2002年03月10日(日)
「うぅ〜…」
頭を抱えて小さく唸る金髪の主はパストゥール家の長男・アレクサンドルことアレク。
「…兄上。」
それを静止するかのように呼ぶ銀髪の主は次男・プラチナ。
「だって、だって〜…わっかんないんだもん…こんなのふかのーふかのー!!」 「不可能じゃない。現に俺だって出来るんだ。兄上に出来ないことはないだろう?」
今、プラチナはアレクに勉強を教えていた。 彼らは今、都内にあるとある中学校の3年生に属している。…つまり、受験生。受験勉強の真っ最中だ。近所からは『愚兄賢弟』と言われてはいるがアレクはやれば自分よりも出来るとプラチナは知っていた。だから今もこうして熱心に家庭教師を引き受けている。…他ならぬ愛しい兄の願いだからとは敢えて言わないが。
「無理!!」 「決め付けるんじゃない。兄上はやれば出来るんだ。何てことはない。」
アレクはやれば出来る。…のだがいかんせんやる気と根気がない。だから結果、『愚兄』と呼ばれてしまう。
「無理無理!!俺これだけはぜぇぇぇ――――ったい!無理!!」 「兄上!」 「関数なんて大ッ嫌いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
叫びながらテーブルに乗っかっていた筆記用具をがしゃがしゃと落としていくアレク。いつものことながらこの兄の可愛らしい…もとい、迷惑極まりない(とは微塵にも思っていないのが世界最強のブラコンの名を欲しい侭にしているプラチナたる所以か)かんしゃくにはほとほと困らされる。(それすらも嬉しいとかおもってるあたりもうダメダメである。) 叫んで呼吸を乱したアレクは大きく肩を上下に揺らして呼吸を整える。それを見ながらプラチナはいつものように八つ当たりとしてテーブルから落とされた筆記用具を元に戻していった。
「…だがな兄上、これが出来ないと都立奈落高校には入れないぞ?」
当然の話である。高校受験には関数は必須。都立では5本の指に入るほどのこの高校の入試なら尚更無視することは出来ない。
「いーよ、もう!!俺、私立天上学園に入るから!!プラチナも受験勉強しなくていーんだからいいだろ?!」
実はこの学園には推薦入試が存在する。 そしてアレクとプラチナはこの推薦資格を天上学園の生徒会長・セレスからもらってたりするのだ。
「せっかくだが…俺はそこには行かない。何が何でも奈落高校に行くつもりだ。…天上学園には兄上一人で入学してくれ。」 「えぇ――――――――――――?!なんでぇ??」
予想外のプラチナの返答に不満も露な声を漏らすアレク。それもその筈、この綺麗でかっこいい弟が今まで一度も自分からの誘いを断ったことなんてなかったからだ。
「まず、天上学園は私立だからバイトは一般的に許されていないからな。」 「バイトなんてしなくてもいーじゃん。こづかい貰えるんだし。」 「だが、私立だと学費も馬鹿にならないだろうが。そうなると必然的にこづかいは減る。」 「…う、そうか…。」 「それに奈落高校のほうが30分も近い。…寝ぼすけな兄上の事だ、少しでも多く寝たいんじゃないか?」 「…うう、そだけど…」 「そして最後に。奈落高校は完全週休二日制だが、天上学園は未だに土曜日の休みが施行されていないそうだ。」 「…ううう…それはヤだ…」
行きはよいよい帰りは怖い。
「…それでも、兄上は楽をしたいからと言って天上学園に行きたいと言うんだな。…まぁ、頑張れよ。ちなみにあそこと奈落高校では授業の内容もスピードも多少は違うはずだから入学後は勉強を聞いてこられても教えてあげられないかもしれないな。」 「…意地悪。」 「俺は事実を述べたまでだ。」
確かに。だから下手な反論は出来ない。
「だって…俺、…ずっとプラチナと一緒にいたいのに…。」
うつむいたアレクから小さく嗚咽の声が漏れる。泣いているのだ。予測していた(というかそうなるようにプラチナが仕向けた)からいつもの様にプラチナは慌ても焦りもせずに落ち着いてそんなアレクを見下ろしていた。 その様子がアレクに更なる不安を与えた。…プラチナはもう自分のことがいらないんじゃないかと。
「…何で、いってくれないんだよ…?天上学園に一緒に行くって…。ずっと一緒にいるって…」 「兄上のためだろうが。」
やけに落ち着いた声。
「うそっぱち!俺のためなら天上学園行くってゆってくれるだろ!!」 「落ち着け。」
怒りが爆発する一歩手前でプラチナはアレクを抱きしめる。 アレクはさっきよりも酷くなった嗚咽を漏らしながらぎゅっとプラチナの胸にしがみついた。
「確かに勉強は大変かも知れないが…奈落高校の方が兄上は楽だろう?…俺だって一緒にいたいが…今だけの苦しいのから逃げる為に兄上を甘やかしては兄上が未来、不幸になってしまうんだ…わかってくれ。俺は昔から言っているだろう?『兄上はやれば出来る』って…。俺も出来る限り力になるから今は頑張ろう?」
優しく、落ち着いた声で癒そうとするかのようにアレクの頭を撫でながらプラチナは独白した。 アレクの嗚咽は小さくなっていく。
「…俺のことばっかり…。お前はいいの?」
数分してアレクから発せられた言葉は少しばかり『照れ』が混ざっている。
「…俺は、兄上が幸せならそれでいい。」
緩やかに微笑むプラチナを見てアレクは照れくさそうに笑い返した。
「うん。お前はそーゆーやつだよね。ごめんね?わがまま言って…俺、改めて頑張るから!」 「気にするな、いつものことだ。」 「いつものことって…そんなにいつもわがまま言ってばっかじゃないゾ!!」 「言っている。」 「言ってない!」
怒り顔のアレクに軽くキスを施す。いつもの、『仲直りの証』に。
「兄上は…いろいろと自覚が足りなさ過ぎるんだ。…俺にどれだけ愛されてるかも…わかってないんだろう?」
普段は見せないいたずらっ子のような笑みを至近距離で見せられて、…改めて愛の告白をされてなんだかドキドキしてしまう。 照れ隠しのため視線をそらそうとしたら両手で顔を捕らえられてしまって真正面から視線をぶつけられた。
「それに、俺は俺で満足させてもらっている。…こうやって、な。」
そして今度は深く、キス。 『愛している』事を全身で訴えているかのように。
アレクは決意新たに自分のためにもプラチナのためにも勉強を頑張ろうと思った。
…明日から。(笑)
□□後書き□□
頼まれてもいないのに学園モノ…ちゅーか、現代モノです。 霜月悠夜さんからのキリリク(?)です。…何でもいいって言ってくださったのですよ…(苦笑)
…これってもしかしないでも今までの中でパチモン番付1位?(笑) あぁ〜…何かいいですねーvパラレルパラレルルリリンパ♪(某魔女ッ子) 私はただいま大変某サイトさんのプラアレご主人様×飼い猫に萌えております…vvストライクだよ、ゆ○らさん…ッツ!!(鼻血垂れ流し)今度何か描いて送りつけちゃいますわ――――んv(迷惑)
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