妄想日記 

2002年02月28日(木) 最後の時(サクツカ)

「もうすぐだね」
隣で高史が呟いた。


今日は金曜日。
俺達が出演してるドラマの最終回の放映日だった。
キャッツのメンバーが映る、最後の日。
とうとう、この日がきた。


あっと言う間の三ヶ月だった。
12月に始まった撮り。ほとんど毎日木更津に通って、いつものメンバーにあって。
そんな繰り返しだったから、いつのまにか忘れてた。


始まりもあれば、終りがくることを。


クランクアップの時になってやっと気づいたこと。
毎日当たり前のように逢ってた高史とも、これで最後。
また明日から出会う前の生活に戻る。
俺は嵐のメンバーとしてアイドルとして、高史は俳優として別々の道を進む。
偶然逢えるとか番組で一緒になるなんて早々ないことだ。
もう、約束なしで逢えることは二度とない。


怖かった。
携帯もメルアドも聞いた。
毎日メールのやりとりしてる。
けど、これもドラマで一緒にやってるからじゃないか。
終ったら、自然となくなってしまうんじゃないかって、思った。
高校の時の友達と連絡取り合わなくなったように、高史とも繋がりがなくなってしまうんじゃないかって。
そう思ったら、すごく怖くなった。
だから最後の日、最終回を一緒にみようと約束した。
小さなことでも約束してれば、高史との繋がりは消えないって、思った。


「終っちゃうんだよなあ」
「・・・うん、そうだね」

終っちゃう。
その言葉が胸に突き刺さる。
あと少しで始まる。
これで本当に終ってしまう。
バンビとアニの、物語が。
俺と高史が出会ったキッカケになったものが、終ってしまう。
夢のようだった楽しい三ヶ月が、形もなく消えてしまう。


「でも、俺達はこれからだよね」

高史が俺の手をぎゅっと握りながら言う。
それに俺もぎゅっと握り返す。



そうだ。
バンビとアニの物語は終ってしまうけど、俺と高史の物語はこれからもずっと続いていく。
まだ始まったばかり。
まだ、三ヶ月しか一緒にいてないんだから。
これからもずっと、一緒にいるのだから。
だから、寂しいなんて思わなくていい。
不安になんてならなくていいんだ。
逢いたい時には逢えるんだから。
隣にはいつでも高史がいる。
これからも、ずっと・・・・・・




2002年02月27日(水) 呪文(純アニ)

俺が野球で有名になった頃から、兄貴は「アニ」と呼ばれるようになった。
誰が言い出したのかわかんないけど、気づいたら周りみんなそうゆう風に呼ぶようになってた。
最初の頃は「ふざけんなよ!」って怒ってたけど、最近では諦めたのかアニと呼ばれても何も言わなくなった。

俺は、それが気に食わなかった。

だって、俺の、俺だけの兄貴なのに。
俺だけが呼べるのに。
それが兄貴の仲間だけじゃなくて俺の周りでもそう呼んでるから余計ムカツイタ。
おまえらの兄貴じゃねーんだよ。
俺だけの兄貴なんだよ。
俺の、「アニ」なんだよ。


それを、あの仲間とか周りのヤツラに大声で言ってやりたかた。
けど兄貴が許すわけないし。
怒らせると後うるせえし。
それに、俺の兄貴ってのには変わりないし。
そう思って我慢してた。



けど、その日、兄貴がすっげ不機嫌な顔しながら帰ってきた。
田渕さんと出かけたから、また酔って帰ってくると思ってたから少し驚いた。
なんかブツブツ言いながら居間に入ってくる。
なんかあったのか?
そう思ったとき、兄貴と目が合った。

「純〜」
「なんだよ」
「オマエは俺の下の名前わかってるよな?!」
「はあ?」

突然何言い出すんだ。
兄貴の下の名前・・・・知ってるに決まってるだろ。
自分の兄貴の名前をわかってないやつなんているわけないだろ。

「だって、ぶっさんもマスターも答えないんだもん」

その時のことを思い出したのか、また頬を膨らませて怒り始めた。
どうやら、兄貴の仲間に下の名前を聞いたら答えなかったらしい。
なんだ、今でも「アニ」って呼ばれるの嫌だったんだ。
嫌っていうか、下の名前を誰も呼んでくれないから嫌なだけか。

「いまだに拘ってたんだ」
「つーか、誰も呼んでくれないっつーのが嫌なんだよ!」

まあ、そのキモチもわかる気がするけど。
俺も兄貴が高校生の時「佐々木の弟」とか言われてたし。
上級生とか高校入ったばっかのときはずっとそれで変に注目されててヤだったし。

「何、呼ばれたいの?」
「まあ、たまにはな」

そいえば、兄貴の彼女になる女でさえ「アニ」と呼んでた気がした。
誰もがみんな「アニ」と呼んでる中、俺だけが下の名前呼ぶのもいいかもしれない。

「じゃ、俺が言ってやろーか?」
「マジ?・・・でも弟に呼ばれてもなあ」

なんだよ、それ。
人が呼んでやるっていってんのにさ。
むかついたから、わざと呼んでやることにした。
しかも、ちょっとイタズラしてやろうと思った。
兄貴に近寄ると、耳元に顔を寄せて。

「兆」

兄貴にだけ聞こえるようにぼそと言った。
すると、兄貴は思った通りの反応をした。

「・・・・やっぱ呼ばなくていい」

顔を真っ赤にさせて言う兄貴に、してやったと笑った。






その日から兄貴の名前は、俺だけの特別な呼び名になった。
呼ぶ度に兄貴は真っ赤になって照れるから、時々呼ぶようになった。
兄貴の名前は誰も知らない、俺だけの呪文になった。



2002年02月26日(火) 願い(ぶっさんアニでシリアスでぶっさん視点で砂糖菓子)




医者にガンを宣告されて、仲間がいるとこに戻った。
そこで最初に見たのはアニの顔で。
「ぶっさん、どうだった」
少し不安な顔してるコイツ見て思った。




『俺が死んだら、コイツの涙誰が止めるんだ?』




自分が死ぬって聞いたときに、1番最初に考えたことがこれだったから、自分でも驚いた。
どうしようとか何しようとか考える前にアニの顔見たからってのもあるけど。
だけどその時から今もずっと考えることはアニのことで。
自分が何するってのを考えようと思ってるのに、気づいたらコイツのこと考えてる。


人一倍涙もろくてしょっちゅう泣いてる。
自分のことだと涙堪えるのに、人のことだとわんわん泣きやがる。
下手したら本人以上に泣くから、それに驚いてたりして。
母さんが死んだときも、俺より先に泣くから泣きやませるのに苦労して。
気づいたら涙なんて出なくなってた。
いつのまにか泣くのが苦手になってた。
泣くのがかっこわりいとか思うようになってた。
だからあの時も泣けなかった。
だけど、コイツが俺の分まで泣いてくれたから。
正直、助かってた。
救われてた。


目に涙浮かべてそれを隠そうともしないで泣くんだよ。
けど、俺が「泣くな」っていうと泣き止むんだよ。
目こすって涙止めようとして。
でも目に涙溜めながら、それでも俺に向かって笑うんだよ。
泣き笑いを浮かべる。
俺にしか見せない、俺だけに見せる笑顔。
・・・・・俺だけの、アニの顔。



俺が死んだら、誰がコイツの涙を止められる?
ずっと考えてた。
マスターもバンビも自分のことでいっぱいだし。
うっちーは謎だし。
仲間内じゃいねーじゃん!


