Deckard's Movie Diary
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2008年05月30日(金)  幻影師アイゼンハイム  パリ、恋人たちの2日間  

『幻影師アイゼンハイム』
ネタバレはしたくないので感想は書き辛いです。もちろん、観て損はありません。エドワード・ノートンも相変わらずの芸達者ぶりを発揮しています。ストーリーはちょっと出来過ぎですけど、映画そのものがイルージョンだと思えばOKでしょ!監督のニール・バーガーの次回作、ティム・ロビンス主演の『The Lucky Ones』も期待大ですが、エドワード・ノートンの『インクレディブル・ハルク』はどうなんでしょ?



『パリ、恋人たちの2日間』
これは面白い!ロマンティック・コメディーとしては久々のヒットです!まさにフランス人ってああなんですよ!仕事柄、海外へは度々行ってたのですが、どういうワケか苦手なフランス出張が多かったんです。以下はオイラがフランス人に抱いている偏見に基づいて書いてます。

フランス人ってのは何でも自分達が一番だと思っている節があって、そういう奴に限ってフランスから一歩も出たことがなかったりするし(大阪人に似てますなぁ・・・)、英語で会話した後に必ずと言っていいほどフランス語でジュルヴー、ジュルヴーっと付け加えたりするし・・・

「このワインは美味しいですねぇ」
「美味しいでしょ!」
「折角、フランスに来たんだからたくさん飲んでって下さいね!(買占めんじゃねーぞ)」

この(買占めんじゃねーぞ)をフランス語でサラっと言ってフランス人同士でウけてたりするワケですよ。まぁ、悪気があるワケじゃないし別にいいんですけど、何を言ってるのか分からないコチラとしてはやはり気になるんですよ。フランス人ってのは、何かにつけて、そういうちょこっと嫌らしい部分がけっこうあるし、性的な部分はあまりに簡単で(『アメリカの夜』を観れば分かるでしょ!)、その上、何年経ってもそのことをベラベラ喋るし、人種の違いをかなり感じます。この映画はそういうリアルなフランス人を正確かつ丁寧に描いていて実に痛快でした!また、議論好きのフランス人らしく、登場人物の会話は多岐に渡り、知識があればあるほど楽しめます。

そんな嫌味なフランス人を徹底的に描いて見せたのが、監督、主演、脚本、製作、音楽、編集の6役を担当するジュリー・デルピーなんですよね。『ビフォア・サンライズ』の続編『ビフォア・サンセット』でリンクレイター、イーサン・ホークと並んで脚本に名を連ねていましたが、いやぁ、なかなか才能です。これを観ちゃうと、さぞかしリンクレイターの演出が物足りなかったんじゃないのかなぁ・・・と、勘ぐってしまいたくなります。というワケで、フランス人自身がこういう映画を作れるところに、フランス人のウィットに富んだ素晴らしい?生き方も感じられる一品となっているのです。今作はウッディ・アレンの作品と比較されていますが(デルピーもあの頃のキートンにちょっと似てるしね)、女性が作るとこうなるのか!と、至極納得。映画の中でデルピーの両親役はそのまま彼女の本当のご両親だそうで、その辺りの空気感も下品になりがちな際どい会話をまろやかにするのに効果的な演出と言えるでしょう。

過去も現在も自由奔放なフランス女性に、ちょっと神経質なアメリカ人男性が翻弄されるパリでの二日間。さて、現代の『巴里のアメリカ人』にとってパリは恋の都だったのでしょうか?


