酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEX|past
2007年10月17日(水) |
『瓦礫の矜持』 五條瑛 |
身に危険を感じた時に一般人は警察を頼る。しかし、警察官全てが思うような対応をしてくれるとは限らない。警察機構の中でも弾き出され捨てられてしまう存在もある。警察に対して様々な怨念を持った人間達が復讐の名の元に新たな事件を引き起こす・・・。んーなんだかやるせない。警察って正義の象徴だと思うケレドモ、警察組織の人間全てが正しい訳ではない。私も一度警察の安全課のオジさんの発言にいやな想いをしたことがあるから。清濁併せ持つが人間だろうケレドモ、願わくば少しでも正しい位置に近ければいい。この物語は登場人物があまりにも多すぎてまとまりに欠ける気がした。もう少し削ぎ落とせばもっともっと面白かったろうになぁ。でもこの切り口はヤッパリ面白いと思う。女性がこれを描くってことがスゴイことだわ。
『瓦礫の矜持』 2006.6.25. 五條瑛 中央公論社
五條瑛さんの物語を読んでいると、いかに自分が甘やかされ恵まれて生きてきたのか思い知らされる。今、日本は多国籍化していて多くは密航してきている。全ては金のために・・・。必死に足掻くように生きる意味を私は知らないものなぁ。なんだか心が痛かった。
『上陸』 2005.4.25. 五條瑛 講談社
2007年10月15日(月) |
『ヨリックの饗宴』 五條瑛 |
耀二は甥っ子の裕之が可愛くて仕方なかった。裕之の父親であり、自分の兄である栄一が虐待の末に裕之の足に障害を残して失踪した。それを負い目に思う耀二は兄を忘れてしまいたかった。しかし、兄を探さなければならなくなった。兄はいったい何をしたのか? 兄を探せと様々な人間が耀二に接触をはじめたのだった・・・。
これはね、本当に面白い。これを読んだから私は五條瑛さんを追いかけてみたいと思った。政府機密に関わること・・・ってのは正直壮大すぎる気がするのだケレドモ・・・血の絆や葛藤や愛憎ってのが痛いくらいによくわかるの。これはオススメなんだよなー。
『ヨリックの饗宴』 2003.9.15. 五條瑛 文藝春秋
2007年10月09日(火) |
『模倣犯』 宮部みゆき |
塚田真一は家族を殺された原因が自分にあると苦しんでいる。早朝、犬の散歩に出かけて犬の嗅覚がトンデモナイものを嗅ぎつけてしまった。女性の手・・・だ。望まない騒動に巻き込まれてしまう真一。前代未聞の連続殺人事件の果てに真一が見出すものとは・・・!?
『模倣犯』に登場したジャーナリスト前畑滋子が新刊に登場しているらしく気になりつつ、再読してみた。6年前に読んだ時には激しく興奮していた記憶がある。今回は気持ちを抑えて物語を俯瞰するように読んでみた。それが良かったらしく、大勢の登場人物をそれぞれにキチンと読めた気がする。これが10年以上前に書かれたものなのだからアラタメテ恐れ入った・・・。事件を起こす犯人の異常性や残虐性が被害者と被害者の家族を苦しめる。話題は一過性のものでも残された被害者の家族の苦しみは終らない。それでも生きていかねばらなない。その重苦しさにものすごく考えさせられた。前も今回も被害者の家族である有馬のじっちゃんの人間の奥深さには魅了されまくった。あんな重厚な人間になりたいものだと。有馬のじっちゃんと真ちゃんの交流は心温まった。泣けるくらいに。
「本当のことは、どんなに遠くへ捨てられても、いつかは必ず帰り道を見つけて帰ってくるものだから。だからいいよ。俺は俺でーこれからの自分のこと、考えるから」
『模倣犯』 2001.4.20. 宮部みゆき 小学館
2007年10月04日(木) |
『ぐるぐる猿と歌う鳥』 加納朋子 |
やんちゃな少年・森(しん)は小学五年生。父の転勤で東京から北九州へ引っ越してきた。社宅のお隣さんに心と書いてシンという同い年の少年がいた。彼のニックネームはココちゃん。女の子みたいだ。まるで違う言語のような方言にとまどいながら森はココちゃんや新しい仲間達と仲良くなっていく。中でも不思議な少年パックはものすごく謎めいた存在で・・・!?