そう思ったとき浮かんだのは、アニの弟の純だった。


小さいときからアニの後ついてきて。
アニを追って、小さいときから今でもずっと追ってて。
俺等が一緒のときなんかすっげ目で睨んできたりして。
わかりやすいくらいにアニを見てる純。
コイツになら、アニを任せられるような気がした。
アニもなんだかんだと純のこと好きだしな。
キッカケさえあれば、昔みたいに戻るだろうと思ってた。
だから監督の話がきたときはチャンスだと思った。
案の定、俺の思った通りになった。
まあ昔みたいにまではいかなくても、コイツラなら大丈夫だろうと思った。
これでアニは大丈夫だろ。
まあ正直寂しい気もすっけどな。







だけどきっと、最後の涙は止められそうもない。
俺が見る最後の涙。
俺のせいで流す、最後の涙。








だけど、それでも笑ってほしいと願う。
最後に、俺だけに見せる笑顔を向けて欲しい。
それが、無理な願いだってのはわかってけど。








叶わない願いだってのは、わかってるけど。









☆すいません、ぶっさんのおかんのは捏造です・・・



2002年02月25日(月) 八話での裏事情(サクツカ)

晴天が広がるここ木更津で、恒例となったキャッツメンバーで
台本読みが行われていた。
ただ、ちゃんとした本読みじゃなく五人で台本読んで語ってるだけなのだが。
誰ともなく台本を持ってきて話すうちに、恒例になったらしい。

「バンビ〜やってくれるよ〜!」
「なあ、うっちーの家でだもんな!」
「すげ笑える〜」

バンビ役の桜井を抜いた四人の笑い声が響き渡る。
本日手に持っているのは「第八話」の台本だった。
八話はうっちーの家が明らかになり、尚且つそこでバンビが童貞喪失という話になっている。
その部分がおかしいらしく、さっきから繰り返し読んでは爆笑していた。

「笑いすぎだっつーの!」

いい加減うんざりしてきた桜井が、半ば怒りながら言った。
桜井自身が笑われてるわけではないけれど、自分が演じてるバンビが笑われてるというのはあまりおもしろくないらしい。
「バンビは俺の分身」と言うくらいだから、尚更なのだろう。

「だって、初めてがこんなだぜ?」
「笑うしかないよな。俺翔がここやるとき絶対見てよう」
「あ、俺も〜」
「ふざけんな!絶対見せねー!!」

口々に言われて、桜井が本気で怒り始めたとこで、タイミングよくスタッフから集合がかかった。

「ま、がんばれよバンビ!」
「うっせ!早く行け!」

それに笑いながら、佐藤とW岡田がスタッフの元へ戻って行く。
今の撮りで出番のない桜井と塚本の二人が残った。

「いつまで笑ってんだよ」

さっきからずっと笑い続けてる塚本に、桜井は怒気を含んだ視線を投げる。

「だって、すっげ笑えるんだもん〜」

桜井の視線に気づいたのか、笑いを止めようとしたけれど止められなくて、顔は笑ったままで答えた。
桜井はそれにいっそう不機嫌な表情を浮かべると、塚本に背を向けて座ってしまった。
それに気づいた塚本はヤバイと思い、慌てて桜井のほうを向く。

「翔?」
「高史まで笑うことないじゃんか」

完璧拗ねたような声色に、さすがに笑いすぎたと反省した。
後ろから抱き付きながら、少し甘えた感じで一言。

「ごめんな?」

それだけで、桜井の顔が緩んでいくのがわかった。
この場合、桜井が単純だと言うべきか、無意識に甘えてる塚本をさすがというべきか。
しかしきっと、桜井と同じメンバーである松本なら1日口聞いてもらえないだろう。(「ひいきだよ、ひーき!!」とは松潤談)

「実はサ、モー子に嫉妬してたってのもあるんだよね」
「はあ?なんで?」
「だって、バンビと翔ってそっくりじゃん。そのバンビがモー子とヤッちゃうってのはさ。なんかヤダったんだよ」

バンビと桜井は分身みたいにそっくりだと言われている。
しかし桜井から言わせると「バンビのが子供」ということだが、周りから見たら「同じ」だったりする。

「そんなに似てる?」
「うん。ラブホにムードを求めたりすんのなんかそのものじゃん」

変なとこにこだわるしさ〜。
そう言われて、思わず赤面する桜井。
さらりと言われたが、結構すごいこと言ってます塚本。
それを本人気づいてないからタチが悪い。
言われたほうのが赤くなってしまうのも無理ないだろう。
顔を赤くしたまま黙った桜井を不思議そうに覗きこむ塚本に、軽く咳払いして話を続ける。

「けどさ、ムード求めんのは当たり前だろ?」
「そうか?」
「そうなの!だって、相手が高史だからさ」
「え?」

言われた意味がわからなくて、きょとんとする塚本。
その塚本の視線を真っ直ぐ受けとめながら、真剣な顔で桜井は言った。

「バンビも俺も、好きな子のことだからムードとか色々考えんだよ」

だからまあ、俺とバンビはやっぱ分身なんだろうけどね。
相手は違うけど、好きな子に対する姿勢は一緒だし。
やっぱどっか共感するとこあるしね。

「そっか・・・・」
「そ!安心した?」
「おう!」

笑顔を浮かべる塚本に、安心した表情を見せる桜井。
それでやっと話が終ったと思った。
(今回俺かっこよくねえ?)
桜井は密かに思った。



が、しかし。
やっぱり塚本のが強かった。




「じゃ、今度バンビ達に負けないように船揺れるくらいがんばろうか?」
「ええ!?」
「嘘だよ、嘘」




そういうと、桜井を残してスタッフのところへ行く塚本。
残された桜井は一人佇んでいた。




「あ〜あ・・・・やっぱ高史には敵わないや」



モー子に振り回されるバンビのように。
俺もずっと高史に振りまわされるのかもしれない。
それでもいいけど。
だけど、


「いつか勝つ!」



男桜井、これで何度目かの誓いをするのだった。




2002年02月24日(日) 「青春の過ち」(ぶっさんアニシリアス気味)


「だってぶっさんヤってる最中半端ない声出すもん」
「「「え!?」」」






やばかった。
ついぽろっと言っちゃって、みんなの視線感じて慌てて「本人が言ってた」ってごまかしたけど、やばかった。
もしかしたら、マスターは気づいたかもしれないけど。
妙に感鋭いし、勘ぐってるとこあるし。
ただでさえ、この前ぶっさんが「経験上わかるけど」とか言っちゃってヤバイのに。
それで俺の言葉だろ?絶対なんか気づいてるよ〜!!
だけど、俺の口から絶対言えない。


