Deckard's Movie Diary index|past|will
カンヌ映画祭パルムドールと監督賞のW受賞で話題になった『エレファント』です。・・・分かっていても強烈なシーンでした。この映画にはストーリーらしいモノはなく、同じ高校に通う生徒達のその日を、過去を垣間見せながら立体的に描いています。観終わって思うのは監督ガス・ヴァン・サントの演出の見事さです。確かに過剰な部分もありますが、登場人物への演技指導はもちろんのコト、入り組んだ編集や、ホワイトノイズ的なSEの使い方など全てが緻密に構築されています。途中までの**な印象も明らかに狙いでしょう。そして、この**さこそが、“実際に生きている時間の流れ”を感じさせてくれるので、リアリティに満ちた瞬間が訪れたのだ思いました。この作品は“映画を一つの大きな時間の流れ”として感じる人には良い印象を残すと思いますが、シーンを“点”で捉えたり理屈で理解しようとする人にはピンと来ない可能性もあるでしょう。まぁ、途中で寝ちゃう人は論外ですね(って、オレが言っていいのかぁ♪〜( ̄ε ̄;))そういう意味でも“しっかり”と観て身体で感じて欲しい作品です。全く知らなかったのですが、この映画ってスクリーンサイズがスタンダードだったんですねぇ。ワイドスクリーンに慣れた自分には、その妙に四角いスクリーンも閉塞感を増したようです。懐かしのティモシー・ボトムズが酔っ払い親父で登場していました。
2003年カンヌ・カメラドール賞受賞、2004年ゴールデングローブ賞・外国映画賞受賞。“少女は生き延びるため少年になった”がキャッチコピーの『アフガン零年』は、まるで『少女の髪どめ』のような設定です。というか、女性が不当に差別されている状態ではよくあるコトなのでしょう。“少年になった少女”という設定は新聞記事が出典になっているようです。舞台はタリバン政権下のアフガニスタン。少女マニラの悲劇を描いています。この作品は前出の『少女の髪どめ』や『チャドルと生きる』のような映画的な話法はほとんどありません。淡々と悲劇を捉えているだけなので、ある意味、よくある中東映画と言えるでしょう。『ブラックボード・背負う人』『少年と砂漠のカフェ』『酔っぱらった馬の時間』等と近い印象でしょうか。もちろん悪い映画ではありませんが・・・・。だいたい、良いも悪いも言えませんよ。ほとんど事実なワケですし・・・自分としては戦争の無かった今までの人生を幸福だったと振り返るのみであります。
麻生久美子・・・華麗なる映画遍歴を纏った若手女優(苦笑)。『カンゾー先生』『ニンゲン合格』『リング0』『ひまわり』『風花』『回路』『STEREO FUTURE』『RUSH!』『赤影』『贅沢な骨』『命』『ラストシーン』『セプテンバー11』『魔界転生』『アイデン&ティティ』『ゼブラーマン』今後も『キャシャーン』『丹下作善』『ハサミ男』と止まるところを知りません。いつもは脇に回ることが多いのですが、今作『eiko』では久しぶりの主演です。麻生演じる“Eiko”ことエイコは誰でも信用してしまうお人よしで、会社に騙され、恋人に騙され、キャッチセールスに騙され、悪徳商法に騙され借金だらけの生活です。借金取りに追われ行くところが無くなり、夜逃げした社長の自宅に尋ねたら・・・。とまぁ、こんな風に始まるのでが、まず麻生久美子のキャラが垢抜けて綺麗過ぎます。こんな役柄ならばもっとダサく作らないと(もっと対人恐怖症気味にオドオドしているとか・・・)全く説得力がありません。また東京出身の東京育ちという設定なのに、困った時に頼る友人が一人も居ないってのも、離婚している両親だとしても全く連絡を取っていないというのも、幾らなんでも無理があり過ぎです。とにかく脚本が穴だらけ!沢田研二演じる江の本さんと知り合ってからの展開はけっこう面白いのになぁ・・・。まぁ、エイコと江の本さんの描き方もヌルいから、やっぱりダメか(苦笑)。もっと脚本を練ろうよ!こんな程度で映画にすんなよ!『アパートの鍵貸します』が大好きなビリー・ワイルダーファンの加門幾生監督さん!アメリカではOKなシチュエーションでも日本ではNGってコトは多々あるってことですよ。もっと頑張りましょう!
