サク・・・サクッ
いつのまにか砂のような土になっている。 どれくらい歩いたのだろう? 「ねえ、まだなの?」 苛立ちを隠せない私はつい責めるように言った。 「こわいな〜もう少しだよ」 その子はおどけるように答える。 茶色の髪が風になびいた。 そういえば言葉が通じてる。 この子どう見ても異国の人なのに。 私たちの髪は黒。 多種族国家じゃないから、異国の人は珍しい。 そして、異国の人独特の言葉でもなく 流暢に話してくる。
「ほら、あそこだよ」
不意に聞こえた声。 その先に一人の人影が見えた。 逆光でその姿は定かではない。 「大丈夫?救世主様」 明らかにいやみが含まれている声。 「あの〜だれですか?」 ルウナの問いに答えず、そいつは言う。 「とりあえず、ついておいでよ」 私たちは仕方なくその声に従った。 こんなところにいてもしょうがないしね。
いきなり、ルウナが人の頭を叩いてくる。
「いった〜。いきなり何するのよ」 私は叩かれた頭をさすりながら睨む。 「ごめん。でも、痛いって事は夢じゃないよね」 ・・・。 「そんな事は自分の頭でやれ」 私はお返しに叩き返した。 「いた〜い」 「夢・・・じゃなさそうですね」 それを見ていた、セイアが呟く。 「で。どうしようか?」 私は被害に遭ってないセイアを覗き込む。 「どうしようといわれましても」
「へえ。本当にいたんだ」
えーと・・・。 とりあえず、状況確認?
見渡す限り赤茶けた砂。 砂漠じゃない。 遠くまで見渡せる地平線。 陸地だ。 蒼く澄んだ空。 ・・・。 「どうしようか?」 みんな唖然としている。 ・・・。 ・・・・・・。 沈黙。
「えいっ」
「う〜ん。カエちゃん?」
と、近くに2人が倒れているのに気がついた。 ルウナの方は気がついたようだ。 セイアはまだ、眠っている。 「どこ?ここ?」 相変わらずのとぼけ顔で聞いてくる。 「私に分かると思う?」 「思わない」 真顔で答える。 さすがのルウナも分かってくれたようだ。 「ね〜。セイちゃんわかる?」 と、セイアを起こす。 分かってないね・・・。 「え・・と。ここはどこ?」 セイアも呆然とする。 やっぱりこれが普通の反応だよね。
「う・・ん」
頭が重い。 何がどうなったんだろう? 夢? 朝? 瞼がゆっくりと開いた。 ・・・・・・。 な・・・に? 何処よここ? 広がる荒野。 赤茶けた岩。 何処までも続く地平線。 これも夢? 呆然として言葉が出ない。
ゆがむ・・・。
とっさに閉じた瞼。 それでも身体は得体の知れない浮遊感の中。 何が起こったのか? 光・・・ 闇・・・ 閉じた瞼の向こうに見える光景。 紅く乱れる華。 白く舞う雪。 蒼く離れる空。
そして− 暗く黒い闇に堕ちる。 これは・・・。 なに?
