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2002年08月29日(木) 腎不全(透析)にならないように気をつけて!

 日本の透析人口は20万人を突破し、まだ増加し続けております。
 愛媛県においても、年間約100人の割合で増加しております。
 透析導入年齢も、平均で60歳を超えています。
 社会でも高齢化が進んでいるわけですが、透析の世界でも同じなのです。当院でも何十人もの方が透析医療を受けられております。
 学会のデータでは、まだ透析人口は増加し、2025年の32万人でピークを迎えると予測されているそうです。
 
 新規透析導入の内訳を見ると、1/3強を糖尿病性腎不全が占めており、第一位です。すなわち、糖尿病人口が減少するか、管理をよくしないと、この増加を食い止めることはできないということです。

 症状がないからと、糖尿病に対して軽く考えている方は、心してください。糖尿病で腎不全になる頃には、全身の血管はぼろぼろです。その前に網膜症とか、末梢神経障害とかを合併します。そして透析を受けるようになると、患者さん自身にも多大な負担(週3回の通院と、そのたびに4−5時間の時間的拘束、そして家での食事治療・水分制限)がかかります。是非、症状のないうちに、きっちり糖尿病をコントロールしてください。
 
 それと、腎臓病全般についていえることですが、腎臓は、相当悪くなってからでないと症状がでません。ですから、会社の検診で尿タンパクとかを指摘された方は、必ず専門医を受診してください。
 
 余談ですが、医療経済も圧迫され、透析医療には莫大な費用がかかるからかどうか、今回4月の医療改正では、透析患者さんにとっては好ましくない、改正が行われました。医者として無念を感じます。
 
 とにかく、腎不全にならないように、気をつけてください。
 今からでも遅くない方の方が多いはずですから。

 (これは病院の所在地である松前町の公報に書いた原稿です。)


2002年08月21日(水) 糖尿病性腎不全に対する降圧剤の第1選択にCa拮抗剤は入っていない

新規導入透析患者さんの原疾患第1位(37%)を糖尿病が占めるようになってから、透析学会でも糖尿病性腎不全の治療についての議論が活発になってきている。

腎不全治療の3本柱として、血圧のコントロール・吸着剤・食事治療があげられるが、最近では腎保護作用を有するARBのことがよく言われる。
実際、2001.5RENAAL試験で、ARBであるロサルタント(商品名ニューロタン)が2型糖尿病の進行を抑制することが証明されている。

また米国糖尿病学会勧告では、降圧目標は130/80mmHg以下と、日本よりやや厳しくなっているが、その勧告では降圧剤に関しても第1選択がACE・ARB・β遮断剤・利尿剤となっており、Ca拮抗剤ははずれているというのにビックリした。

日本では長期作用型Ca拮抗薬がたぶんもっとも頻繁に用いられており、日本糖尿病学会の勧告でも降圧剤の第1選択としては、ACE・長時間作用型Ca拮抗薬・α遮断薬と記載されているのだ。

岡山RENAAL講演会というのが開催されており、『糖尿病患者の腎臓を守るために』という題でディスカッションが行われた。
その中でも、ACE阻害剤とかARBが降圧剤として臓器保護作用もありRA系を抑制することのメリットがディスカッションされている。

その中で東海大の黒川先生ははっきりと、Ca拮抗薬には降圧作用以外の効果による臓器保護のエビデンスは出ていません、と明言されている。
また、Ca拮抗薬は輸入臍動脈を広げるので、なるべく用いない方がいいでしょう、とも述べられている。

やはりCa拮抗薬を使ってしまう自分としては、そうなのかと思わされました。
新しい知見として、ARBと利尿剤の合剤がアメリカでは広く用いられているとかも書かれていて、世の中、やっぱりアンテナ張り巡らせとかんといかんですね。

(参考文献Medical Tribune2002.6.27号)


