■映画の感想です。映画館で観たもの中心。普通にネタバレしてるのでお気をつけください。
■好きなのはハリウッドエンターテイメント。邦画は苦手。イケメン俳優に甘いです。美しい男を発掘するのがライフワークです。
■最近ようやくツイッター始めましたー。→Twitter




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2003年03月29日(土) (メモ)

唐突ですが、年度末でもあることですし(関係ないよ)、ビデオで見たまま感想書いてない作品がいくつかあるので一言感想つけときます。とりあえず覚えてるのだけ3本。


■ セクシャル・イノセンス('98/米) ■

…は? 何?
わからん…。全然わかりませんでしたごめんなさい。
ジュリアン・サンズって最近どうしてるんだろう、とふと思って借りてみたんですが。って全然最近じゃなかったですね。5年も前だよ。しかしジェームズ・スペイダーを筆頭にジュリアン・サンズだのカイル・マクラクランだの、私の(昔の)好みのタイプってみんな一風変わった映画専門の人が多いような気が…(今頃気付くな)。


■ 嵐が丘('92/英) ■

やばーい! 「レッド・ドラゴン」+クローネンバーグ特集の所為か今私の中ではレイフ・ファインズが相当きてます。こんな10年前の映画まで漁っちゃいま・し・た☆ レンタル屋さんのビデオパッケージには“ラルフ・ファインズ”って表記されてたよ。まだ日本では全然認知度低かった頃ですね。
ジュリエット・ビノシュとは「イングリッシュ・ペイシェント」の前にこの映画でも共演してたんだ。それから「カンパニーマン」「ゴスフォード・パーク」と最近お目にかかることが多いジェレミー・ノーザムも何気に出ていてちょっとお得な気分で・し・た☆ (<ヤメロ)
レイフは美しかったです。珍しく野性的な役柄なんだけど。ヒースクリフを演じてます。


■ ワンダー・ボーイズ('00/米) ■

これね、人によって違うと思うけど、私はこういうの好きです。かなり好き。劇的なドラマが展開されるわけじゃないんだけどね。新作が仕上がらない作家、自閉症気味の生徒、クセのある編集者、の数日間。公式サイトまだ生きてましたよ。→コチラ
いつもは苦手気味のマイケル・ダグラスも嫌味がないし、あとロバート・ダウニー・Jr.はやっぱり上手いと思う。っていうか、私昔からこの人のこと結構好きなんだと思う。切羽詰まった役とかエキセントリックな役で本領発揮、なのに、なんか見ていて切なくなることが多いんだよなあ。(あれ?私生活と混同してる?)

そそそれはそうととととトビー君!いやーん可愛いじゃないのー!どうしよう! 参った。壮絶にツボでした。最近腰を痛めたそうですが大丈夫かなあ。早く良くなって下さい。




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セクシャル・イノセンス 【THE LOSS OF SEXUAL INNOCENCE】

1998年 アメリカ / 日本公開:2000年
監督:マイク・フィギス
出演:ジュリアン・サンズ、ジョナサン・リス=メイヤーズ
(ビデオ鑑賞)


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嵐が丘 【WUTHERING HEIGHTS】

1992年 イギリス / 日本公開:1993年
監督:ピーター・コズミンスキー
出演:ジュリエット・ビノシュ、レイフ・ファインズ、
ジェレミー・ノーザム
(ビデオ鑑賞)


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ワンダー・ボーイズ 【WONDER BOYS】

2000年 アメリカ / 日本公開:2000年
監督:カーティス・ハンソン
出演:マイケル・ダグラス、トビー・マグワイア
ロバート・ダウニー・Jr.、フランシス・マクドーマンド
(ビデオ鑑賞)


2003年03月26日(水) キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

いいじゃんいいじゃん!楽しかったです。奇抜さはないけど安定していて、落ち着いて見てられるエンターテイメントでありましたよ。オープニングもお洒落だし、60年代の雰囲気もなかなか、そして時折ホロリとさせられるあたりも悪くない。私はAIとかマイノリティリポートよりもこっちが好きですぞスピルバーグ監督! 親子愛人間愛はSFで強調するよりもこういうジャンルでスパイスに使ってこそ効果的だと思います。