同じ夢だ。
それは確信になった。 「何?どうしたの?」 訳の分からないという顔をしているルウナ。 「同じ夢よ」 セイアが答える。 「そうみたいね」 私もそれに頷く。 「えーそうなんだ。珍しいね」 脳天気に笑ってるルウナにセイアが言う。 「珍しい?そんなモノじゃないと思うわ」 私もそう思ってた。 「紅い華」 つぶやいてみる。 「白い雪」 セイアが続ける。 「青い空?」 ルウナが最後にそう言った。
そして−
「『消しなさい』って声が聞こえるの ねえ?どう思う?何願望?」
「・・・」 それはまた、意味不明な・・・。 私と、セイアは言葉を失っていた。 「え〜どうしたの?」 ルウナが不思議そうに私とセイアを見比べる。 「えっと・・・」 「よくわからない」 やっと、返事を返す。 「そっか。でね、その後に。 華と雪と空と最後に 闇のイメージが・・・」
「!!」
「えーと確か、『死ぬべきだ』とか」
セイアは平然として言ってる。 「うわー。それはまた、すごい言葉」 私はそれを聞いて思ったままを口にしてしまった。 「そう言われてみればそうね」 やっぱり、セイアは平然と言う。 どういう神経してるのよ。 「でも、それならヒイちゃんの方が すごくないですか?」 それはそうかも・・・ 「私って、殺人願望でもあったのかな」 「だったら、私は自殺願望?」 私の言葉にセイアが繋げる。 どっちもイヤだ。 「ねえ、私の夢も聞いて」
ルウナがにっこりと笑う。
「ゆめ?」
と、以外にも二人同時に聞いてくる。 「そう、なんか変な声の聞こえる」 私は何気なく言ってみた。 「それって、もしかして・・・」 「どんな夢か教えて」 と、またも二人同士。 「えっと、たしか『殺さなければならない』とか・・・」 考えて言ってみると物騒な言葉だ。 「なんだ、違う夢か」 がっかりしたようなセイア。 「そうそう人が同じ夢見る分けないでしょ?」 私はあきれながら言った。 「ねー。セイちゃんはどんな夢?」
ルウナが聞いてくる。
「おはようヒイラ」
1時間目の休み時間。 戻ってきた私に、セイアが言った。 もちろん、嫌味たっぷりに。 「・・・。はあ。うんざり」 私は机に座りため息をつく。 朝から、良くないことばかりだ。 「ヒイちゃんが悪いんでしょ? 遅刻なんてするから」 悪意のないルウナの声。 そう、最近遅刻が多かったから さっきまで先生に怒られていたのだ。 「ふふふ・・。ま、そうなんだけど」 でも、あの夢の所為でもある。
「だって。変な夢を見たから」
つぶやくように言ってみた。
2002年02月15日(金) |
宿命〜さだめ〜 (月那・ルウナの夢) |
「いってらっしゃいませ」
メイドがいつも通り私を見送る。 「いってきます」 いつも通りの朝。 いつも通りの道。 でも・・・ イヤな予感。 心がざわついた。
「あの子ね」 「そうらしいな」 「・・・」 「ほうっておくのか?」 「どうしようもないでしょ」
彼らが何者か分かるのはもう少し後・・・
「道は開かれる 災いの星へと 死の行進を続け 新たなる者を生み出す」
2002年02月14日(木) |
宿命〜さだめ〜 (月那・ルウナの夢) |
「分かってる。起きるわよ」
そう言いながら体を起こす。 そうして、いつも通り学校へ行く準備。 それから食堂へ。 「おはようございます」 にっこりととお父様に挨拶。 「ああ、おはよう」 そして、無言のまま朝食をとる。
2002年02月13日(水) |
宿命〜さだめ〜 (月那・ルウナの夢) |
「お嬢様!!起きてください」
・・・。 ああ、いつものメイドの声・・・ 「お嬢様!!」 声が近くに聞こえた。 それでも、瞼は閉じたまま。 バサッ 布団がめくられる。 ・・・。 瞼はゆっくりと開く。 でも、頭の中は霧の中。 「いい加減に・・・」 ため息混じりの声。 ・・・。 あの夢を見たときはいつもこう。
2002年02月12日(火) |
宿命〜さだめ〜 (月那・ルウナの夢) |
ピルルゥ。 チルルッ。
ああ、鳴き声が聞こえる。 いつもの小鳥たちの声。 ・・・。 ユ・・・メ? どれが? 考えがまとまらない。 ・・・。 思考がゆったりと動いてる。 なんだっけ?
と・・・。 バタンッ
誰かが入ってきた。
2002年02月11日(月) |
宿命〜さだめ〜 (月那・ルウナの夢) |
「消しなさい」
それが何なのか。 私には分からない。 いつの頃からか聞こえる声。 頭の中で重く静かに響く声。
乱れ狂う紅い華。 舞い散る白い雪。 離れ翔ぶ青い空。
そして− 堕ち沈む黒い闇。
それはイメージ。 それはドリーム。 それは−
2002年02月10日(日) |
宿命〜さだめ〜 (星亜・セイアの夢) |
「それ拾ってください」
ゴロゴロと坂をオレンジが落ちてゆく。 私はそれを手にする。 そして、声の主に手渡す。 「ありがとうございます」 そういって、声の主は去っていった。 ・・・。何だったんだろう?