なんで俺がぶっさんの最中のこと知ってるのか、なんて。


バレたらヤバイってもんじゃない。
次の日から何言われるかわかんないし。
笑われるだろうけど、もしかしたら引かれるかもしんないし。
バンビなんか妙に潔癖なとこあるから、引くかもしんない。
そんなの絶対ヤダ。
だから、絶対バレるわけにはいかない。
あの時のことは、誰にも言えない。




俺とぶっさんが、ヤッちゃったなんて・・・・・・











高校卒業して間もないとき。
マスターはセツコさんが出産に備えて入院するからって病院につきっきりで。
バンビは大学入りたてで真面目に通ってたり。
うっちーは相変わらず謎で。
プータローなぶっさんと、就職したけど働くの面倒になって辞めた俺の暇人2人で「野球狂の詩」で飲んでた。

「どいつもこいつも忙しいってよ〜。どーせ俺等はヒマだっつーの!」
「そうだーヒマで悪いかー!」

ちょうど俺が家で「歩合制」とか言われてすげむしゃくしゃしてて。
それにぶっさんが付き合ってくれて、調子にのってすっげ飲んだんだよな。
それで暴れて飲んで。
気づいたときには、二人とも出来あがってた。
そりゃもう、わけわかんないくらい飲んでた。

「つーか、なんで俺等、野郎二人で飲んでるんだよ!」
「だって仕方ねーじゃん。ぶっさん今彼女いないじゃん?」
「アニだってつい最近フラれたばっかだろ!」

それから女の話になって。
高校んときに付き合ってた女はかわいかった自慢から、何時の間にか初恋の話になったりして。

「ぶっちゃけね、俺の初恋ぶっさんなんだよ〜」
「マジで!?」
「だってあの頃のぶっさん俺のヒーローだったもん」

あの頃、家が近くだったから物心ついたときには一緒に遊んでて。
ぶっさんはあの頃からみんなのリーダーで、いわゆるガキ大将だった。
俺は背はあったけど力とかあんまなかったから、隣の町内のヤツ等に喧嘩ふっかけられてヤラれたりして。
で、泣いてる俺見て「泣くな!」って言ってくれて。
ぶっさんが必ず仕返ししてくれてた。
あの時からぶっさんは俺のヒーローだった。
そんなヤツがそばにいたら、小さい時はなんも考えてないから純粋に「好き」とか思ったりしちゃうわけ。
だから、小学生になって隣の席の子に惚れるまで、俺の好きな人はぶっさんだった。

「なんで早く言わないんだよ!」
「だってオトコが初恋の相手なんて言えるわけないじゃん!」

恥ずかしいし、言えるわけないじゃん。
そう思ってたのに、今考えるとあの時言っちゃってるんだから意味ないじゃんとか思った。
そう、あの時言わなきゃこんなことにならなかった・・・・と思う。

「言ったところでどうにかなるわけじゃないし」
「バーカ。そんなことなら俺がかわいがってやったのに」
「うっそ!マジで?」
「あの頃のアニは女みたいだったし。実はかわいいとか思ったりしてたんだって」
「なんだよ〜。あの頃だけ?今は?」
「ん〜?・・・・今もかわいいよ」

そう言って、ぶっさんが俺にキスしてきたんだよな・・・
それに俺もうっとりして答えちゃったりしてさ!
そんで妙な雰囲気になって、気づいたら・・・・



「「マジかよおい!」」


二人素っ裸で目覚めて、隣にいるヤツ見て絶叫したんだよなあ・・・
酔った勢いとはいえ、さすがにこれはマズイだろうってことで。

「ま、まあ、酔ってたし!」
「そ、そうだよね!何かの間違いってことで!」
「「忘れよう!」」

固く誓い合って、別れたんだよなあ。



だけど、あの時のぶっさんとか覚えてるんだよね・・・・
俺を呼ぶ声とか、俺を抱きしめた腕とか。
それを思い出すたんびにすっげ顔熱くなって。
慌てて消そうとするんだけど出来なくて。
だけど忘れなきゃ!って思った時。




気づいたら、涙が出てた。


「なんだよ、これ・・・・・」


わけわかんなくなって、止めようしてるのに余計出てきて。
後から後から出てくる涙に、なんか悲しくなってそのままずっと泣いてた。





その時、ハッキリ気づいた。
今も、ぶっさんのこと好きなんだって。
恋愛感情とかそういうのじゃなくて、もっとこう・・・ぶっさんが1番大事で大切で。
だから、ああいう風になって今の関係が崩れるんじゃないかって不安で、泣いたんだって、気づいた。 







だから、絶対あの時のことは知られちゃいけない。
俺の気持ちと一緒に、ずっと封印しなきゃいけない。
あの時の秘密は、半分ぶっさんがあの世に持っていくから。
残り半分は、俺がずっと封印する。








ぶっさんが消えても、ずっと。
俺だけの思い出を抱えていくんだ。



2002年02月23日(土) 朝日を見に行こうよ(サクツカ)(糖尿病にご注意) 

木更津での撮影が延びたので、お馴染みのホテルに泊まって寝ていた。
部屋は五人まとめてだったりわけられたりするときがあって、今回は2人3人に分かれることになった。
そうなると部屋割りは決まって俺と翔で、あと3人って感じだった。
ベットに横になってしばらく話してたけど、明日もあるってことで早めに寝ていた。


カタン


物音がしたので起きると、窓際に翔が立ってた。
何、してんだろう。

「ゴメン。起こしちゃった?」

俺に気づいた翔が、申し訳ないような顔を浮かべた。
それにゆっくりと首を振って、俺も起きて翔のそばにいった。

「何してんの?」
「ん・・・日の出見ようと思って」

そういえばそんな時間だった。
木更津から見える朝日は何回見てもキレイで。
初めて見たのは今みたいに翔と二人部屋になって、色々話してたら朝になってて。
窓を見たら朝日が空いっぱいに広がってて。
二人ですごく感動したっけ。

「なんかさ、あと少ししか見られないと思うと勿体無いって思って」
「そうだね」

返事をしながら、悲しくなった。
あと少しで撮影が終る。
木更津に来るのも、朝日を見るのもあと少し。

・・・こうやって、翔と二人で見るのも、あと少し。






「けど、さ」
「ん?」
「また、いつか二人で朝日見に来よう」

伺うような声色に翔を見ると、視線は真っ直ぐ向いたままだった。
だけどその顔が赤くなってるのは、朝日のせいじゃないってわかった。
きっと、俺と同じように翔も寂しいって思ってくれてるんだって思ってもいい?


