◆ ◆ ■_教壇日報ナイショ版_■ ◆ ◆

2006年10月23日(月) **中間テスト終了**

先週、中間試験が終わった。気にかかっているのは、前から何度か出ている成績不振の生徒のことで、どう考えても今回のテストはこの子には難しすぎるのだ。今回の出題担当の先生から原案が出た段階で、何度かもう少し簡単にして欲しいとお願いに行ったのだけれど、ほとんど変更してもらえず、私の教えているクラスにはかなり高度なテストになってしまった。今回の作成担当の先生のクラスは成績の良い生徒が揃っているため、ある程度、難しい問題にしないとやる気がなくなってしまうという理屈は理解するけれども、それを他のクラス、特に私の担当しているクラスのように得点が伸びない子達も同じ問題というのはかなり厳しい。もっとも、違う問題にしてしまうと最終的に内申点を出す際に不公平になってしまうので、これは仕方ないことなのだけれど、卒業単位を満たしていない生徒がいるので、今回ばかりはなんとかしてもらいたいというところだったのだ。

当人はどうかと言うと、テストの1週間前を切った頃にやってきて言った。
「先生、今からだと何をやっておけば赤点になりませんか」
今さら何を言うのか…と、ひどく脱力したし、今からなんとかなるような甘いテストではない。私は2学期が始まった段階で、授業中に、中間テストは難しいと再三に渡り口を酸っぱくして繰り返してきた。そしてそれを真剣に受け止めた生徒達は、かなり早い段階から授業内容の復習を完璧にして来ている。それでも不安になって、いくらなんでもそれは出ないよ…と私が思っている部分まで必死に勉強している。それに比べて、この卒業見込みも出ていないこの子は、この始末なのだ。まあ、この、良く言えば大らかな、悪く言えば自己認識のできない性格だから、この事態に陥っているわけなのだけれど。また、こういう甘えた言い方をする生徒というのは、毎年、必ずいて、その度に私は腹を立てながら、「とにかく範囲をできるだけやりなさい」と言うのだけれど、こう言うと、「もう今からやってもダメだ」と諦めてしまう子がほとんどなのだ。でも、まさかこの子の場合は諦めていられる身分立場ではないので、できるかぎりやってくるだろうと期待し、少なくとも30点は取って来るだろうと思っていた。ここで30点を取ってくれれば今の段階で卒業見込みが出るのだ。

そんなことを思って迎えたテスト当日。テスト問題を作った先生が各クラスに質問の受付に言って戻ってくるなり、私のところに来て言った。
「シェディルさん、ごめん。今回、平均点が赤点かも」
えーっ、冗談じゃないと焦る私。でも、まだ試験時間は20分も残っているので、ここからきっと頑張るだろうと心の中で応援しながら答案が戻ってくるのを待った。そして答案が戻って来たのを見ると、きちんと埋めてある答案がほとんどで、残りの20分で一気に解答したらしい。よかった、頑張ったんだね、皆。そしてまずは前回のテストでのトップ3を採点してみると、全員が90点以上だった。よかったと一安心し、次に、本当に心配で不安なあの子の答案を採点してみた。問題作成担当の先生も、1学期末に平常点はつけなくていいと言った先生も心配でやって来た。この子の答案は非常にあっさりとした答案で、半分以上が白紙状態だったので、すぐに採点完了。得点は24点。これではまだ卒業見込みが出せない。部分点をあげるにも書いていないのではどうにもならない。本人もそのことは十分に承知していることだし、その上での努力不足は明らかだ。なので、これはもうどうにもならない。教科主任と学年主任に報告すると、あとは課題を出して最終的に平常点を限度枠いっぱいまであげてなんとか卒業させましょうということになった。でも、それでも次のテストでは、過去3回のテストでも取ったことのない高得点を取ってくれなくてはならないので、実のところ非常に不安なのだ。

でも、明らかにこの子には難しすぎる問題だった。こう言ってしまっては何の解決にもならないのだけれど、この子には授業で使っているテキストは難し過ぎるので、恐らくは何をやっているのか全く理解不能だと思われる。前にも書いたことだけれど、この子の学力レベルは、この学校の高校での授業内容にはとてもついていけない。それが最高学年まであがってきてしまっている裏には、他の生徒達と別の課題を提出させることによって、それを平常点として評価したことの結果なのだ。つまりは他の生徒と違うことをしてきて、それを認めてもらうことで他の生徒と同じ扱いで進級してきているわけなのだけれど、その無理と歪が限界まで来てしまっている。卒業するには次の最後の試験で43点も取らなくてはならないのだけれど、昨年や一昨年、この子を教えていた先生達が言うには、この子は30点以上は取ったことがないのだそうだ。なんとかしてあげたいとは思うし、学力だけで生徒を評価するつもりはないけれど、それでも同条件で評価しないと他の生徒達がかわいそうだしで、板挟み状態になっている。本当はもっと早い段階で他の学校に行っていればよかったのだろうなあと思う。私の勤務先は中学もついているのだけれど、中学から高校にあがる際に、成績不振で落とされることがないため、こういうことは確かに起こりうるのだ。ただ、本当にここまで大変なことになってしまうことは少ないらしく、今まで聞いたことがない。

