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7年前、1995年の2月25日、 FMラジオの「JALジェットストリーム」での名調子でも おなじみだった声優の城達也さんが亡くなりました。
城さんといえば、 やっぱりグレゴリー・ペックの声!ということで…
アラバマ物語 To Kill a Mockingbird 1962年アメリカ ロバート・マリガン監督
はからずも、2日続けて「差別」を扱った映画になりました。
ハーパー・リーの『ものまね鳥を殺すには』に材を得た作品です。 「聖書の次によく読まれている」と称されたほどのベストセラーで、 女優デミー・ムーアも、何番目かの子供の名前を この作品の主人公からとったというエピソードがあります。
1930年代のアラバマ州モービル。 黒人の青年が白人女性を強姦するという事件が発生しました…が、 どうも雲行きがおかしいというか、 白人女性の証言に、あいまいなところが見られました。 本当にこの青年は強姦などしたのか?
その裁判で、黒人の青年の弁護を担当したのが アティカス(G.ペック)という男でした。 妻に先立たれた彼には2人の子供、ジェムとスカウトがいて、 2人を愛情をかけて育てる中で、 差別の愚かさ、恐ろしさを説いていました。
その時代背景、アメリカ南部という舞台設定を考えても、 黒人というだけで「何するかわからない人種」としか考えない、 そんなうそ寒い状況は容易に想像できます。
失礼ながら、「大根役者」と言われたG.ペックは、 この映画の演技でアカデミー主演男優賞を受賞しました。 確かに、「うまいっ」とうなるような演技ではないと思いましたが、 役柄にぴったりの誠実そうな個性がよくにじみ出いて、 ぴしゃっとはまっていたと思います。
また、いつもオーパーオール姿のおてんば娘 スカウトを演じたメアリー・バダムは、 『サタデー・ナイト・フィーバー』ほか数々の作品を監督した ジョン・バダムの妹だそうです。参考までに…
昨日御紹介した『招かれざる客』に比べると、 手厳しくて苦い作品ではありますが、 大切なものをたくさん含んでいたと思います。 悩める人物の美しさを御堪能くださいませ。
2月23日、映画監督のビクター・フレミングが生まれました(1883年)。
オズの魔法使 The Wizard of Oz 1939年アメリカ ビクター・フレミング監督
原作は有名ですし、映画化も何度もされていて、 何かしらごらんになった方も多いと思います。
私自身の原体験は、70年代のテレビドラマシリーズでした。 (74~75年ぐらいに放送されていた…はず) といっても、内容はろくろく覚えていないのですが、 当時、スポンサーだったホンダのディーラーに行くと、 「かけると立体に見える3Dメガネ」をもらえる…というのが 売りだったようなことは、しっかり覚えています。 うちの至近にディーラーさんがあったので、 早速もらいにいきましたが、兄が全く独り占めしてしまって、 私は最終回後のCMになってからやっと貸してもらえたのでした。 でも、当然そんなものを見ても、立体には見えるわけもなく、 本編はずっと「無意味にブレた映像」だけ見せられていました。
それはともかく。
カンザスに住む少女ドロシー(ジュディ・ガーランド)が、 愛犬トト、 それぞれに渇望するもののあるカカシ、ロボット、ライオンとともに、 オズの魔法の国で大冒険を繰り広げるお話です。 魔界に入るまでがモノクロ、魔界のパートが鮮やかなカラーで、 特殊効果もへったくれもない時代の素朴な映画ながら、 「大人だってわくわくする」作品に仕上がっていました。
テーマ曲【Over the rainbow】も有名ですね。 可憐なジュディー・ガーランドの愛らしい歌声も、この映画の一部です。 彼女は後に映画監督のヴィンセント・ミネリとの間に 後に大スターになる女の子をもうけました。 それがライザ・ミネリです。 (釈迦に説法的な書き方になってしまったら、ごめんなさい) この曲に関して言えば、 マーク・ハーマン監督の『リトル・ヴォイス』(1998)の中で、 主演のジェーン・ホロックスが、細い声で歌っていたのも 非常に印象的です。
この映画を見た後、犬にトトという名前をつけている人を見ると (実際にそういう人は大抵、創作の中の人物だったりしますが) 『オズの魔法使』が好きなのかな?などと思うようになると思います。
本日2月21日は、 1872年、東京日日新聞(現毎日)が創刊されたことに因む、 「日刊新聞創刊の日」だそうです。
ザ・ペーパー The Paper 1984年アメリカ ロン・ハワード監督
いつも多彩なエンターティンメントを提供してくれるR.ハワード監督の ちょっといいコメディーです。
別の新聞社への移籍を考えている記者ヘンリー(マイケル・キートン)。 妊娠中で気持ちが高ぶっている妻(マリサ・トメイ)と ゆっくり話す時間さえなく働く毎日ですが、 ある日、自分の勤める新聞社が、 殺人事件の報道で遅れをとってしまいます。 ムカつく上司アリシア(グレン・クローズ)は、 容疑の固まっていない黒人2人を あたかも犯人であるかのような記事を仕立て、 それをトップに持ってこようとしますが、 ひょんなことから有力情報をつかんだヘンリーは、 それを何とか阻止しようとします…
達者なG.クローズは、 『101』でも強烈な個性で残酷女クルエラを演じていましたが、 この映画での彼女も、野心的で、嫌なヤツで、 しかもコメディー演技全開でした。 輪転機が回り始めてから記事の差し止めをしようとする マイケル・キートンとの直接対決の模様は、 ちょっとした語り種ではないでしょうか。
映画全体の中で見れば傍流ながら、 ロバート・デュバル演じる編集長と、 疎遠になっていたその娘との交流も、 なかなか心温まるエピソードとして「効いて」います。
移籍話は結局どうなるのか?身重の妻は大丈夫なのか? 24時間のドラマを御堪能くださいませ。 意外と知られていない作品だと思うので、 ぜひお勧めいたします。
