Dailymovie
DiaryINDEXpastwill


2003年02月23日(日) 映画よろず屋週報 Vol45「2002年度アカデミー賞 その1」

********************************************************

特集「2002年度アカデミー賞 その1」

2月11日、2002年度の米国アカデミー賞候補が出揃いました。
3月23日の発表が待たれるところですが、
今回から発表までの間、
今回のノミニーに関する作品等を
少しずつ御紹介していきたいと思います。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

監督賞部門

マーティン・スコセッシ 1942年生まれ
(“スコシージ”などと表記している媒体もあり)
今回『ギャング・オブ・ニューヨーク』でノミネート
脚色賞及び監督賞で何度もノミネートされていますが、
未だ受賞歴はありません。
マフィアの世界をちょっとスタイリッシュに、
それでいて図太く描いた『グッド・フェローズ』
(1990年監督・脚本両部門でノミネート)がお勧め


スティーブン・ダルドリー 1960年イギリス生まれ
2000年『リトル・ダンサー』でノミネート済み
温かみとイギリス風のシビアなユーモアが同居した
すばらしい作品でした。
今回は『めぐりあう時間たち』で
ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、
メリル・ストリープなどのそうそうたる女優を料理したとか。


ペドロ・アルモドヴァル 1951年スペイン生まれ
今回は『トーク・トゥ・ハー』でノミネート
過去に監督した『神経衰弱ぎりぎりの女たち』
『オール・アバウト・マイ・マザー』
外国語映画賞候補になった実績があります。
2作品を見る限り、
独特のユーモア感覚の持ち主と見受けます。


ロマン・ポランスキー 1933年ポーランド生まれ
今回、作品賞の大本命と言われる
『戦場のピアニスト』を監督し、
本人も監督賞にノミネートされました。
今回の候補の中では、スコセッシと並ぶビッグネームですが、
こちらも過去脚色・監督賞の候補に挙がるも受賞歴なし。
さて、そんな輝かしい実績の中では、
洟もひっかけられないような作品ではあるものの、
1988年の『フランティック』は意外とイケます。
イライラ系サスペンスがお好きな方にお勧め


ロブ・マーシャル 1960年生まれ
前評判の高い『シカゴ』でノミネートされましたが、
映画監督としての実績も、
日本での知名度もまだこれからという感の
どちらかというと「舞台の人」のようです。
1999年テレビ版『アニー』の監督と振付を手がけました。


2003年02月16日(日) 映画よろず屋週報 Vol44「スクリーンの中は荒天?」

*****映画よろず屋週報 Vol44 2003.2.16*********************

皆さん、こんにちは。いかがお過ごしですか。

本日は、日本映画界が誇る大スター、
高倉健氏の誕生日だそうです。
72歳におなりだそうですが、いつも若々しいですね。

*********************************************************

特集「スクリーンの中は荒天?」

2月16日は天気図記念日です。
1883(明治16)年、
ドイツ人気象学者エリヴィン・クニッピングの指導で、
日本初の天気図が作成されたことに因むとか。

そこで、気象現象が映画の「大道具」になっている、
そんな作品を御紹介いたします。

ただし、まことに勝手ながら、
当方、パニック映画というものをほとんど見ないため、
その種のものはほとんどありませんことを
御了承いただきたく存じます。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

フラッド Hard Rain
1998年アメリカ  ミカエル・サロモン監督

アメリカの小さな町が、集中豪雨とダムの決壊により
まさに水没状態。
そのどさくさに、大金を奪おうとする強盗団も登場し、
何だかカラフルな展開になっていきます。
クリスチャン・スレイター、モーガン・フリーマン、
ミニー・ドライヴァー
などが出演しています。

恋は嵐のように Forces of Nature
1999年アメリカ ブロンウェン・ヒューズ監督

原題を直訳すれば、「自然の力」。
偶然出会った男女(ベン・アフレック
サンドラ・ブロック)が、
交通トラブルや嵐に阻まれながら、一緒に旅をする中で、
次第に惹かれ会うようになる…という、
ロマンス版「大災難P.T.A.」という趣の物語でした。
B.アフレックはじき結婚する婚約者のもとに
帰る途中という設定でしたが、
婚約者(モーラ・ティアニー)の母役を、
ベンの実生活の元恋人だったグウィネス・パルトロウの
実母に当たるブライス・ダナーが演じていたのは、
何かの冗談でしょうか。
日本語タイトルのダサさや設定の陳腐さ、
そして何かと鳴り物入りだったことが
残念ながらマイナスに働いてはいたものの、
じっくり見ると、それほど悪い作品ではありません。