この生徒は、卒業後の進路のための出願も、卒業見込みが出ていないので何もできないでいる。確かに卒業後の進路は大切だということはよくわかるけれど、その卒業のハードルは、ちゃんと他の生徒と同条件で乗り越えるべきだと思っている。確かに高校時代は通過点の一つに過ぎないけれど、通過して初めて先が存在するものだ。そう思うので、ここはしっかり自力で努力して頑張ってほしい。ずるい手段は使わないけれど、頑張るなら毎日でも補習するつもりではいる。私のやる気とか親切心ではなくて、このクラスを担当してしまった以上は、この子に対しても責任があるので、なんとしても卒業はさせてみせる---と思っている。



2006年09月29日(金) **課題**

1学期の成績に1をつけた生徒は、前の日記に書いた通り、私が来るようにと言っていた日には課題を取りに来なかった。でも、後日、取って行ったらしいことは新学期が数日過ぎてから知った。たまたま廊下ですれ違った時に、彼女が声をかけてきたのだ。

「先生、課題、今やってるから待ってて。なるべく早く出すから」

本来なら新学期が始まってから最初の日に出してしかるべきものなのだけれど、出して来ないので、やっぱり持って行かなかったのだと思っていたのだ。私の机の上に置いておいた課題が残っているかどうかで、持って行ったか持って行かなかったかがわかりそうなものだけれど、机の主が不在の時は他人が勝手に使っているというのが私の職場の悪習で、机の上に置いておいたものは、その際に本棚の上にまとめて置かれてしまってそれっきりになるか、またはなくなってしまうということになることがよくあるのだ。なので、生徒との課題のやりとりに非常に迷惑するのだけれど、このことはまた後日。
とにかく、私が机の上に置いておいた課題がなかったので、また誰かがどこかに置いてしまってなくなったのか、ちゃんと持って行ったのかどちらかなのだが、本人が持って来ないのでなくなったんだと思っていた。なので「あーあーホントにどうしようもないなあ」と思っていたのだ。だから、今やっているという言葉は、ちょっと遅いけれど、まあ良い材料として受け止めた。そしてそれから3週間。待てども待てども出ない課題が、ようやく提出された。

「どうだった?面白かった?」

この課題は実は高校受験のための復習用の教材なのだ。なので、この範囲だったら考えこむこともなくスラスラと解けて楽しくやれるだろうという意図で選んだ。

「今までのよりは解きやすかったけど、でも、難しいところもありました」

そうか、どれどれーと昼休みにおにぎりを食べながらチェックしてみた。

−−−このレベルでもダメなんだ…

語順整序なんて本当にメチャクチャで、主語しか合ってない。動詞とか目的語とか全く理解していないということがよくわかった。高3になって初めて受け持った子なので、まさかここまで理解できていないとは思わなかった。よくこんなレベルでここまで上がって来たものだと、過去の担当者のワザに感心した。きっと、進級できる最低限の得点分の出題箇所を教えてそこだけ覚えさせて点を取らせるという荒技に出たのだろうなあ…。
問題はこれからだ。今度は卒業がかかっているので、何が何でも得点してもらわなくてはならない。小テストも行っているけれど、この子の得点率は、良くて2割、平均1割というところ。この小テストは前回の内容をそのまま出題しているので、丸暗記で得点できるものなのに、この有様だ。しかも使っているテキストは語法問題が中心なのでとにかく暗記して知識を増やすという性格のものなので、やればとれるの典型なのにだ。せめてこういうところで努力を示して他の先生達の理解を得て平常点を大盤振る舞いして得点を取らせるしかないと思うのだけれど、その材料もない。仕方ないので、せめて毎回、毎回、大量に課題をやらせるしかないなあ…と気が重い。この子に対してだけは特別対応しなくてはならないっていうのは、はっきり言ってかなり面倒だけれど、やらないわけにはいかないし。
でも、何をやらせればいいかがまた問題で、もっともっと簡単なレベルというと何があるだろう…。中学2年生くらいのレベルだと思うのだけれど、いっそのこと中2の教科書でも覚えてもらって文章構造に馴染んでもらおうかとも考えている。でも、そもそもこのレベルの子を卒業させてもいいのだろうか…と、非常に根源的な疑問が生まれてきてしまって、本当に頭が痛い。