1947年2月20日、イギリスがインドの独立を承認しました。 そこで…
インドへの道 A Passage to India 1984年イギリス デヴィッド・リーン監督
BAFTA(英国アカデミー賞)の監督部門賞に名を残す 名匠デヴィッド・リーンの遺作となった作品です。 ちなみに原作は、数々の傑作イギリス映画のモチーフとなった E.M.フォースターによるものでした。 (『ハワーズ・エンド』『モーリス』『眺めのいい部屋』など)
1920年代、植民地インドに赴任している婚約者を訪ねた 英国人娘(ジュディ・デイビス)と、 その義理の母親となる老婦人(ペギー・アシュクロフト)。
娘はほんの好奇心から、秘境マラバー洞窟を訪れますが、 カルチャーショックにより、精神的に軽い錯乱を来します。 それが思いもよらぬ事件につながり、 ひいては反英運動へと発展していくのでした…
私は残念ながら行ったことがないのですが、 インドというところは、訪れれば人生観が変わるといいますね。 昨年暮れに惜しまれつつ世を去ったジョージ・ハリスンの インドへの傾倒ぶりも有名でした。 何かを染め上げてしまうような神秘のパワーを感じさせる場所として、 この世の中で、最もふさわしい場所かもしれません。
この映画に壮大なスケールで描かれたインドという場所も、 思わずため息の漏れるようなところでした。 そこへ持ってきて、若い女性の不安定な心理や、 常に高貴な女性としての美点を損なわない老婦人、 (この映画における白人の嫌らしい傲慢さを、 このP.アシュクロフトの名演が救っている感じでした) 哀しいほどに英国人に卑屈な態度をとってしまう現地の人々など、 細かな人間描写も巧みで、非常に見応えのある作品でした。 2時間38分の長尺ものですが、 お時間のあるときに、ゆっくりごらんになってみてください。
きょう2月19日は、「花」に因んだ作品を取り上げたいと思います。 2月19日の花は木蓮、マグノリアです(異説もあり)。 とはいえ、そのものズバリを狙うと、 H.ロスの『マグノリアの花たち』も、 P.T.アンダーソンの『マグノリア』も、既に取り上げ済みなので、 では、この作品はどうか…と。
熱き愛に時は流れて Everybody's All-American (as known as…“When I Fall in ove”) 1988年アメリカ テイラー・ハックフォード監督
アメリカン・フットボール選手ギャビン(デニス・クエイド)と、 典型的サザーン・ベル(美しいアメリカ南部女性)として 「ミス・マグノリア」にも選ばれた女性バブス(ジェシカ・ラング)は 誰もがベストカップルと思っていました。 しかし、長い人生には挫折も苦難もつきもので… そうして描かれる25年の軌跡がこの映画です。 バブスに憧れるギャビンの甥を演じたティモシー・ハットンの 童顔と好演も印象的です。
私はそちらの方面には疎いのですが、 この映画について今ネット検索しようとすると、 「アメフト映画」としてカウントされている場合が多いですね。 なので、アメフトに興味をお持ちの方にまずお勧めします。 私としては、試合の描写などがどの程度の扱いなのか、 ちょっとわかりかねました。
むしろ印象に残っているのは、J.ラング扮するヒロインの強さです。 正直、撮影当時ですっかり成熟し切ったオトナの美女ですから、 その「女子大生スタイル」は、 『恋人たちの予感』のメグ・ライアンのときよりキツいのですが、 その分、人生の荒波に呑み込まれた後の彼女の手腕発揮が 本当にほれぼれするような感じでした。 フットボール選手生命を終え、うらぶれているギャビンが、 意外な商才を発揮してバリバリ仕事をこなしつつ、 全く艶っぽい美しさを失っていないバブスを、 「浮気でもしているんじゃ…」と疑惑の目で見るくだりがありましたが、 そんな愚かな妄想を抱かせるには十分な強い美しさです。
地に足がついた感じの恋愛映画をお求めの際は、 思い出してみてください。
2002年02月18日(月) |
グッドモーニング、バビロン! |
-2月18日は、女優グレタ・スカッキの誕生日です(1960年)。 官能的な役どころで光る、ちょっと毒のある感じの美女ですが、 そういう顔立ちの人は、意外とクラシックな装いがイケるようで…
グッドモーニング、バビロン! Good Morning, Babylon 1987年アメリカ/フランス/イタリア パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督
D・W・グリフィス監督が映画草創期に撮った傑作 『イントレランス』の誕生秘話(ただしフィクション)ですが、 あの映画をごらんになっていなくても、もちろん十分楽しめます。 (私もまだ機会に恵まれず、見ておりません)
いつも対等に仲良くやってきたイタリア人の兄弟、 アンドレアとニコラは、 夢をつかむためにアメリカに渡ります。 最初は余りいい仕事に就けないものの、 映画に使う象のオブジェを創って グリフィス監督のお気に入りになり、 それぞれに美しい新進女優を妻に迎え、2人とも同様に妊娠。 が、出産時、ニコラの妻の容体が急変し…
ニコラを演じていたのが、ヴィンセント・スパーノ。 イタリア系アメリカ人の暑苦しいハンサム顔です。 そのニコラの妻エドナを演じたのが、グレタ・スカッキでした。
大事なことを丁寧に描こうとする余りか、 例えば新進女優たちと兄弟との出会いから成就までとか、 大きなお腹を誇らしげにつき出して歩くシーンなどは、 何となくあっさりと扱われていて、ある意味おとぎ話的でした。 けれども、障害もなくテンポよく進むシーンがあればあるほど、 後に襲いかかる悲劇(特に第一次世界大戦)との コントラストが鮮やかで、 映画として、非常にシーンの取捨選択がうまいと思います。
2人が思い人に贈った恋文の名文句が、 グリフィスの撮影所で流行語になったり、 微笑ましいシーンも枚挙に暇がないほどです。 ちなみに後に兄アンドレアの妻になる女優は、 メイベルという役名でした。 エドナ、メイベル…どちらも 往年の女優の名前にヒントを得たようです。