オズの魔法使 The Wizard of Oz
1993年アメリカ ビクター・フレミング監督

たとえ、大人になってから1度もこの映画を見ていなくても、
あるいは、子供の頃に見た記憶が相当に曖昧でも、
ドロシーの小さな家が、竜巻に巻き上げられるシーンは、
なぜだか覚えているような気がする……
そんな印象が、この映画にはあります。
ライマン・フランク・ボームの原作を、
美しくめり張りよく映像化した不朽の名作といえましょう。

素晴らしき日 One Fine Day
1996年アメリカ マイケル・ホフマン監督

「ある晴れた日」と訳した方が、
映画のクライマックスまでなかなかやまない雨のシーンを
皮肉に引き立ててくれた気がします。
建築家メラニー(ミシェル・ファイファー)と、
コラムニストのジャック(ジョージ・クルーニー)が、
それぞれの子供を学校行事に遅刻させてしまい、
仕事の忙しい合間を縫って、持ちつ持たれつ、
交代で子供たちの面倒を見るうちに、
けんかしながらも惹かれて合っていくという物語。
現代的な設定はともかく、どこかフランク・キャプラの
ロマンチック・コメディのような味わいのある作品でした。


そういえば、冒頭で触れた高倉健さんですが、
『八甲田山』(1977年・森谷司郎監督)という映画がありました。
気象データを集めるための踏査中に猛吹雪に巻き込まれ、
これ以上ないであろうはまり方の
「天は我々を見放した」なる名台詞も有名です。
実は私自身は、あの映画をじっくり見たことがないのですが、
(テレビで見るともなしに、という程度)
ごくごく近しい人間で、まさに八甲田山状態の吹雪の中、
あの映画を見にいったという人物を知っております。


2003年02月14日(金) ミッドナイト・エクスプレス

1944年2月14日、
映画監督のアラン・パーカーが生まれました。

ミッドナイト・エクスプレス
Midnight Express

1978年アメリカ アラン・パーカー監督


1970年代初頭、
アメリカの青年ビリー・ヘイズ(ブラッド・デイビス)が
トルコに恋人と旅行した際、麻薬不法所持で逮捕されました。
最初は微罪として、
対応次第ではすぐに出られるかと思いきや、
アメリカとトルコの関係が悪化するに伴い、
政治的な取引の材料にされてしまって、
終いには絶望的な長期の懲役を言い渡され……

一般的に、映画の評価が2割は上がると言われる(嘘)
いわゆる実話ベースものです。
実際日本人でも、全くの濡れ衣で
外国の刑務所に収監された例は結構あるようですし、
乱暴に言えば、「明日は我が身」な展開が
体の芯まで冷やしてしまいそうな映画でした。

ひっかかるのは、
ビリーが麻薬を所持していたのは
濡れ衣ではなく事実だということ、
そして、彼も含め彼の周囲も、トルコという国を舐めきって、
「すぐ出られるだろう」とかなり緩く考えていたという傲慢さ、
これぞアメリカ人って感じの態度が目につくところでした。

とはいえ、
裁判のたびに延期される刑期に絶望し、
反省しながらももがくビリー青年の姿や、
アホ息子の不始末のために奔走する父親、
恋人とのガラス越しの面会などを見ているうちに、
引き込まれていこものがあります。

ただでさえ言葉の通じない異国で、
刑務所環境の劣悪さは目を覆うばかりです。
また、服役前はノン気だと思っていた男も、
男性との睦み合いに目覚めちゃったりします。
(同じく刑務所が舞台の『ショーシャンクの空に』でも、
ム所で同性愛に目覚めだ男たちのことを
「女がいないから男とヤっているだけ」と言っていましたが…)

生き地獄というものが本当にあるのならば、
ここは間違いなくその1つでしょう。
実話とはいえ、1人の愚かな若者の視点でしかないわけで、
そうした描写の数々が、
偏に差別的に映るのも仕方ないことですが、
これも映画の表現方法の1つだと思って見られれば、
受け入れられるかどうかはともかく、
存在に納得することはできるのではないでしょうか?

