1999年08月02日(月) |
事件中(結城&山根) |
山根が私服で登校してきた。 特に学校に対して反発してたわけじゃない。 それよりも教室の誰よりも学校に従順・・・というか、我慢してたと思う。 誰よりも学校に対して反発しなかった。
それなのに、なんで今になってこんなこと(しかもたった一人きりで)したのかわかんなくて、その日の夜に山根の家を訪ねた。
相変わらず兄貴はいないらしくて、山根一人だけのの空間。 それがなんだか淋しく感じながら、理由を聞いてみた。
「なあ、なんで私服で来たの?」
オレが聞くと山根は苦笑いを浮かべた。
「先生がさ、一人になっちゃう気がしてさ」 だから自分くらいは先生の期待を裏切らないようにしたと、そう言う山根。
まただ。 自分よりも他人のことを思ってしまう山根。 いじめに合いながらも兄貴のために学校に通う山根。 そして今も先生のために私服で登校する山根。
「オレも明日から私服で登校しようかな」 「え、マジで!?」
あまりにも山根らしい理由で、オレは苦笑いを浮かべた。 だけど、山根の理由も一理あるかと思った。 それに・・・・・・
「ああ。山根がいない教室なんてつまんないし、さ」
いつもいるはずの姿がない。 それだけで教室が違う空間のように感じた。
「そっか〜」 オレが言うと山根は嬉しそうに笑った。
1999年08月01日(日) |
職員室・出会い(近藤→山根) |
クラス替えをして間もないとき 、俺はいつものように体育館裏で煙草を吸っていたら、誰かに見られた。 偶然そこに現れたんだろうけど、まさか人がくるとは思わなくて俺も驚いたけど見た相手も驚いていた。 何か言われるかもしれないと思って、相手を睨みつけたけどそのことには何も振れなかった。 だけど、何故か馬鹿にされてる気がした。 口では何も言わないけれど、俺を見る視線がそう見えた。 オトナぶってる自分を見透かされてるような、そんな気がした。 「オイ」 何か言わないと・・・・・そう思って声をかけたけど何も言えず立ちすくんでいたら、相手は無言のままその場を去っていった。
それが同じクラスの山根だっていうのはしばらくして気づいたことだけど。 山根の家庭の事情とかそんなのが耳に入ってきて、それが自分より苦労してるらしく。 だからかもしれないけど、クラスの誰よりもオトナに近い感じがした。 体格なんか自分より細くて、弱そうなのに。 自分が早くなりたいと思ってるオトナに自分より近づいてるのが、余計むかついた。 あのときの視線は、やっぱり馬鹿にしてたんじゃないかと感じて、そんな自分が嫌でしかたなかった。 腹いせに山根をいじめたりしたけど、結局この気持ちは消えることはなかった。 絶対にアイツには負けないと、思った。
だけどあの事件のときの山根は誰よりも強くて。 何も出来ないでいる自分なんかよりも全然強くて。 完璧な敗北感を感じた。
けれど、認めてしまったらスッキリしてしまった。 そして急激に自覚した思い。
なんであの視線が痛かったのか。 山根に負けたくないと感じたのか。
それは、自分にはない強さを持った山根に惹かれてたんだ。 憧れとはまた違った思いで、山根に惹かれてた。 だから、負けたくなかったんだ。 ずっと、出会ったときからあの視線に囚われてたんだ。
近くに感じる今は、あの視線をずっと感じたいと思った。 これからも、ずっと。 あの視線に囚われ続けたいと、思った。
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