2008年05月29日(木)  アフタースクール

『アフタースクール』
『運命じゃない人』でカンヌ映画祭において4冠を受賞した内田けんじ監督の新作です。初めて予告編に接した時から楽しみにしていました。何故なら『運命じゃない人』の脚本がとても良く出来ていましたし、今回の予告編からもそのニュアンスが伝わって来たからです。結果は、102分間十分に堪能させていただきました!必ずリピートしたくなる映画でしたね。“甘くみてると騙される”の謳い文句通り、気持ち良く騙されてしまいました。だから、そのカラクリを承知の上でもう一度最初から観たくなってしまうんです。というワケで、ロハで観られるオイラはリピートしたのですが、それでも“ん?”って、思う部分もあり、そういう意味では分かり辛いし、その設定はどうなの?とツッコミを入れたくなる部分もありますが、ただ、それが決して不快ではなく、どちらかというと「そんな細かいことはどーでもいいかぁ!」と思えてしまいます。どうしてなんでしょうか?全ては“キャラクター”なんだと思います。総ての登場人物にキチンとキャラ付けがされていて、そこに存在していることにほとんど違和感がありません。ほとんど無いのですが、少しだけあります。その少しのズレがちょっとだけ心に引っかかったりします。例えば “ポルシェ”だったり・・・。そこに観客は異質なものを感じ、何処かあやふやな心模様になり、ストーリーから目が離せなくなるんじゃないでしょうか?でも、世の中には6畳一間に住みながらフェラーリを乗り回している輩も居るワケですから、珍しいけど全く有り得ないコトでもないんですよね。ただ、ちょっとストーリーを追いかけ過ぎて、人物描写が甘くなったのは否めません。これは前作にも言えるんですけどね。もう少し整理して、主要登場人物の背景を盛り込めればさらに良くなるような気がするんですが、それは大きなお世話ですね。とにかく、観終わった直後から内田けんじの次回作がまたまた楽しみになってしまいましたとさ!


2008年05月23日(金)  チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』
どういうわけか、初めてこの映画の予告編を観た時に「ダン・エイクロイド主演(本当はトム・ハンクス)の政治コメディか・・・」と思っちゃったんですよ(/・_・\)アチャ-・・。監督は名匠マイク・ニコルズですが、上手いですねぇ!実話だそうです。主人公はアメリカのおちゃらけ下院議員。その破廉恥な生態を絡めながらソ連をアフガニスタンから追いやる過程をある種の痛快さを持って描いています。反共主義者、パキスタン、エジプト、イスラエルと当時の米ソ両国、ブラックジョークでしかありえない組み合わせが妙にリアルな雰囲気を醸し出しており笑わせてくれます。しかし、決して笑っている場合ではなくて、そんな大それたコトがそんなノリかよ!と、これまた驚かされながら実にリアルです。結局は、一度手を出したらヤリ逃げはダメ!って、ことなんですよ。物事は“いずれわかるさ”の言葉のように全てが関連しているわけですから、ヤっちゃったんなら最後まで責任取らないと痛い目に合う!という教訓ですね。結局は、アメリカ最大の悲劇を生み出してしまった原因の顛末・・・それこそが、この映画の言いたかったことでしょう。巷では、コミカルな描き方がけしからん!という声もありますが、オイラは「現実はこんなもの!個人的な感情や損得で色んな事柄が進んでいく。だからこそ、終わり方を間違えてはいけないんだよ!」ということだと思いますよ。現実の裏側は怖いですねぇ!

さて、あれから20年、現在進行形のイラク戦争はどう決着するのでしょうか?そういう意味では太平洋戦争のオトシマエは成功したんでしょうね( ^-^)_旦””


2008年05月20日(火)  マンデラの名もなき看守

『マンデラの名もなき看守』
監督は『ペレ』『愛の風景』で2度カンヌのパルム・ドールに輝いているビレ・アウグスト。どちらかというと地味な題材が多い監督なので、この新作にはちょっと違和感がありました。結果は・・普通ですねぇ。もちろん、悪い作品ではありませんが、決して褒められる出来でもないでしょう。「マンデラの人柄に触れた看守のグレゴリーは、徐々にその理想に心奪われていくのだった。」ということになるんでしょうけど、“徐々に”というほどの描き方は全くと言っていいほどされていません。心変わりをしていくきっかけになっているANC(アフリカ民族会議)が定めた“自由憲章”とか、娘の反応とかだけでは説得力に欠けます。アパルトヘイト政策が国内外でどう受け止められていったのか?その辺りの視点ももう少し盛り込んだ方が良かったようにも感じました。全編に渡って家族の話が多く、それはそれでマンデラとグレゴリーの人間味は感じるのですが、映画の出来としては足を引っ張ったように思いました。まぁ、悪い映画ではないですが・・・(またかよ!)