というような意味で、
大っ嫌いだけれど、おすすめな作品として
御紹介させていただくことにしました。

ちなみに脚本は、
今や監督としても知名度が高いオリバー・ストーンです。


2003年02月11日(火) スティル・クレイジー

記念日サイトで「2月11日」を見たら、
こんな出来事が載っていました。

バンドブームを起こした
TBS『平成名物・イカすバンド天国』が放送開始
(1989年)


俗に「イカ天」と呼ばれた人気番組で、
最後まで曲を演奏することができたときの、
完走ならぬ完奏なる言葉は、
ちょっとしたブーム?になりましたが、
さて、イカ天出身バンドで現在も名前が残っているのは?
……日本の音楽シーンに全く詳しくないので、
(海外に詳しいわけでもありませんが)
これ以上の追求は避けましょう。


バンドの人間模様を描いた映画には傑作が多いですが、
今日はこの映画にいたしましょう。

スティル・クレイジー Still Crazy
1998年イギリス ブライアン・ギブソン監督

公式サイトはこちらです

大ヒット映画というのは、
一種の記号として使われることがあります。
オシャレ(と思われたい)人間の部屋には
○○や△△のポスターが張ってあるのはありがち、
障害をはらんだボーイ・ミーツ・ガールの映画というと、
すぐに「□□版○△×」と呼ばれる等々。
私もウェブ上で必要以上に嫌われたくないので、
固有名詞を出すのは差し控えますが、

そうした言い回しには、
余り好意的な意味はないことが多いのもまた
よくある話です。

20年前は結構イケてたのに、
元人気バンド、今やただのくたびれたオヤジの集団の
奮闘記であるこの作品は、
ロック版『フル・モンティ』などという名前で
売り出されておりました。
この作品も『フル・モンティ』も大好きな私には、
特に異論はございません。

1977年、ウィズベック野外ライブを最後に解散した
「ストレンジ・フルーツ」
キーボード担当だったトニー(スティーブン・レイ)は、
同ライブの20周年記念イベントに参加するため、
当時のメンバーに召集をかけます。
トニー自身が「家族計画グッズ」の
風采の上がらないセールスマンでしたが、
元の仲間たちを探してみると、ヤク中あり、
借金で首が回らない奴あり、
音楽で辛うじて成功しているかと思えば、
内実は相当にお寒い生活をしている奴あり…で、
どうも盛り上がりません。

マネージャーだった
カレン(ジュリエット・オーブリー)は、
ホテルで働きながら女手1つで娘を育てていますが、
娘まで巻き込み、トニーに協力してくれます。
メンバーとは全く関わりのない男性と結婚し、
結局は離婚した彼女でしたが、
メンバーの中に熱烈に愛していた恋人がいたのでした。

そうして何とか集めたメンバーは、
再結成、そして勘を取り戻すべく、
ツアー(どさ回り)を繰り広げますが……

それほど悪意を感じさせない、
何だかほっこりするような笑いを提供しつつ、
ちゃんと「ロックの映画」になっているのは立派です。
また、ほろ苦い人間ドラマもいいアクセントになっていて、
きちんと人間が描写できているところに好感が持てます。


2003年02月09日(日) 映画よろず屋週報 Vol43「ミア・ファローとウディ・アレン」

特集「ミア・ファローとウディ・アレン」

1945年2月9日、
女優のミア・ファローが生まれました。
決して醜くはないけれど、
美人女優と言い切るには葛藤があり、
でもって、映画の中のふとした瞬間、
「絶世の美女」になりきっていることもある、
そういう不思議な魅力のある彼女は、
80年代、それが「職業」であるかのように、
恋人ウディ・アレンの映画のヒロインとして活躍しました。
アレンにとっても数々の傑作が生まれた時期だったので、
2人の泥沼離別は、かえすがえすも残念です。

そんなわけで、本日御紹介する映画は、
すべてウディ・アレン監督作ですので、
監督名は割愛させていただきます。
(アレン自らも出演しているものには、
(出)のマークをつけております)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

サマーナイト  
Midsummer Night's Sex Comedy
1982年(出)