「うん、また来よう」

俺が言うと、翔は手をぎゅっと握ってきた。
それはまるで約束の指きりの代わりのようで。
俺もぎゅっと握り返した。








約束だよ。





2002年02月22日(金) タイムリミット(夢見るポエムです。危険地帯です。)桜井ポエム





12月から始まった撮りも、残りあとわずかとなった。
今目の前ではぶっさんやアニ達が盗みをやるシーンを撮っている。
この話ではバンビはモ―子のピンチに走り回っていて、キャッツのメンバーとは別行動している。
だから今は、俺の出番はない。
キャッツが楽しそうに演じてるのを、ただ見てるだけだ。
いつもなら入ってるはずの輪のなかに入れない。
アニの・・・・高史の隣にいられない。
あと少ししか一緒にいることが出来ないのに。
こうやって、一緒に演じたりふざけたり出来るのもあと少しなのに。






冬に出会ってから今まで、かなりの時間を一緒に過ごした。
もしかしたら、この三ヶ月間はメンバーよりも長い時間一緒にいたかもしれない。
ほとんど毎日撮影で、当たり前のように顔合わせて。
約束なんてしなくても、明日になれば逢える。
そんなキモチで過ごした三ヶ月間。
気づけばその当たり前の時間も残りわずか。
カウントダウンが近づいた今、1分1秒でも長くいたいのに。
出来るだけ長く、近くにいたいのに。
そんなキモチとは裏腹に、最終回が近づくにつれてバンビとアニのシーンは減っていった。
アニは監督業が忙しく、バンビはモ―子とデートに忙しくなるらしいので、バラバラの撮りが続く。
やっとキャッツで集合と思って楽しみにしてたのに、蓋を開ければバンビだけ別行動だったりアニがいなかったり。
おかげで待ち時間もあわなかったりが続いた。
残り時間は刻一刻とせまる中、出会うことが出来ないバンビとアニ。
俺の分身のはずが、俺の願う通りに動いてくれなくなった。









何やってんだよバンビ。









なんで、オマエはこんなとこにいるんだよ?









オマエのいるべきところはここじゃないだろう?










危なかっしくて無謀で泣き虫で。
そばにいないと何するかわかんない。
・・・・だからそこにいなきゃダメだろう?










人一倍優しくて仲間思いでバカなくせに人の気持ちには敏感で。
見てないと不安になる。
・・・・だから見てるものが違うだろう?












なあ、バンビ。
あと少ししかないんだよ?
時間が、ないんだよ?











なあ、頼むから。











俺を、高史のそばにいさせてくれよ。










高史の、そばにいたいよ。



2002年02月21日(木) 予告編シアター(サクツカと嵐)




今をときめくアイドルグループ『嵐』
毎日取材やドラマで多忙な毎日を送っている。
今日もあるレギュラー番組の撮りのため、某スタジオに集まっていた。


「大変だよ!!」


声と共にドアが開いて、最年少の松潤が入ってきた。
いつもゲンキな末っ子が、今日は息を切らしながら深刻な顔で登場したので、その場にいたニノも相葉も何かあったのかと真剣な顔を浮かべた。


「どうしたの、松潤!」
「も〜一大事!これ見て!」


見て、と言いながら出したものは、ノート型のパソコンだった。


「パソコンじゃん!」
「松潤買ったのかよ〜!」
「うん、卒業祝いに買ってもらったの」


いいでしょ〜と自慢げにパソコンを掲げる松潤。
それに羨ましく思いながら、でも松潤じゃ宝の持ち腐れじゃん!と思う二人。
(だって松潤バカだし)
声に出したらきっと松潤が「バカじゃない!」と頬を膨らませながら怒るだろうから、あえて声に出さずに心のなかで思った。
(そうなったら話進まないしね)
(うん。どうせ翔くんがやり始めたから興味持っただけだろうし)
(言えてる〜)
心のなかで思う二人。
この間会話は一切なし。
言葉に出してないのに何故意思の疎通が出来てるんだニノアイ!
きっと桜井翔ならこうつっこんでいただろう。


「で、何が大変なの」
「あ、そうだよ!これ見て!」


パソコンを立ち上げ、慣れない手つきでキーを打つ松潤。
予想通りの1本打法に、密かに笑い合うニノアイ(だからなんで言葉に以下同文)
それから数分。
やっとの思いでネットに接続し、お目当てのサイトに辿りついて顔をあげるとニノアイの姿がなかった。


「ちょっと!二人とも何してんだよ〜!」
「だってあの調子じゃいつ辿りつくかわかんないし」
「時間が勿体無いし。台本でも覚えようかなって」


二人とも、さらりとひどいことを言ってます。


「二人ともひどいよ〜!!」
「あ〜はいはいごめん」
「ニノ、それじゃすっごく心こもってないよ」
「やっぱりアイバちゃんにはなんでもわかっちゃうんだね」
「だってニノわかりやすいし」
「それに愛のせいでしょ?」
「も〜イチャイチャしてないでこれ見てよ!」


ほっといたらどこまでもいってしまうバカップルにストップをかけて、苦心の末に開いたものを見せる。
そこで気づいて、楽屋隅で台本を読んでる大野に声をかける。


「大野くんも見てよ!」
「なんで?」
「も〜仲間のことなんだから!たまにはつきあってよ!」
「なんで僕が・・・・・・」


心底嫌そうな顔を浮かべながら、それでも末っ子のお願いに嫌々席を立つ。


「ほら!」


画面左上、小さな画面の中に、桜井のドラマ共演者である塚本の姿があった。
どうやらドラマのおまけかなにからしく、小さな画面が再生のマークが出た途端動き出す。
塚本がカメラに向かって役名を言い、かわいいと言われて照れる。
そして、カメラマンに迫られて逃げるシーンが続く。
逃げて逃げて、逃げ切った(?)とこで映像はストップした。  


「・・・・」


見終わったのに、言葉もでないでいる三人。
ぼうっとしていたけれど、大野が立ちあがった時に出た音によって覚醒する。


「うっわ、何これ!?ヤバイよ〜」
「ね、ヤバイでしょ?」
「うん・・・・やばすぎだよ、これ」


アイドルが口を揃えてヤバイヤバイを連呼するのも無理はない。
画面のなかの塚本は本当にかわいく、やばかったからだ。
しゃべり方も意識してなのかいつもよりトーン高めでかわいく。
ソファに座る姿はちょこんとしててかわいく。
塚本に惚れてる人が見たら一発で昇天してしまいそうな代物だった(現に約2名、TとMは昇天されたとの情報が)


「昨日キャッツのHP見てて発見してさ、もうビックリして!」
「そりゃビックリだよなあ」
「でしょ!?絶対翔くんに見せてあげたいと思って持ってきたの!」
「うん、これは見せてあげたいよ」
「録画とか出来ないのかなあ?翔くん永久保存したいと思うよ、きっと」


うんうん悩みながら、一生懸命考える三人。
翔くん命!な松潤を始め、日々桜井をネタにしてるニノやおもしろがってる相葉も桜井のために悩んでる姿が微笑ましかった。
仲間っていいなあ・・・・・そんな言葉が似合う。
ちなみに、一人足りないと思ってはいけない。
彼はもうとっくに自分の世界に入っているのだから(爆)


