会社はカーテンとふとんを売る店を経営している。　
自分はお客さまから注文いただいたカーテンの寸法をパソコンに打ち込み必要メーターを割り出して各生地メーカーさんに発注するのが主な仕事。
生地メーカーさんのひとつが昨日から何度電話しても出てくれなかった。　
毒舌姐さんも何度問い合わせの電話をしても誰も出ないという。　
電話番号変更とかの話もないし、どうしたんだろうと思っていた。　
その生地メーカーさんの担当さんの名刺に携帯の番号があったからかけてみたら「電波の届かない場所か電源が入っていないため…」であった。　

「なんかおかしいですよ」と自分。　
「昨日発注したぶんどうなってるかだけでもわかんないと困るよね」と毒舌姐さん。　

１１時すぎから毒舌姐さんも会議にはいっちゃってどうしたもんかと思いながら仕事してたら見慣れない番号の着信。
案の定、さっき携帯にかけた生地メーカーさんだった。　



ところが。　


「実は会社が倒産したんです」


耳をうたがった。　

なんでも昨日の朝、その生地メーカーさんに弁護士がきて会社は倒産しました、みなさん解雇です、社長は自己破産しましたって言われて今は自宅から電話したのだそうな。

昨日注文いただいた生地は送ることもできませんという返事だった。　

そんなことって。　


そんなことって。　


あるんだ。　


会議室に内線したら話を中断するタイミングだったみたいで不機嫌な社長の声で　
「なんだ？」

「△△商事が倒産しました」

会議室の自分の声がどんなふうに響いたか。　


役席の数人が会議室から出てきて、　
「まゆぼうさん、△△商事の発注書みせて。店に連絡する」
「まゆぼうさん、もう一度聞かせて今の話」



それからは生地メーカーさんの生地を注文していたぶんの洗いだしとかで小一時間まわりが騒然とした。　

こんなことってあるんだ。
こんなことってあるんだ。　
ある日突然仕事に行ったら「この会社は倒産しました」
「あなた方は全員解雇です」　
って言われちゃうような事が。

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