蜜白玉のひとりごと
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2012年07月23日(月) |
どっぷり生まれてきた<2> |
宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展 記念対談 出演:江國香織(作家)×金原瑞人(翻訳家・法政大学教授)
2012年7月22日(日) 14時〜15時30分 於 世田谷文学館 1階 文学サロン(定員150名)
江國さん、金原さん、拍手に迎えられてご登場。 舞台に向かって右側に金原さん、左側に江國さん、 テーブルの上にはエビアンのペットボトルとガラスのコップ、マイク。 江國さんは白い丸襟のブラウスに黒いカーディガン(七分丈、まくってたのかも)、ジーンズ、バイカラーの大ぶりのバッグ、途中から黒ぶちメガネ。 顔色もよくにこやかでお元気そうな様子。お客さんがいっぱいでよかった、と。いつもだれもいないんじゃないかと不安になるそう。
金原さんは、・・・忘れました。すみません。イメージしていた人より、若々しく、やや軽かったような。たくさんお話ししてくださる割には、大事なところは絶対にしゃべらないぞ、と心に決めているようにも見えた。当り前か。企業秘密はあるもんだ。
以下、蜜白玉の手書きメモからの講演レポートです。 なにぶん、手書きなので抜けているところ、違うところ、あるかもしれませんが、そのつもりでさらっと読んでください。敬称略。
題して、「どっぷり生まれてきた」
●岩波少年文庫といえば?
江國: 『くまのプーさん』 おおきい単行本の方で読んだけれど。 『床下の小人たち』 『森は生きている』 ロシア マルシャーク作 おもしろい 民話 昔話の再話 お芝居
金原: 敵だな。 僕は『森は生きている』は× 読めなかった。 その代わり、ちくまのチベット民話集○ 『森は生きている』は女の子向け?
江國: そういうと、『キャラバン』などは男の子向け?
金原: 岩波「少年」文庫といっても、実際には「少年」より「少女」が読む
江國: 本を読むのは女の子 最近も?
金原: いかに本を読まなかったか 岩波、福音館は敵 ポプラ社○
江國: 金原さん、敵が多い(笑) 反対で、ポプラ社との出会いは遅かった 二十歳すぎて、三銃士とか読んだ 渋谷にあった子どもの本の専門店(「童話屋」のこと、今はない)で働いていた頃に出会った
昭和39年生まれ、小学生当時は女の子向け、男の子向けがはっきりしていた キャラメルのおまけ、とか、 持ち物でも、女の子はピンク、男の子は水色、というふうに。
そういう戦う話は好き 海底二万里 ズッコケ三人組 シャーロックホームズ ゲド戦機
●たたかう回路
江國: 書いているとき、たたかう回路がある(それらの物語と似ている)
金原: それは fightなのか、 struggleなのか
江國: struggleかな 今までと違うものを書こうとするたたかい
“甘やかな透明感”とか言われてしまう今までの評価とのたたかい 過去の作品とのたたかい
ひとりで荒野に出ていく感じ
金原: 書くという行為はつらそうだね?
江國: つらそうに言ってみたけれど、楽しい部分もある
●翻訳について
金原: 小説家には前座修行のように翻訳という行為がある(かつてはあった) 修行というくらいだから、翻訳はつらい作業
江國: 翻訳は好き すでにストーリーがあるから、日本語のことだけを考えていればいい 言葉が好きだから
「何を書くか、より、どう書くか、が大事」と常に思っているので、翻訳だと進んで机に向かう 早く続きを訳したい!
●自分について考えた(ものを書くことにおいて)
江國: 1964年生まれ、 いちばん影響を受けたのは石井桃子さんではないか 石井桃子さんは1950〜1960年代にかけて、編集者・翻訳家として精力的にお仕事をされた 石井桃子さんが用意してくれたところに「どっぷり生まれた」←変な日本語だけど 石井桃子さんの仕事に恩恵を受けた
金原: 石井桃子は敵 良くも悪くもいい手本 ファージョン(大学の講義で使った) 石井桃子訳は関係代名詞を後ろから後ろから訳す すると、映像が英語と逆になってしまう 目が回る でも日本語が滑らかだから読まされてしまう
江國: 長い文章だと私もstruggle
金原: ドリトル先生の訳は井伏鱒二になっているけれど、あれの下訳は石井桃子
江國: マドレーヌちゃん 福音館 瀬田貞二さんの訳がある 原作は当時6冊以上あったけれど、選ばれて4、5冊しか訳されていない これも石井桃子さんが一緒に選んだ
未翻訳のマドレーヌちゃん 違う、やっぱり弱い ちなみに、マドレーヌちゃんは今も増え続けていて、実は原作者のお孫さんが描いている 絵もそっくりだし、きっと版権ももっているからいいんだろうけれど、 石井さんだったらゆるさんだろうと
石井桃子さんは目利きであり、目に見えない仕事をなさっていた
●4時間かかって選んだベスト3(実際にはベスト4)
江國: 岩波少年文庫 江國香織ベスト1 『ふくろ小路一番地』石井桃子訳 1957年初版
まだ読んでいない人がいたら絶対読んでみて おすすめです
岩波少年文庫 江國香織ベスト2 『バンビ』ザルテン作(ドイツの詩人で植物学者)
金原: あのディズニーのバンビしか見たことないけど?あのバンビ?
