2002年01月02日(水)
ふと気になったことがあった。本当にどうでもいい事なんだけど。 でも、すっごく知りたいから聞いて見ることにした。
「ねぇ!?プラチナは『キス』ってしたことある…?」
ぶッ!!
それまで、茶を飲みながら書類に目を通していたプラチナがむせた。
「わわわッ!?そ、それ!その書類!!今年の予算案だろ!?なにやってんだよぉ〜〜…」
とか何とか言いつつその書類よりも咳き込んでる弟の背中をさすってやる俺はとっても良いお兄ちゃんかもしれないゾ♪と、思っていたら案の定「誰のせいだ?」と睨まれた。 …ん〜〜っ…ま、気にすんなって☆
「それよりさぁ、実際どうなんだよ?」
初志貫徹。何が起ころうとこれだけは訊いとかなくちゃと、奇跡的に無傷(?)の書類たちをまとめるプラチナに向かってもう一度聞いた。 するとプラチナはこめかみに手をやりはぁっとため息をついた。
いつものことでもう慣れたつもりだったがまったく兄上には困ったものだ。 大事な書類に目を通して集中してるときによりにもよって「『キス』したことあるか?」なんて…。 お陰でまだ複製していない今年の予算案がもう少しで茶付けになるところだった。
「で?本当のところどうなんだよ!?」
…まだ諦めていなかったのか。 ちょうど見終わった書類をまとめながらどう返答しようか模索してみた。 さて、この場合どう答えるのが最善か。 あると答えれば拗ねたりで色々と面倒な事になりそうだし、ないと答えれば根拠のない非難が来そうだ。(なんだよーないのかよー、みたいな。) 実際あるようでない。ないようである。 出来れば言わないほうがいい。俺の体裁の為にも(汗)
そう言えば訊いてどうするんだろう、俺? プラチナのキスの思い出なんて…。 ちょっとプライバシーの侵害だよな、それって。でも、言いたくなかったら言わないよね。気になるけどその時は深くツっこまないでおこ☆ま、なかったらないでそれまでだし。 …でも…もし、あったら!? プラチナが誰かと『キス』してたらどうリアクションすればいいのかな? 相手の人は誰? 今もそー言う仲なんだ!? …だめだ。何だか頭がぐらぐらして普通の言葉が思い浮かばないよ…。 …俺、仮にもお兄ちゃんなのに…弟の幸せを素直に喜べないかもしれない…。 変だな。お兄ちゃん失格だよ〜〜…。
そんな風に色々考えているうちに暫くしてプラチナが俺に向かって問題発言を飛ばしてきた。
珍しく兄上が俺の答えが出るまで静かに待っていてくれたから俺はどう答えるか考えることに没頭できた。
実はキスをしたことが一度だけある。
しかも目の前にいる兄上と。 でも、兄上はそのことを知らない。 知ったらどんな反応が返ってくるだろう? 俺は兄上のことが好きなのは何度か(遠まわしにだけど)伝えてる。その度に気付いてくれなかったり(哀)、からかってると思われて殴られたり(泣)と…まぁ、散々だった。 しかし、この辺で二人の関係をはっきりしておきたいのも事実。 俺は兄上の傍にずっと居て良いのは自分だけという確たる称号が欲しい。ただの兄弟ではなくて。
「…ある。」
俺はイチかバチかの勝負に出ることにした。
「…ある」 「え!?」
一瞬眩暈を起こしかけた。 でも何とか持ちこたえて。
「ま、マジ!?」 「ああ。」
こいつが嘘を吐くようなヤツじゃないことは十分判ってたが、何でかな…嘘でも冗談だと言って欲しかった…。 聞きたくなかった。 訊かなきゃ良かった。 自分勝手だな、俺…。
「そか♪なんだぁ、プラチナってばオっトナ〜☆」
わざと明るく振舞ってみる。 何だ。俺って案外器用なんだな。本当は悲しくて淋しくて仕方がないのに…。 ……あ、そうか!先を越されてムカつくんだ!!そうだよ!だって俺がお兄ちゃんなのに弟に先を越されるなんて癪だもんな。 …う〜ん…それもちょっと違うかな、ちょっとだけ。
「何を百面相している。」 「え?」 「笑ったり、怒ったり、眉間に皺を寄せたり…」 「…っウソ!?」 「ウソじゃない」
〜〜〜ヤなヤツ!! 意地の悪ぅい笑みを浮かべやがった! 俺、お兄ちゃんなのに!!