主演の二人も良かったです。トム・ハンクスは近頃シリアス一辺倒になってしまった気がしてたけど、ちょっとコミカルな感じの方が私は好きなんだよね。エクレア食べるシーンとか見ました? 最高ですよ。レオ君のリアクションもいいんだけどね、あの場面のトム・ハンクスは私的に大ヒットでございました。今最もエクレアを頬張らせたい俳優ナンバーワンに決定。

それで実は私、レオ様の映画を映画館で観るのはこれが初めて、スクリーンディカプリオ初体験!だったわけですが、彼も良かったっすね! まず咳の演技がリアルでお見事。ってそれはともかく、やはり美形でいらっしゃいますから、お召し替えがたくさんで楽しかったです。高校生だったりパイロットになったり長髪だったり白衣は着るわスーツは着るわで目の保養というか、ひとつの作品でこれだけたくさんのコスプレ(違)してくれたらファンの方々もきっと嬉しいんじゃないかと。
「ロミオ+ジュリエット」の時も思ったんだけど、彼は泣いてる顔が、すごく、イイね。綺麗。美しい男が涙を流してる姿には、こう、何とも形容しがたい愉悦みたいなものを感じてしまいますな。鬼畜ですいません。

あとはクリストファー・ウォーケン。やばいです。格好いいです。予想通りの存在感に感嘆の溜息。はぁ〜。


ということで、これで今月注目していた映画のうち二本クリア。どっちも期待通りでとりあえず満足でした。残すは今週末のクローネンバーグ。楽しみだ。



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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
【CATCH ME IF YOU CAN】 

2002年 アメリカ / 日本公開 2003年
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、
クリストファー・ウォーケン
(劇場鑑賞)


2003年03月21日(金) ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔

映画館で見てよかったー!と、まず思いました。やっぱり迫力が違うもん。いや、つい先日内容復習のために第1部「旅の仲間」をDVDで見直したんですがね、テレビとスクリーンとじゃもう全然違うのよ。迫力っつうか臨場感っつうか没頭できる度合いが。そりゃ当たり前といえば当たり前の話なんだけども、でもこの映画を見てそれを改めて実感しましたのです。

なんか感想書くにしてもこういう大作になるとほとんど言うことないというか、思ったことは既に皆様が仰って下さってるという感じですなあ。出だしから上手かったし(前作とのつなぎの部分が自然ですっとお話に入っていける)、その後もいいタイミングで場面転換されるので飽きずに見てられました。
印象深かったのはやはり戦闘シーンでしょうか。いやはや大スペクタクルでございます。それにしても馬。馬はみんな本当にすごかったですね!私も感心しましたよ(笑)。<私信 一ノ谷の合戦か!というような場面でも臆せず果敢に突進するさまは実にお見事、鹿も四つ足馬も四つ足鹿の越え行くこの坂道、馬の越せない道理はないと〜、とか思わず脳内セルフナレーションしてしまったほどに大将義経もちょっとビックリなひよどり越え。(やや誇張)



レゴラス君は相変わらず美しゅう御座いました。ぼんやり見惚れてると時折ふいうちでアップになったりして、そのたびああ…!くっ…!ぅおお…!などといちいち身悶えしてたらなんだか妙な疲れ方をしてしまいましたわよもう悪いコねッお姉さんクタクタよ! しかも今回彼のエルフ属性が強調されてるんだか何だか知りませんが立ち居振る舞いが異様に軽やか。常に、ひらり、ふわり。華麗に馬に飛び乗るあのシーン、皆様ご覧になりまして? 馬の鼻先を横切るや否や身を翻し、ひらり、ですよ。駆け寄って、ひらり。そして長い髪が、さらり。うっひゃーたまんねー。それにアラゴルンとことあるごとにエルフ語で会話したりしちゃってああほんとだ懐いてる懐いてる、とか。っていうかアラゴルン様も相当カッコよろしいんですけど! 傷だらけで泥だらけでどうしてあんなに色っぽいのー! しかしこの方アレですね、確かに声がえっちいですね!(笑)<私信その2 はっきり喋ってる時より囁くような口調の時の方がそそられます。