江國: ディズニーもどんぴしゃの年代だけど、 ディズニーは物語にとっては敵 かわいいだけじゃない 野生動物の話を鮮やかに的確に赤裸々に描いた 愛の話でもある
(注)ベスト3とおまけのベスト4は質問コーナーで
●紙の本と電子書籍
江國: 本の大きさ、紙質とか、それぞれ違うのが魅力 たたずまいで覚えている 逆に、文庫で、外側に出てる気配はほぼ同じ なのに、読むとびっくりする 開く楽しみ、中に閉じ込める感じ あと、常にある安心感(家に、でも、図書館に、でも、出版社に、でもいいけれど)
金原: つきつめると、電子書籍も一緒なんじゃ?
江國: 好ましくないけど一理ある でも好ましくない、本ていう気がしないから 物体でなければだめ
金原: 西遊記、新西遊記 繰り返し、おもしろい
江國: おさるのジョージも一緒? マドレーヌちゃんも構図は似てる いたずらをして困って助けてもらう
岩波少年文庫は世界中の話が読める 金原: 岩波少年文庫の話をすると、『第九軍団のワシ』の話が好きな人がいる 荻原規子さん、上橋菜穂子さんも好きだって
ところで、子どもたちにどんなふうに本と出会ってほしいか?という事前の質問があったが、 出会う時に、出会う そのためには身近に本があるといい 環境が大事 おもしろいといってくれる友達がいるか、とか
江國: 大人が子どもに選んで与える 以前はあまり気が進まなかった 納得しなかった この頃は、贈るとか与える、置いておく、は大事だと思う おもしろかったら読むし、おもしろくなかったら放り出すだけ
子どもって、背表紙だけ読む、読めない漢字は飛ばしてひらがなだけ読む 変な言葉で覚えている それも、何もないよりはやや功徳がある 空間の中に本があるということ
●執筆スタイル
江國: いまでもシャーペンで書く
金原: いちばんはじめは手書きで出した 誤字脱字だらけだし、読みにくいしで大変だったらしい 次からは出たてのワープロで書いて出したら感謝された
●最近おもしろかった本
江國: 『植物たちの私生活』藤原書店 韓国の作者、韓国の訳者 おもしろかった 翻訳がちょっと読みにくい感じ 「訳したんだ」ということがわかる 病みつきに つまり、外国の本を読んでいるんだ、日本語のおもしろさ
金原: 翻訳文体とは 編集者によるもの すらすらだったり、ごつごつだったり
●質問コーナー
はい!(私、いちばんに質問しました〜笑)
(質問1) 江國さんが選ばれた、3番目と4番目の作品を教えてください。
(答え)
江國: あ、はい。ああうう。(困惑気味) どれも好きで、すごく困った。 岩波少年文庫以外で読めるものは除いて、これでしか読めないものを選ぶようにした。
岩波少年文庫 江國香織ベスト3 『太陽の東 月の西』ノルウェーの話です。
岩波少年文庫 江國香織ベスト4 『隊商−キャラバン』
ほかにアリソン・アトリーもすばらしい チム・ラビット うさぎの話 石井桃子訳 赤ちゃんうさぎがハサミと出会う 何をするとかではなくて、ハサミに頬ずり、つめたい その感覚
『時の旅人』もいい 童話屋にいた頃に読んだもの
金原: これは岩波に入っているんじゃ?(入ってます:岩波の編集の方?)
(質問2) お二人へ質問。児童文学を訳す時にどこにウエイトを置きますか?
(答え)
金原: 考えない。 どういう日本語がいいかなあ。 ジャンルで姿勢は変わらない。
江國: 私もないかも。 訳す時はその物語を好きになっていることがほとんどなので、原作の良さを日本語にする、 そのことだけを考える。
(質問3) 『デューク』を書くときに、これまで読んだ本は関係していた?
