また、今年も熱い8月がやってきた。
かって、太平洋戦争時の戦場の記録を貪るように 読んだ時期がある。著者の身体の伸び縮みを感じる 過剰感情移入型か、正反対の史実列挙方が多かった が、大岡昇平の「野火」を初めて読んだとき、彼の 臨場感を保ちつつ分離した目で状況と内面を見尽く す、肝の据わり方に感嘆した。
良質なルポルタージュと感じたが、非常に乾いた タッチで、ねっとりと体に纏わりついてくる事は ない変わりに、ストレートに覚悟を突いてくる。 結局、人間を知りたいという欲求に響いてくるの だろう。
この季節に読み返したくなる作家の1人だ。 戦争の直接的な体験を持たないだけに、極限状況に おける覚悟の手ざわりを原初的な記憶として、身体 のどこかに刻み込んで置きたいのだろうと思う。
(Toshi)
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