あとどうでもいいことなんですが。終了後おもむろに友人が、自分は子供の頃に見た「吸血鬼ドラキュラ」があまりに強烈でサルマン役のクリストファー・リーを見るとどんな格好してても吸血鬼に見えてしまう、などと言うので、いやいくら何でもあの格好で吸血鬼を連想するのは無理があるだろ!と軽く笑いとばしてやったのですが、でもそういう私もエルロンド役のヒューゴ・ウィービングが登場するたび「出たなエージェント・スミス!(@マトリックス)」と密かに心の中で合いの手を入れたりしてたので人のことは言えないなあと後から思いました。役柄のイメージによる影響って大きいですね。妙に納得。(何の話だ。)


まあそういうわけで、書くことがないとか言ってた割に結局いつもにも増して長文になってしまい申し訳ないことですが、要するに満喫したぞ、と。勢いに乗ってこんなの買っちゃったくらい。てへ。物議を醸していた字幕問題などもひとまず落ち着いたようですし、来年の次作を楽しみに待ち望んでおります。以上!




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ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔
【The Lord of the Rings : The Two Towers】

2002年 アメリカ / 日本公開:2003年
監督:ピーター・ジャクソン
出演:イライジャ・ウッド、ヴィゴ・モーテンセン
オーランド・ブルーム、イアン・マッケラン
(劇場鑑賞)


2003年03月20日(木) ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲

前回の「ヘヴン」の美しい余韻を少しでも長くとどめておきたいわ、あゝ、だからしばらくは下手にその辺の適当な映画を見るのはやめましょう…、とか思ってたくせによりによってこんなおふざけギャグ映画を見ちゃいましたYO! わざわざ苦手な渋谷まで出向いて。それに私ベン・アフレックも苦手なのに。我ながらもう自虐としか思えん。


ベン・アフレックもの、というか、監督(&サイレント・ボブ役)のケヴィン・スミス作品を知ってる方ほど楽しめる映画らしいです。「ドグマ」や「チェイシング・エイミー」で既出のキャラ、ジェイ&サイレント・ボブを主役にしたブラックで下品でパロディ満載のコメディ(公式サイトは→コチラ)。言うまでもなく私はどっちの映画も未見でしたが、でもまあ、それなりに面白かったです。ただし、かなり傍若無人で、結構下品。特に台詞が。英語は全然わかりませんが、それでもうわー下品な言葉で喋ってるなーというのは感じられました。

有名な映画をことごとくパロっていて、ちょっと思い出しただけでも「スターウォーズ」に「チャーリーズ・エンジェル」に「スクービィ・ドゥー」、あと「ET」とか「逃亡者」。他にもいっぱい、ちょっとした細かいところまで凝ってる感じがオタクっぽくてよろしいね。
あと出演者はかなり豪華でした。とりあえずライトセーバー(偽)を振り回してる現在のマーク・ハミルの姿は貴重ではないかと(変な格好ですが)。レイア姫(キャリー・フィッシャー)も出てきます。あと「アメリカン・パイ」のジェイソン・ビッグス君、アメパイのネタでさんざんいじられます。ぷぷ。それからガス・ヴァン・サント監督もあなた、久々に見たと思ったら金勘定かい!みたいな。お約束でマット・デイモンもちょこっと出てくるんだけど、しっかしベンとマットってほんとに仲良さそうだなあ。一緒に出てきてすごい楽しそうでありました。息ピッタリで。あれじゃジェニロペのジェラシーにもつい同情したくなるってもんです。


それと、全然雰囲気は違うんだけど(でも作中でもチラッと触れられるんだけど)、見ていて何となくビルとテッドを思い出して遠い目になってしまいましたよ。懐かしいねキアヌ。え?忘れたい?まあまあそう言わずに。かなり好きだったんだけどなー。あの頃良かったよなー。もう一回やってくれないかなー。マトリックスの後にビルとテッド!どうよ!(絶対無理)



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ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲
【JAY&SILENT BOB :STRIKE BACK】 

2001年 アメリカ / 日本公開 2003年
監督:ケヴィン・スミス
出演:ケヴィン・スミス、ジェイソン・ミューズ、
ベン・アフレック、シャノン・エリザベス
(劇場鑑賞)


2003年03月15日(土) ヘヴン

うつくしい、散文詩のような映画でした。

ストーリーが、あるにはある。けど、どこか神話めいた非現実感。くどくどと説明しない。わざとらしく感動を煽らない。なのに巧妙に記憶の淵に入り込む。全てが象徴。全ては象徴。ひとつひとつのシーンはそこだけを取り出しても絵画のように美しく、流れているのに、進んでいるのに、静謐。