「…ある」
さて、この後はどうしようか。 取り敢えず兄上の出方を待ってみることにしよう。 ・・・・・・・・・。 あのあと2,3回の言葉を交わしたまま兄上は黙ってしまった。今は百面相をしている(笑)
(…これは…少なくとも複雑な心境にはなってくれているということだな)
予想以上の反応に少し嬉しさがこみ上げてきた。 さて、ココからが正念場だ。どうにかしてこの超鈍感な兄上に自分の想いと真実を伝えなければならないんだからな。
ムカつくムカツク!! ちょぉっと背が高くて教養もあってかっこいくてお茶淹れるのが上手いからって偉そうにしすぎだ!無礼無礼!!
「兄上は生まれたばかりの頃、ケージに入ってた頃のこと憶えているか!?」
俺がこれでもかって程睨んでいたらプラチナは急にどうでもいい話題をふっかけてきた。
「生憎!俺は出来損ないなので全ッ然憶えてないよーッだ!!」
どうせまたバカにするつもりなんだろ!?そのテには乗るか!!
「…そうか。やっぱりな…」
あ、アレ!?何か沈んでる??からかってこないのかな!?…でもケージの中って、なんでまた今……ん?
「…もしかして…俺がプラチナのファーストキス奪った…!?…寝ぼけて」
恐る恐る訊いてみる。まさかね…アハハ(汗)
「いや、兄上からじゃない。俺からやったんだ」 「あ、そーなんだぁ…て、えええぇぇぇぇえ!?」
俺は驚愕の真実を知ってしまって絶叫した…。
…やっぱり驚くよな…。体は大きくてもお互い0歳児だった訳だし(笑)
「な、何でまた生まれたばっかりなのに…?ね、寝ぼけてか!?」
予想通りこれでもかと言うほど驚いてくれた兄上はまだ目を大きく見開いていた。
「いや、意識ははっきりしていた」 「じゃぁ何で…」
当たり前の質問をされて少し困った。 実はここが問題なのだ。ちゃんと伝わるか。 自分の中でも文章に出来ていないから余計不安になる。けれど伝えるしかない。
「初めて見た世界には兄上の姿があった。見ていたら酷く懐かしいような感覚になって…少し触れてみたら『戻れた』気がした。後で聞いた話だが俺は兄上から出た欠片らしいな。それを聞いて酷く納得がいった」 「で、でも何で…き、キス…なんか…////」
言って恥ずかしくなったのか兄上は俯いてしまった。 …何だか可愛いな。耳朶まで真っ赤になってる(笑) 俺はからかいたいのを我慢して続けた。
「マウス・トゥ・マウスのつもりだったんだがな」 「…まうす…?」
俺の頭の中で国際的人気のねずみが出てきた。…多分、いや絶対違うなこれは。 そんな俺の思考を察してかプラチナは「人工呼吸だ」と短く説明してくれた。 …ああ、アレね。
「俺は兄上の存在がわかるのに兄上は俺に気付くことなく昏々と眠っていたから…もしかしたら死んでいるのでは、と思ったんだ。それで咄嗟に思いついたことが…それだ」
ほうほう。取り敢えず心配だったんだな、俺のこと。 まぁ、それならファーストキス奪われてても怒らないぞ♪ あれ!?でも…
「…そう言えば!誰かから聞いた話だけど人工呼吸はキスのうちに入らないんだって」
おぉ!!俺って偉いじゃん。これで誰も傷付かないで済むぞ☆
「…そうなのか?」
…って、アレ!?プラチナ、なんか嬉しくなさそう?何で??
