で・・・。」 「猫舌なのはしょーがないじゃん。ほら、早く食べてゆっくり寝なきゃ。」
何てお優しい10代目。俺は促されるままにお粥を食べさせてもらった。
お母様のお作りになられたお粥は風邪で味覚があまり働かなくてもとても美味しくてそれだけで元気が少し戻ったような気がした。
「ご馳走様でした。」 「お粗末様でした。」
お粥はすっかり空っぽになり以前10代目から教わった食事の作法をこなす。 10代目は食器を片付けようと台所に行こうとするのを見て、俺は慌てて止める。
「俺がやります!!」 「いいの。獄寺君はゆっくり休んで!」 「しかし、部下として・・・。」 「あーもう・・・。」
10代目をコキ使うなんて恐れ多い。それに、昼間しっかり寝てお母様のおかゆを食べて大分元気になったんだ。もう大丈夫。と、思ったら10代目が呆れてるような顔をしているのに気付いた。
「俺さ、前から言ってるようにマフィアなんかなるつもりないから君を右腕とか、部下とかで見てないし。でも、君がそう言い張るなら今日は右腕はお休みの日なの!いい?」
人差し指を俺の目の前に持ってきて怒ったような顔で見上げる10代目。 そんな仕草や表情がとてもお可愛らしいが内心焦る。
「・・・あ、はい・・・。」 「・・・失格なんかじゃないから。安心してよ。」
あ、やっと微笑んでくださった。なんだかほっとして胸をなでおろす。
「さぁ、計画完了までもう少しなんだ。獄寺君は布団に入って寝ててよね!すぐに片付けてくるから!」
け、計画・・・?何だろう?何かさせられるのかな・・・? 不安にかられつつも10代目の指示通り布団に戻る。しばらくして10代目が寝室に戻ってきた。
「お待たせ。」
そう言って10代目はベッドの脇に座って俺の手を握って頭を撫でてきた。
「今日はね、獄寺君を幸せにする計画を実行したんだけど、どう?」 「・・・!!!」
俺は思いっきり驚いた顔で10代目を凝視する。結構すごい顔になっていたのだろう。10代目は噴出して笑った。
「感想は?獄寺君。」
改めて訊かれる。・・・そんなの・・・。
「サイコーに決まってるッス・・・。」
自分は何て幸せ者だろうか。こんなにも情けないのに貴方はこんな俺に傍にいてもいいと言ってくださる、傍にいてくださる。
「じゃ、もう寝て・・・。君が寝るまでこうしててあげる。早く、元気になってね?」 「はい、頑張ります。」
「そこは頑張るところ?」って言われてくすっと笑われる。 握っている10代目の右手が暖かくて、10代目が俺の頭を撫でてくださる左手が気持ちよくて心地よい眠りに誘われる。 目が覚めたらあなたはいなくても、俺明日は絶対に元気になってますからまたお迎えに行きます。 だいすきです、じゅーだいめ・・・。
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アッー!!(゚Д゚;) 何で獄寺サイドはいつも長くなるのか。 大体、当初の予定では「はい、あーん」なんかする予定なかったぞなもし!!! つーか、なんだこのヘタレ獄寺。 こいつきっとイタリア人じゃなくてヘタリア人だよ!!!(作品は1mmも知りません。)
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