会いたいんじゃなくて、あなたに合いたい
夢が足元でうずくまっているのに 声をかけることもできない 朝のプラットホーム 背を押す鐘 線路の切っ先 飛び散った、誰かの跡
部屋のすえた匂いが 町中に広がったら すべてが自分になる気がした ダンボールから咲き乱れる花 その養分である犬
いたるところに肉が落ちているのに 誰も拾うことはしない 骨付きじゃないとそそらないのだろうか
眺めるだけでは すべての事象が通り過ぎていくだけだ 手を差し伸べる そんな傲慢なことはしたくないけれど 透明な存在を 不可視の命を 少し愛おしく、見つめるだけで
世界に許してもらえるんだろうか
カーテンの暗さと 閉鎖した幾つもの野原 歩き回れるうちは良かった 空は青く、何所までも昇っていけると 信じていた
僕は灰色の村に生まれた タバコの煙が立ち込める森に ノイズが流れる谷に そこには、停止するであろう 僕らの未来もあった
乾燥した唇を どう潤すのか そんな問いを投げかける相手もなく こだまする 孤独な壁 蹴り上げた月 ダンボールの犬
部屋のひとすみだけが燃えていた 誰にも見えない光を あれからずっと、僕は抱きしめている
どこまでも空は青いのか 次の一歩が枯れてしまう 錆付いた一組の骨殻が 明日の僕なのかもしれない、この村で
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