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2007年12月15日(土) 『モーツァルト!』(マチネ・井上ヴォルフ版)

[場所]帝国劇場
[座席]G列42番
[時間]1幕85分 休憩25分 2幕95分
[出演]
 ヴォルフガング:井上芳雄、アマデ:真嶋 優
 コンスタンツェ:hiro、ナンネール:高橋由美子
 ヴァルトシュテッテン男爵夫人:涼風真世
 コロレド大司教:山口祐一郎
 レオポルト:市村正親、セシリア・ウェーバー:阿知波悟美
 アルコ伯爵:武岡淳一、エマヌエル・シカネーダー:吉野圭吾
 池田 紳一、大谷 美智浩、小原 和彦、片根 暢宏、KENTARO、
 島田 邦人、砂川 直人、高原 紳輔、武内 耕、谷口 浩久、
 中山 昇、松澤 重雄、森田 浩平、横沢 健司、横田 大明
 秋園 美緒、石田 佳名子、碓氷 マキ、樺島 麻美、河合 篤子、
 後藤 藍、鈴木 智香子、徳垣 友子、鳥居 ひとみ、中山 旦子、
 松崎 茉莉杏、やまぐち あきこ
[演出]小池修一郎
[脚本・歌詞]ミヒャエル・クンツェ
[音楽]シルヴェスター・リーヴァイ
[指揮]西野 淳


<感想>
よかったぁぁぁ!
まさに「私の子は天才だ。天才は感じやすいものだ」だった。
あらゆることを感じすぎて、影響受けて引きずられすぎるが故に、
意識して生活を律さなければならないはずだった天才。
特に市村レオポルトがね、信じられないほどパパになっていて、
深く深く愛していることが伝わってくるだけに、
彼の行動一つ一つがヴォルフに与える影響が痛すぎて。

これほどまでに感じやすい器に、神の力は強すぎて、
人間としては生き永らえることはできなかったけれど、
けれど、この感じやすさがなければ、
神の音楽をそのまま譜面にすることはできなかったろうとも思う。
なんて不条理な、なんて残酷な神からの贈り物。

だから、アマデがきちんと冷酷だったのも嬉しかったな〜。
前回の誰だったか名前忘れたけれど、女の子アマデが、
可愛くって、表情豊かにヴォルフと遊んでいたりして、
えええ〜?!という感じがしていたので。
それでも、中川ヴォルフとだと合うのですが、
井上ヴォルフだと、これはどうなんだ?と思っていたので、
今回、冷酷なアマデと完成した井上ヴォルフの組み合わせが
観られたこと、最高に嬉しかったです。
でも、このアマデ、中川ヴォルフとは合わないだろうな(^^;;
今回、観られる予定がないので分かりませんが、多分。

何となくね、中川ヴォルフは、楽しんでるんですよ、才能を。
でも、井上ヴォルフは、苦しんでいるときも結構多い。
自分とモーツァルトを比べるなんて畏れ多いけれど、
時々、私、今現在の自分の状況を、
頭の中で言葉にしてしまっていることがあって。
舞台を観ているときに感想を言葉にしてしまっていることが
多いんですけど、それって、便利だし嬉しいけれど、
時々、素直に感じていないみたいで、すごく苦痛。
感情と言葉は違う。言葉にした時点で、何かが変わっている。
でも、無意識に、頭は既に言葉に変換し始めてしまっている。
悲しいのに、悲しんでいないみたいな気分。

頭の中で勝手にアマデが作曲しているのって、
もしかするときっと、それの、ものすっごく強力版なんだろう。
でも、それが苦しみであると同時に誇りでもあったから、
それが遠ざかり、「自分の力で」と言われて音楽を書くときは、
ものすごい絶望と苦しみが襲ってくるだろうと思う。

そんなものない方が、人としては絶対に幸せだろうと、
コロレド辺りは、理解しつつも憧れ嫉妬して止まないし、
父は、それでも何とか幸せをつかんでほしいと望んで止まない。
(多分、自分を律して、音楽家として成功する以外、人間として
それなりに幸せな道はなかっただろうと、私も今回は感じました)
ナンネールは、嫉妬と愛情の二律背反が強すぎるから、
もしかすると理解できたのは、彼の最期の後なのかなぁ・・・。
男爵夫人は、今回、何も分かりませんでした。
人間にしたいのか象徴にしたいのか、何を考えてるのか。
大体、存在感なさすぎて、時々忘れてたし(苦笑)
香寿さんの時期に観たかったなぁ・・・。それだけは残念。