「翔くんにこれ見せるの撮り終わってからにしなよ」


黙って聞いてた大野が珍しく発言したことに他メンバーは驚きつつ、しかしその言葉になんで!?とブーイングする。
三人で捲し立てられて、うんざりとした表情を浮かべながらため息を洩らす。


「これを見た翔君がどんなになるか、わかるでしょ?」


そう言われて、三人は想像してみる。
これを見た瞬間の翔くん。
見た後の翔くん。
・・・・容易に想像出来るのが嫌だ(松潤談)


「ね、ヤバイでしょ?」
「確かに、ヤバイね」
「アイドルの顔じゃなくなってるよ、翔くん!」
「まるで中年親父みたいな顔してるよ〜!!」


どんな想像したんだオマエ達。
本人がいたら雷どころか嵐が吹き荒れるであろうことを思い描いた三人。
しかし、その想像は三人とも同じだったということは、あながち間違ったことだということでもないということで。
それはそれはヤバく、撮りどころかアイドルの危機にまで繋がるのではないかと思われる。


「オレでさえヤバイと思うもん。翔くんが見たらどうなるか・・・」
「オレがなんだって!?
「「「!!!」」」


ビクっとして声のするほうを向くと、予想通り噂の人・桜井翔の姿があった。
ドラマの撮りが終ってきたのか、上機嫌だった。
しかし、ナイスタイミングともいえるその状況に、三人は成すすべもなく立ち尽くしていた。


「なんだよ、みんなして固まって」
「う・・ううん!なんでもないよ!」
「なんだよ、何隠してるんだよ」


後ろ手に隠していたパソコンをあっさりと見つけられてしまい、一気に血の気がひく三人。
なんとかいい方法はないかと考えるが、嵐の中で1番頭いい人を相手に三人が勝てるわけがない。
どうしようかと悩んでいると、隙をついてパソコンを奪われた。


「あ!」
「何見てんだよ・・キャッツのHP?なんでこんなの・・・・・あ、アニ」


アニ、と言われた瞬間もうヤバイと慌てる三人。
(や〜ば〜い〜!!!)
しかし、時すでに遅し。
パソコンからはさきほどの塚本の声が響いていた。


「・・・・・・・・・」


画面を凝視したまま動かなくなった桜井。


「翔・・・くん?」
「・・・・・」
「翔くんーー!!」
「・・・・・」


何度も呼びかけても応答なし。
心というより意識ごとパソコンに奪われたようだった。
いつまでたっても帰ってこないような気がして、青くなる三人。


「どーしよ!」
「大野くん!どうしたらいい?」
「知らないよ、僕は」
「そんな〜リーダー!」

だんだんと真面目にヤバいような気がして、泣き声になる3人。
松潤は目に涙を浮かべてる始末。


「あ!」


大野の声に振り合えると、桜井がパソコンを持ったまま立ちあがった。
復活したか!と喜んだのもつかの間。
パソコンを抱えたと思うとそのまま楽屋のトイレに入ってしまった。


「え・・・・?」


何がなんだかわからずに驚く三人。
パソコン持ってトイレ。
なんで?


「あ〜あ。1時間くらいは出てこないかもね」


ただ一人冷静な大野の声が楽屋に響き渡った。






余談。


翌日、相葉の携帯に塚本から電話が入った。

『翔にオレが出てるのとか見せるの禁止!』

なんで?と聞いても答えてはくれなかった。
だけど、電話越しの声がなんだかツラそうだったのは、気のせいだろうか?











☆ヤキモチ焼きな彼を持つと苦労するね、塚本さん!って話(爆)



2002年02月20日(水) 佐々木兄弟(純アニ)





新しい監督が決まったと顧問に言われてグラウンドに来てみたら、兄貴と兄貴の仲間が立ってた。
なんで兄貴が・・・?
朝出るときなんも言ってなかったのに。
そう思ったと同時に嫌な予感もしてた。
もしかしたら、新しい監督ってのはこの二人のどっちかじゃないかって。
兄貴も田淵さんも、チャラチャラしてるけど野球に関しては真面目だし、信頼出来る。
だからこの二人のどっちかが監督って言ってもおかしくない。

だけど。

オレの顔みるなり気まずそうに視線逸らす兄貴。
そっぽ向いたり・・・・・田淵さんになんか訴えたり。
それがちょっとむかついた。
この頃普通に、昔みたいに話せるようになったと思ったけど、こういうとこで逢うとやっぱ気まずいと思うらしい。

だけどオレは、そういう風に思わなくて。
気まずいっていうか、なんかくすぐったいようなキモチだった。
オレと兄貴がグラウンドに一緒にいるなんて小学生以来だし。
正直、嬉しかったりもした。
でもそれとこれとは別だ。
兄貴が監督・・・・
今目の前の顔を見ると、不安になるキモチもある。


「新しく監督になった佐々木です」
「はあ!?」


ぽかんとしてる兄貴に、諭すように笑う田淵さん。
多分、兄貴も自分が監督にさせられるって知らなかったんだろうな。
オレは予想してたことだけど。
実際聞かされると・・・嬉しいけど。だけど。

「ええーー!!マジかよ〜」
「マジかよ・・・・」

今のキモチを兄貴に被るように言葉に出してた。
だって、この目の前の情けない顔を見たら不安にもなる。
兄貴と一緒にいられるのは嬉しいけど。
嬉しいけど・・・・・大丈夫なのかってキモチがある。

「まあ、そんなわけだから」

兄貴はオレの顔をちらっと見たあと、少し不安げな顔を向けた。
それが、オレに向けられたのが・・・・少し嬉しかったりした

仕方ない。

頼りないけど、他に監督できるような人知らないし。
それに、形は違うけれど兄貴と同じマウンドに立てるのが嬉しい。
兄貴と一緒にいられるのが嬉しいし。
昔野球によって離れた心が、また野球によって近づいた気がした。


「まあ、よろしくな」
「ウス」

オレが返事をすると、途端に笑顔を浮かべる兄貴。
本当に嬉しそうな顔。
それをオレが引き出したのかと思うと・・・・すごく嬉しかった。



「よし、走れ!」


今まで情けない顔してたのに、自信満々に監督みたいな態度をとる兄貴。
それがなんか兄貴らしくて、オレは知らず顔がニヤけるのを感じた。







「純、オレを甲子園につれてけよ!」
「言われなくても連れていってやるよ」







2002年02月19日(火) 8話放映前だから出来る捏造(バンビ)

「映画おもしろかったね〜」


昨日モー子に電話して取り付けたデートの約束。
急な誘いだったのにオーケーをもらって、今映画を見た。


女の子とデートしてる。しかも好きな子と。


オトコとして、こんなに嬉しいことはない・・・・・ハズだ。
映画もおもしろかったし、モー子も喜んでるから良かったし。
オレ的にもすっげ楽しいはずだ。
好きな子と過ごせて、喜んでもらえて。
楽しい。
楽しくなければいけない・・・・・のに。