いろいろな意味で美しい映画だと思いますので、 多くを語らず(既に語っていますが)、 率直にお勧めいたします。
2月17日、 俳優のルー・ダイアモンド・フィリップスが 生まれました(1962年)。 その生い立ちと顔だちから、 エスニック色の強い役を多く振られている人ですが、 やっぱりコレでしょう。
ラ・バンバ La Bamba 1987年アメリカ ルイス・バルデス監督
1958年に不慮の事故で17歳で亡くなった実在の歌手 リッチー・バレンスの生涯を綴った伝記映画です。
メキシコ系移民の貧しい家に生まれ育った リッチー(ルー・ダイアモンド・フィリップス)は、 音楽の才能に恵まれ、やがてそれを見出されて 若くして大スターになりますが、 いつも見る「飛行機事故」の夢に悩まされていました。 愛する父親を飛行機事故で亡くしていたのです。
彼には性格が正反対の兄(イーサイ・モラレス)がいました。 詐欺罪での前科持ち、 リッチーのガールフレンドもとってしまうという困った奴ですが、 弟の才能に嫉妬しつつ、彼の一番の理解者でもあります。
ガールフレンド、ドナ(後のヒット曲のタイトルでもある)の親に、 人種的なことで白い目を向けられることもありましたが、 その音楽やひたむきな性格は、やがてみんなから愛され、 ただ1つ、繰り返される飛行機事故の夢を除けば、 彼の人生は順調そのものに見えました…
映画のタイトルになっている「ラ・バンバ」も、 彼の原点であるメキシコの民謡に材を得たヒット曲で、 この映画化に当たり、ロス・ロボスがカバーして、 それも映画とともに大ヒットというおまけつきでした。
1人の若いスターの明るい笑顔と、 やがて訪れる悲劇の対比が鮮やかで、 非常に共感できるつくりの青春映画でした。 時代を彩る音楽たちも、非常にいい感じです。
なお、時を同じくして事故に遭ったバディー・ホリーの物語も 1978年に映画化され(『バディー・ホリー・ストーリー』)、 主演のゲーリー・ビジーが アカデミー賞にノミネートされるほどの 熱演を見せましたが、 残念ながら、こちらは日本未公開のようです。 ビデオで見ることはできますが、 「運がよければ」という感じでしょうか。
ちなみに、『ラ・バンバ』の作中でバディー・ホリーを演じた ミュージシャンのマーシャル・クレンショーは、 同時期のヒット映画『ペギー・スーの結婚』でも、 同窓会のシーンで演奏していました。 (「ペギー・スー」「ユー・ビロング・トゥ・ミー」など) こうして80年代後半の青春映画を取り上げると、 本当にあの頃、オールディーズづいていたことがよくわかります。
失われた週末 The Lost Weekend 1945年アメリカ ビリー・ワイルダー監督
「アパートの鍵貸します」「麗しのサブリナ」といった作品の ワイルダー・タッチを想像すると、 「裏切られた!」と思ってしまうほどにビターでしたが、 秀作には違いありません。
要するに、人はどうやってアルコール依存症になっていくか、 そして、なってしまったら、後に模索すべき道は?というような、 リアルで厳しいお話でした。
「○○依存症」という言葉がありますが、どんな言葉を入れても、 近代病理として成り立ってしまいそうな勢いです。
「買い物依存症」の人は、買ったものの額を聞かれると、必ず 安く値引いて答えてしまう、とか聞いたことがあります。
映画の中のレイ・ミランドも、 飲んだ飲まないの話になれば、平気で嘘をつくし、 酒瓶も巧みに隠すし(その方法に御注目!です)、 飲み代がなければ、家政婦さんに払うべき給料にも手をつけました。
心配する恋人や兄をも裏切り、 とにかく酒、酒、酒と求める男の姿の救いのなさは、 「夢を見せてくれる」という 映画の1つの役割は全く負っていませんが、 何かを考えさせるという点では、 社会的意義の大きな作品だと思います。 たまには、このような作品もどうでしょうか?
2月14日、 映画監督のアラン・パーカーが生まれました(1944年)。 幅広いジャンルで傑作・怪作を連発している人ですが、 中でも評判が芳しくなく、でも私は決して悪くないと思っている作品を、 本日は御紹介させていただきます。
愛と哀しみの旅路 Come See the Paradise 1990年アメリカ アラン・パーカー監督
タイトルがイカニモですねえ…。 これが適切だとは思いませんが、 この映画のメロドラマとしての一面はよく伝えていると思います。
第二次大戦下、 日系二世の娘とアイルランド系アメリカ人との恋愛、禁じられた結婚、 そして日本敗戦後、 敵国人(といってもアメリカ人には違いないのに…)の中でも 日系人だけが受けた強制収容所での生活という試練などが、 今まで何かと槍玉に上がってきた「勘違いニッポン映画」からすると、 かなり頑張って表現してあったと思います。 たとえそれが、所詮白人の視点の域を出ていなかったとしても、 少なくとも、「物を正しく認識しようとする白人」のそれではありました。
日系二世の娘リリーを演じたのは、タムリン・トミタ。 一時期、「この手の役はすべてお任せ」だったエイジアン美女です。 この映画がつくられたのがもう7~8年遅かったら、 『チャーリーズ・エンジェル』などでもおなじみの ルーシー・リューでもイケたかもしれません。 (…と言いたくなるほどに、逆にタムリン・トミタは 中国系の役も多いんですよね…)
アイリッシュアメリカン、ジャックを演じたのは、 デニス・クエイドです。 いわゆる「メグ・ライアンの元ダンナ」ですが、 その骨太なハンサムぶりは、 障壁の多い恋愛結婚にもしっかりと対応してくれそうで、 何とも頼もしい限りでした。
「ねんねんころりよ おころりよ」でお馴染みの子守歌など、 日本を表現する挿入曲もいいぐあいにはまっていました。 ジャックとリリーが知り合うきっかけとなるのが、 リリーの兄(男前です)とジャックが友人同士だったということで、 2人で日本製ミュージカルコメディー映画のまねをして おどけて見せるシーンなどもあり、 特に前半はエンタティンメント性が豊かで、 見せどころ、聞かせどころがたくさんあります。