(答え)
江國: 全てつながっている。読んだ本はもちろん、それ以外のことも。 ときどきこわいのは、盗作してるんじゃ?ということ 知らないうちに読んだか聞いたかしたことをさも自分が思いついたかのように書いてしまっていないか
金原: ヘレン・ケラーは盗作で筆を折った とても記憶力が良かったから
(質問4) 江國さんにとって、石井桃子さんの存在とは?
(答え)
江國: 名前を意識したのは、小学生の時 でも、何か、しるしみたいなものとして。 小学校の図書室で、ああ、やっぱり、わたしが読むべき本だ、というふうに。 訳者としての意識でなく。
二十歳の時、山本まつよさんの講演を聞いて、びっくりして、月2回の勉強会に無理矢理押しかけて入れてもらって、3年行って彼女から聞いたこともある
幼ものがたり、松岡享子さんとか、うさこちゃんとプーさんがいちばん好きで。 ひらがなの「いしいももこ」さんと、漢字の「石井桃子」さんはちょっと違う存在。
(質問5) 翻訳の文体、ライム(韻を踏む)とリズム。葛藤はありますか?
(答え)
金原: ことさら考えず、翻訳するということは、文体はなぞられる ひたすら原文を読んで日本語に置き換える そのことに終始している
江國: たとえば、同じ「泣く」でも cryとscream 同じだけど、泣いてる 違う日本語を当てはめると激しすぎる、 同じ日本語を当てはめると単調
英語は同じ動作を違う表現にする 意味の差をそこまで意識していない 加減が難しい いつも手探り
金原: さんべさんという方が訳された「フィッシュ」という本があるんだけど、 性別がどちらだかわからない 性別の差 語り手はどっち? 中性的に書いた すごく難しかったはず 英語では He / Sheの出現が(日本語よりも)多い
(質問6) 『第九軍団のワシ』の映画をご覧になりましたか?映画と原作の差、ギャップは?
(答え)
金原: 訳者の猪熊先生はがっかりと。原作とかなり違う。原作も読まれることをおすすめします。
(質問7) 『冷静と情熱のあいだ』に出てくる「ゴリア飴」は実在する?
(答え)
江國: ??ゴリラ? わかりません、覚えていない。 GOLIA飴。 イタリアで取材をして書いたもの。 人から話を聞いたり、スーパーで買い物をしたりした。 自分の話ではなくて、誰かの話かもしれない。ごめんなさい。調べておきます。(でも調べた後にどうやって伝えればいいんだろうか)
(質問8) 金原さん、『西遊記』以外だと何が好きですか?
(答え)
金原: 西遊記! まあでも、宝島とか、ジャングルブックとかかなあ。
(質問9) 幽霊とか亡霊とか、よく作品に登場しますが、信じますか?
(答え)
江國: 半々。 物語の中では全面的に信じています。 現実では、怖がりなので半々。 善意のものだけ信じることにしている。 死んだ犬とか今でもそばにいると思っているから。
(質問10) 自分の作品が翻訳されることについて、別のものだと思いますか?
(答え)
江國: 映像化されたものは別のものだと思う。 翻訳は、別のものとは思わない。 韓国語に訳されて、韓国に遊びに行ったというか、講演でしゃべりに行ったけれど、みんなおもしろいと言ってくれる。それは翻訳者のおかげだと思って、たくさんお礼を言ってきた。韓国語が読めないので、おもしろいかどうか私にはわからないけれど、おもしろいのは翻訳のおかげ。
金原: おもしろいのは原作のポテンシャルが高いから。 少々翻訳がまずくても売れる
江國: 逆もあると思う。 まずい、かどうかわからないけど、今思えば誤訳のものも、こっちの訳がいいということで売れ続けるものもある。
金原: まあ、この話はまた別の所で。
――― 予定時間を20分ほどオーバーしてなごやかに終了。
2012年07月22日(日) |
どっぷり生まれてきた<1> |
行ってきました、江國さんと金原さんの対談。以下、今日のお話に登場した作品。岩波少年文庫以外もあります。順不同。
■クマのプーさん (岩波少年文庫)A.A.ミルン (著), 石井 桃子 (翻訳)
■床下の小人たち (岩波少年文庫) メアリー ノートン (著) , 林 容吉 (翻訳)
■森は生きている (岩波少年文庫)サムイル マルシャーク (著), 湯浅 芳子 (翻訳)
■隊商―キャラバン (岩波少年文庫)ハウフ (著), 高橋 健二 (翻訳)