でも、香寿男爵夫人は前半だったから、
その間に観た友人によると、コンスがひどすぎたから、
今回で「まだ」よかったんじゃないかという話も。
1幕の、特に再会シーンは、絶望しましたよ。
可愛くない〜!棒立ち!何をしたいか全く分からん!!
聞いていた以上にこれはひどい・・・と思っていましたが、
2幕は、結構観られました。「好きなのに」の切なさがあって。
普通の人がヴォルフの人生に巻き込まれちゃった感じかな?
それだと、墓場の場面が分かりにくくなるし、
あまり私好みではなかったけれど、それなりに理解できました。

とにかく、ヴォルフとアマデがよかったから、
そして、パパがものすごく成長していたから、
世界が仕上がった感じで、とても幸せな観劇でした。
もともと素晴らしいシカネーダーはそのままだったしね♪
もう一度観たいけれど・・・、一度観ると無茶苦茶疲れるから、
今回だけで、十分・・・、かな。うん。
ありがとうでしたー!


2007年12月11日(火) 『ライト・イン・ザ・ピアッツァ』

[場所]ル・テアトル銀座
[座席]8列20番
[時間]1幕70分、休憩15分、2幕55分
[料金]全席指定¥11,000−
[出演]
 マーガレット:島田歌穂、クララ:新妻聖子
 フランカ:シルビア・グラブ、ファブリツィオ:小西遼生
 ナッカレリ:鈴木綜馬、ナッカレリ夫人:寿ひずる
 ジュゼッペ:大高洋夫、ロイ:久保酎吉
 司祭:佐山陽規、平澤由美
 篠原正志、横山敬、右田隆、染谷妃波、中川菜緒子、
 一井優希、大貫杏里
[演出・訳]G2
[作詞・作曲]アダム・ゲッテル


<感想>
ビバ!島田歌穂!!
その一言で終わってしまっていいでしょうか(笑)
作曲の人が、リチャード・ロジャースの孫で、
音楽が綺麗だとかクラシカルだとか聞いていたのですが、
始まってみたら、「え?!」って感じ。
綺麗かもしれないけれど、むちゃ難曲っぽいし、
不協和音多いし、クラシカルだなんて、とんでもない!!

演出は、久しぶりにいいものを観たと思えたのですが、
訳詞家としてはG2さん、今ひとつだったようで、
「♪かが〜(息継ぎ)やいた〜」とかの、日本語として、
妙なところでのブレスや音の上下動が結構あったので、
歌穂さん、シルビアさん、綜馬さんクラスは歌いこなせても、
小西君には無謀な挑戦すぎた印象。
公演期間も半ばというのに、意味内容を理解するのに苦労するほどで、
しかも1幕に彼の長いソロが多いので、辛い状態で。

恋人の片割れ、新妻さんは、ファルセットは得意っぽく、
音楽としては美しい歌で、つい聞き流してしまうくらいでしたが、
歌い始めると腕が指揮者になるくらい演技を忘れていました。
そしてそれはつまり、G2さんが目指した、
「観劇後思い返してみて、あの言葉が台詞だったか歌だったか、
分からないくらい、歌が台詞の続きになっている」という意図が、
小西君同様、全くできていなかったということで。
他の人は自然だっただけに、メイン2人がそれなのはとても残念でした。


でも、とにかく主役はマーガレットだし!
複雑な事情を抱えた娘を、ひたすら守って生きるのみで、
夫との関係悪化にも目をつぶって暮らしていた彼女が、
障害の故に純粋な娘の恋に出会って、不安から、希望へ、
しだいに変化していく姿を見ていると、
いつからでも人生はやり直せるんだという気持が湧いてくる気がする。

息子のために、2人の結婚に寸前で異を唱えたナッカレリとの、
「♪歩こう」のデュエットは、2人の変化が自然に理解できてきて、
これはもう、ストレートプレイと呼んでいいだろうと思える
出来を見せてくれたのが印象的だったし、
エンディングのマーガレットのソロ!うわぁぁん、好きだ!
1幕の若者たちのたるさは、これで帳消しと言えるぐらいだったかも。


とにかく、演出と主演の勝利ですね。
外壁とも内壁とも見える丁寧に造られた石造りの壁に囲まれたセットが、
中に置かれるものによって、広場にホテル、美術館と如何様にも変わる。
優雅な動きでセットを取り替えるのはアンサンブルさんたちで、
街の人や司祭のような姿で、時に歌いながら演技しながら場面を変えるから、
暗転がなく、流れるように話が進んでいく。