何故か心が落ちつかない。
ドコか遠くへいってしまったような気分だった。
体と心が別々になってしまったようだ。


本当はずっと気づいてる。

心は今どこへ向いてるのか。どこに行ってしまってるのか。
何に、奪われてるのか。


気づいてるけど認めたくなかったから、考えないようにしてた。
嫉妬なんてカッコ悪いって思ってる。
だから、モー子のことでぶっさんにヤキモチやいたときだって表には決して出さなかった。
出したら、負けを認めたようで、嫌だったし。
カッコ悪い自分を見せるのが嫌だった。


だけど、今は心のコントロールがきかない。
もうずっと、昨日のことで頭がいっぱいだった。


「野球部の合宿の手伝いに来てる」

この頃マスターんとこに顔出さないアニに、またなんかあったのかと電話したら返ってきたのがこれだった。
前回(3話)の件があったから、またトラブルに巻き込まれたんじゃないかとか、前回ぶっさんに電話したから今回はオレから電話して、オレがなんとかしてやろうとか思ってたのに。
アニの答えはこんなだった。


「聞いてねえよ」
「言ってないっけ?あ、ぶっさんには言ったんだ」


まただ。
なんで、なんでもかんでもぶっさんに報告するわけ?
前回のことといい、今といい。
なんでオレには電話しないわけ?
昔から、出会ったときからそうだ。
なんかあるとぶっさんぶっさんって・・・・・
そりゃぶっさんはキャプテンだったし?
なんか変に落ちついたとこあるから頼りやすいってのはわかるけど。


だけど、オレだっているじゃんか。


オレだってピッチャーで、頼れるエースだぜ?
いざってときには必ずやる男って言われてたし。

「なあ、・・・」
「兄貴、監督呼んでる」

アニ、と続けようとしたのを遮るように聞こえてきた声。
誰よりも憎たらしい。
誰よりもそこにいてほしくない。
オレの脳裏にその人物が浮かび上がった。

「純もそこにいるのかよ!?」
「そりゃいるだろ、野球部の合宿だもん」

さらっと言われて、言葉がでなかった。
頭ではわかってんだよ。野球部の合宿だからってのが。
だけど、気持ちは理屈じゃない。

「アニ・・・」
「あ〜もう行くわ。じゃ〜な」


ガチャン

ツーツーツー


オレは、電子音を発する受話器をただ見つめていた。
そして考えたときにはすでに電話のダイアルを回していた。



とにかく一人でいるのが嫌だった。
それに、アニといるよりモー子といるほうがいいに決まってる。
だから、楽しいはずのデート。



「ねえ、つまんないなら帰ろうよ」
「はあ?何言ってんの」
「だってバンビさっきからタメイキばっかだし。気持ち入ってないし。」


だけど、好きなハズの子からこんなセリフを言われた。
オトコとして最悪だ。


「そんなことないって」
「嘘!あたしにはわかってるんだからね〜」
「違うって・・・・」
「それ以上言うとホントに嫌いになるよ?」


怒ったような顔を浮かべられて、何も言わずに黙った。
きっと何を言っても無駄だと思った。
モー子は気づいてる。
オレが、もうモー子のことを恋愛対象として見てないことを。
いや、もしかしたら最初から気づいてたのかもしれない。
オレが、誰を見てるのかを。


少し沈黙が続いたと思ったら、ふいにモー子が笑いながら言った。


「アニが帰ってくるまでつきあってあげるよ?」


その笑顔に少しドキっとした。
今の気持ちを自覚する前の俺だったらすっげドキドキしてたと思う。


だけど今は・・・・
その言葉が嬉しいと思うだけだった。






オレがここまで思ってるんだ。
周りだって気づいてるんだ。
いい加減気づいてもよくない?
なあ、アニ。



2002年02月17日(日) 友情(ニノ&サク)





雑誌の取材でバレンタイン特集かなんかで、オレと翔くんは恋愛の話になった。
だけど語ってるうちに二人してマジ語りになってきちゃって。
さすがにヤバイと思ってスタッフが打ちきったけど、オレと翔くんは納まらなくなって終ったあとも翔くんの家で語ることになった。


「久しぶりだよな、こうやって話すの」
「うん、そうだね」


昔はよく二人でファミレスとか行っていろんな語りしてた。
恋愛話から嵐のこと、その他いろんなこと。
だけど今はお互い忙しくなって、あんまりこうやって改めて話すってことがなくなってた。
それに、オレは大好きな人が出来たから、その人に逢う時間を最優先してたからっていうのもある。
だから久々に翔くんと語ったら、昔を思い出したように止まらなくなってた。
翔くんと話してるのは楽しいし、お互い考えが似てるからかな?何を思ってるとかわかるから話しててラク。


それに、今は共通の『悩み』を抱えてるから。
恋という、悩み(なんってね!)


「さっきの続きだけど、翔くん塚本くんが好きならハッキリ言ったほうがいいよ?」
「簡単に言うけどなあ、ニノだって知ってるだろ、オレが好きな子には意識しちゃってぶっきらぼうになっちゃうの」
「だけどそんなこと言ってたらドラマ終っちゃうよ?もう逢えなくなっちゃうよ?」
「う・・・・・そうなんだよなあ・・・」


翔くんを悩ませている原因である「塚本くん」
ドラマで一緒になった彼に、翔くんは一目ボレしたらしい。
『らしい』ってのは、本人からハッキリ聞いたわけじゃないから。
ドラマの顔合わせした次の日、すっごくご機嫌な翔くんの姿にみんなで「なんかあったんだろう」って話してて。
それが「恋してるから」だって気づいたのは、しばらくしてから。
翔くんが出てるドラマをみんなで見てたらすぐわかった。
いっつもいっつも、目で追ってしまってる人がいるって。
その人ばかりを見てしまってるって。
少しあからさまなくらい、気づけば一人しか見てなくて。


「翔くん、わかりやすすぎだよ〜」


みんなで苦笑い浮かべてたりしてた。



だけど、こっそり思ってた。
オレも、その気持ちがわかるって。
一人しか見えなくて、その人だけを追ってしまうのが、わかる。
だってオレはずっとそうだから。
嵐が結成されてからずっと、ただ一人を見てたから。



「ニノはいいよなあ。逢いたいときにいっつも逢えるんだから」
「だけど、喧嘩したときなんかでも一緒に仕事しなきゃいけないからツライときもあるよ?」
「喧嘩!?オマエとアイバちゃんが?」


同じグループのアイバちゃんこと「ふみくん」
オレがずっと好きな人。
ずっと一緒で、例えグループ解散してもずっと一緒にいたい人。



まだ片思いしてた頃、翔くんにだけは自分の思いを告げてた。
あの頃は翔くんは本気で好きな人がいなくて、恋愛の悩みとかなかったから、いっつもオレの相談にのってくれてた。
そのたび翔くんは時々的外れなこと言うけど、話を真剣に聞いてくれるだけでも嬉しかった。
だからふみくんと両思いになったとき、真っ先に翔くんに報告した。


「良かったじゃんか!おめでとー!」


まるで自分のことのように喜んでくれた翔くんが、すごく嬉しかった。
だから、その時誓ったんだ。
翔くんに本気で好きな人が出来たら、なにがあっても応援するって。
そりゃ、ちょっとからかったりしてるけど(だって翔くんの反応おもしろいんだもん)
翔くんには、ふみくんの次に幸せになってもらいたいと思うから。



「じゃあさ、今度塚本くんのオフ聞くから、デートをセッティングするよ!」
「え!・・・・ってなんでオマエがそんなこと出来るわけ?」
「ふみくんが塚本くんの携帯NO知ってるから」
「なんで!オレも知らないのになんでオマエラが知ってんだよ!」



あ、ヤバイ。
なんか怒ってる・・・つーか、ヤキモチやいてる?
自分の知らないことを知ってるからって感じ?