アレンとファローの初仕事がコレでした。
原題から察させられるであろうとおり、
いわゆる艶笑コメディーです。
1900年、郊外の別荘で過ごす3組のカップルの
スクランブル状態の色恋沙汰を、
じめっとしない調子で見せてくれました。
ファローの役はホセ・ファラー扮する大学教授の
若い婚約者という設定でしたが、
何とこの映画で、悪名高きゴールデン・ラズベリー賞に
ノミネートされたそうです。
でも、それほど悪いとも思えませんでしたが…
アレンは、メーリー・スティーンバージェンと
倦怠期の夫婦という設定でした。

カメレオンマン Zelig 1983年 (出)
アレン作品の中ではこれがベスト!という方も
いらっしゃるのでは?
1930年代を舞台にした、人に好かれようとする余り
主体性というものを全く失ってしまい、
そのとき一緒にいる相手とまるっきり同化してしまうため、
「カメレオンのようだ」と評された男、
レナード・ゼリグ(アレン)の物語です。
全くのフィクションでありながら、
まるで実在の人物であったかのような語り口で、
ヒットラーとまで「共演」させてしまった意欲作。
日本では吹替版のみの上映でしたが、
矢島正雄さんの語り口は抜群でした。
ちょうどNHKの海外ドキュメンタリーのような味わいです。
ファローは、ゼリグを診察する医者で、
後に恋に落ちるという役どころでした。

ブロードウェイのダニー・ローズ
Broadway Danny Rose 1984年(出)

ダニー・ローズは、売れない芸人たちを
心血を注いで世話している人情派のエージェントです。
(アレンがとってもいい感じで演じています)
歌手ルー(ニック・アポロ・フォルテ)のために、
ギクシャクしている彼の愛人との中を
取り持とうと奔走しますが…
その愛人役を、ファローが演じました。
ちょっと蓮っ葉なインテリア・デザイナーという設定でしたが、
いつもと違ったとんがった女性の役づくりは、
当時2人が行きつけだったレストランの支配人がモデルとも
言われているそうです。
決して派手さはありませんが、
実はこの映画、私自身のアレン80年代ベスト作品です。

カイロの紫のバラ The Purple Rose of Cairo 1985年
ラジオ・デイズ Radio Days 1987年

実際の製作順番としては、
この2本の間に名作『ハンナとその姉妹』が入りますが、
アレンが監督に徹したこの2本こそ、
入門編としてお勧めしたい作品です。
前者は、1930年代、映画を見ることで
日々の憂さを晴らす気弱な主婦をファローが好演し、
映画ファンの夢とも言える物語展開を見せてくれます。
後者は、みんながラジオに夢中だった
第二次大戦中のニューヨークを舞台に、
ラジオにまつわるおもしろエピソードの数々を軽快に、
それでいて丁寧に編み上げた
見ていて温かくなれる作品でした。
父親の職業(見てのお楽しみ)などから察するに、
やはり、自伝的要素の強い作品のようです。

アリス Alice 1990年
アリスとは、映画の中でファローが演じる
「私ってこのままでいいのかしら」と悩む
金銭的に恵まれた人妻の名前ですが、
「不思議の国のアリス」を意識していることは明らかです。
一時期流行った「自分探し」というキーワードがありますが、
そうしたものに基づいた作品は、
独りよがりになったり、意味不明になったり、
またうっとうしくなったりしがちなものですが(独断)
事この映画に関しては、いらいらしながらも
楽しませてくれます。
最後につかみ取るアリスにとっての「自分の正体」も、
ファロー自身の生き方が反映されているようで愉快。


2003年02月07日(金) プリティー・イン・ピンク/恋人たちの街角

1960年2月7日、
俳優のジェームズ・スペイダーが生まれました。
実は昨年も全く同じ切り口で映画を御紹介したのですが、
今年は脇役、それも、どちらかというと
憎まれ役の彼が見られる作品をどうぞ。

プリティー・イン・ピンク/恋人たちの街角
Pretty in Pink

1986年アメリカ ハワード・ドイッチ監督


顔だけ見ると、
実はイザベル・アジャーニーに似ていないこともない、
けれども、よくも悪くも“個性的な”ルックスの
モリー・リングウォルドは、
間違いなく80年代を代表するアイドルの1人です。
赤毛がよく映える白い肌に、ぽてっとした唇で、
ピンクを基調にした、
キュートでポップな洋服に身を包んだ彼女の姿は、
今もくっきり記憶に残っているという方も
多数いらっしゃると思います。
「恋人たちの街角」なるサブタイトルは、本当に意味不明で蛇足です。

