日々逍遙―この1冊、この1本、この1枚―
1冊の本、絵本、1本の映画、舞台、(ワインやお酒)、1枚の絵、CD。
散歩の途中に出会ったあれこれを…。

2003年06月19日(木) テアトロ・キズメットの「美女と野獣」

イタリアの劇団の子ども向けの作品。
2001年、テアトロ・キズメットと世田谷パブリックシアターが共同製作した作品だそうだ。
多治見市に隣接するK市に昨年オープンしたホールでの上演。
小ホールは適度な勾配があり、座席は正面の舞台を左右からは斜めに囲む形にできていて、床はフローリング。ここ10年ほどの間にホールの形状に対する配慮が一地方都市のホールにまでなされるようになったのだなぁ、とまずは感心。
おやこ劇場事務局で呼ぶ側の立場にいた頃の習癖で会場のキャパと入り、子どもたちがどんなふうに観ているかなど、主催者でもないのに、ついつい気にしてしまう。

「美女と野獣」字幕スーパーあり、イタリア語で上演。
俳優の動きは様式化され、また白塗りの顔は舞台上での役を象徴する仮面にも似た役割を果たす。型どおりの大道具はひとつもなく、野獣の居住空間であるハンモック3つが舞台の高い位置に吊されているだけ。時にそこに天井から床近くまで網状のロープか引き寄せられ、醜さを恥じ悶々とする野獣はその網にぶら下がりながらその身をよじり煩悶する。意地悪な姉二人のやりとり、その言葉の応酬の子細は字幕では追いきれなかったのであろう。でもそのリズムの楽しさが充分伝わってくる。またその動作も椅子にすわり脚の角度で表情をつけたり、父親が帰宅して再会を喜ぶシーンではこれまた椅子にすわったままフレンチ・カンカンを踊ったり、鍛錬された肉体あっての表現が随所に見られる。
視覚的にもとても洗練された舞台で、動作のひとつひとつが絵になっている。
はじめ白一色のドレスに素足であらわれたベラ(美女)は、頭の上に舞い降りてくる野獣の心の内を綴る手紙(赤い紙に書いてある)をはじめはおもむろひろいあげ、その内容に徐々に喜びを感じはじめると夢中で追う。舞い降りる赤い手紙を
狂喜乱舞しつつ追う白い美女。食事として用意された林檎は赤。野獣は獣性もあらわにものすごい勢いでそれを口にしては吐き出す。これもはじめはそろりそろりとでも、最後には野獣と同じように林檎を食べるベラ。
ベラが恋しくてたまらない野獣がプレゼントするのが赤い宝石を連ねたネックス、白いドレスに二巻きするベラ。次に深紅のサッシュベルト、最後に赤い靴。
白に赤が加わることで、野獣を受け入れるベラの心の変化を視覚に訴えかける演出の妙。
生の舞台の醍醐味を堪能させてくれた舞台だった。

http://www.kismet2003.jp/


 ←過去  INDEX  


みねこ

My追加