昨日の『炎のランナー』同様、 歴史的事実から学ぶという堅苦しい側面だけではなく、 娯楽映画、恋愛映画としての面もお楽しみくださいませ。
2001年度(第74回)アカデミー賞ノミネート作品が発表されましたね。 『アメリ』の作品賞ノミネートを淡く期待したのですが、 結局、外国語映画賞の方の候補にとどまりましたか…。 (でも、この部門では大本命ですね) 例によって、「日本で未公開の作品」ばかりが登場し、 (辛うじて『ムーラン・ルージュ』) 発表までに半分見られれば上等という感じです。
本日は、ちょうど20年前、 1981年度(第54回)作品賞を受賞したこちらをどうぞ。
炎のランナー Chariots of Fire 1981年イギリス ヒュー・ハドソン監督
1924年のパリ・オリンピックを舞台にした、 信仰とスポーツを絡めたドラマチックな物語です。 実話に基づいているそうですが…。
ケンブリッジ大学に通うユダヤ人のハロルドと、 カトリックの聖職者エリックは、 それぞれに俊足を誇り、オリンピックを目指す若者です。 ハロルドは、人種的に不当な差別を受けてきたため、 世間を見返してやりたいという気持ちから、 エリックは、「神のために走ろう」との思いがあり、 真摯に練習に打ち込みます。
しかし、予選が行われる日は、 エリックにとって非常に意味のある日でした…
「スポーツは神聖なもの」という表現があります。 実は、スポーツにいまいち理解の薄い私は、よくわかりません。 スポーツに取り組む人の高邁な精神を褒めたたえるのには やぶさかでないのですが、 「スポーツそのもの」を「神聖不可侵」にしてしまうと、 逆にその周りがドロドロでも、何でもアリになっちゃわないか?など、 ついヒネたことを考えてしまうものですから… でも、この映画を見ていると、 「スポーツは神聖なもの」という発想は、 ひょっとして、この映画から出てきたのではと思えてきます。 ヨーロッパ人の「努力」と「根性」は、 日本人とはまた違った味わいがありますね。
余りにも有名なテーマ曲(これも作曲賞受賞)ですが、 あれを聞くととりあえず走りたくなる人、 あるいは、走っている最中に「脳内演奏」してしまう人、 結構いらっしゃるのではないでしょうか? オープニングからサービス精神たっぷりに、 この曲の聞かせどころと言っても過言ではないので、 重いテーマとエンタティンメントのバランスが非常にとれたこの作品、 たまには徹頭徹尾味わってみませんか?
2月12日は、子役時代から貫祿たっぷりだった クリスティーナ・リッチーの誕生日です(1980年)。 本日は、そんな彼女のデビュー作をどうぞ。
恋する人魚たち Mermaids 1990年アメリカ リチャード・ベンジャミン監督
美しく自由奔放な母親(シェール)、 清らかな尼僧に憧れながらも、奔放(といっても心だけ)なところは 母親似の長女シャーロット(ウィノーナ・ライダー)、 水泳のうまい次女ケイト(C.リッチー)という、 魅力的な3人の“女性”の物語です。
60年代のアメリカ・ボストン近郊。その町に新しくやってきた、 なぜかアメリカ映画によく登場する「やたら引っ越す女性」が、 シェール扮する母親のキャラクターです。 シャーロットとケイトは異父姉妹ですが、大の仲良しでした。
心のままに生きる母親は、新しい町でも、 早速気のいい靴屋さん(ボブ・ホスキンス)と恋仲になります。 そんな母に呆れながら、 自分自身も年上の好青年にぽーっとなってしまうシャーロットが、 心と体のバランスの悪さに悩み、あたふたするさまが、 言葉は悪いのですが「カマトト」一歩寸前でありながら、 非常にかわいらしいものでした。
60年代とはいえ、J.F.K暗殺を挟むくらいの時期ですので、 50’sにカウントしてもいいかもしれないくらいの時代設定で、 まさにオールディーズと表現したい音楽やファッションもお楽しみです。 「恋愛の機微にも理解のある」風変わりなホームコメディーとして 味わっていただけるかと思います。
2002年02月11日(月) |
接続 ザ・コンタクト |
2月11日、韓国の女優チョン・ドヨンが生まれました(1973年)。 そこで、彼女の出演作で、 比較的手軽に見られる作品と思われるものを。
接続 ザ・コンタクト The Contact(Cheob-sok) 1997年大韓民国 チャン・ユニョン監督
日本未公開作品ですが、レンタルビデオも出ていますし、 NHK地上波でも放送されたことがあるので、 マイナーの中でもメジャーといえる作品ではないでしょうか。 「未公開」といっても、ロードショー公開されていないというだけで、 各地の例えばアジア映画祭等のイベントで、 かなり好評をもって迎えられていたようです。
昔の恋人が忘れられない ラジオ局のプロデューサー(ハン・ソッキュ)と、 ルームメートの恋人に片思いしている テレショップのオペレーターの女性(チョン・ドヨン)は、 パソコン通信のチャットで知り合い、 お互いに関心を寄せるようになり、会う約束もしますが、 あるアクシデントから叶わず… 果たして2人は会うことができるのか?というプロットで、 2人共通して思い入れのあるベルベット・アンダーグラウンドの曲や、 サラ・ヴォーンの“ラヴァーズ・コンチェルト”など、 古い名曲をさりげなく、しかし印象的に使っていて、 品のいいボーイ・ミーツ・ガール物語でした。
正直、よくある話だという印象を与えないでもないのですが、 その分、くせのないとっつき易いつくりになっていますし、 韓国の都市生活を送る若者の嗜好や風俗などが適度に折り込まれ、 そういった点も興味深く見られます。
余談ながら、『八月のクリスマス』『シュリ』『カル』など、 日本公開作品も多いトップスター、ハン・ソッキュの、 流暢な英語を聞くことができるのもミソです。