「なんだ、あなたも来てたの?」 「そりゃあね。興味はあるよ」 「そう・・・」 微かな微笑み。 「あの子も1人でしょ?」 「ええ・・そうね」 「楽しくなりそうだね」
彼らが何者か分かるのはもう少し後・・・
「歯車は動き出す 異界へと 伸ばされた手を取り 悲しみの海を広げん」
2002年02月09日(土) |
宿命〜さだめ〜 (星亜・セイアの夢) |
「行ってきます」
バタンと扉を開ける。 重い空が目に映った。 いや、別に曇ってるわけじゃない。 ただ、私の目にはそう見えた。 イヤな予感は拭えない。 そう考えながら、学校への道を歩く。 と・・・。
「スミマセン」
誰かの声が聞こえた。
2002年02月08日(金) |
宿命〜さだめ〜 (星亜・セイアの夢) |
「・・・セ・・・ア」
イヤな予感。 最近特に気になっていた。 鏡を覗き込みながらそう思う。 よく言う直感。 私はそれが冴えているらしい。 顔を洗い、タオルを握りしめる。 そして。 パンッ 顔を軽く両手で叩く。 「よしっ」 気にしていたらきりがない。 気合いを入れる。 が・・・。 今日は特に気になった。
2002年02月07日(木) |
宿命〜さだめ〜 (星亜・セイアの夢) |
・・・。
夢・・・。 ああ・・・ 夢なんだ。 頭の中がボーとしている。 どんな夢? 何の夢? 覚えていることは何一つ無い。 でも、またあの夢。 同じ夢だと感じる。 ・・・・。
起きなきゃ。 私は重たい瞼を開けた。
2002年02月06日(水) |
宿命〜さだめ〜 (星亜・セイアの夢) |
「死ぬべきだ」
それが何なのか。 私には分からない。 いつの頃からか聞こえる声。 頭の中で重く静かに響く声。
乱れ狂う華。 舞い散る雪。 離れ翔ぶ空。
そして− 堕ち沈む闇。
それはイメージ。 それはドリーム。 それは−
2002年02月05日(火) |
宿命〜さだめ〜 (茶華・チャカの夢) |
「す・・すみません」
とっさに謝る。 そして・・・ 「急いでいるので失礼します」 と、相手の顔も見ずに教室(学校)へ だって、こんなところでとまどってるヒマはない!!
「あーあ。行っちゃった・・・」 「クスス。しょうがないんじゃない?」 「そのようだね」 ため息が出る・・・。 「そのうち分かることだもの」 「しょうがない・・・か?」 「そう」
彼らが何者か分かるのはもう少し後・・・
「星は廻る 彼の界へと 救いの手を差し伸べ 血塗られた悲劇を繰り替えさん」
完全に遅刻・・・。
ベルが鳴り終わったのを聞きながらそう思った。 タッタッタッタ 私の足はそれでも、走り続けた。 先生が来る前に教室に入れれば、セーフのはず それに賭けてみる。
ドンッ
急に身体に衝撃を感じた。
・・・。 明るい・・・。 ふえ? ・・・あかるい? とけい時計・・・。 「!!」 げっ。遅刻する。 一気に目が覚めた。 慌てて身支度を整える。 あーもう!! あの夢を見た日はいつもこうだ。
PPPPP・・・・
・・・・。 目覚ましが鳴る。 えーと・・・。 寝ぼけた頭が動き出す。 何だっけ? 「うるさいよ!!いい加減に止めてよ」 誰かの声。 ・・・。 あー目覚まし・・・止めなきゃ。 ・・・。 あ、そっか。妹の声か・・・。 ・・・。うー・・・。 ねむっ。 そうして、また私の意識は沈んでいった。
2002年02月01日(金) |
宿命〜さだめ〜 (茶華・チャカの夢) |
「殺さなければならない」
それが何なのか。 私には分からない。 いつの頃からか聞こえる声。 頭の中で重く静かに響く声。
乱れる華。 舞う雪。 離れる空。
そして− 闇に堕ちる。
それはイメージ。 それはドリーム。 それは−
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