2002年08月13日(火) 皮内反応について

風邪とかひいたり、すっごく高い熱がでて医者に行くと、点滴をしましょうとかいう話になります。また患者さんの方から抗生剤の点滴をお願いしますと希望されるケースもあります。
その時、抗生物質の皮内反応をしてこの薬は大丈夫とかだめだとかやります。前腕に細い針で注射して蚊にかまれたようなあとを作ってみるアレです。アレって点滴の前に20分くらいかけてするので、けっこうめんどくさいのですが、ショックとかが起こるかどうかをあらかじめ推定するためにやむおえず行っているのです。

ところが、抗生剤投与前にする皮内反応について、日本化学療法学会はテスト中止を提言する方針を固めた、というのです。

その裏付けとしては、
1.アレルギー皮膚試験は、病歴からアレルギーを疑う患者のアレルギーの有無を皮膚反応として調べるものである。アレルギー歴のない患者でアレルギーの有無を調べる検査ではない。
2.皮内反応による皮膚反応と、注射による有害事象の有無には相関はみられない。
3.アメリカではペニシリンアレルギーのある患者においてのみ皮内反応が行われているが、アナフィラキシーショックの頻度は日本より低い。

ゆえにショック出現時の体制を整備している上で、アレルギー既往のある患者にβラクタム剤を静注する以外は皮内反応は中止すべきであるというものです。

さて、当院でも、今まで明らかに抗生剤によるショックかなと思われるけいれんのようなものをミノマイシンで経験したことがありますが(ちなみにミノマイシンは皮内反応をするようには記載されていない)、そのほかは、特別なことは起こっておりません。
患者さんが待つ時間を減らすという意味では、時間のない患者さんでは皮内反応は省略した方がいいのかもしれません。

(参考文献;日経メディカル2002.8,p26-27)


2002年08月05日(月) 二次性副甲状腺機能亢進症の病態と治療

A.何が困るか?

1.線維性骨炎を起こし、骨量が変形したり、ひどい場合は骨格が変形する
2.生命予後を悪化させる
 異所性石灰化を生じ、血管の虚血性変化を起こすとともに、心臓の弁の石灰化を起こし弁膜症を生じる。その結果心血管系合併症の頻度が高まる。
3.QOLの低下
 筋力低下・イライラ感・不眠など

B.透析患者におけるiPTHの目標値

 線維性骨炎を防ぐという意味で正常の3−4倍が以前は推奨されていたが、現在はブロックらがiPTH100-200pg/mlを提唱している。

 Ca*P<55
 P<6.0(ブラックらは2.5-5.5を提唱するが本邦では6.0が妥当であろうと)
 Ca9.2-9.6mg/dl

 Pが高くても自覚症状はないが、「これが続くのは真綿で首を絞められているようなものだよ」ということを患者さんに話すと、富永先生。

C.治療の目標

・副甲状腺の過形成にも2種類ある。
 びまん性と結節性。
 過形成の程度がひどくなるにつれ、びまん性から結節性に移行してゆくことがわかってきている。上皮小体は500mg以上(長径1cm以上)に腫大するとほとんど結節性となるため、そうならないように内科的治療でくい止める必要あり。

・いずれにせよ、透析による生存率ものびてきており、生命予後に影響を与える1ファクターとして、副甲状腺機能亢進症も考えてゆかねばならず、名古屋赤十字病院外科の富永先生(日本における権威)は、iPTH500を越えるような結節性過形成は、現時点の治療では、副甲状腺摘除術(PTx)が望ましいと述べられている。

・また、座談会の最後に、熊本泌尿器科病院の野上先生が面白い知見を述べられていました。
 二次性副甲状腺機能亢進症によって骨がもろくなり、骨折はおきやすくなるのか?という問いに対して、骨粗鬆症関連の研究からは、必ずしも相関しないということがわかってきており、iPTHが低いからといって骨折しやすいわけではなく、骨折の既往や骨折しやすい環境(歩行に不安がある人)にある人が骨折しやすいという結果が得られたとのこと。だから転んでも骨折しないような外部環境・内部環境を整備することも重要だとのことです。あたりまえといえばあたりまえですが、そのとおりです。でもそれがもっとも難しかったりするのです。

以上(医薬ジャーナル 2002.vol.3より)



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