青春スターらしくというべきか、
「大した映画に出ていない」のですが、
人生について深く考えさせることがない分、
無理なく共感したり、てらいなく反感を覚えたりできるのも、
彼女が出演した数々の映画の特徴でしょう。

アンディ(M.リングウォルド)は、父と2人暮らしです。
貧しい生活をレコード店でのアルバイトで支えるしっかり者で、
成績も優秀。
ダッキー(ジョン・クライヤー)という
お調子者の少年に慕われる一方、
お坊っちゃまのブレイン
アンドルー・マッカーシー)といい感じで、
来るべきプロムも、ちょっとは期待できそうです。
けれども、ブレインがそれまでつき合ってきた
金持ちの友人たちは、アンディをよく思っていません。
「貧乏人は自分たちの領分に入ってくるな!」というわけです。
特に、見るからに底意地悪そうなステフ
(J.スペイダー)からは、ひどく嫌がらせをされます。
アンディとブレインの仲は、
この嫌らしい学園ヒエラルキーによって
引き裂かれそうになりますが……

はっきり申し上げて、昨日の『シーズ・オール・ザット』
ほぼ同様・同種のお話です。
つまりは脇もいい感じだということですが、
アンディにとって姉のような存在の
バイト先の先輩イオナ(アニー・ポッツ)の、
「年甲斐もないカワイさ」は特筆ものです。
TVの仕事が多い女優さんですが、
『ゴースト・バスターズ』の秘書役といえば
御記憶の方もいらっしゃるのでは?

それから、私自身は全く覚えていないのですが、
今や“密かな売れっ子”であるジーナ・ガーション
実は出演していたのですね!
あの迫力ある美貌ですから、失礼ながら
アンディをいじめる側の役の方がイメージですが、
実際にはどうだったのでしょうか。


2003年02月05日(水) ロジャー&ミー

東京・恵比寿ガーデンシネマで上映中の
『ボウリング・フォー・コロンバイン』
大入りだそうですね。
ジャーナリストで映画監督でもあるマイケル・ムーアが、
多数の犠牲者を出してきたアメリカ銃社会の核心に入り込む
ドキュメンタリーとのことですが、
この人の持ち味ともいえるオトボケぶりは、
本日御紹介するやはりドキュメンタリー映画製作時から
健在でありました。


ロジャー&ミー Roger & Me
1989年アメリカ マイケル・ムーア監督


世の中には、アメリカ映画はアメリカ映画というだけで
問答無用で×という価値観をお持ちの方も結構いらっしゃるようです。
というか、そういう方々の言う「アメリカ映画」は、
すなわちハリウッド映画という意味なのでしょう。
何を見るかは本当に各人の自由ではありますが、
見る映画が絞られてしまうので、
いっそ気持ちよかろうという気持ち半分、
不自由だろうなあという心配半分です。
私自身は、特に好きな映画を聞かれれば、頭に浮かぶのは、
滋味豊かな欧州やアジア諸国の作品も多いけれど、
一番好きな作品は、ある非ハリウッド系アメリカ映画です。
でも、ハリウッド娯楽ものの一本調子な明るさも決して嫌いではありません。


まあ、本日の映画はドキュメンタリーですし、
見るからにアメリカ人って感じの
でぶっちょのおっさんが撮った作品ですが、
アメリカ映画はあかんと思っている方にこそ
お勧めしたい作品です。
アメリカ映画も好きになれない方が
アメリカそのものを好きになれるわけがないと思うので(暴言)

アメリカ映画嫌い=アメリカ嫌いだと思いますが、
なぜ自分はアメリカという国が嫌いなのかについて
考えてしまうかもしれません。

舞台はミシガン州フリント。ムーア監督の故郷であり、
GMこそゼネラル・モータースの企業城下町でもあったところです。
不況のあおりで、大幅な人員削減のため、
多数の失業者を出したこの町に帰ったムーアは、
その惨状を知ってもらいたいと、
GMの会長ロジャー・スミスへの突撃取材を試みますが……