だけど。
こーいうとこが、かわいいと思っちゃうんだよね。
幸せになってほしいと思うけど、ついからかっちゃうんだよねぇ。






「翔くんのために一生懸命調べたんだよ」
「ホントかよ・・・・・」
「ホントだって。翔くんとお似合いだと思うし。」
「・・・・そう?」
「うん。塚本くんいい人だし、オレ好きだよ。ふみくんには敵わないけどね」
「オマエ、ほんと相葉のこと好きだよな」




そりゃそうだよ。
世界で1番好きだし。






「とにかく、翔くんがんばってよ」
「イマイチ気持ちこもってない気がするんだけど」
「何いってんの!翔くんと塚本くんにはうまくいってほしいしさ。」








本気で思ってるよ。
だから、がんばれ。








いつか、ダブルデートが出来るといいね。



2002年02月16日(土) アニの憂鬱(バンビアニ)

今週中にヤル!と宣言したバンビは、次の日から今までが嘘のように積極的にモー子にアタックしていた。



「今日モー子とデートするから」


呼び出されて、一言言われて。
誰よりも真っ先に報告してくれたのは嬉しいことのはずなのに。
良かったなとか言おうとしたけどなんか言えなかった。


なんでだろ?


バンビはモー子のことずっと好きで。
だから実りそうな今、めでたいことなのに。
「おめでとう」の五文字が言えなかった。
喉でつっかかったまま、声に出せなかった。

「プレゼント買うのつきあってほしいんだ」

アニだったらそいうの得意そうだし。
照れながら言われて、いつもみたいにからかおうとしたけど出来なかった。
バンビの顔みたら、もやもやが増した気がした。
いつも通りにしゃべれなかった。





「なんか、変な感じ」
「何が」
「ん〜?なんっか変な気持ちなんだよ」



二人でマスターんとこ行く途中、ずっと感じてた疑問を口にしてみた。
バンビに言ったってしょーがないけど。
だけど、口に出したら余計なんか変な気持ちになった。
もやもやするような、なんかすっとしない気分。
理由はわかってる。


モー子とバンビが付き合う。


そのこと考えたらこうなった。
だけど、それがどうしてなのかわからない。







「変な気持ちって?」
「ん〜?なんかもやもやするような、気持ち悪いような・・そんな感じ」
「マジ!?」



オレの言葉にバンビは何故か嬉しそうな顔してる。
笑いながら鼻歌歌ってる。

「何嬉しそうな顔してるわけ?
「え?」
「人が気分悪くて悩んでるのにさ」
「ん・・オレの作戦が成功したかなと思ったら、さ」
「何作戦て」


別に、とまた嬉しそうに笑うバンビ。
オレがこうなってるわけをなんか知ってるのかもしれない。
聞き出そうとしたけど「別に」しか言わないし。
なんかふに落ちない。
だけど、こうやって二人で歩いてて、笑って。
バンビと話してたら、少しスッキリしたような気がする。






よくわかんないけど。



2002年02月15日(金) 五話ミニコント(バンビアニ)



(バンビホモネタでり盛りあがってるキャッツメンバー)
(バンビが怒って出て行ったあとひとしきり笑ったとこでアニの一言)


「なあ、なんでバンビがホモっぽいの?」







『うっわ、コイツマジで気づいてない?』
『笑ってるから気づいてるかと思ったけど、やっぱわかってなかったのかよ』




(こそこそと話し始めたぶっさん&マスター)



「なあ、なんで?」


(二人の会話に気づかないアニ)




『なあ、どうする?』
『もういい加減言っちゃってもよくねえ?』
『バンビ言う気ねえみたいだしな?』
『ここは一つ、俺等がバンビの為に一肌脱ぐか?』
『脱・童貞のためにもな』


「余計なお世話だっつーの!!」



「あれ、バンビ・・・お帰り」
「お帰りじゃねーよ!人のいないとこでこそこそ話してんじゃねーっつーの!」
「いや、俺等はバンビのためにだなあ」
「それが余計だっつーの!」
「けどよ、ハッキリ言わないとアイツ一生気づかないぜ?」
「・・・・・・・」
「な、ここはチャンスだし、なあ?」
「そうかな・・・・」

(ちょっとノリ気なバンビ)

「そうそう。そうしないとオマエ一生童貞のままだぜ?」
「だよな〜?ある意味貴重だけどな!」
「いや、化石に近いかも?」
「言えてる〜!!」




「何が?」
「お、アニ!いつから聞いてたんだよ?」
「バンビが一生童貞のとこから」
「え?バンビ一生童貞のままなの?」



「うるさいよ!ほっといてくれよ!」



(バンビ怒って退場)



「あ〜あ、完璧怒ったぞ」
「オマエが言っちゃいけないだろ〜」
「なんで?」



(まったく気づかないアニ)


「あ〜バンビが気の毒になってきた・・・・・」
「こんな鈍感なヤツにさあ・・・」







そして花火のシーン。



「やってやるよ!今週中にやってやるよ!」





けれどやっぱり今週も童貞のままだった・・・・・・



2002年02月14日(木) ちょっとビターな唇泥棒




毎年毎年、この日は憂鬱だった。



別にチョコが貰えないとかじゃく(木更津のエースピッチャーだぜ?貰えないはずないじゃん)仲間内で数を競ってるからとかじゃない。
そんな理由じゃなくて、もっと切実な悩み。



高校んときからこの日は嫌ってほど貰える。
それは食べきれなくて困るけど、確かに嬉しかった。
嬉しいけれど・・・・・・
1番欲しいヤツから貰えない。
毎年、毎年。
間違ってもアイツからは絶対貰えない。




片思いだからとか好かれてないとかそんなのもあるけど。
1番の理由は・・・・・・・

『オレもアイツも男だってことだよなあ。』

だから、例え両思いになったとしてもきっと貰えない。
オレだってアイツにチョコあげるなんて出来ない。
あの女の戦争真っ只中に入っていけるわけがない。



だけど、やっぱり欲しいと願ってしまう。
貰えないってわかってんのに、この日に逢いたいと思ってしまう。

「よ、バンビ」

いつもの場所にいくと相変わらずのいつものメンバーがいた。
オレに気づいたアニが寄ってくる。
それがいつもと違い上機嫌だったのが気になった。
この日に機嫌いいなんて、理由は一つしか思い当たらない。
チョコレート。
アニそこそこ貰ってたけど、こんなに上機嫌なのは大抵本命を貰ったときだった。
今年も、本命貰ったってこと・・・?
アニに今好きな人はいないと思ってたけど、もしかしたらいたのかもしれない。
とっかえひっかえだったから気づかなかっただけなのか?