舞台の奥半分は、綜馬さんが終演後のトークショーで
「釣り堀」と形容した大きな穴になっていて、そこがオケピ。
出演者たちは、その周りの、すれ違えないような細い通路や、
オケピからの階段を通って出入りするため、動きは制限され計算されている。
それが、現代的な音楽とクラシカルな話の間で、
何となくバロックなバランスを取っていたように思います。
そこに入り込んできた異邦人の、マーガレットとクララ親子。
途中、イタリア語の台本部分はイタリア語のままで進められ、
客席も置いてけぼりにされたのも、良かったと思います。

せめて、ファブリツィオが違ったらなぁ・・・。
個人攻撃はあまりしたくないけれど、
どうしてもそう思ってしまう、ほんの数点だけ残念な観劇でした。


2007年12月08日(土) 『テイク・フライト』

相変わらず、ネタバレありです。
しかも今回は、東京公演終わったからいいやとばかりに、
エンディングまでばっちり書いてるので、
途中までも少々やばいですが、「でも、話のつくりは」以下は、
ネタバレ嫌な人は絶対、読まないようお願いします。


『テイク・フライト』

[場所]東京国際フォーラムC
[座席]1階6列4番
[時間]1幕85分、休憩15分、2幕60分
[出演]
 アメリア・エアハート:天海祐希、チャールズ・リンドバーグ:城田優
 ライト兄弟:池田成志、橋本じゅん、リリエンタール:ラサール石井
 パットナム:宮川浩、小市慢太郎、坂元健児、今 拓哉、花山佳子、
 杉村理加、治田 敦、岡田 誠、華城季帆、菅原さおり、本田育代
[脚本]ジョン・ワイドマン
[作曲]デイヴィッド・シャイヤ、[作詞]リチャード・モルトビー Jr.
[演出・振付・訳]宮本亜門
[訳詞]森雪之丞
[音楽監督・指揮]デイヴィッド・チャールズ・アベル


<感想>
好き嫌いがあるだろうなぁと思う。
私個人としては、一番最近観たから比較してしまうけれど、
『ウーマン・イン・ホワイト』よりもずっと好きだった。

すごーく出来がいいとは言わない。
音楽も演出も訳詞も、まだまだたくさん課題はある。
特に演出は、ありがちだけれど、正面からの効果しか
考えていないものが多いうえに(私は見えない場面、結構ありました)
多分、遠くから観ていると舞台のわずかな部分だけ使って
せせこましく演技しているように見える部分が多いと思う。
でも、ただ「空を飛びたいな」という人類普遍の想いに、
いろんな個人の事情を重ねて、どこかしらに共感させ、
最終的に、切ないけれど希望がある気持ちにさせてくれたのは、
今の私に、何だか幸せな気分を与えてくれて。


音楽重視するなら絶対、『WiW』。
『テイク・フライト』は、ソンドハイムを思い出す不協和音多用で、
きっと歌いこなすのも難しいのだろうと思う曲が多いうえ、
歌っている姿が目立つのが、成志さん&じゅんさんコンビと、
説明役として出てきているラサール石井さんなので、
音楽的に、うっとりできる聴き心地とは言いかねます。
ちなみにラサールさんの役は、最初のうちは、
出過ぎずいいかなと思っていたけれど、観終えた感想としては、
「きっと、いない方が話がすっきりする」でした(苦笑)

私は歌は重視しないので十分楽しんだけれど、それでも、
リンドバーグの先駆者たちが次々と命を落としていく姿を、
ブラックにコミカルタッチで描いていく場面、
今さんと坂健が何度か出てきてパーッと歌い上げたとたん、
「そういえば私、ミュージカル観てたんだっけ」と、
いきなり思い出して苦笑してしまったくらいだから、
歌重視派が満足できるのは、宮川浩さんくらいじゃないかな。
パットナムのソロからアメリアとのデュエットに続く曲が
1幕にあって、そのソロ部分が、音楽的には一番感動でした。
城田君も、華があって目立つ分、結構いけてる。
天海さんは好きだけれど、歌は思ったより得意じゃないのかな?
特に問題はないけれど、後一歩、もの足りない感じで。


