 can't be alive without you. why don't I miss you
2002年08月27日(火) |
バクラ!バクラ!バクラ! |
■NOVELS■ イメイジィス。「hard to say」追加分up。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− モクバと乃亜のなれそめ(上)とかそんな風。 (下)は多分、城之内一人称・・・。 チマチマしてないで、サクッとアップしていまいたい(イライラ)。 このてんとうむしシリーズは、本当に後先考えずにやってるので、どうかるか決めてません。なにもかも。 つか、「あれ、もう遊戯王じゃないですよ!」とか突っ込まれないかどうかにおびえてるよ・・・イヤ、その通りなんですが!(ぼんやり) 文頭に詩を使う、というのがやりたかっただけなんだ・・・「夜」はまえりたんの大好きな金子光晴が昭和23年に出した『蛾』という詩集に収録されています。金子光晴といえば「どくろ杯」とかの旅行記ものの方が有名なのかな〜。大正昭和を生きたパンチの効いた作家ですよ。 記憶が遠かったので、今ちょっとバイオグラフィーをおさらいしてみたんだけど、その死にまつわる近い人の言葉が素敵だったよ! 『最期まで本当に肉が好きでした。急死する少し前にも、 ”今度あそこのビフテキを食いに行こう”と言っていました』 ・・・素敵すぎ!こんなこと言う身内も素敵すぎ! 私は終戦の頃に学生だったくらいの詩人に好きな人がいっぱいいるのですが、この人はその世代に影響力をもたらせた詩人だと思います。「夜」なんて今から50年も前にこんな粋な文章書く人がいたのかとガタガタ震えさせられた作品。思わず暗唱できるくらいに読み込んだのを憶えてます。好きだったなぁ。これ。せっかくなので、全文を載せておきます。よければ図書館にある全集の類でも捲ってみてください。いいッスよ。 というかバクラ祭りを今から用意します。
バクラ!バクラ!バクラ!
粋なあの子が復活ですよ。あはん。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「夜」
春はまだ遠い 雪のうえに 呼吸もたてない からまつの林
だが、たちのぼる夕靄(ゆふもや)の 吐く息にけぶるからまつ林。 林の奥にひそむ 夜の生壁(なまかべ)色。
耳そば立てて、僕はきく。 底しれぬ夜の静寂に 無限の寂寥のわきあがる ざわめきを。
白内障(そこひ)眼をした湖の あつい氷のしたに 棺の釘をうたれた水 銅になつた水の黒痣(あざ)。
僕はまた、耳をよせてきく。 氷のそこからつたはるひくいうめき。 ほろびたもののつぶやきを。 いづくにか起る葛藤を。
星かげもないくらい夜が なま身をよせながら それをきく。 僕といつしよに。
世界のうつりゆく しのびやかな足音は、 鉤爪(かぎづめ)をかくした猫の やはらかな蹠(あしうら)。
僕の胸は引き裂かれて 鮮血をながす。 人間世界の底なき崩壊の その沈黙のとゞろきに。
あゝ、十九世紀が あえかにもゑがいた夢は、 人間をふるい信仰からひき出した。 貝から身をぬくやうに。
そしていたたましい二十世紀は はだかでふるえてゐるのだ。 どんな思想も、約束も もはや、人をあたゝめはしない。
僕らはひきずり廻される。 どこといふあてもしらずに。 なぜといふ質問に 返答をきくひまもなく。
ピザがこはれ ウインナが火になつたときく。 日夜、からまつの林のうへにみおくるのは 東京を燎原(れうげん)にするために ひしめいてゆくボーイング。
だが、今夜は、それもきこえぬ。 披露におちこんだやうなしづかさだ。 おとしものをしたやうな からまつ林。
そのうへの 二日月。 闇の舌先でとろけた 金環----ねむたさうな細目。
【金子光晴/詩集『蛾』より】
|