頭んなかグルグルしてきた。
思いきって聞こうかどうしようか。
だけど聞かないままだったらこのままグルグルしてそうだし。

「今日機嫌いいのな。なんで?」
「あ、わかるか〜?」

ぐふふとアニが満面の笑みをするのに、やっぱり聞かなきゃよかったと後悔した。
だけど聞いてしまったからアニは答えるんだろう。
聞きたくないのに・・・・このまま耳を塞いでしまおうかと思ったときに、聞こえた答え。

「パチンコで七万儲けてさ〜」
「・・・・・は?」

パチンコ・・・・・?
パチンコで八万もうけて・・・・・
だから上機嫌で、笑顔?

「こんな日にパチンコだぜ?淋しいヤツだよな〜?」
「うっせーよ、マスター!・・・・で、景品もゲットしたからお裾分け」

そう言って、うっちーにポテチ、マスターとぶっさんには煙草を手渡していた。
そしてオレに手渡されたもの。
それは・・・・・

「チョコ?」

それはまぎれもなく、チョコレートだった。

「だって今日はバレンタインじゃん?」

だからってなんでオレだけ?とか色々聞きたいことはあったけど。
とにかく・・・・アニからチョコを貰った。
ラッピングもなにもないその辺に売られてるようなものだけど。
だけど・・・ずっと欲しかったもの。
それが、オレの手の中にある。

「なんだよ、別に欲しくないならいいんだぜ?」
「え!いるって!」

チョコを見たまま何も言わないオレにアニは欲しくないのかと勘違いしてチョコを取り上げ様としたのを慌ててしまう。

「ならいいけど、さ」
「つーか七万も儲けたんだからおごれってんだよなあ?」
「バッカ、これを元にもっと大きくしようとだなあ・・・」
「まだ懲りないのかオマエは!」

いつもの会話が聞こえてきた。
だけどオレは一人幸せを噛み締めていた。






☆おまけ
『バンビの顔見たか?』
『見た見た!すっげ嬉しそうだったよな!』
『なあ、なんでバンビにはチョコあげないといけなかったんだよ?』
『それは聞いちゃいけねえことなんだよ、なあぶっさん?』
『そうそう。とにかくあれでバンビはかなり上機嫌になったんだし』
『だからなんで上機嫌なわけ?』
『アニは知らなくていいの!』
『そのうちわかるからさ、な?』
『ああ、来月の14日辺りにわかるかもな?』
『はあ?わけわかんねえ・・・・』












アニから貰うならこうだろう!と思ってなんとなく書いてみたもの(爆)











2002年02月12日(火) 『バレンタイン」(亮ヒナ)

楽屋に入ると、村上くんが一人でおった。台本に目を通してるからか、俺に気づかんと黙々と読んでいる。
そういえば、横山くんがマンガ読んでると呼びかけにも気づかないと怒っていたなと思い出しながら村上くんの斜め前に座る。
すると、俺に気づいたんんか村上くんが顔をあげて俺を見つめてくる。その真剣な表情になんだろうと身構えたら。「亮ちゃん・・」と呼びかけてくるのに「なんですか?」と返したら。

「俺からのチョコ、欲しい思うん?」

なんやのイキナリ。
チョコって、なんの話なん?なんでイキナリ「チョコ」で「欲しい?」になるん?
わけわかっらん、と混乱してると、村上くんがポツリと話しはじめた。

「いやな、内が俺からのチョコ欲しい言うんよ」

で、なんでかあげることになったんよ、と苦笑しながら村上くんが言うのに、「ふうん」なんて曖昧に答えたけれど。
心のなかは「なんや、それ」という気持ちでいっぱいやった。
内が村上くんこと好きやのは知ってる。ハっキリ言われたわけやないけど。内の態度みてたらわかる。
村上くんに話かけられただけで嬉しいと感じてたあの頃。先輩で、あの頃は滝沢くんやすばるくんと仲良くて、自分なんか話しかけるのも躊躇ってた頃。
あの頃の自分と同じ表情を浮かべる内。それ見てたら、あの頃感じた気持ちが蘇えってきたりした。

精一杯、村上くんが好きだと思う心。

あの頃は純粋に村上くんが好きやった。横山くんとも今ほどツーカーでもなくて、特別な存在なんて感じなかったから、自分が好きでいてもまだチャンスがあると思ってたあの頃。
そのときの自分の気持ちに似たような気持ちを抱えてるんやろうなあ。
経験者は語る、でもないけど。内見てたら少し切なくなる。
その内が「チョコ欲しい」言うんの、よっぽど勇気言ったやろうな。
ヤキモチというより「がんばれ」と応援する気持ちのが強く感じるのは、やっぱ「戦線離脱」したからやろか?
村上くんを見つめてて、あの人は特別な相手以外には同じように・・・言うなれば「どうでもいい」ような態度とることを知ってから。村上くんの『優しさ』を勘違いせんようにしようと思った。
誰にでもああいう態度とるんであって、自分にだけやないぞと。村上くんの言葉一つに揺れるこころを抑えようと必死になってた。
だから、今の村上くんの言葉に揺れるわけがないと。そう思ってたけれど。この心の『揺れ』は否めない。
チョコ欲しい?なんて聞かれて、「欲しい」と答えてしまいそうな心。心をくれると言ってるわけではないけれど。それでも、「女の子から告白」するという特別な日に特別な人から欲しいと感じるのはしゃーないやん。

ああ、俺もまだまだ修行が足りひんな。思いながらも
「まあ、誰からでもチョコもらったら嬉しい思うんちゃいますか?」
なんて当たり触りない答えを返すと「そうなん?」なんて不思議そうな顔浮かべたあと。

「じゃあ、これ貰ってくれるん?」

言って、机の上に置かれたのは「チョコレート」
バレンタイン用に包装されたものではないけれど。この日にあげると言われたら立派なバレンタインチョコレートだ。
「なんやの、これ」
「ん〜?内用に買ったんやけど、一つだけ買うんも疑われそうやったから」
だから数個買ったから。亮ちゃんにもお裾分けしよう思った。
言われて、一瞬でも期待してしまった自分を馬鹿だと思いながら受け取る。
「くれるもんは貰いますけど」
自分への言い訳のように呟くと、「ありがとなぁ」と村上くんが呟く。
そして、「はい」と手にチョコを持って差し出す。
それに「はい」と素っ気なく言いながら、チョコを受けとる。



それは、かわいくラッピングされたものではないけれ。
今まで貰った何よりも『特別』だと、そう思った。


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薫 [MAIL]

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