罪を犯してしまった女教師と彼女の通訳を担当した年若い警官の逃避行なんだけれども、生々しさは全然ありません。オープニングにしろ、断続的に挿入される上方(=天)からの俯瞰ショットにしろ、そしてラストシーンに至るまで、どこまでも詩的で象徴的。究極の愛を描いているのにエロティックなムードは皆無、罪深い物語なのに後半に行くにつれて澄み渡るという、この美しき矛盾。人を殺め、家族を犠牲にし、友人を巻き込み、堕ちるほどあべこべに二人は浄化されてゆくのです。彼等は名前も似ていて、誕生日も同じで、真っ白なTシャツを着て、だんだん見た目も似てきて、そうして、清らかな諦観で最期を見定めている。

主演の二人は好演でした。イタリア語駆使して大健闘。ケイト・ブランシェットが芸達者なのは今更言うまでもないとして、ジョヴァンニ・リビシの無垢な雰囲気が素晴らしかった。少年のようなあどけなさを残しつつ意志のある眼差しなんだよね。彼が恋に落ちるシーンが特にお気に入りだなあ。台詞もほとんどないのに、こう、すごく訴えるものがあった。



ちょっと背景的なことを補足しておくと、この映画は「トリコロール」三部作のクシシュトフ・キェシロフスキ監督が残した遺稿脚本を「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァが撮影したもので、製作には私と気の合う「イングリッシュ・ペイシェント」のアンソニー・ミンゲラも加わってます。→先日も申しましたように数ヶ月前既に予告編の段階で一目惚れして以来待ち焦がれていた一作だったわけで、実際、大変に私好みな仕上がりでありました。でも冷静に考えるとこれは単に個人的期待によるハイテンション状態が半ば無意識的に作り上げた満足感にすぎないのかもしれず、何しろわたくしときたら冒頭数分、オープニングが終わり素朴なピアノソロに重ねて「HEAVEN」とタイトルが出た時点で以後展開されるであろう切なさを勝手に予期して胸がいっぱいになってしまうほどの興奮ぶり。一方そんな私に無理矢理付き合わされた同行の友人はラストシーンまできちんと見ても不完全燃焼だったらしく「はぁ?まだ話途中じゃん!結局どうなったの」などと言っていて、ああ何の予備知識も思い入れもなく普通に見た人の感想は意外とこんなもんかもしれないなあ、と、思わないでもないです。


(↓以下内容に触れてますので反転表示)
ひとつだけ少々残念だったのは、右上に載せた屋根裏でのキスシーンが出てこなかったこと。ええ、出てこないんですよ、堂々と→公式サイトのトップページまで飾ってるくせに(笑)。いや、敢えてカットした監督の判断に文句をつけたいわけではなくて、これ原作の脚本では大変印象深いシーンなので是非とも二人の演技が見てみたかったなあ、と。写真があるってことは撮ったことは撮ったんだよね? DVD化する時にでも削除シーンとしてオマケでつけてくれないかなー。切に希望。

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ところで原作の脚本は翻訳されて本になってます。
←これ〔→bk1〕。この映画版の脚本ではなくてキェシロフスキの残した遺稿の方の日本語訳なので、映画と本とを比較するとトム・ティクヴァ監督が何を付け加えてどこを省いたかがよく分かり非常に興味深い。結構大胆なんだなこれが。
それ以外にも、訳者によるこの作品の詳細な解説(「ヘヴン」はダンテの「神曲」に倣った三部作の一部の予定だったらしい)とか、キェシロフスキ監督が亡くなるわずか4日前に行われていた幻のインタビュー(何とインタビュアーは地元高校生!)とか載っていて盛りだくさんな内容です。

しかし私ってば本まで買っちゃってこの執着っぷりはどうよ。キェシロフスキ監督のことなんて全然知らないし(「トリコロール」見たかどうかすら覚えてないよ)、「ラン・ローラ・ラン」は見てないし、主演の二人も上手いとは思うけど特別好きってわけじゃない。つまり純粋に内容に惹かれているということで、これって普段あの人カッコイー!この人素敵ー!とかそういう基準でハリウッド映画を貪ってる私にしては実に珍しい現象です。そもそも映画を観る前からストーリーと雰囲気に酔わされてしまったという我ながら奇妙な入れ込み方なんだけどね。こういう哀しくて美しい、甘美な絶望に満たされた彼岸系のお話は激しくツボ。大好きです。