学生時代、どんな先生が人気でしたか?
科目一辺倒でなく、話が脱線する先生というのは
結構人気があったのではないでしょうか。
しかし、だんだん長ずるにつれ、それだけでなく、
きっちりと歩留りのいい教え方をしてくれる先生に
人気は集中します。
(私は塾や予備校というものに行ったことがないのですが、
これはそうした学校だとなおさらでしょう)

そういう人たちが人気があったのは、
「おもしろくてためになる」という単純な話ではなくて、
きっちりと対象物を見つめる目を持っているからこそ、
脱線はしても、すぐに軌道修正もでき、
決して「訴えたいこと」を見失わないからではないでしょうか。
この映画は、そんな感じでした。
随所随所に、何とも言えないユーモアが漂っています。

ムーア監督のことを、先ほど「でぶっちょのおっさん」という
非常に失礼な形容をいたしましたが、
そのルックスもまた、重要な要素という気がします。
見るからにキレ者というよりは、
最初はその威圧感のないルックスで油断?をさせ、
口を開けばびっくりの鋭利さ。
「狙って出来る芸当ではない」と言いたいような
人間味あふれるドキュメンタリーを、ぜひごらんくださいませ。

ちなみに、ムーア監督は、純粋に「役者」としては、
ジョン・トラヴォルタ、リサ・クドロー主演のコメディー
『ラッキー・ナンバー』に、ちょっとかわいそうな役で
出演しています。こちらも余力があればェックを。


2003年02月04日(火) おいしい生活

おいしい生活 Small Time Crooks
2000年アメリカ ウディ・アレン監督


前科もあるケチなコソ泥のレイ(ウディ・アレン)は、
ストリッパー上がりの妻フレンチー
トレイシー・ウルマン)と、
それなりに楽しく暮らしていました。
フレンチーは、
料理はミートボールのスパゲティしかつくれないものの、
(スラッピージョーをパスタにかけたイメージ?)
クッキーを焼く腕前は抜群でした。

地道に働くことができないレイは、
一山当てようと、刑務所時代の仲間なども集め、
ある銀行を襲う計画を立てますが、
そのカモフラージュのため、
フレンチーにクッキーの店を出させます。
(何がどうカモフラージュなのかは、見てのお楽しみ)
銀行襲撃計画の方は、
初めから「こいつはアホか」としか思えない
実にしょーもないものだったものの、
フレンチーのクッキーは大評判で、
ついには会社を起こしてしまうほどに繁盛しました。

そうなると、銀行など襲っている場合ではありません。
いっぱしの事業家として、
おハイソの仲間入り…と言いたいところですが、
哀しいかな、幾ら高級アパートに住み、
高価な家具調度で飾りたてても、
成金丸出しのセンスの方はどうにもなりません。
レイはそれに甘んじていますが、
金持ちになったら美術家のパトロンになりたいと
考えていたフレンチーは、
ハンサムで教養ある美術商デヴイッド(ヒュー・グラント)に
芸術指南を受けることになります。

レイはレイで、そんなフレンチーに辟易し、
少々トロいものの、気楽につき合える、
フレンチーの親戚メイ(エレイン・メイ)と
ジャンクフード&TVでお気楽に過ごすのでした。

デヴイッドにだんだんと惹かれていくフレンチーと、
メイの気楽さに安らぎを覚えるレイに、
夫婦の危機が訪れるかに見えますが……

W.アレンは、ある意味とっても不幸です。
何しろ才能の固まりみたいな人ですから、
過去に幾つも大傑作をものにしていますが、
それがあだになり、なかなかクオリティの高いものをつくっても、
「ウディ・アレンも落ちたものだ」などという、
利いたふうな評価をされることがあります。
正直、私もこの映画を見た感想の1つはそれでした。
とはいえ、昔気質のドタバタも織り込み、
素直に笑えたのはよかったと思います。
美青年ヒュー・グラントを、いかにもそれっぽい役に配しつつ、
「意地でもアップでなんか撮ってやるもんか」
とでも思っているかのように、
かなり引いた映像が多いのも、何だか笑えました。