■三銃士〈上・下〉 (岩波少年文庫) アレクサンドル デュマ (著), 生島 遼一 (翻訳)
■海底二万里 (上・下) (岩波少年文庫)ジュール・ベルヌ (著), 私市 保彦 (翻訳)
■ズッコケ三人組シリーズ 那須 正幹 (著) ポプラ社
■シャーロック・ホウムズ シリーズ(岩波少年文庫)コナン・ドイル (著) , 林 克己 (翻訳)
■ゲド戦記〈1〉〜 (岩波少年文庫) アーシュラ・K. ル=グウィン、ルース・ロビンス(著)、清水 真砂子(翻訳)
■ドリトル先生 シリーズ(岩波少年文庫)ヒュー・ロフティング (著), 井伏 鱒二 (翻訳)
■マドレーヌちゃん シリーズ ジョン・ベーメルマンス マルシアーノ (著)、江國 香織 (翻訳) BL出版
■ふくろ小路一番地 (岩波少年文庫)イーヴ・ガーネット (著, イラスト) ,石井 桃子 (翻訳)
■バンビ―森の生活の物語 (岩波少年文庫)ザルテン (著), 高橋 健二 (翻訳)
■西遊記〈上・下〉 (岩波少年文庫) 呉 承恩 (著), 伊藤 貴麿 (翻訳)
■おさるのジョージ シリーズ M.レイ
■第九軍団のワシ (岩波少年文庫) ローズマリ サトクリフ (著) ,猪熊 葉子 (翻訳)
■植物たちの私生活 李承雨 (著), 金順姫 (翻訳) 藤原書店
■太陽の東 月の西 (岩波少年文庫)アスビョルンセン (編集), 佐藤 俊彦 (翻訳)
■時の旅人 (岩波少年文庫) アリソン アトリー (著), 松野 正子 (翻訳)
■幼ものがたり (福音館文庫 ノンフィクション) 石井 桃子 (著)
■うさこちゃんシリーズ デック・ブルーナ (著, イラスト), いしい ももこ (翻訳) 福音館書店
・・・対談の詳細はのちほど。
すてきなお知らせ。まだ間に合うかしら?
-----↓↓世田谷文学館HPより↓↓-----------------------------
宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展 記念対談 [出演] 江國香織(作家)×金原瑞人(翻訳家・法政大学教授)
[日時] 7月22日(日) 14:00〜15:30
[申込方法] 往復ハガキによる参加申込はいったん締切ましたが、 まだ席に若干の余裕があるため、引き続き申込を受け付けます。 参加ご希望の方は、電話にてお申込みください。 なお、定員に達し次第、締切ます。
[受付電話番号]03-5374-9117(世田谷文学館)
[会場] 1階文学サロン
[定員] 事前申込150名
[対象] 一般
[参加費] 1000円(ただし中学生以下は無料)
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イベントごとを書くのはどうも苦手らしい。もう先月の話だけれど、6月はいろいろあった。妹の新居に遊びに行ったり、東京ドームにロッテの試合を見に行ったり、突然転がりこんできたチケットで友達とバレエを見に行ったり、おめかしして結婚披露パーティーに出たりと、なんやかんや忙しかった。
ハレの日は続くと疲れる。ひとつひとつはどれも行けば楽しいことはたぶん経験的にわかっているはずなのに、前後の移動とか、服装とか食事とか体調とか、もろもろ余計なことを考えて事前に疲れる。イベントそれ自体は決していやではないし、いやどころかむしろ楽しかったのだ。どれもこれも。とどのつまりはただの出不精かもしれない。
ひさしぶりに何も用事がなかったこの前の日曜日はと言えば、お腹が痛くて寝ていた。図書館にもスーパーにも行けないくらいで、寝ていたらなんだか熱が出てくるような気すらして、あれはいったい何だったのか。6月の反動か。
寝ながら思ったことは、私にはどうしても家にこもる時間が必要だということだ。ごろごろしながら(※)音楽を聴いたり本を読んだり雑誌をめくったり、録画した番組を片っ端から見たり、気が向けば料理したり、面倒だったらカップラーメンでもいいし、眠くなればちょっと昼寝して、夢うつつで浮かんでくる言葉を捕まえて紙に書き留めたり、夏の畳は気持ちいいなあって、ごろごろしながら(繰り返し※)。何もしない、何をしてもいい時間の中で、自分を自由に遊ばせる。なんてお金のかからない遊びだろうか。でも私はやっぱりこれが大好きだ。
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