オイラはどういうワケか、キーラ・ナイトレイのお姉さんだと思ってるダイアン・クルーガー。彼女も妹(妹じゃねーよ)に負けず劣らず、博士、ソプラノ歌手、写譜師、でもって今回は看守の妻と、最近良く顔を見ます。そう言えば『ハンティング・パーティ』にも情報屋役で出ていましたわ。


2008年05月17日(土)  ハンティング・パーティ

『ハンティング・パーティ』
スレブレニツァの大虐殺の首謀者と言われるラドヴァン・カラジッチを追うジャーナリストが主人公の『ハンティング・パーティ』。とにかくストーリー展開も登場人物のキャラも都合がよすぎます。最後に「へぇー!」と思わせる仕掛けもあったりするのですが、やはり肝心な部分で「無理やりだよ!」と言いたくなります。社会派とも言えないし、風刺でもないし、もちろんコメディあるはずもなく、中途半端な映画でした。<“あり得ない”と思う部分こそが、この映画の“真実”である。>とか言ってますが、一番ありえないのは結末でしょ(苦笑・まさか“真実”ってことじゃないでしょ?)。『カルラのリスト』で有名になった旧ユーゴ国際刑事法廷(ICTY)の検事カルラ・デル・ポンテ女史が観たら何て言うんでしょうか。


2008年05月14日(水)  光州5・18  最高の人生の見つけ方  ミスト

『光州5・18』
「返してくれ!」と絶叫しながら自殺するキム・ヨンホ・・・言わずと知れた傑作映画『ペパーミント・キャンディー』の冒頭シーンです。そして、彼のトラウマになってしまう出来事が起きたのが光州事件でした。オイラは映画を観ている時はその背景が良く理解出来ず、観賞後にその事件のコトを知った輩です(/・_・\)アチャ-・・。その光州事件を真正面から描いたのが『光州5・18(原題は“華麗なる休暇”)』。いやぁ、凄まじいですね。内容は衝撃的で悲惨を極めます。また、兵役のある韓国は一般市民もヤルときゃハンパねぇ!です。登場人物もストーリーも、韓国映画にありがちなステレオタイプですし、全体に説明不足の感もあります。決して出来の良い作品ではありませんが、それでも一見の価値はあります。なぜなら、その国の恥部を堂々と描けるコトはその国の成熟度を示す度合いになりますし、何よりもオイラのような外国人がそういう作品に触れた時、国は違っても同じ人間として共感することで、その国を身近に感じることが出来るようになることです。「俺達は暴徒じゃない!」「私達を忘れないでください」と叫んだ彼らの思いはオイラにも伝わりました。ただ、光州事件をもう少し詳しく探っていくと、そこには韓国内での差別も内包されているらしく、その辺りが蔑ろになっていたのはちょっと残念だったのかもしれません。因みに原題の“華麗なる週末”とは作戦名のことだそうです。

話しは変わりますが・・・中国がチベット侵攻や天安門事件を映画化する時は来るんでしょうか?オイラが生きている間は無さそうですね・・・( ̄。 ̄ )ボソ 最近のチベット問題から関係が悪化しそうな中国でしたが、それでも、先日の四川省の大地震に見舞われた人々の話に接すると、何のわだかまりもなく頑張って欲しいと思います。