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ヘヴン 【HEAVEN】 

2001年 アメリカ・ドイツ・イギリス・フランス / 日本公開:2003年
監督:トム・ティクヴァ
出演:ケイト・ブランシェット、ジョヴァンニ・リビシ
(劇場鑑賞)



2003年03月13日(木) 「スパイダー」に備えよう!第三弾 原作:パトリック・マグラア「スパイダー」を読む

しつこくやってる「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」に備えよう!企画。でも今日で終わり(やっと)。最終回のテーマは“パトリック・マグラアの原作を読んでみよう!”


スパイダー〔→bk1〕

パトリック・マグラア 著 / 富永和子 訳

早川epi文庫 2002.9発行

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“SPIDER” by Patrick McGrath,1990



これは何というか…「裸のランチ」といい「クラッシュ」といいクローネンバーグさんよくもまあ自分の世界を追求するのに相応しい原作を見つけだすものだなぁとといったところでしょうか。映画化しようなどと普通だったらまず考えないであろうタイプの小説であります。

かつてスパイダーと呼ばれた主人公が、記憶を手繰り寄せて少年時代の母の死に関する出来事を日記に綴っていくというお話。一貫して主人公の一人称形式で語られるんだけど、この語り手は、明らかに精神を病んでいる。知り得ないことを見てきたかのように語ったり時に幻覚が混じったり今と過去とが交錯したりする。一般的なミステリだったらその語りの中に真実を見抜いてゆく醍醐味みたいなのがあったりするのですが、この話はラストまで読んでもそういう風にスッキリさせてはもらえません。ある程度真相解明できるようにはなってるものの、読者をスパイダーの視点に引き込んで翻弄することがメインみたいな、そんな感じ。


映画の方は、クローネンバーグにしては割と過激さ控えめだという話を耳にしました。確かにこのお話自体はそんなに衝撃的ではないかもしれないです。ストーリーそのものよりもむしろ一人の男の錯乱した精神世界をどう映像化して観客に味わわせるかというところがポイントになるはずで、過激じゃなくともこのあたりは十分クローネンバーグっぽいネタになってると言えるでしょう。うわっキモっ!クローネンバーグならこういうの嬉々として再現しそう!と予想したくなるプチ気持ち悪い場面も、まあ、あるにはあるんだけどね。
いずれにせよ原作にとことん忠実にするわけでもないだろうしどう味付けされてるのかは非常に興味深いところです。例えば副題の「少年は蜘蛛にキスをする」というのはこの原作を読んだだけではいまいちピンときませんしね。

ただし美しい男鑑賞及び堪能を生業としているわたくしと致しましては、主演のレイフ・ファインズのことが唯一気がかりであります。この役を演ずるってことは、…ああ、麗しい彼はまったく期待できません…。これはね、「ロード・トゥ・パーディション」のジュード・ロウ、「SLOW BURN」のジェームズ・スペイダー(そんな例誰も知らないっつうの!)など足元にも及ばない汚れ役でありますよ。先日の「レッド・ドラゴン」における殺人鬼役なんか甘い甘い。あの時みたく全裸になって得意げな顔をしてみせたりとかそのまましばらく走り回っちゃったりとかそういうキュートなサービス(違)もおそらくないはずです。ああん残念!実に残念!
しかし彼の熱演なくしてこの作品は成り立たず。チャレンジャーレイフ、頑張って下さい。期待してます。


2003年03月12日(水) 「スパイダー」に備えよう!第二弾 クローネンバーグ特集(ビデオドローム/戦慄の絆)

さて前回に引き続き「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」に備えよう!企画、絶賛開催中であります(独りで)。本日第二回目のテーマは“鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督に 親しもう (それは無理だ…)慣れよう!”。独創的な題材とエログロ満載衝撃映像でタブーを無視してガンガン突っ走るこの御方の魅惑の世界に少しでも免疫をつけておこうというのが目的でございます。ちょっと古いけど有名作で未見だった二本をチョイス。

