can't be alive without you. why don't I miss you
おめでとう私!(もうめでたくなどない歳です)
ところでここ何日かすごい落ち込んでいて、日記も書かずに逃避してました。何かしたいなーって思うのになにも出来ない。
まぁちゃんと理由があるわけで、それが↑のケーキなんですけどね…。
私のオフの友達はみんな知ってる、うちの近所のケーキ屋が、1月いっぱいで閉店したんですよ。もう私がチビッコの頃からずっと誕生日ケーキを焼いてくれていたお店でね。小さくて古くて今風からほど遠い感じの店だったんだけど、職人気質のおじさんがすごくいいケーキを焼いてる店だったんだよ。 私は学生の頃とか、地元で暇をもてあますと、工房で作業を見たりとかしてたんで、第二の家っぽいとこだったのね…。まぁ私以外にもその店にはそんな子がいっぱいいて、先客がいたら、先客と共に時間をつぶしたり、焼きたてのスポンジとティーバックの紅茶とかを立って飲みながらおしゃべりしたりしてたんだー。一日何時間も…。 「誰にもいわずに店を閉めたいから誰にもいわないで」 って言葉と共に閉店を知らされたのがインテックスの前日でさ…。 もう本当はずーっと凹んでいたのね。インテックスで私にお菓子を振る舞われた人はそれがそこの店のだよー。有明にもエクレア持っていたりしたので、食べたことがある人はいると思う。
まぁそれから3週間、何度も店にいって『やめないでよー』っていっても首を縦には振ってくれなくてさー。『エクレアが食べたいからやめないでー』っていったら、翌日には数年ぶりにエクレアが店頭に出たりで、もうどんなごねてもダメだしさー。参った! 常連の4人くらいだけは知らされていて(2月が誕生日の子達は予約の時点で知らされていた。だのでウチの家も誕生日が前倒しの1/31に変えられた)、最終日は判ってた子達が花束とか差し入れを持ってやっぱり「やめないでよー」と夜中までごねていたわけです(私は9時前に帰ったけど、最後は深夜の12時を過ぎても誰かが来続けていたらしい。そしてごねていたらしい)。 そこのケーキって、私はそこでしか食べたことがない配合のケーキなんだよねー!こんなにケーキを食い荒らした私が…あれより美味しい生クリームにはたどり着かなかったというお話。全然、後に残らないというか、不思議なんだよ…どういう風に表現したらいいか判らない。配合がどうとか材料がどうとかじゃなくて、あれは職人のワザなんだよね…。 ケーキを美味しいと思う基準は『配合が全くわからない…』ってことだと個人的には思うんだけど、まさしくそれだった。 あれはあの職人にしか焼けないケーキ、作れないクリーム、だったわけで。まぁ素材もすごい選んでたんだよ。みためすっげーふつなのに、メロンが静岡メロンの一番いいヤツだったりしたの。どこにもショーケースには書いてないけど、判る人は食べればわかる味。そいうのを小さい店先に並べて売ってる古き良き洋菓子店でした。今はもう亡い店。 今日行ったら、小学生の女の子が泣きながら暴れてた。『私の結婚式のケーキは誰が焼くの!?』ってごねて泣きじゃくっていたらしい。今日は後かたづけで出てきてて、『本当に店じまいなのかな…』と諦め悪く見に行ったらシャッターが半分開いてて、いつもみたいに工房に行ったら、いつも絶対についていたオーブンの火が落とされていて、ものすごいショックだった…。おじさんはいつもみたいに店にいて、突然の閉店に怒ってやってくるお客さんに焼き菓子を出しておしゃべりをして一日が終わったらしい。 またしつこく『やめないでよー』と言ってると、店で使っていた5号のケーキの焼き型とアプリコットジャムを一瓶くれた。 『明日も誰か来そうだから…』と残ったスポンジにアプリコットジャムを塗ってロールケーキを巻いていた。いつもみたいな光景だった。
おじさんの前では絶対泣かないようにしてたんだけど、こうやって一人で日記を書いてるとものすごい泣けてくる。 『そこにかわらずありつづける味』っていうのは『故郷』というのと同意語だと思う。そういう意味で私の『故郷』はひとつ確実になくなってしまった。まだしばらく最後に貰ってきたバターケーキやスポンジが家にあるけど、それがなくなったらあの味にはもう巡り会わないんだと思う。だから後少し手元にある味を大切に味わおうと思った。
最後の日の工房。
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