この映画のタイトルは、
クッキーで儲けて「リッチでおいしい生活」というニュアンスと同時に、
80年代の西武百貨店のCM(W.アレンが出演)の
キャッチコピー(糸井重里作)を彷彿とさせる
ダブルミーニングで、なかなかよくできていると思いました。
↑やっぱりアレン映画を見ると、利いたふうなことを言いたくなります…



2003年02月03日(月) パッチ・アダムス

パッチ・アダムス Patch Adams
1998年アメリカ トム・シャドヤック監督


実はこの映画を初めて見たとき、
自分的なキーワードはバナナの皮でした。
それについて説明すると長くなるので、恐れ入りますが
こちらをごらんくださいませ。
決して好評価ではなかったのです。

けれども、再び見てみて、僻目で見ていた自分を恥じました。
何だ〜、そりゃやっぱり「あ〜あ」な部分はあるけれど、
いい映画じゃないですか、と。
来日講演の経験もある実在の医師の物語です。

1969年、精神を病んだ青年ハンター・アダムス
ロビン・ウィリアムズ)は、
みずから志望して精神病院に入院しますが、
そこで彼を治癒してくれたのは、医師ではなく患者仲間たちでした。
彼自身もまた、人を笑わせることに喜びと手応えを見出し、
退院後、医学部に入学します。
「笑いの効用」をぜひ医学の世界に!というわけです。
そして“パッチ(手当て)・アダムス”と自称し始めました。

大分とうの立った新入生ではありました。
その上、成績は常にトップクラスで、
でもいつもふざけているようにしか見えないパッチは、
「人間ではなく医者になれ」などと、
ある種マッド・サイエンティストじみたことを言う、
やたら権威主義の学部長ウォルコット
ボッブ・ガントン)に目の敵にされ、
ルームメイトで一族郎党医者だというミッチ
フィリップ・シーモア・ホフマン)にも
妬みも込めて敵視されます。

気のいいトゥルーマン(ダニエル・ロンドン)は、
パッチのよき理解者でした。
格式張った医療制度と病院のやり方から
こぼれ落ちている患者たちを救うために、
無料の治療院をつくったパッチに、最も協力しました。
また、その美しさゆえ、少女時代から
男性から性の対象と見られがちなことがトラウマになっていた
カリン(モニカ・ポッター)は、
軽薄に近づいてくるパッチを警戒しますが、
だんだんと、心を開くようになります。
彼女もまた治療院の協力者の1人でしたが、
そのため、思わぬ悲劇に巻き込まれてしまいました……

1人1人、キャストに説得力がありました。
ボッブ・ガントンは、『ショーシャンクの空に』と
キャラかぶるような“やなおっさん”でしたし、
「おでぶのいい奴」役が多いフィリップ・シーモア・ホフマンは、
この映画では、最初はあくまでも嫌みに、
後にパッチに敬意を示し、同調することになる役を
無理なく演じていました。
親友トゥルーマン役のダニエル・ロンドンは、
「あれ、この人って、『ナーズの復讐』出てなかった?」
というようなルックスなのですが、
Revenge of the Nerds 1984年の作品ですが、
実際には出ていません。
ちなみにナーズとは、コンピューターにかじりついているもやしっ子、
転じて“オタク”

なかなか芯の強いところも見せてくれるし、
何より、カリンを演じたモニカ・ポッター!
あの、少女っぽさが残るあえかな美貌は、
「私、子供の頃から男性に興味を持たれやすかったの」
と苦悩ぎみに告白しても、
「そうでしょうねえ…」としみじみ受け入れられます。

病気に対する笑いの効用は、
今や「思いッきりテレビ」も大注目(多分)の新常識ですが、
あそこまで体を張ってやってくれる医者がいても悪くないかな、
再び見たら、それくらいの気持ちにはなれました。

ただ、映画の中で繰り広げられるギャグの数々に関しては、
「治癒」に役立つかどうか、その辺は各人次第だと思います。


2003年02月02日(日) 映画よろず屋週報 Vol42「ある結婚の風景」

特集「ある結婚の風景」

本日2月2日は、語呂合わせで「夫婦の日」です。
(夫婦絡みの記念日は、ほかにも
「4月23日(よい夫婦)」「11月22日(いい夫婦)」
「11月23日(いい夫妻)」等あり)