岩井俊二は誰もが(?)認める(であろう)力のある映画作家だと思う(⌒o⌒;A。彼の作る映画は今の邦画界では珍しく個性的で、未見だとしてもランダムに選んだ数十本の作品の中から彼の作品を選ぶのはさして難しい事ではないでしょう。長編映画としては『Love Letter』『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』に続く今作もまた“rockwell eyes presents”のロゴからエンドタイトルが消えるまで“岩井ワールド”などと呼ばれる詩情豊かな映像世界で溢れており、その映画空間を構築する力には脱帽するしかありません。全ての画は色もライティングも小道具も一寸の隙もない拘りが感じられます。“記憶喪失”という定番のネタを逆手にとった恋愛劇もまた興味深く(少女漫画風ですけど・・・)『Love Letter』で見せたストーリー展開の上手さもこの監督の魅力のひとつです。が、しかし!ストーリーに付随したシーンが必要以上に長く、全体には緩慢な印象を残す結果になっています。そして、この映画の完成度を低くしたその“付随したシーン”こそが、岩井俊二の映画作りのアインデンティティーでもあり弱点でもあるのです。私は言うまでもなく男性です(笑)。岩井俊二と同じように一時期の少女が放つオーラに魅力を感じます(自爆)。しかし!何においても度が過ぎれば見苦しいものですし、ましてや対象が“少女”ともなれば度が過ぎるだけではすまない可能性だってあります(・_・)ヾ(^o^;) オイオイ。『花とアリス』は明らかに少女愛好趣味の度を越した映画だ!・・・と、思う(歯切れ悪ぅ〜)観ているこちらが気恥ずかしくなるくらいです。岩井俊二の少女愛好趣味が歳を重ねるにつれ酷くなっているように思うのは私だけではないでしょう。彼の映画に出てくる少女達は除菌消臭ファブリーズの膜が張られたようなキャラばかりです。2時間15分もの間、その“過剰な少女愛好趣味”さえ耐えられればそれなりに楽しめます。しかし、彼の嗜好がもっと抑えられていたら・・・この映画はとても良い作品になった可能性もあるので惜しまれます。昔の岩井なら気がついたと思うのですが・・・(苦笑)。それにしても、アリス役の蒼井優がかなり上手くなっていて、ちょっと驚かされました。
『ウインド・トーカーズ』で久しぶりにジョン・ウー節を炸裂させていたのですが、今作の『ペイ・チェック』ではまたまたハリウッドでのアクション御用達監督として『M:I・2』で見せた手腕を存分に振るっています(苦笑)。原作はフィリップ・K・ディックですから、話は『M:I・2』より複雑で面白いのですが、いかんせん派手なアクションシーンが多すぎて肝心のストーリーは単なる付属品になってます。観ていると最初は「ジョン・ウーらしいなぁ・・・」と誰でも感じる印象なのですが、そのうちあまりにジョン・ウー的演出が多いので「まるで、ジョン・ウーじゃん!」と思えて来るから不思議です(爆)。つまり、この映画はジョン・ウーのセルフパロディ作品以外のナニモノでもありません。そう思ってこの映画に接するとかなり笑えます(普通に観ても笑えますが・・・ボソ)。しかし、この手のアクション・・・いい加減飽きたよ!
今年度アカデミー賞2部門受賞。英アカデミー賞作品賞受賞『マスター・アンド・コマンダー』。う〜ん、何処がそんなに評価される内容なのか全く分かりませんでした。そら、確かに机を叩く音は大きかったですが・・・ボソ。映画としてのテンションが持続していない・・・と言うか、何を描きたかったのか全く焦点ボケ作品でした。単なる娯楽作品としてもテンポが悪くて何度も眠たくなりました。戦闘シーンで木が砕け散る場面等はとても迫力があるのですが、画角の狭いシーンが多くてスクリーンでの広がりが感じられません。この映画の広告が本編とかけ離れているとクレームが来たそうですが、確かに全く内容は違いますが、そうとも取れるような印象・・・つまりはアレもコレもと欲張りすぎた内容が中途半端な出来になったんじゃないかと思われます。それもこれも、おそらくはラッセル・クロウ演じる艦長ジャック・オーブリーに魅力がないからなのでしょう。もっとカリスマ的なオーラを放つ演出がなされていれば違った結果になったような気もします。ジョージ・C・スコット@パットンくらいの強烈さがあればなぁ・・・。それにしても、ポール・ベタニー扮するドクターの不幸な出来事には笑ってしまいました。アレはないだろ(苦笑)。
2003年度キネマ旬報ベストテンで2位にランクされた『赤目四十八瀧心中未遂』。昨年は中野だけでの上映だったのですが、各映画賞を受賞した結果、今回晴れて新宿で公開となりました。まず最初に言っておきますが、原作は読んだ事はありません。で、この作品ですが、何処がそんなに評価されるんでしょうか?全くわかりませんでした。ブツ切りのエピソードが積み重なっただけのダラダラと長い作品以外のナニモノでもありませんでした。映画は何を撮るか?ではなく、何を描くか?だと思うのです。荒戸源次郎はプロデューサーとしては優秀なのかもしれませんが、監督としては明らかに力量不足です。例えば主人公の生島です。彼は来る日も来る日も臓物に串を刺し続けているのですが、ただ写しているだけなのです。もっと“刺す!”という行為に迫れば彼の心情(死んだように生きているが、自分でも気がつかないところで心の奥底の火は消えていない)を映し出す事が出来たはずです。