2月10日は、1911年に日本初の洋風劇場「帝劇」がつくられたことに 因む、観劇の日だとか。 そこで、オペラ鑑賞のシーンが印象的なこの作品を。
月の輝く夜に Moonstruck 1987年アメリカ ノーマン・ジェイソン監督
葬儀用の花を扱う仕事をしている若き未亡人ロレッタ(シェール)は、 恋人ジョニー(ダニー・アイエロ)に結婚を申し込まれ、 それを受け入れます。 ジョニーはシチリアに住む母親に報告しに行き、 ロレッタは、ジョニーに頼まれて、 絶縁状態になっているという ジョニーの弟ロニー(ニコラス・ケージ)のもとに行き、 結婚式に出てくれるよう頼みますが、 事故で片手を失ったロニーは、 それがもとで婚約者に去られたという辛い経験をしていました。 その事故をジョニーのせいだと恨みに思っていたロニーは、 兄への復讐のようにロレッタに激しいキスをします。 もともとジョニーを深く愛していたわけではないロレッタは、 その唐突な「求愛」にほだされて…
とはいえ、結婚はもう(半分)決まっていました。 ロニーは、「大好きなオペラを愛する君と見にいきたい」と言い、 ロレッタもそれに応じ、目いっぱいのおしゃれをして出かけます。 これが最後だと覚悟を決めた2人が見にいった演目は、 プッチーニの悲恋物語『ラ・ボエーム』でした。
ところが、シチリアに行っていたジョニーが、 驚くべきことを言い出して…
主軸はロレッタとロニーの恋愛ですが、 ロレッタの父(浮気性)、母(夫の浮気性を諦めつつ傷ついている)、 祖父(とにかくお茶目)などなど、 周辺の悲喜こもごもの人間模様の盛り込み方も巧みで、 非常に感じのいい、大人のラブコメディーでした。 この年のオスカーレースでは、 ロレッタ役のシェールが主演賞をゲット、 ロレッタの母を演じたオリンピア・デュカキスが助演賞を獲得し、 女優大健闘でしたが、 髪ふさふさだったニコラス・ケージの二枚目ぶりも印象的です。
2月9日は、作家アリス・ウォーカーの誕生日です(1944年)。 となればもう…
カラーパープル The Color Purple 1985年アメリカ スティーブン・スピルバーグ監督
A.ウォーカーの魅力的な原作を、 スピルバーグがごく素直に(わかりやすく)映像化した、 人種差別や女性解放といった問題を包含した長尺映画でした。 ウーピー・ゴールドバーグの名前を人々の胸に印象づけた 作品でもあります。
ある一組の仲のいい姉妹を中心に、 映画の中でいろいろな形で難を被るのは、みな黒人の女性たちです。 見ていて胸の詰まるようなシーンも多々ありましたが、 めりはりのある映像の美しさも印象的で、 スピルバーグのそれまでのイメージをを変えた意欲作でした。
原作は、主人公セリー(W.ゴールドバーグ)が一人称で、 おどおどとためらいながら語るというスタイルのものでしたが、 ウーピーの名演は、その辺を実によく表現していたと思います。 救いのない役に見えて、どこかユーモラスな味わいを覗かせるのが、 いかにも彼女らしいと思いました。
『リーサル・ウェポン』で、メル・ギブソンとの名コンビを見せる ダニー・グローバーは、この映画では完璧に悪役。 同年につくられた『刑事ジョン・ブック/目撃者』でも 悪徳警官という役どころだったので、 1987年『リーサル…』の彼を見て、 意外に思った方もいらっしゃるのでは?(私がそうでした)
それまでみんなに愛される娯楽作を撮ってきたけれど、 この映画がつくられてから既に17年が経過し、 気づけばオスカー2個のホルダーになっていた、そういう人ですから、 正直、「監督がスピルバーグだ」と思いながら見ると、 よくも悪くも、そのイメージのみで評価してしまうような 社会派の重いテーマの作品だとは思うのですが、 ここはひとつ、ぜひとも素直に味わっていただきたいと思います。
また、余談ですが。 栃木県・那須の那須テディベア・ミュージアムに 映画のシーンをモチーフにした展示物があるのですが、 その中で、アーリーアメリカン調のドレスに身を包み、 ドレッドヘアにしたクマちゃんがいます。 あれは絶対、ウーピーがモデルだと思うのですが… (※2001年1月現在にはあったのですが、 現在も展示されているかは不明)
2月8日は、ジャック・レモンの誕生日です(1925年)。 生きていたら77歳だったのですね。返す返すも残念です。 そこで本日は…
あなただけ今晩は Irma La Douce 1963年アメリカ ビリー・ワイルダー監督
『アパートの鍵貸します』のゴールデントリオが再び見せてくれた、 温かな艶笑コメディーです。
原題は、パリが舞台の物語らしくフランス語で、 「かわいいイルマ(シャーリー・マクレーン)」ってところでしょうが、 この「あなただけ…」という邦題は、内容に即していて、 本当によくぞつけたと思います。
堅物の警官ネスター(ジャック・レモン)が娼婦街にガサ入れしたら、 何とお客の中に上司に当たる人間がいたため、 それで心証を悪くしてクビになってしまいました。 (理不尽ですねぇ…) その後ネスターは、 ひょんなことからイルマという売れっ子娼婦のヒモになるものの、 やっぱりそういう生活は性に合わず、市場で働くことになります。 しかし、彼にはさらにもう1つの「顔」がありました… そしてその姿こそが、イルマへの深い愛の証でした。
この映画のJ.レモンはも~う最高です。 (もちろん、S.マクレーンともまたまた名コンビ) 『アパートの…』にも通じる、実直で本当の優しさを持った男ですが、 さらに「そんな無茶な」と思うような設定を忘れさせてくれるような、 何ともいえない男気を感じました。 『○○』の夢よもう1度、とばかりに、 評判のよかった映画と同じ顔ぶれで同工異曲の映画をつくり、 やっぱり前のの方がいいなあということがよくありますが、 この映画に関しては、 グレードアップしていると言っても差し支えありません。 もう、独断&偏見バリバリで、強力にお勧めします。
『アパート…』に感激し、『あなただけ…』は未見で、 この週末はビデオ鑑賞と決めている方、 ぜひともこの映画を借りましょう!