■ その1 「ビデオドローム」
横澤さんの「よんだ。みた。かんそうぶん。」で取り上げられてて面白そうだったので真似して見てみました。横澤さんありがとうございます。
で、横澤さんも仰ってましたがこの映画「イグジステンズ」に似てませんか。いや、時系列的に正確には「イグジステンズ」が「ビデオドローム」に似ていると言うべきか。全編にわたるこの悪夢っぽさ、そして時折現れるドロッヌルッグチョッとしたグロテスクな映像。ある種のフィクション(あっちはゲームでこっちはビデオ)をきっかけに、いつの間にか抜け出せなくなってしまう不気味な世界。
クローネンバーグには、原作があるお話や他人が書いた脚本で監督だけをやってる作品と、自分で原案も脚本も監督も全部やってる作品とあるんだけど、「イグジステンズ」もこの「ビデオドローム」も後者のパターンなんだよね。だからその意味でクローネンバーグ色が特に強く出ている作品と見ていいと思います。あの映画が'99年製作、これが'82年製作。20年近く前からこだわってるのか。よっぽど好きなんだなあこういうネタ。


■ その2 「戦慄の絆」
あらゆる意味で一心同体の一卵性双生児が主人公。産婦人科医である彼等が、患者として出会った一人の女優の存在をきっかけにそれまで保っていた二人の間のバランスを少しずつ崩してゆく。と、こう書くとその女優がクセモノみたいだけどそういうわけでは全然なくて、怖ろしいのはこの双子の特異な結びつきです。まさに「戦慄の絆」。ジェレミー・アイアンズが一人二役でそりゃもう素晴らしい演技でございます。
ホラーというよりサイコサスペンスですが、全体的なムードはやはり非常にクローネンバーグっぽいと思いました。赤い色調の手術シーンとか、あの開発した医療器具とか特に。オープニングからして雰囲気抜群、そしてじわじわと狂気に向かって崩壊していく双子の様子がお見事。
見たことあるクローネンバーグの作品の中ではこれが一番ゾッとしたなあ。私はクローネンバーグの映画って、どんなにグロくてもえげつなくても、ああ出た出たこれぞクローネンバーグだよクックック、と、どこか「待ってました!」的ノリで見てる部分があるんだけど(だから「裸のランチ」とか割と好きです)、この作品はあんまりそういう余裕がなかったです。見応えありました。


ということで今回の二本、私的には結構ヒットだったな。80年代の作品ながらいまだインパクト衰えずという感じ。ただし、わけのわからん世界やグロい描写が苦手な方には絶対おススメできませんのでご注意下さいませ。そして懲りずに「スパイダー」に備えよう!第三弾へと続く。



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ビデオドローム 【VIDEODROME】 

1982年 カナダ / 日本公開 1985年
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ジェームズ・ウッズ、デボラ・ハリー
(ビデオ鑑賞)


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戦慄の絆 【DEAD RINGERS】 

1988年 カナダ / 日本公開 1989年
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ジェレミー・アイアンズ、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド
(ビデオ鑑賞)


2003年03月07日(金) 「スパイダー」に備えよう!第一弾 レイフ・ファインズ特集(ストレンジ・デイズ/ことの終わり)

突然ですが、目下「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」に備えよう!企画を開催しております(独りで)。いや、「レッド・ドラゴン」の前にノートン祭りやったら楽しかったからさ。
ということで第一弾。テーマは“レイフ・ファインズを堪能しよう!”。私この人の映画はこの前の「レッド・ドラゴン」を除けば「イングリッシュ・ペイシェント」くらいしか知らなかったので、適当に選んで二本見てみました。


■ その1 「ストレンジ・デイズ」
公開された時のことはよく憶えてるんだけど何故か見ないまま今に至っていた一本。なんだよー、なかなか面白いじゃんかー!レイフ・ファインズがどうこうじゃなくてこういう派手でがちゃがちゃしてるの個人的に好みです。そしたら監督がこないだ「K-19」で話題にしたキャスリン・ビグローだってね!さっすが男気溢れる豪快な仕上がり!(※注:ビグロー監督は女性です)
1999年12月31日のお話で、近未来という設定。既に過去なんだけど気にしない気にしない。他人の体験をディスクに記録して追体験できる装置(違法)をめぐるSFサスペンスです。主演のレイフ・ファインズは裏世界で活躍してる違法ディスクの売人(元警官)役。長髪で革のボトムとか着ちゃってなんかキャラ的に意外だったけど、でもこういうヘラヘラした役も悪くないと思いました。ジュリエット・ルイスに未練たらたらなとこがまた良い(笑)。あとアンジェラ・バセット超カッコイイです。