たまらなく素敵な物語v 私の嗜好にドンピシャだった。田舎で少年少女たちがドタバタやっている。それだけで心がぽかぽかしてきちゃう。登場するアイテムもスッゴクいいの。あっと驚く暗号やギザ十に消えた美少女。それらがバラバラだったのに最後に見事に集結させてくれて素直に「ほー」と感動。ミステリーランドを読める少年少女たちは幸せだね。
守り通される秘密には、それだけの理由と、確かな重みがきっとある。
『ぐるぐる猿と歌う鳥』 2007.7.25. 加納朋子 講談社
2007年10月03日(水) |
『陰陽屋へようこそ』 天野頌子 |
東京都北区王子の王子稲荷神社の近くの古いビルに陰陽屋がオープンした。母のみどりが興味を示し、瞬太は店に足を踏み入れた。そこにいたのは長髪の美青年・安倍祥明。成り行きでアルバイトをはじめた瞬太は祥明のホストまがいの接客に振り回されていく。
ドタバタと軽めに物語が進んでいく。その中にフワリと温かいものに触れることができて、なんだか嬉しかった。こういう温かな人情コメディってのは時代を超える気がするなー。祥明と瞬太のコンビにはまた会いたいものである。
『陰陽屋へようこそ』 2007.9.10. 天野頌子 ポプラ社
2007年09月28日(金) |
『メタボラ』 桐野夏生 |
ココニイテハイケナイ・・・そんな強迫観念で逃げ惑う<僕>には記憶が無かった。偶然出逢ったやはり逃げている俺をジェイクと呼んでくれと言う男からギンジと命名される。妙な男ふたりの旅が始まった。一緒に女の家に転がり込むも、いつしか別れるふたり。そして再会した時に・・・
いやはやこれはなんと言っていいのやら(お手上げ)。桐野さんの作品を読む時にはアル種の覚悟がいる。たぶんおそらく綺麗にまとめてはくれないから。なんやそれ!?的なエンディングに何度突き放され放心したことか。んで今回は覚悟を持って挑むも・・・あのあっけないラストにはヤッパリ参っちゃったなぁ。そらないぜー。なんと言うか逃げる男の今と過去をフラッシュバックさせて見せるロードムービーのようだった。ウマイはウマイ。限りなく力がある。でもやっぱりなんか呆けると言うか奪われた感が残る。悲しいんだよなぁ。
僕は薄闇の中で、額の汗を拭った。僕の脳味噌がまたも蠢きだしたのだ。何と薄気味悪いことだろう。僕は自分自身を持て余して、溜息を吐いた。
『メタボラ』 2007.5.30. 桐野夏生 朝日新聞社
2007年09月27日(木) |
『片耳うさぎ』 大崎梢 |
蔵波奈都は崖っぷちにいた(精神的に)。諸事情で父の実家に居候しているのだが、父は仕事のことで奔走し、母は自分の親の具合が悪くなり看病に行ってしまった。・・・奈都は居候している屋敷にひとりきりになってしまうのだ。あんな古くて大きな屋敷にひとり。親戚や御手伝いさんがいるものの、居候の身としては頼る人もいない。そんな奈都に助っ人が現れた。その人はトテモ美人な‘さゆり’さん。中学生のおねぇさんの‘さゆり’さんは奈都には頼もしい存在になるはずだったのだが、実はコノ‘さゆり’さん・・・
にゃはは。可愛い小学生とお騒がせな中学生の美少女が古くて大きなお屋敷を探検するの! なんとまぁ魅力的な設定であろうか。想像してドキドキわくわくしちゃったわ。無条件にスキ。想像の翼が思う存分に広がった〜。この大崎さんて作家さんは外せないなぁ。もう少し毒があってもいいのだケレドモね。でもまぁこの作家さんの持ち味はハートウォーミングだろうから。
行けそうで行けない。拒絶されているようで、くやしいような、もどかしいような。手を伸ばせば届きそうなのに、ここからはどこにも通じていない。
『片耳うさぎ』 2007.8.25. 大崎梢 光文社
2007年09月24日(月) |
『聖なる黒夜』 柴田よしき |
柴田よしきさんの小説をハジメテ読んだのは『RIKO』だった。ハードな女刑事にメロメロ。正直、作者が女性だとは知らなかった頃のこと(笑)。そのまま柴田作品を読むようになり、練ちゃん(山内練)に出会った。練ちゃんは美形のワルで男でも女でも喰っちゃう見境の無い淫乱魔人。なのに何故だか魅力を感じてしまった。その練ちゃんがそんな練ちゃんになってしまった人生を壮絶に描いたのがコノ『聖なる黒夜』だー! 夜中にふと練ちゃんに逢いたくなって久しぶりに読み返した。読み返してドップリその世界にはまり込んでいた。練ちゃんってのは悪に染まったからこそ美しく映えてしまった。ごくたまにそんな奴がいる。不思議だよねぇ。それにしても麻生さんて生粋のマゾだよねぇ・・・。
「おまえらの関係は、いびつ過ぎる」
『聖なる黒夜』 2002.10.5. 柴田よしき 角川書店
2007年09月22日(土) |
『退職刑事』 永瀬隼介 |
刑事とか先生とか、その昔、聖職と言うイメージだった。それが昨今では聖なるイメージは地に墜ちている。そういう立場にある人のスキャンダルは人の目を引き、叩きやすいから気の毒と言えば気の毒。特に警察の不祥事は世界一安全な国という神話すら自分の手で崩してしまっている。すごく残念。 この『退職刑事』は様々な理由で退職した元刑事たちの物語。人間臭くてやりきれないものが多かった。なんだか胸に痛かった〜。やるせないなぁ。一番面白かったのは「神隠しの夜に」だった。日本独特の背景と事件。あったかもしれない事件だ。悲しい事件。真相を知らずにいたほうがいいこともあるように思ってしまった。
「生徒たちが、都会からやってくるホラー映画や怪談話に盛り上がっているのを見ると、背中を押してやりたくなりますよ。周りの山へ行ってみたらいい。生身の人間による怖い話がいっぱい転がっているから、と」
『退職刑事』 2007.8.10. 永瀬隼介 文藝春秋
|