2002年02月07日(木) |
ぼくの美しい人だから |
本日2月7日は、 ジェームズ・スペイダーの誕生日です(1960年)。 そのひやっとした美貌のせいか、 80年代は嫌みなお坊ちゃんや エリート役が多かった彼ですが、 実は早々と学校教育に見切りをつけ、 若くして結婚した奥様とラブラブ~という よき夫、よきパパだったのですね…
その彼の映画の中でも、 比較的好感度の高い役を演じた作品といえば…
ぼくの美しい人だから Whitw Palace 1990年アメリカ ルイス・マンドーキ監督
L.マンドーキ監督といえば、 「恋する成人男女」の映画がやたら好きな人ですが、 この映画の出来が最もいいと個人的には思います。
グラン・サヴァンの小説を原作に、 ホワイトパレス(原題ですね…)という、 もったいぶった名前のハンバーガーショップで働く 40代のノラ(スーザン・サランドン)と、 20代のエリートビジネスマン、 マックス(J.スペイダー)の 「体の関係から始まる恋愛」を、 お互いの考え方や生きてきた環境のギャップを盛り込みつつ、 深刻にならず、ユーモラスに描いた佳作でした。
そもそもの出会いが、 マックスが「ホワイトパレス」で 大量のハンバーガーを買ったものの、 中身が入ってないじゃねーか~とクレームをつけにいき、 「何よ、アンタ言いがかりつける気?」とノラが返すような、 考えてみれば、少しもロマンチックでないものでした。 エリートでも、ハンバーガーくらいは食べるのですね… 年が離れているとはいえ、 双方、それなりの人生を背負ったオトナですから、 このくらいの方が、妙なリアリティがあるというものです。
ノラという女性は、一言で言って「荒れて」います。 掃除が苦手で、体の線も崩れかかっていて、だらしない。 しかも年増で、一体どこがいいんだろう…とか何とか、 この映画、「あの美青年があんな女に…」ということで、 羨望やら嫉妬やら、あるいは疑念といったもので 見られがちですが、 この映画を見た当時20代前半だった私からしても、 マックスだって、それなりの逆境も味わっているとはいえ、 世間知らずで人を見下したところのあるぼんぼん、 一体どこがいいんだ?とさえ感じました。 (顔が…というのはナシ) 恋愛や結婚は、つくづく相身互いです。
「運命の恋」という設定だけに頼った恋愛映画は苦手ですが、 この『ぼくの…』は、反発から始まって、再会があって、 また反発し合いながらも、お互いを理解しようと努力はしている、 そんなところに好感を覚えます。 それだけに、この邦題、耳に心地いいけれど、 ちょっととんちんかんな感じが否めないのですが… かといって、原題のままでは ファンタジー映画と勘違いしそうですけど。
1日早いのですが、 2月7日は俳優クリス・ロックの誕生日だそうです(1967年)。 明日は別口で御紹介したものがあるのと、 本日、幸か不幸か何も思いつかなかったのとで、 繰り上げで、C.ロック出演の作品を御紹介いたします。
ベティ・サイズモア Nurse Betty 2000年アメリカ ニール・ラビュート監督
ドキュメンタリー映画でもない限り、 たとえTシャツにジーンズというスタイルであっても、 虚構としての映画に出てくる人々の服装は、 言ってしまえば全部「コスプレ」なんですけど、 この作品では、童顔美女レニー・ゼルウェガーのコスプレ2態を お楽しみいただけます。 (なんだか、いかがわしい映画をPRするようですが)
ウェートレスのベティは病院もののソープオペラが大好きで、 殊に、主演の男優(グレッグ・キネアー)の大ファンでした。 中古車販売業の夫は、彼女が少々トロいのをいいことに、 浮気はするわ、ヤバいことにも手を出すわという男ですが、 その結果、親子の殺し屋(モーガン・フリーマンとC.ロック)に 消されてしまうのでした。
そして、その現場を見てショックを受けたベティは、 現実と虚構の区別がつかない状態になり、 「フィアンセ(G.キネアー)が待っているから」と、 3000㎞の道のりを、車を駆って、 カンザスからカリフォルニアを目指します。 彼女は自分を、青年医師と結婚の約束をした看護婦だと 思い込んでしまったのでした。 (それがドラマの世界の話であることもわからなくなるほど、 彼女にとっては現実との境が全くない状態…ということです)
現場を見られたと知り、下手なことをしゃべられてはかなわんと、 ベティの後を追う殺し屋親子ですが、そのうち父(モーガン)が、 彼女の「国連にでも勤めてそうな清楚な雰囲気」に恋をしてしまい、 ただでさえややこしい話が一層ややこしく、 そしてさらにおもしろく展開していきます。
C.ロックの役は、血の気の多さを父親にたしなめられているような、 普通の殺し屋のあんちゃん(!?)でしたが、 独特の甲高い声で、なかなかコミカルに好演していました。
ジャンル分けをするならば、サスペンス・コメディでしょうか。 考えてみれば、もっとドロドロになってもおかしくない話なのですが、 さりげないほどに軽やかで、 ひとえに、R.ゼルウェガーの初々しい魅力がなかったら つくり得なかったでしょう。新しいタイプの映画を見た思いがしました。
皆さんだったら、好きなテレビドラマの一員になれるのならば、 どの番組に入り込みたいですか? 私は、最近トピックスとしても取り上げた、 『ダーマ&グレッグ』のダーマの親友、ジェーンになりたいです。 ダーマがテキトーにダイヤルした電話で知り合った仲だそうですが、 なかなかの名コンビぶりを見せてくれるので。 グレッグの秘書、マリーンも捨て難いのですが…。 (両者の共通点…小柄で性格がワイルド)
2002年02月05日(火) |
フォーエバー・フレンズ |
さて、本日は、1946年2月5日生まれの女優、 バーバラ・ハーシー主演のこちらをどうぞ。 女性の友情を描いた秀作です。
フォーエバー・フレンズ Beaches 1988年アメリカ ゲイリー・マーシャル監督
現在公開中の『プリティ・プリンセス』も手がけた G.マーシャル監督作です。 (私は全くどの役か覚えていませんが、この映画にも、 マーシャル作品の常連ヘクター・エリゾンドーが出ていたそうです)