「…それなら…」
そんな言葉の後すぐにプラチナの顔が俺の顔に急接近してきた。
肩に手を置いて抱き寄せて、軽く口付けた。 あの時と変わらない柔らかな感触。 けれどあの時とは違う。 兄上の瞳には俺が映っている。 兄上は本当に驚いたのか絶句して固まってしまっていた。 無理もない。突然だからな。 一度数ミリ唇を離して改めてもう一度、今度は深く口付ける。 暫くして、正気に戻った兄上から講義の拳が殺到した。 仕方がないので唇を離す。抱きしめた腕は解かなかったが。
「ぷはッ!!」
開口一番に文句を言われるかと思ったがどうやらそれどころではなくとにかく酸素が欠乏していたらしい。深呼吸を繰り返していた。
「……お前、どういうつもりだよ?」
それでも暫くして予測していた言葉を投げかけられた。
「何が?」
しらばっくれてみたり。
「…ッだから!キス!もう取り返しがつかないんだぞ!?」
怒ってるのかと危惧して顔を改めて見てみると、逆だった。 兄上は泣きそうな顔をしていた。
こいつが何を考えてるか判んないよ。 急にキスなんてしてくるし。
でも、俺の方がもっと判らない。 …キスされて嫌じゃなかった。プラチナじゃないけど、キスをされてたとき『戻った』気がしたんだ。 俺たち、元々は一人だったからなのかな!?触れ合ってると何故か安心する。手を繋いだり、じゃれあったり。 でも、さっきのキスは違う。もっとこう…切ないような、懐かしいような…くすぐったい気持ち。 ……あぁッもう!!それじゃ俺、プラチナに恋してるみたいじゃないか!変だよ、変。兄弟なのに、お兄ちゃんなのに、弟なのに〜〜〜〜…
「兄上?…泣いているのか?」
どうやら色々考えていたら涙目になっていたらしい。プラチナが心配して声をかけてきてくれた。 どう答えていいのか判らなくて見つめられているのが何だか恥ずかしくて…俺はプラチナの胸に顔を埋めた。これも恥ずかしいけど見られるよりはマシ。それに離してくれないんだし。
言うなら今だと思った。シチュエーション的にオイシイ!(笑)
「兄上。…兄上にとって俺はどんな存在なんだ!?」
抱きしめる腕の力をほんの少し強めて言った。 その言葉に嬉しいことに俺の胸に顔を埋めてる兄上がぴくんと反応するのが判ったが、まだ伝えたいことがあったので続けた。
「俺は唯の兄弟だけでは満足出来ない。…兄上を独り占めしたいと思っている。他の誰にも渡したくはない。…だから…キスしたんだ。兄上の『特別』になりたかったから」
兄上がもぞもぞし始めていた。でも、俺はまだ離す気はない。答えを聞くまでは。
「…兄上は…どうだ!?」 「…俺は…」
まだ顔は埋めたままだけどようやく話してくれた。続きを待って俺は耳を澄ます。
「俺は…お前の事…す、好きだ…けど…」
まだもぞもぞと動いている。どうやら離れたいのではなくて気分的にじっとしていられないみたいだ。
「兄弟じゃなかったら俺達は何なの?」
(俺だってプラチナを独り占めしたいよ…でも…)
「兄弟じゃ無くなったら俺はお前の…何になるの!?」 「…恋人、が妥当な所だな」
…やっぱり…////
「俺なんか恋人にしても何にもしてあげられないよ?」
そう、それで呆れられるのが一番怖い。
「俺がする側だから安心しろ」
…今、ニヤリって…(汗)
「それにな、何も兄弟でいることを辞めるわけじゃない。兄弟兼恋人だ」
兄弟…兼…恋人?
「その方がより特別な関係だろう?」
面食らって見上げたらそこには優しげなプラチナの顔があった。
「……そだね」
何だかその笑顔を見たらつられて俺も笑顔になった。 えへへ。何だかさっきまでの胸のモヤモヤが一気に取れたみたいだ♪やっぱり凄いなぁ、プラチナは。 ……自慢の弟兼恋人…だね☆
後日談だが。 何だかんだでようやく兄上のハートを見事射止める事が出来たわけだが大きく変わった事と言えばスキンシップが増えた事くらいだった。 しかも、兄上『から』限定で。 俺からは余程の事が無い限りしないが、その『余程の事』の事態の時に拒まれるのは流石にヘコむ。…というか、欲求不満に陥ってるのが現状だ。 目の前にご馳走が並んでいるのに食べてはいけない、蛇の生殺し…。 ……まぁ、あのサフィルスの教育内容の中には『性行為』は含まれていなかったのだと考えるのが一番妥当だな。 力で無理やり押し通す事も可能なのだが。…それは最終手段としてとっておこう…。 今は兄上から施してくれるおやすみのキスとほっぺのキスで我慢することにしようか…。
ヲワリ。
□□後書き□□
プラチナのみ誰だよアンタ(泣)…いえね、私の中のプラチナはあんな感じなのデスよ。生まれた時から兄上ラブーッ!!みたいな(有り得ん)ってか今回のヤツは短いのにするハズだったのに何故か第1章より長くなっちゃった〜!!二人の心情を交互に書いたからカナ?…敗因は。とにかくプラチナディスクが待ち遠しいデス。だってプラチナ落とせないんだもん(号泣)きっと両方インストしたら出てくるオリジナルストーリでやっと落とせるのね。 はぁんあ、楽しみ楽しみvv
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