またヒロインの綾との刹那の関係も唐突な印象なので、心中に向かう二人の居心地がとても悪いです。それは二人の関係をセリフに頼っているからだと思います。セリフで語らせるのは簡単ですが、人間の生理の部分を如何にフィルムに蒸着させるか!映像で描いてこそ“映画”と言えるのではないでしょうか?往年の今村だったり、神代だったり、田中だったり、実相寺だったらこんな愚鈍な演出はしないでしょう。例えば生肉を口にするような、気狂いと紙一重の生命力を一瞬でも感じさせて欲しかった気もします。ロマンポルノ全盛期や元気だった頃のATGを知っている人間には物足りない作品だと思うのですが、それらの映画を圧倒的に評価してきたキネマ旬報が、この映画をそこまで評価するというのは悲しい気もします。やはりキネマ旬報は既に終わっているのかもしれませんね(気づくのが遅いよ(苦笑))。寺島しのぶは明らかに『ヴァイブレータ』のが輝いています。生島を演じる新人の大西滝次郎は眼力だけが頼りの芝居で話になりません。『赤目四十八瀧心中未遂』は70年代邦画へのオマージュは感じられますが、チンケな模倣でしかありませんでした(ちょっと言い過ぎ(苦笑))。
押井守の新作『イノセンス』。この映画は、押井守を全世界的に有名にした『攻殻機動隊』を原作にしていますが、中身は押井守の全くのオリジナルです。そういう意味では世界が待っていた!と言っても過言ではないくらいの新作であります。現にドリームワークスが全米公開するらしいですからね。だけんどもしかし!今作は恐ろしいくつまらない映画でした。ある意味、ジャパニメーションの行き着く最悪の形態かもしれません。穿った見方をすれば、この作品は押井守が才能を発揮してきたアニメーション映画という分野をバカにしているような印象さえ受けます。古今東西の哲学者の格言をウンザリするほどセリフとして使われているのですが、それは「アニメだからさぁ〜、なんか内容があるようなコトでも言わないとさぁ〜」みたいな風にも受け取れます。まぁ、冗談ですが(苦笑)。そんな因縁をつけたくなるくらい、全く中身がありません。均一なるマトリックスの向こう側に行ってしまい、映画におけるアナログの重要さを忘れてしまったのは押井本人以外の誰でもありませんでした。今一度、『うる星やつら』の原点からやり直したほうがいいんじゃないでしょうか。それともアルバイトでもいいですから『サザエさん』のセルでも描いてみますか(苦笑)
監督は“スマ・ステーション”やこの映画の出典でもある“チョナン・カン”の演出家・タカハタ秀太。脚本は“家庭教師のTRY”や“サントリーDAKARA”“なっちゃん”“カロリーメイト/がんばれワカゾー!”等を手がける広告界のトップランナーでCHEMISTRYの作詞も手がける麻生哲朗。音楽はLOVE PSYCHEDELICO、泣かせ担当はイーグルスの名曲“デスペラード” 、全編韓国語、ロケ地はウラジオストック、制作はフジTV。まぁ、色々と仕掛けタップリですなぁ(苦笑)。というワケで本作も映画畑でないスタッフが作るとこうなる!という典型的な作品に仕上がっています(もちろん『某捜査線』などに比べたら十分見るに耐えます)。全編韓国語はTV番組から派生した縛りなのですが、それを逆手にとって、喋り言葉としてはコッパズカしい日本語で溢れています。脚本を担当した麻生哲朗氏も言ってるのですが、映画は美しい日本語を読ませる為のセリフで満たされているワケです。多分に語りすぎですが、この狙いはある程度成功していると言えるでしょう(笑)。ただ、その美しいセリフの数々を纏ったストーリーがあまりに手垢まみれの話ばかりなので、観ていていい加減飽きます。よって最終的な狙い「何度でも観直したい、読み直したい」というコトにはならなかったようです。映像や編集、音の使い方などでどんなに厚化粧をしても、魅力のないストーリーと類型的なキャラクターはどうしようもありません。それでも『踊る〜』よりは志は高く、魅力的ではあります(って、そんなの比べるなよ(笑))。
さて映画の日です。まずは『オアシス』。始まって暫くは「こりゃ、キッツイなぁ・・・」という思いが頭を過ぎったのですが・・・。この作品は素晴らしい演出手腕と、その要求に十二分に応えた演技で紡がれた稀有な作品と言えます。甘い!という人も居るでしょうし、うそ臭い!という人も居るでしょう。結局はコワレ者とハミダシ者の映画だろ!という人も居るでしょう。中には汚い!と言う人も居るかもしれません。それらの意見を否定する気などサラサラありません。それでもこの映画は素晴らしいし、評価されるべき作品だと思います。見た目は身体障害者でも喜びは健常者と同じ!という当たり前のコトをここまで端的に表現した映画も珍しいでしょう。そのシーンは突然観客の前に現れ、風のように消えてしまいます。その儚さは清涼感さえ感じさせてくれました。だからでしょうか・・・周りですすり泣く音も聞こえたのですが、不思議と涙は零れませんでした。涙腺の弱いオイラにとっては珍しい出来事です(苦笑)。話は想像をしている通りの展開を示しますが、ラストの明るい日差しが何故か微笑ましい映画でした。監督はイ・チャンドン。この人は前作『ペパーミント・キャンディー』でもそうだったのですが、ちょっと長いのが玉に瑕だわなぁ・・・・ボソ。
デッカード
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