まだ少女時代、ビーチでたまたま知り合った 生まれた境遇も性格も正反対のヒラリーとC.C.が、 それぞれ弁護士(バーバラ・ハーシーasヒラリー)と 芸能人(ベット・ミドラーasC.C.)になった後も、 時には衝突もしながら、 2つとない友情をはぐくんでいくというのが大筋ですが、 感動の押しつけになりそうな展開を救っているのは、 大ヒットした主題歌を自ら歌ったミドラー※と、 知的で落ち着いた美しさをしっかと披露したハーシーの、 それぞれに説得力ある名演でした。
※ベット・ミドラー“Wind Beneath My Wings” 邦題は「愛は翼にのって」←う~ん… 1989年のグラミー賞にも輝きました
それから、やっぱりアメリカのショービズはすごいなあと思うのが、 子役の起用の妙です。 子役に限らず、家族なら家族らしい顔ぶれでセッティングするし、 「○○の幼少時代」というと、本当にびっくりするくらいそっくりな、 その上演技もきちんとできる子供を“調達”してくるものですが、 この映画のC.C.の少女時代を演じたメイム・ビアリクは、 元の顔だちも多少は似ているということもありましょうが、 本当に、まんまミドラーを縮小したような見事さでした。 日本でも放送されていたシチュエーションコメディー『ブロッサム』で、 主人公のブロッサム・ルッソを演じた子ですが、 その後、噂を聞かないのが残念です。
「女の友情モノには必ずしょーもない言い争いのシーンがある!」 ということに、ちょっと不満を覚えるアナタや私も、 まあ、それもちょっとしたスパイスくらいの気持ちで見守り、 (失敗は成功かは別として) 素直な気持ちで評価したい名編だと思います。 少し古いですし、ごらんになったことのある方も多いでしょうが、 もし興味を持ちながら敬遠しているという方がいらしたら、 ぜひとも手にとってみてくださいませ。
今日2月4日は立春です。まさに「春は名のみの…」ですが、 とりあえず、タイトル(邦題)に「春」の入ったこちらをどうぞ。
春にして君を想う CHILDREN OF NATURE 1991年アイスランド・ドイツ・デンマーク レドリック・トール・フリドリクソン監督
どこの国でも、 映画フィルムを保管するセンターやライブラリーを 所有していますが、 アイスランドの「それ」は、世界一お粗末という噂があります。 それでいて、ヨーロッパの小国の中で唯一といっていいほど、 一国の資本だけできちんとした映画を撮っている国でもあるとか。 本日の『春にして…』は3国乗り入れだったものの、 フリドリクソン監督は、 『コールドフィーバー』『精霊の島』の2作品を、 アイスランド単独資本で撮っています。
この映画の何がいいって、 何といっても「邦題」でしょう。※ 何か懐古調というか美文調というか、 しっとり、静かな感動を期待してビデオを手にとること必至です。 (私もそうでした) 映画としては地味なことこの上ないのですが、 少なくとも、邦題のイメージを余り裏切らない内容です。 ※無知をさらすようで恥ずかしいのですが、 このタイトルは、アガサ・クリスティの 『春にして君を離れAbsent in the Spring』 のもじりですね、多分。 後からこのタイトルを知り、気づいたのですが。(2004.1.17)
アイスランドのある寒村で農業を廃業した老人が、 レイキャビクの娘一家のもとに身を寄せるけれど、 居心地の悪さから、求めて老人ホームに入り、 そこで同郷の女性と再会したことから、 この静かな映画に動きが出てきます。
言葉少なに、でも丁寧に展開されるこの作品は、 何が起こっても、「ああ、はいはい」と見過ごしてしまいそうな、 どこか浮き世離れした感じがありました。
アイスランドといえば、 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で 女優としても認知された感のあるビョークの出身国でもあります。 この映画にもほんの少しですが、 彼女の人気ぶりが窺われるシーンがあったものの、 老人にとっては「けたたましく」響くようですね。 確かに、この映画には似つかわしくありません…
ビデオショップで探すときは、 どっちがサブタイトルだかわかりゃしない、 「ミッシング・エンジェル」なるタイトルにも 注意なさってみてください。 そのタイトルには、 「天使で有名なあの映画」にまつわる 隠し味もあるようです。
ラットレース Rat Race 2001年アメリカ・カナダ ジェリー・ザッカー監督
Rat Raceとは、「無駄なレース」ほどの意味だそうです。
ラスベガスのゴージャスなカジノホテルで スロットゲームをした数人の客のところに、 金のスペシャルコインが出てきます。 そのコインをゲットした者には、 ニューメキシコ州シルバーシティーの駅ロッカーに入っている 200万ドルを賭けてのレースに参加する資格が付与されました。
「ルールがないのがルール。早いもの勝ちです」 「宝くじよりも当籤確率が高い!」 と言うホテルオーナー(ジョン・クリーズ)の言葉をいぶかって、 最初は相手にしないふりをして牽制し合う人々の中、 イタリア人のエンリコ(ローワン・アトキンソン)が 猛スピードで飛び出したことから、 火蓋が切って落とされました。
家族旅行中で、妻からギャンブルをとめられていたサラリーマン、 今まで1度も規範に反したことがないという生真面目な弁護士、 生き別れで久々に会った母娘、ブラブラしている若い兄弟が、 あの手この手で、時にはお互いに妨害を加えつつ、 シルバーシティー目指して奮闘するのですが、 途中、予想もしない障壁が幾つもあり、 トラブルがトラブルを呼んで、大混乱になります…
舞台の1つであるカジノホテルに、 いつもカモを求めて張り込んでいる弁護士がいたりするあたりが いかにもアメリカっぽくて笑ってしまいます。 (あれはあながち冗談でもないのでしょう)
レースを繰り広げる面々はもちろんのこと、 そうした脇の人々も、皆さんコメディーセンスが光ります。 「ノリの悪いやつはいらん!」 といわんばかりの、意外と正統派のコメディーなので、 ドタバタながら、なぜだか安心してどっぷりハマれました。 「脇」とはいっても、びっくりするような大御所も登場するので お見逃しなく…その人の名はキャシー・ベイツです。
