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2009年09月15日(火)


■立ちあがるもの
身体というのは各パーツで出来ていて、と思っていた。筋肉というのはフォルムで、だから美しいとか。それで、それらが精神を伝えていき、最終的に立ち現れるものが好きであった。けれど、もっとダイレクトなものとしての身体があるんだって、ようやく自分の感覚で(そういうのがあるってことが)わかってきた気がする。

週末は康本雅子さんのダンスを観に行って、もう何もいえないくらいに圧倒されてしまう。一瞬一瞬が美しいだけでなく、惜しみなく放出されていく様々な”気”のようなものが、いとうせいこうの9.11へのメッセージ、われわれのイメージを簡単に凌駕していく。こちらも身体で反応し、もう言葉なんていらないんじゃないかとさえ、おもえてくる。そしてやっぱり彼女の鍛え上げられた身体だからこそ、この集中力と瞬発力を発揮できるのだと彼女が踊りだした瞬間に理解した。

UAのライブに行って、さっきCoccoのMステを観て、それで、ある種”自由さ”にひどく憧れてしまった。たとえ歌や言葉が何の救いにならなくても、その一瞬、遠いところまでいけてしまう翼のようなもの。わたしにはそういう感覚がないから、どんな感じだろうと、今とても気になっている。


2009年09月13日(日)


■ステッチ・バイ・ステッチ(東京都庭園美術館)

先週行ってきた。

入ってすぐの手塚愛子の作品が素晴らしい。空間をあますところなく利用した堂々とした展示。そして作品は素朴ながら、布と糸の特性を活かし、手仕事を越えて、新しい場所へ向かっている。

ポスターにも起用されている清川あさみは、別の意味で堂々とした作品。非常にわかりやすく、有無を言わせない。なんというか、作家本人のものすごい強い何か(なんだろ? 自信? 傲慢?)に満ち溢れている。個人的には寄り添えない感じだが、純粋に綺麗だし面白い。これはあり。

秋山さやかは地図に自分の歩いたルートを様々な素材を縫い込んでいくというもの。発想はシンプルだけど、気持ちが伝わってくる楽しい作品。開放的な感じでありながら、内向きな、今、まさに今、ここで見るための作品。

他、村上さんだったか、純粋に手仕事を感じるものは、こういう場所にあると、なるほどいいなと思わせる。

男性陣はいまいち。頭と手がまだまだ繋がっていない感じ。インスタレーションとしても成功していない。たとえば夜警の刺繍(警備員が夜勤で刺繍をしている姿を提示するものだが、展示では写真と証拠物件と刺繍したブックカバーが展示されていた)、これは面白いけど安易。ひどい…、と思う人も約2名。



うーん、やっぱりいろんな人をいっぺんに見るのはあまり得意じゃないようで…、よかった作品も多かったけど、よくなかった作品もあったので、満足度としてはそれほどでも。。


2009年09月09日(水)


■カポーティ
『冷血』読了。週末の文学の教室に間に合ってよかった。『カポーティ』のDVDも借りてきたので、完ぺき。

フィリップ・シーモア・ホフマンが好きなので、彼の初主演映画『カポーティ』を観て、それから『遠い声 遠い部屋』を読み、なんともいえない瑞々しさ、荒々しさに感動し、出版順に大事に読んでいこうと思っていたのだけど、いきなり最終回、みたいな。先に冷血読んじゃった。



途中からずっと泣きそうだった。答えなんてなかった。答えがないとわかってなお選択しなければならない。それが人を裁くということであり、また生きるということでもあった。

死んだ者、死んでゆく者、その渦から離れていく人々。そのどれでもない者、たとえばカポーティ。自分を含め、大多数のひとは3番目であろう。けれど、どれほどの差があるだろう。