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2003年07月08日(火) 透析患者さんの鉄剤の投与法

-「愛媛の人工透析を考える会」第9回(at松山日赤栄養室2003.6.28)-

慢性腎不全で透析を受けておられる方の約8割がエリスロポエチン製剤を使用している。そして造血には鉄が必要不可欠だ。
鉄をいかに補充するかで、エポ製剤の投与量を減らし、効率的に利用することが出来る。

(効率的・・・これからはそういった経済的な側面も考えてバランスのとれた医療を提供しなければならないし、患者さん側のニーズにも積極的に許す範囲で答えていかなければならないのだろう。でもそのためには患者さん側の参加も必要だと痛感するのだけど・・)
そういったテーマの元で、島松内科の島松先生の講演がある。

先生は開業当初から、週一回ブルタール40mgの投与のトライアルをされ、その投与法のほうが、欧米などで推奨されている、一回に大量の鉄を補充する方法より優れているという結果をまとめられた。
先生のところの実際の投与は、ほとんどが月2回・一回40mgのブルタールを静脈側チャンバーから1分以上かけゆっくりに静注する方法との事。
平均使用量67mgで、Ht30程度をキープできている。

十分なHtはどう設定するのか?
鉄過剰の状態は何で見分けるのか?(先生の目安はフェリチンで500だが、もう少し少なめでもいいかとの事)
C方肝炎の方に鉄材使用すると肝機能悪化の可能性もあり注意のこと、
保存期腎不全でも積極的に鉄材を使用したほうがいいとか、
臨床にただちに生かせるようなお話で、非常に論理的で感銘した。

又、日赤の満生先生の『慢性血液透析患者の鉄欠乏は何で判断するか』も、動的鉄動態の指標としてのCHr(網赤血球ヘモグロビン含有量)というものが炎症の影響も受けずに(フェリチンはCRP陽性だと上昇する)非常にこれから期待できると述べられていた。
ちなみに日赤でのデータでの指標は32とのこと。
あれだけ忙しいのにさらにこんな臨床的トライアルをする。やっぱりただ者じゃない!
ただしこの機械が高く1台2500万(!!)だって。

で、当院での投与法である。
自分はやはり週1回の鉄投与法を行っている。
TSAT(トランスフェリン飽和率)とフェリチンを指標に鉄剤の投与を変更しているが、この方法がある程度現在のスタンダードであることを確認できて、ほっとした。
TATA20%以下で鉄の増量を、フェリチンの上限値は現在は500くらいで設定していたのだが、400くらいに控えめにしようかな、と思った。

くしくも島松先生が言われていた。

開業してやっていると、裸の王様になったようで、自分のやり方が本当に正しいのかどうか不安になるので、自分の方法を世に問うために学会発表をしていると。
謙虚な言われ方で頭が下がるが、趣旨は同感だ。

こうやってシステマティックに日常臨床の場で考えながら、処方を変更してゆくというやり方が、本当に自分の中で確立しており、それをエビデンスとして還元できているのか、おまえは?と、また追い込まれてしまった雨の土曜日だった。


2003年06月17日(火) 腎機能障害における利尿剤の位置づけ

腎障害の進行を抑えるための、重要項目の一つに降圧というのがあるのはみなさんご存じのことと思う。
具体的には、135/85mmHg未満を降圧目標とし、尿タンパク1g/day以上では125/75mmHg未満を目標とする。
血圧というのは高い人ほど自覚症状がないので、いくら患者さんに言って聞かせても、
「わしゃ何ともない」、といわれてしまい、
「そりゃ何とかなったときにはもう手遅れなんやからがんばろうね」
とか、だましだまし、薬を飲んでいただくのである。

そこで、降圧剤の選択枝である。
レニンアンギオテンシン系阻害剤が、最近では第1選択薬(ACE阻害剤・ARB単独または両者の併用)になっている。
それで降圧が不十分な場合の第2選択は利尿剤。
第3選択はCa拮抗薬とのことである。

なるほど、という話だが、
ここで利尿剤の使い方についてのコメントが自分の勉強になったので紹介する。

体液貯留がある場合の利尿剤の使い方だが、
降圧作用がもっとも強いのはサイアザイド系(フルイトラン)だが、Cr2.0以上では優位の利尿が得られず、その場合は降圧効果は弱いものの、ループ系利尿剤(ラシックス・ダイアート)が有用とのこと。
K保持性利尿薬は高K血症の可能性があり、腎症患者には用いないとのことであった。

()内の利尿剤は当院での採用品目であるのだが、こういった使い方をするのだな、と、改めて認識し直した。
きっと専門の先生には当たり前のことなんだろうけど。

ちなみに、自分の患者さんのことになるのだが、腎保護作用とか、蛋白尿減少の意味で、ARB(ニューロタン)とか使っている人が数名いるのだが、なかなかいい感じである。
確かに蛋白尿は減少しているのである。

でも、当院では腎臓に関しては自分が診ており、
血圧は他院の内科とかで投薬を受けてる人とかが一番やりにくいのも事実である。
こうこういう理由でうちに一任して欲しいんですとか、なかなか言いにくいもんね。
難しいものである。

2003/06/17

(参考文献;CURRENT THERAPY 2001 Vol.19 No.10 p63-67 腎機能障害例,宇佐美武・木村玄次郎)


2003年04月07日(月) アダラートの舌下投与は禁止!

アダラートの舌下投与が禁止された!

 H14.10アダラートの舌下投与が、添付文書により禁止された。

 アダラートといえば、研修医の頃から御用達の薬で、
「なにっ血圧が高い」
「アダラート半錠舌下しといて」ってなもんである。緊急降圧剤の代名詞であった。
 
 では、なぜ舌下投与が禁止されたかというと、

 1.まず、舌下投与してもアダラート(製品名ニフェジピン)は実は、口腔粘膜から吸収されるわけではなかった。液が消化管まで落ちていって吸収されるので、経口投与とそんなに効果は変わらない。

 2.10mgカプセル投与によって、血圧が下がりすぎて重篤な事故が起こる可能性がある。

 では、どうすればいいかについて、ひとつの提案が載っていたので紹介する。

 10mgカプセルに細い針(25G)を刺し、最初の4滴を30ml程度の蒸留水に溶かして舌下すると、約3ml程度の投薬となり、過降圧になることはない、というものだ。

 また緊急時はそれほど頻度としては多くなく、日常診療では、ゆっくり降圧する方がのぞましいことから、わざと、短時間作用性の降圧剤(ペルジピンやカプトリル)を用いるとか、カプセルよりも血圧変動の少ないアダラートL(10mg)の使用が推奨されている。

 ちなみに自分は、よほどのことがない限り、アダラートL(10mg)を使用している。

 いろいろ細かいことが決められているが、自分みたいな古い人間には、肌に染みついた薬の使用法なので、なかなかぴんと来ないのが現状である。でもこんな事をひとつずつ頭の中で変えてゆかないと、いつまでもEBMから取り残された馬鹿医者になってしまうんだろうね。新しく始まる、ゆとりのある、きちんとした臨床研修に期待しています。

 参考文献 日経メディカル2002.12 p28-29.


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