『最高の人生の見つけ方』
家族に恵まれた人、大金に恵まれた人、およそ人生の成功者と言える老人二人。ガンに侵され余命半年・・・死ぬまでにしたいことを金にモノを言わせてやりまくる!さすがにロブ・ライナーですから手堅い演出ですが、どうにもストーリーが鼻につきます!所詮、ボンビー人種には縁のない話しですからピンと来ません。それで“最高の人生の見つけ方”とか言われてもねぇ・・・。巷での評判は相当良いみたいですから、やはり日本人ってのは総じて幸せなんでしょうね。ぶっちゃけ、オイラは全く感情移入出来ませんでした。



『ミスト』
席につき居心地の良い座り方を見つけ“暗くなるまで待てない!”気持ちでいると、やがて場内の照明が消えスクリーンに画が入る・・・そして、フと我に返るとエンドタイトルが・・・全身から力が抜けて一気に押し寄せる脱力感・・・もちろん、眠っていたワケではなく、最初から最後までほとんど同じ姿勢のまま釘付けになっていただけなんですよ!稀な現象なんですけど、極たま〜に遭遇します。例えば『エイリアン』を観た時なんかも、気がついたらほとんど最後まで微動だにしていませんでした。この作品はそんな経験を久々にさせてくれた映画でした。まぁ、それだけでも凄いんですけどね。

オイラは原作を読んでいたので、その終末観溢れる異様な光景を目にした時には心の何処かで「これで終りだな」と勝手に推測してしまいました。ところが、映画は新たなエンディングを用意していてオイラは原作よりもう一歩踏み込んだ(ように感じた)このストーリーに唖然としてしまいました。もちろん、良い意味で驚かされました。この映画はパニックホラー映画の体裁をとりながら、人が日々の営みの中で様々な事態に遭遇した時に対応する、およそ人間の持っている総ての感情が描かれており、そんじょそこらの映画なんぞは足元にも及ばない人間味溢れる作品となっているのです。ちっぽけな人間の存在を強烈に意識させられる叫びのようなレクイエムが流れ、希望と絶望を一瞬で描いて見せたエンディングを観た時には鳥肌が立ったのですが、エンドタイトルに被さる効果音には人間の英知をも感じさせられました。人は間違いもおこすし、愚かでもあるけれど、捨てたもんじゃないのかもしれません。だから、最後まで信じることにします。

ところで友人が「映画はこの“現象が起きた要因”を描く事によって、物語が、あのクトゥルー神話に連なる作品である事を描いているのです。」と書いていたのですが、確かにその通りだと思うのですが、それなら原作と同じところで終わった方が良かったんじゃないでしょうか?最後にあのオチが付くと、ちょっと曖昧になるような気がしました。どうなんでしょうか・・・( ̄。 ̄ )ボソ


2008年05月10日(土)  少林少女  大いなる陰謀  スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー

『少林少女』
相変わらずですなぁ・・・フジテレビ+ロボット+本広のトリオが作る映画は相変わらずですなぁ・・・(苦笑)。ストーリーの流れなんてどーでもよくて、とにかくターゲットと考える観客層にウケるか?ウケないか?それが最重要事項です。だからラクロスが絡む前半と、対決がメインになる後半は全くの別物!間違っても海外で上映とか止めて下さいね。柴崎コウを初めとして役者陣は頑張っていますが、こういう映画で頑張ってもなぁ・・・ご愁傷様です。


『大いなる陰謀』
最初に言っときます。『大いなる陰謀』という邦題ですが、それこそが!配給会社が仕掛けた“大いなる陰謀”でした。原題は『LIONS FOR LAMBS』。本来なら“LAMBS FOR LIONS”でしょ。“弱者の為の強者”とした題と映画の内容は相反するモノです。そこに監督・レッドフォードの狙いはあるのですが、ただ、問題提議だけして終わるってのは、どうなんでしょうか?「なるほど!」と思わせる提議ならともかく、多くの人が思っている事柄ですからねぇ・・・。決して悪い作品ではありませんが、ちょっと煮詰めが甘いかなぁ(って、オレって何様だよ!)