■ その2 「ことの終わり」
これだよ!これぞまさしく私のイメージしていたレイフ・ファインズ浮気相手をやらせたら右に出る者なし。この人はさ、でかい図体して甘え上手なとこが持ち味だと思うんですよ。あの無邪気な瞳にほだされちゃうんだよなあ。ちょっと今月のTV Taroに載ってる写真知ってます?アレです!あの眼差し。あの目で「君に恋をしてしまったんだ」などと無邪気に見上げられた日には強要されなくても不幸になるってわかってても自分から進んで夫や子供を忘れて走り出したくなるというか、こういう男は手練手管なジゴロ系よりある意味ずっとタチが悪いよのう。
この映画で彼は人妻であるジュリアン・ムーアと一目で恋に落ちて逢瀬を重ねてゆくんだけども、情事の後で彼女に向かっておもむろに「君が他の男と寝たらぼくは死ぬ!」とか言い出したりして、そんなのあんた、普通に考えたら筋違いの嫉妬もいいとこでしょ? 他人の奥さん寝取ってる分際で何言ってんだ!って話ですよ。でもレイフ特有の一途で無垢で甘えるような瞳を見てしまうとあーもーしょーがないなーそれもアリかなーと思わないでもないというか、こう、こっちもツッコミかけてた手が一瞬止まってしまうわけです。

んで、今度は空襲が始まって警報とか鳴りだして、ジュリアン・ムーアが「危険だわ、逃げましょう!」と言ってるのに、困ったさんのレイフ君は「このまま爆撃されて死にたい。そうすれば君は夫のもとに帰らずにすむ」などと駄々こねる。またお得意の縋るような眼差しで! そこですかさずチャ〜ラ〜ラ〜ラ〜とかマイケル・ナイマンの音楽が入ってきて、見つめ合っていた二人はたまらずベッドへ倒れ込む、と。いや、空襲始まってるんですよ。参っちゃうなあ。もうマイケル・ナイマン禁止。たいしたことない場面でもこの人の旋律が流れ始めるとそれなりに感動的に見えてしまうからずるいです。って話がずれてる。

えっとジュリアン・ムーアも良かったですね!というか、どっちかというとこれはジュリアン・ムーアの映画って感じです。彼女の夫役がスティーブン・レイで、もしやと思ったらやっぱり監督はニール・ジョーダン。「クライング・ゲーム」「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」を撮った人です。なるほど舐めるようなカメラワーク、しっとり濡れたオトナの映像でした(どんなだ)。


(長くなっちゃいましたすみません。そして「スパイダー」に備えよう!第二弾に続く。)




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ストレンジ・デイズ 【STRANGE DAYS】

1995年 アメリカ / 日本公開:1996年
監督:キャスリン・ビグロー
出演:レイフ・ファインズ、アンジェラ・バセット
ジュリエット・ルイス、トム・サイズモア
(ビデオ鑑賞)


ことの終わり 【THE END OF THE AFFAIR】

1999年 イギリス・アメリカ / 日本公開:2000年
監督:ニール・ジョーダン
出演:レイフ・ファインズ、ジュリアン・ムーア
スティーブン・レイ
(ビデオ鑑賞)


2003年03月05日(水) kissingジェシカ

28歳。仕事はそれなりにしてるけど、恋人ナシ。兄は婚約、親友は妊娠、幸せいっぱいの彼等を傍目に見つつ、でも自分はデートをしてみても一向に素敵な人とめぐり逢えない。もしかして私ってこのまま一生独りぼっち? どうして私には男運がないのよー!!
…という、微妙な年齢の女性向けの映画です。早い話がアリーmyラブやブリジットジョーンズ系なんだけど、この話のちょっと変わったところは、行き詰まった主人公がふとしたはずみで同性愛に走ってしまうこと。硬派で奥手なユダヤ系の女の子である主役のジェシカが、自由奔放に生きるヘレンと出会って“恋”に落ちてしまう。公式サイトは→コチラ


まあ、そうはいっても同性愛の話は実はメインではなく、あくまで30歳を目前にしてこの焦りをどう乗り越えるか、ということがテーマとして描かれてるので、いい歳ぶっこいて同様に一人独身で取り残されてしまっておるパラサイトシングルなわたくしと致しましては考えさせられたり共感したりするところが結構ありましたわけでございますよ。あーそれ言われちゃうと耳が痛いなぁというところもたくさんありましたでございますよハイ。はいはいはい。ほっといてくれよ!