でも、話のつくりは絶対こっちの方が好き。
時間軸が3つあって、それが交互に出てくる感じのつくりで、
しかもその中でも過去にトリップしたりして、飽きさせない。
ライト兄弟が、有人飛行の夢を追って砂漠で試行錯誤を重ね、
挫折しては、また戻る姿を、コミカルに素朴に描き、
リンドバーグが大西洋横断飛行に挑戦している最中を、
その飛行中、眠くなったときに現れる過去の幻影を交えつつ描き、
アメリアは、自分が操縦桿を握ってもいないのに、
女性初の大西洋横断飛行士として人気を博したことに疑問を感じ、
プロデューサーから夫となったパットナムと意見を戦わせたりしていく。
そして最後、アメリアは「最後の飛行にする」と夫と約束した
世界一周飛行の途中で消息を断ち、リンドバーグはパリに到着し、
ライト兄弟のグライダーは飛び立つするところで終幕。

観終わって外に出てきて、わずかに赤くなり始めた空を眺めながら、
「空って、やっぱり、飛べたら気持ちいいだろうな」と思った。
でも基本的に、絶対に人間には許されていないことで、
独りで飛ぼうと思ったら、それ相応の、相当の犠牲が必要で。

広告にあった、「アメリア・エアハートが、
夢と希望をかけて大空に飛び立つ、愛と勇気の物語!」を期待すると、
ものすごーーーく違うと思います。
ただ、理由は違えど「空を飛びたい」という思いを持った人たちの物語。
それを金儲けに利用されてしまって、これは違うと感じたアメリア、
空になら、ただ「独りで」いられることに自由を感じ、
苦難の果てながら、飛んでいることに幸せを感じている最中の
(過去以外は、全編通じて横断飛行中です)リンドバーグ、
ただ純粋に「飛べたらいいな」の段階の、ライト兄弟。

夢を見ること、叶えている最中、叶ってしまった後。
最後の方で、叶ってしまって犠牲を払ったアメリアが、
飛んでいる最中のリンドバーグに、
「ずっと飛び続けて」と言う場面がありました。
それはきっと理想の状態なんだろうけれど、不可能。

いろんな夢があって、叶ったり叶わなかったりするけれど、
やっぱり、夢を見る幸せって、素敵なものだなぁと。
不安定な曲調が多い舞台だというのに、そんな気持ちを、
最終的に、切ないけれど爽やかな幕切れと感じたのは、
本当に素朴なライト兄弟を幸せに観ていたからなのかな?
何となく、そんな気になっていました。


2007年12月07日(金) お久しぶりです(^^;;

ちょっと、入院してました(苦笑)
いや、入院していたのはGWから3週間弱だけで、
その前後は体調を崩したり云々ってだけでしたが、
長期休職しているうちに金もなくなり気力もなくなり、
「観劇?それ何?」状態になっておりまして。

リハビリ期間を経て、10月から仕事には復帰したのですが、
以前より1時間拘束時間も長くなり疲れ果てていて、
平日に仕事して、休日はその疲れを取るため寝るだけの日々。
なのに疲れが取れないうちに、また月曜が来る。

リハビリ中に減ってきていた薬も、また数日前から元どおりだし、
本当に何をする気も失せて、ネット程度しかできない状態で。
生きるために仕事するならまだしも、
24時間365日、仕事のために体調維持することだけ考えて
仕事のために生きているなら、生きる意味って何?とか、
そんな気分になっていました。



が、いきなり、何か起こる時は起こるものです。
なんと半年以上ぶりに、自分で舞台のチケット買いました。
「明日の」という辺りが、まだまだ観劇おたくには遠いけれど、
本当に「独りで観劇」ができたら、何か少し変われる気がする。
実はこの半年にも、親族や友人に引きずられて
『マウストラップ』と『ウーマン・イン・ホワイト』は観たのですが、
自分じゃチケット取ってないし、強引に誘われなきゃ
上演されてることも知らない状態だったから。


なんで行く気になったかって、
たまたま、仕事で外に出ている時、電車で立っていたら、
前の席に座っていた人が広げていたパンフレットに、
「橋本じゅん」って書いてあっただけなんです。
この人の、地味に熱く燃える生真面目さが作り出す徹底した笑いは、
私にいつも、元気をくれるって、思い出して。
「もうちょっと頑張ろう、うん、人生って悪くない」って、
何だか、絶対に思えるような気がして。

このタイミングでこの人の名前が目に入るのって、
運命かなって気がしてきて、ぴあに駆け込みました。
久しぶりに自分からお金を払って観るのがこの人って、悪くない。
ちなみに、主演は天海祐希です。彼女も好きだし。演出、宮本亜門。
あと、成志さんとか、宮川浩さん出演。今さんや坂健もいたかな。
席はもちろん、ダメダメですけどね。前方だけど超端っこ。
たぶん見切れるところとかあるんじゃないかな。

でも、いい。じゅんさんパワーが欲しいんだもん。
明日は、『テイク・フライト』観に行ってきます。



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