『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』
1970年のベルリン映画祭で三冠を受賞した作品だそうです。監督は『散歩する惑星』のロイ・アンダーソンだと知っていたら絶対に観に行かなかったでしょうね(苦笑)。あの映画は全然ダメでしたから(苦笑)。この作品は彼の長編デビュー作で、ティーンエイジャーのボーイ・ミーツ・ガール物です。まぁ、悪くなかったですね。面白かったのは、前半は普通の幼い恋愛なんですが、後半は主人公二人の両親の方に重心が移動して、そのまま面倒でチグハグな大人の世界が描かれたりします。これはこれで中々高度なテクニックです。この映画は青春の初恋を描いていながら、ターゲットはある程度大人になった人々のような気もします。そういう意味で、誰もが甘酸っぱい気持ちを持っていたあの頃を思い出すかもしれません。全体にまとまりに欠けますが、観て損はないでしょう。ところで、主演の二人ですが、アニカ役のアン・ソフィー・シリーンはいいですねぇ!透明感に溢れ、不安そうな瞳に憂いのある表情・・・めちゃくちゃタイプです(苦笑)。なのに、相手役のロルフ・ソールマンは素朴な魅力はあるのかもしれませんが、ちょっとブチャイクでしょ!だって、周りはイケメンばかりで「ええ男がおるやん!」とか思っていたら、その中の一人がダーク・ボガードに黒い汗を流させた“ビョルン・アンドレセン”だったりするんですよ!北欧の冷たく乾いた風景の中のラブ・ストーリー・・・暖めたくなります。何を?


2008年05月05日(月)  アイム・ノット・ゼア  ラフマニノフ/ある愛の調べ

『アイム・ノット・ゼア』
こりゃ、ダメだわ!分かんねーよ!っつーか、ボブ・ディランを6人の役者が演じているんだと思っていたら、ディランにインスパイアされた六つのキャラクターを6人の役者が演じているんですね。だから、全員名前も違う別人なワケです。それだけでも分かり辛いのに、時間軸をいじっているし、さらに!ディランが出演した映画からも引用しているので、もうメチャクチャです!メチャクチャ分かり辛いです!コアな連中だけが集まったベースメントで上映すれば大うけかもしれませんが、一般的なファンであるオイラのような人間には受け入れがたい作品でした。観て良かったと思ったのはディランを演じたブランシェットを観られたコトだけでした。それにしても、クリスチャン・ベールにはあんまり音楽性が感じられなかったなぁ・・・。ヒース・レジャーはちょっと太り過ぎで、哀しいかな浮いていました。まぁ、特に観る必要はないですね・・・・・・・・( ̄。 ̄ )ボソ。


『ラフマニノフ/ある愛の調べ』
なんだこりゃ!ど素人が作ったような下手糞な映画でした。ストーリーが全然繋がっていません!本来は3時間くらいあった映画を半分にしちゃったようなダイジェスト作品のようです。トップシーンで描かれるニューヨークでの初コンサートでのエピソードから「おお、そっち方面から描かれるのね・・・」と期待したのですが、全くの肩透かしでした(苦笑)。それでも、楽曲がタップリ聴けるシーンが一箇所でもあればいいや!と思ったのですが、それさえもありません!なんなんですかねぇ・・・この映画は!何が言いたかったのかサッパリでした。エンドタイトルが終わって拍手をしていた人が居ましたが、わかんねぇー!