2006年07月13日(木) **1学期成績「1」確定**

答案返却日に学校に行ったら、1枚の紙が置いてあった。
「著しく成績の悪い生徒がいたら、すぐに担任および学年主任にご連絡ください」
そうかすぐにか。すぐに担任のところに飛んで行った。答案並びに1学期にずっと行ってきた小テスト25回分の成績と得点率、クラス内順位という資料を持って。
「石橋さん(仮名)のことなんですが、こんな得点で(答案用紙を見せる)、小テストの結果もクラスで下から2番目。得点率も4分の1以下なんです(教務記録を見せる)。平常点をつければ評定が2に上がるのですが、この小テストの成績で見る限り平常時の努力が見られませんので、平常点をあげることはできません。ですので、評定が「1」になってしまうのですが、それでよろしいでしょうか」
担任の返答。
「いや、よろしいでしょうかと言われれば、担任としてはよろしくないですと言いたいところですがね。でも、昨日も本人と話しましたので、わかっていると思います」
今回の試験を作ったのは学年主任で、部分点の相談に何度か行っていたので、石橋さんの得点はすでに学年主任は知っている。平常点をつけないようにと私に言ったのもこの学年主任なので、すでに話が行っているようだった。
「でも、もし進路の関係で2学期中に動かなければならないようなことがあるんでしたら、卒業証明が出ないと困るでしょうから、補習をするということで考え、学年主任とも相談してきますが」
「いや、まだ何も聞いてないんです」
ここで、担任との話は終わり、私は石橋さんのいるクラスの答案返却に向かった。

返却後、クラス全体が静まりかえってしまい、それぞれが思う得点が取れなかったんだなあということが伝わってきた。平均点は前回マイナス1点なので、それほど変化はないのだけれど、ここで頑張って評定をあげようとしていた子達が思う成果を出せなかったのだろう、いつもなら喋っている子達も沈黙している。石橋さんの様子が気になって、観察するでもなく見ていたところ、本を読んでいる様子。終わったら話さなくちゃならない。クラス全体に夏休みの課題の指示をし、起立・礼の後、廊下に石橋さんを呼んだ。
「平常点をつけるつもりはないので、「1」になってしまうんだけれど、それで大丈夫?2学期に動かなければならない進路を考えているなら、何か手段を講じようと思うけれど、どう?」
「いえ、まだ何も考えてないんです。昨日、担任からも言われたし、今日もこれから面談なんです」
「そう…。じゃあ次は頑張って卒業できるようにしようね。夏休みにやっておいてもらいたい課題を渡したいから、昼休みに来てくれる?それをやっておけば、2学期からの授業も、もっとよくわかるようになるから」
「はい、わかりました」

そして成績入力。小テストの成績を見ながら数人の子達に平常点をつけた。公平で良い成績処理だと思うのだけれど、やはり「1」という評価が気になり、再度、学年主任のところに行く。
「先生、本当に1になってしまうんですが、大丈夫なんでしょうか。進路に影響が出るんじゃないかと心配で。補習をしてそれを平常点として考慮することにしようかとも思うんですが」
「ああ、いいですいいです、そのままで。それに、他の科目でもあるから」
私の科目だけではないのか…と、少し肩の荷が下りたような気持ちになったけれど、それでも私はこの時期に「1」をつけるのは初めてなので、とても気になって仕方ない。でも、やっぱりやっぱり真面目に努力していた子達の姿を見た後でもあるし、石橋さんだけに平常点をつけることはできない。それに石橋さんに3点の平常点をあげるとしたら、一番頑張っていた子達には15点はつけてあげないと不公平になる。でも、平常点の上限は5点なので、考えれば考えるほどそんなことはできないという気持ちになる。

この平常点なのだけれど、学年を通しての平均点に対してさらに5点までの上乗せができるという仕組みになっている。つまり、仮に5点の平常点をつけるとしたら、毎回毎回の試験に対して5点の上乗せをしたということになる。そう考えると、とても易々とつけられるものではない。私がつける時は、1回か2回、失敗したことで評定がさがってしまう場合。その場合も、失敗しなかった試験の得点の平均が基準を上回っていることが条件。そうでなければ、3年生に限って平常点としてつけた分の2倍(中間試験と期末試験それぞれに上乗せしたことになるので2倍する必要がある)を、2学期の試験の得点からマイナスするという形をとる。ただ、いずれにしても努力しているという姿勢が見られる場合のみで、無条件の数字合わせのようなことはしないことにしている。

昨年度、石橋さんを教えていた同僚に伝えたところ、「かわいそう」という反応と、「すごくいい子なんだけれど」という反応が返ってきた。この同僚はプリント課題をやらせて平常点をあげた温情派。確かにかわいそうだし、いい子なのかもしれないけれど(そこまでの判断材料はまだ持たない)、努力を示さないのではどうにもならない。他の生徒と同じ土俵である程度、勝負してくれないと、他の頑張っている子達がかわいそうだ。