ちなみにレースに参戦するのは、日本でもメジャーな俳優だけでも、 前述のR.アトキンソンのほか、ウーピー・ゴールドバーグ、 セス・グリーン(『オースティン・パワーズ』のDr.イーブルのドラ息子)、 ジョン・ロビッツといった人たちです。
1996年2月2日、ダンスでも有名なアメリカの俳優、 ジーン・ケリーが亡くなりました(享年83歳)。 去年8月23日、彼の誕生日に当たる日の定期便では、 『踊る大紐育』を取り上げさせていただいたので、 本日はこちらをどうぞ。
雨に唄えば Singin' in the Rain 1952年アメリカ スタンリー・ドーネン/ジーン・ケリー共同監督
映画がサイレントからトーキーへと変遷する時代の ハリウッドの内幕物語を、 軽妙なミュージカル仕立てにした傑作です。
G.ケリーが演じた映画スター、ドンは、 美人だけれどダミ声の女優(つまりトーキー向きではない)で 性格の悪いリーナという恋人に愛想を尽かしていたとき、 コーラスガールの1人、 キャシー(デビー・レイノルズ)と出会いました。
キャシーに映画の現状についてマンネリを指摘され、 ドンは、彼女と、親友と3人で知恵を出し、 (役名が思い出せないのですが、ドナルド・オコナーが演じました) 映画の新時代にふさわしいアイディアを出すのでした。 話し合いに熱中する余り、 夜を徹していたことに気づかなかった3人が歌う “Good Morning”は、実に清々しい歌でした。
キャシーとお互い憎からず思い合うドンですが、 リーナの身勝手な要求のせいで、キャシーを怒らせ、 せっかくうまくいきかけた仲に亀裂が生じて……
テーマ曲“Singin' in the Rain”と、 それに合わせてG.ケリーが踊るシーンは余りにも有名ですが、 ドナルド・オコナーのコミカルにして鮮やかな“壁のぼり”にも ぜひとも御注目くださいませ。 (余談ですが、『フル・モンティ』の中でも、リズム音痴の男が、 ドナルド・オコナーを気取って壁を歩こうとするシーンが登場しました)
また、意外と間違いやすいので、お節介ながら一言。 邦題「雨にぬれても“Raindrops Keep Falling on My Head”」は、 この映画ではなく、ジョージ・ロイ・ヒル監督の 『明日に向かって撃て!Butch Cassidy and the Sundance Kid』の 主題歌です。 (余計なことを言って、余計に混乱させてしまったら、 申し訳ございません~)
2002年02月01日(金) |
モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル |
2月1日は、英国の伝説のコメディグループ、モンティ・パイソンの1人で、 アーサー王の研究や絵本の創作などの方面でも大活躍の テリー・ジョーンズの誕生日です(1942年)。
パイソンズの6人の中で、日本のファンにとって、 今でも俳優としての最も露出度が高いのは、 (私が大好きだったグレアム・チャップマンは、 1989年に若くして亡くなってしまったのですが) 『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』 『ハリー・ポッターと賢者の石』『ラットレース』などで見られる のっぽのジョン・クリーズだと思いますが、 テリー・ジョーンズが「頭にカーラー巻いたオバサン」に扮した コントも最高でした。 そこで本日は…
モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル Monty Python and the Holy Grail 1975年イギリス テリー・ギリアム/テリー・ジョーンズ共同監督
神の啓示を受け、 伝説の聖杯(ホーリー・グレイル)を探す旅に出る、 アーサー王と円卓の騎士たちの物語ですが、 それだと解説が3行で(それも無理やり改行して) 終わってしまいますね。 が、プロットはこれに尽きます。 何しろその骨組みに、ギャグまたギャグで肉付けがされているので、 「ギャグをいちいち解説するほど寒いものはない…」 ということになってしまうのです。
コメディ映画におけるネタバレの最たるものは、 「ギャグの説明」であると思いますので、 興味を持っていただけた方には、 ぜひともビデオを探して見ていただきたいなと。 今でも時々NHK衛星などで放送されているギャグ番組 「モンティ・パイソン空飛ぶサーカス」(全8巻)のシリーズがあるお店では、 それと一緒に置いてあると思いますが、 ないお店では、「コメディー」のコーナーでどうぞ。
映画としてのクオリティーは決して低くありません。 一部、「著しく」手を抜いているところもありますが、 演出には、研究家らしいこだわりが見られないでもありません。 それでいて、アーサー王や聖杯伝説をよく知らなくてももちろん楽しめます。 (私もよく知りません)
ちなみに、お節介をもう1つ。 共同監督のテリー・ギリアムには、 監督としての彼のファンが多いのではないでしょうか? パイソンズ唯一のアメリカ人で、 独特の美意識を感じる演出が冴えた映画が人気です。 こちらのMLでも、『フィッシャー・キング』を御紹介済みですが、 『バンデットQ』『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』などなど、 多くの作品で知られています。
ついでにもう1つ、 小さなお子さんに本を読み聞かせるお父様、お母様、お兄様、お姉様、 自分自身、絵本を読むのが好きという方に、 テリー・ジョーンズ著の2冊の絵本を御紹介いたします。
「イースト・オブ・ザ・ムーン テリー・ジョーンズ童話集その1」 「風のゆうれい テリー・ジョーンズ童話集その2」
いずれもさくまゆみこ訳、リブリオ出版から出ています。 皮肉な感じのお話が多いのですが、笑えます。
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