2008年05月02日(金)  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
『今夜、列車が走る』のニコラス・トゥオッツォ監督と同じ37歳で、既に世界的名声を得ているポール・トーマス・アンダーソン(PTA)の新作です。今年のアカデミー受賞作品で一番期待していた作品でした。というのも『ハードエイト』で並々ならぬ力量を見せたPTAがその後の『ブギー・ナイツ』『マグノリア』と、その力技で引っ張り過ぎて、内容自体が何処かに行ってしまっていたのですが、前作『パンチドランク・ラブ』でやれば出来るじゃん!と、実にコンパクトにまとまった魅力的な作品を送り出したからです。原点回帰した後の2時間40分の大作!期待に胸を躍らせたのですが・・・やっぱり長いや・・・・・( ̄。 ̄ )ボソ。主人公が無骨だからって語り口まで無骨になる必要はないんですけどねぇ・・・もちろん、決してつまらない映画じゃないですし、長いとは言え、その力技は賞賛されるべきものですし、無骨な印象はそのままゴツゴツとした存在感を観る者の心に植えつけます。それでも、オイラにはここまで長い必要が感じられませんでした。上下巻で800ページを超える純文学の大作小説を“無理して”読んだ気分です。また、長いわりにはストーリーがスムーズに流れていない印象も残りました。話しは当然“血”がテーマで“血が叫べば実行すべし”“血で血を洗う”“血は水よりも濃し”“血も涙もない”“血よりも涙”とか、まさにBlood Sweat Tears & Madness のオンパレード!最後は頭に血が上ってしまい、後味の悪さは特筆ものでしょう。主人公ダニエル・ブレインビューの黒い血が求めていたのは欲望なのか渇望なのか・・・狂気の人物(ダニエル・ブレインビュー)を演じたダニエル・デイ=ルイスの存在感は素晴らしく、主演男優賞は当然でしょうね。ダニエルと対をなすイーライを演じたのはポール・ダノ・・・何処かで見た事のある役者だと思っていたら『リトル・ミス・サンシャイン』の無口のお兄ちゃんでした。今回は喋りますよぉ!また、いつものように音も含めた音楽のセンスが良いなぁ・・・と、感心していたら、音楽はレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドだったんですねぇ!さらに、脱帽で御座います。それにしても、PTAは37歳ですか・・・37歳でこんな作品をモノにするって・・・すげぇーよ!


2008年05月01日(木)  パーク・アンド・ラブホテル  今夜、列車は走る

『パーク・アンド・ラブホテル』
ベルリン国際映画祭最優秀新人作品賞受賞作品で、巷の評判も中々良いですが・・・う〜ん、悪い映画じゃないんですけど、そこまで評価される映画だとも思えなかったですね。監督はPFF出身の熊坂出。ラブホテルの屋上に作られた公園が舞台になっているのですが、全然生かしきれていないと思うんですよ。っつーか、ラブホテルの屋上である必要がほとんど感じられません。性的欲望を満たす場所の屋上ですから、もっとドロドロした中での生き様とか描いて欲しかったんですけどね。ワケ有り登場人物達のエピソードもステレオタイプですし、肩透かしでした。

美香を演じた“梶原ひかり”ですが、何処かで見た子だなぁ・・・と、思っていたら『女王の教室』で佐藤恵里花役の女の子だったんですね。クラスメイトの財布を盗んで神田和美に濡れ衣を着せた女の子です。この年齢の女の子は本当にアっと言う間に大きくなりますなぁ・・・( ̄。 ̄ )ボソ



『今夜、列車は走る』
アルゼンチン映画です。最近の作品では『僕と未来とブエノスアイレス』『ボンボン』、アニメでは『火星人メルカーノ』等があります。映画は“炭鉱”モノと並んで悲惨な題材としては定番の“鉄道員”モノです。<突然の失業、見えない明日。>とチラシに書かれているように、路線廃止に伴い悲惨な状況が鉄道員を襲います。ところが、全編に渡ってラテン系ってコトなのかもしれませんが、そこはかとなくユーモラスな空気が流れていて、閉塞感はあまり感じられません。題名からオチはだいたい分かりますし、細かなエピソードが多くて物語は遅々として進みませんし、終盤まではちょっと退屈です。ところが、とある事件が勃発してからは突然走り出した列車に、それまでとっ散らかっていた様々なエピソードを次々と積み込みながらエンディングに向かってまっしぐら!ちょっと考えオチのような印象もありますが、オイラは好きですね。監督のニコラス・トゥオッツォは37歳。長編デビュー作としては次作に十分期待が持てる仕上がりだと思います。


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