私は1日中、嫌な気持ちで過ごしていたのだけれど、なんともばかばかしい幕切れになった。昼休みに課題を渡したいから来るようにと指示していたにもかかわらず、来なかったのだ。忘れたのなら放課後に来ればよいものを、最終下校まで待ったけれど、ついに現われなかった。忘れて帰ってしまったのか、故意に拒否したのかわからないけれど、つまりは、その程度にしか考えておらず、真剣になんとかしなくちゃという気持ちがなかったということだ。なんだかつくづくバカみたいだった。本人にとってはその程度のことだったのか…。学年主任は石橋さんが1年の時から見ているので、さすがはよく知っていたんだなあ。



2006年07月08日(土) **学期末試験採点中―「1」になっちゃう生徒**

期末試験中。私の担当科目の答案は全て出揃い、地道に採点作業中なんだけれど、高3の1学期の評価が「1」になってしまう生徒が一人いて、頭を悩ませている。っていうか正確には、半分はホントに頭を悩ませ、4分の1は怒り心頭、4分の1は裏切られたような寂しい気持ちというところかな。あれほどやっとけって言ったのに…どうしてやらなかったんだろう、できる問題だってあったのに。
3年生は平常点を5点まであげることができるので、上限いっぱいをあげれば辛うじて「2」になるので、「2」になるかもしれない可能性がないわけではないのだけれど、でもなあ…。平常点っていうのは、あくまでも平常時の活動に対して与えられるものだから、例えば、普段はすごく頑張っているというのに今回はたまたま悪かったとか、体調不良なのに無理して出てきていて(追試になると得点が2割減になる)平時の実力を出せなかった、とか。とにかくは平常時の評価というのが原則だからねー。
この生徒の場合、私が毎回やっている前回の内容のテスト(そのまま出題)の得点率は2割台だから(クラス平均は6割5分)、いかに平常時からやってないかということがありありとわかる。クラス内ではビリから2番目の得点率なのだ。つまり、全く復習をしていないということで、その累積的結果が今回の期末試験の点数という形になってクリアに表れたということだ。
この時期、何故「1」ではマズイかというと(いつだって「1」はまずいんだけど特にね)、高3の1学期までの成績で卒業見込証明書が作られるからなのだ。、それを使って生徒達は大学の推薦や専門学校の推薦に出願していくことになるんだけれど、ここで「1」という評価があると卒業見込を出せない。つまり2学期末になるまで進学活動ができないということになるのだ。本当のことなので、きつい言い方になるけれど書けば、こういう底辺の生徒は入学試験に対応できる学力は持っていないので、推薦という手段を使わなければ進学はまず無理だ。そして2学期中にはほとんどの大学や専門学校の推薦の出願が締め切られてしまうので、この時期に微動だにできないというのは、大変なことなのだ。
この生徒は今までも成績会議にひっかかりながら、担当の先生方の恩赦のような形でここまで上がってきたのだけれど、この最終段階でこんなことになってしまっているのは、全く反省がない、甘え以外の何物でもないと思われてもしかたない。他の生徒達は、今回の成績までが内申点に関わるので、力を振り絞って真剣に取り組んでいるので、この努力不足の生徒にだけ特別に内申点をあげるなんてことはできないし、やりたくない。ただ、その場合、この生徒の卒業後の進路を考えると、大いに範囲が狭められることになってしまい、どこにも進学できなくなることも可能性としてはとても高いという点にひっかかっている。そんなこと当人は十分にわかってるんだから、やりゃあいいのに、やらないのが悪いんだけど…。
学年主任の先生に話してみたら、平常点をやらずに「1」のままでいいと言われた。この学年主任もこの生徒を教えてきているので、この生徒の実情は十分に把握した上での返答だ。そうきたか…じゃあいいかな、と思ったけれど、担任としてはそうではないだろうなあ。昨年度、この生徒を教えていた他の先生達にリサーチしてみたところ、特別課題を与えて出させることで平常時の活動として評価し、平常点を与えてきたということだった。納得はしたけれど、同時に、その温情がこの生徒にはマイナスに働いているということも感じた。試験ができなくても、先生がくれるプリント2〜3枚やって出せばなんとかなるのだということをこの生徒は経験によって学んでいるため、試験そのものに対する真剣さが足りないということなのだ。でも、そんなのって明らかにズルだ。
今の私の気持ちでは、平常点はあげない方向で行こうと思っている。ただ、まだ担任と話していないので、それによっては大どんでん返しが起こっちゃうかもしれないんだけれど…。


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by  シェディル



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