そこで、おなじみの俳優夫婦の共演作を中心に
御紹介しようと思う…のですが、
みずから長年のパートナーとの泥沼別離が話題になった
ウディ・アレンの映画『ラジオ・デイズ』でも、
「女優と結婚しても6週間で離婚よ」
などというセリフがあるくらいで、
(ちなみにこの頃は、
まだミア・ファローと懇ろだったと思いますが…)
変動が激しいのもまた特徴の世界です。
なので、今は「他人」となってしまった2人でも、
インパクトのあるカップルについては
あえて取り上げたいと思います。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ビューティフル・マインド
A Beautiful Mind

2001年アメリカ ロン・ハワード監督

統合失調症の障碍を抱えながら
すばらしい業績をおさめた
実在の数学者ジョン・ナッシュの半生に基づいた作品。
(完璧な実話ではなく、かなり“創作箇所”があることも
話題になりました)
この作品の主人公ジョン・ナッシュ(ラッセル・クロウ)の
妻アリシアを演じたジェニファー・コネリーは、
ナッシュの親友役だったポール・ベタニーと、
1月10日、結婚したそうです。
映画の中では特に絡むシーンはありませんでしたが、
なかなかお似合いという気はします。
(ちなみにR.クロウも、
女優のダニエル・スペンサーと婚約中)

インナースペース Innerspace
1987年アメリカ ジョー・ダンテ監督

1950年代の『ミクロの決死圏』のリメイクで、
パイロット(デニス・クエード)が縮小化され、
気弱なスーパー店員(マーティン・ショート)の体内を
ぐるぐる探査するはめになる…という
コメディタッチのSF作品。
D.クエードと、その恋人を演じたメグ・ライアンは、
私生活でも艱難を乗り越えて結婚し、
人もうらやむ仲良しカップルになっただけに、
一昨年の離婚騒動は非常に残念でした。

いつか晴れた日に
Sense and Sensibility

1995年アメリカ アン・リー監督

アメリカ人がカネを出してつくった
超おイギリスなロマンチックコメディー。
原作はジェーン・オースティンの「分別と多感」です。
この作品で、軸になる姉妹の長女エリノアを演じた
エマ・トンプソンは、私生活では
次女マリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)の
意中の青年を演じたグレッグ・ワイズとの間に
子供がいるそうです。
(結婚はしていないようですが)

あなたに恋のリフレイン
The Marrying Man

1991年アメリカ ジェリー・リース監督

邦題の「いただけなさ」と、
どちらもよい素材なのに、使われ方を誤っている(気がする)
アレック・ボールドウィン&キム・ベイシンガー(元)夫妻が
繰り広げる、実話ベースのラブコメディー。お勧めです。
「いただけない」邦題ながら、
1組の男女が、結婚・離婚をコミカルに繰り返すさまは
よく表現している気がします。

シーズ・ソー・ラブリー
She's So Lovely

1997年アメリカ/フランス
ニック・カサヴェテス監督

ラブロマンスを細分化すると、
絶対1ジャンルとして成立しそうなものに
「凶暴な純愛系」というのがあります。
(名前はどうでもいいのですが)
これもいわばその1本で、
はた迷惑なほどに純粋に愛し合う夫婦の物語でした。
演じるは、
ショーン・ペン、女ロビン・ライト・ペン…って、
モノホンの夫婦かよっ。
彼らを取り巻く役者さんも豪華でした。
ハリー・ディーン・スタントンジョン・トラヴォルタ
そして監督の母でもあるジーナ・ローランズなど。
ちなみに、この映画の脚本に当たるのは、
姓からもおわかりでしょうが、
監督の父、ローランズの夫だった
故ジョン・カサヴェテスの遺稿だとか。

ショーン・ペンが「アイ・アム・サム」に出演したとき、
インタビューで、
「この映画に出たことで、自分の子供にも
よい作用があった」
と答えているのを読みました。
あの、マスコミ嫌いで有名で、演技はともかく
万年問題児みたいだったS.ペンの口から、
自分の子供について話すまでにさせた
妻ロビン・ライト・ペンなる女性は、
映画の役どころは頼りなげな女性も多いものの、
きっと、非常に気丈で魅力的なのでしょうね。
(ショーン・ペンが勝手に年とって丸くなったという
見方もできなくはないですが)


ユリノキマリ |MAILHomePage