出演してるのが知らない役者さんばかりだったんだけど、それもそのはず、普段は舞台で活躍してる主演の二人が自分たちで脚本を書き、周囲の協力を得て作ったインディーズ映画なのだそうです。でもインテリアとか衣装なんかとってもお洒落だしその点見ていて楽しかったな。何といっても舞台がニューヨークだし。ニューヨーク大好きです。
途中でNYコスメの「M・A・C」の口紅の話が出てくるんだけど、そういえば私、M・A・Cにすごーく凝ってた時期がありましたよ。我が人生で最もメイクに気合いを入れていた若かりし頃(大昔)に。懐かしい。今はデパートで買えるけどその頃はまだ日本に入ってきてなくて、ニューヨークを旅行した時買いまくったなあ。ここのリップ「RETRO」は今でもお気に入りのマイ定番カラーだったりします。




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kissingジェシカ 【KISSING JESSICA STEIN】

2001年 アメリカ / 日本公開:2003年
監督:チャールズ・ハーマン=ワームフェルド
出演:ジェニファー・ウェストフェルト、ヘザー・ジャーゲンセン
スコット・コーエン、トヴァ・フェルドシャー
(劇場鑑賞)


2003年03月04日(火) (雑記:今月はこんなの見たいと思ってます)

おはようございます。寒いっすね!
ということで突然ですが、今日はわたくし的3月公開の気になる映画をピック!アップ! 今月楽しみにしてる作品はコレだー! って朝からハイテンションですみません。


■ その1 「ヘヴン」
とりあえずこういう感じ(※公式サイト)の作品。ちょっと一見イザベル・ユペールの「ピアニスト」を彷彿とさせるイメージ画像ですがああいうヤバイ話ではなくて、純愛です。感動の愛の物語なの!愛の逃避行とかしちゃうわけよぉ!んもうっ素敵っ!おすぎです!(違)

これ去年の秋頃映画館で予告編を見て以来ずっと気になってたんだよね。内容が私好みっぽいのに加えて主演の二人が芸達者だし、あと製作に「イングリッシュ・ペイシェント」「リプリー」の監督アンソニー・ミンゲラが関わってることにも惹かれるのであります。この人の、時にあからさまとも言えるロマンチシズム?っていうか感傷癖?っていうか純文学趣味?みたいなところがわたくしどうも他人事に思えんのですよ。この映画のキーワードでもあるらしい“運命の出逢い”とか“逃避行”とか“許されぬ愛”とか、こういうの絶対好きでしょ、ね、ミンゲラ! 哀しいものや切ないものは全て美しく見えるタイプでしょ。カタルシスとか聞くとうっとりしちゃうでしょ。私もだよ。
まあそれはともかく。「トリコロール」のクシシュトフ・キェシロフスキ監督の遺稿脚本を「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ監督が映画化した、という点が、普通の人が興味を抱くこの映画の正しい見どころでありましょう。
今週末、8日から公開。


■ その2 「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」
これは説明不要かと。安心して楽しめそう。早く見たーい!
公式サイト→コチラです。ポスターとか予告編にも使われてるこの矢印をモチーフにしたデザイン、上手いよね。
そういえば私ディカプリオの映画を映画館に見に行くのってこれが初めてかも。いや、嫌いなわけじゃないんだけどね。そしてさりげなく楽しみなのはクリストファー・ウォーケン。
21日から公開。


■ その3 「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」
クローネンバーグ監督の新作であります。公式サイトは→コチラ。「カンヌ激震」だって。恒例じゃん。くす。クローネンバーグBBSとかあったりしてなかなか楽しいサイトです。
主演はレイフ・ファインズ。この人私は今まで全くノーマークだったんだけど、こないだの「レッド・ドラゴン」以来かなり気になってます。ほんとにいっつもいい男ばかり使うよなあ、クローネンバーグさんよう。
実はこの映画が私的3月の本命だったり。ふふ。うふふふ。原作まで購入したりして見る気満々でございます。気持ち高めて待ってるぜ。
29日から公開。



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