-殻-

INDEXPASTNEXTNEWEST

2003年01月31日(金) 流転

不自由であることを楽しむには、

考え込むよりも、

受け入れるほうがいい。


そもそも、

自由などというものが存在しないなんてこと、

みんなが知っているんだから。



僕は変わってゆく。

流れてゆく。

それを受け入れ、

ゆらゆらとたゆとう水藻のように、

揺らぎ続けていよう。



根を張りながら、

流れに逆らわず、

それでもなお、

成り行きに任せる勇気を持とう。



それでいい。

それがいいのだ。





2003年01月27日(月) 共依存

「誰にも言わないでね?」

「うん。」

「あのね、」

「うん。」

「・・・あのね、」

「・・・うん?」

「・・・別れたの。」

「うん。」

「・・・」

「また?」

「・・・(むっ)」

「何回目?」

「・・・今度はほんとだもん」

「時間の問題だと思うけどなあ」

「いや、もう絶対。」

「へえ。」

「ほんと。」

「前もそんなこと言ってたよな。」

「いや、今度こそ絶対だもん。」

「いや、前もそんなこと言ってたって。」


会社からの帰りに、
急に同期の女の子から電話がかかってきた。
夕食を食べていかないか、と誘われて、
いつもの店で一杯飲みながら、彼女とこんな話をした。


今度はいつまで持つことか。
彼女は、彼と何度も別れてはくっつき、別れてはくっつきを繰り返す。
そのたびに今度こそ、今度こそは、と言い続ける。

聞く方も、あまりにも繰り返されると飽きてくる。
それでも、一緒に飲むためのネタができるのなら、
それはそれでいいんだ。


さて、今度はいつ電話がかかってくるのかな。


それを期待しているバカな僕も、確かにいる。




2003年01月24日(金) こんなふうに寒い夜には

今夜は久し振りに冷える。
さっきは雪もちらついてた。


やっぱり、寒い日には誰かがそばにいてほしい。
それがただの慰めでもいい。



そう、

きっと、

君である必要すらないんだ。



僕も君も、とうにそれを知っている。


2003年01月21日(火) 泡沫

昔書いた文章も、この「殻」ではちょこちょことアップしている。

当然、何年か前に自分が書いた文章を読み返すことになるわけで。
これは誰でもそうかも知れないけど、恥ずかしいもの。

今の僕からは絶対に出てこないような言葉がたくさん。

そこで思うのだ。
何故、今はこの言葉が出てこないのか。
どうして、僕は変わってしまったのか。

時間が流れているから。
環境が変わったから。

もちろんそうだけれど。


実は、変わってなんかいないんじゃないかとも思う。
僕の中にはいろんな僕がいて、
その時々の環境や季節や気分や、
そういう外的な要因に合わせて、
違う「僕」が表に出ているだけなんじゃないかって。

たまに感じるのが、
全く正反対の意見を持った二人の自分の存在。
ものごとを多面的に見る癖がついている僕は、
一つのことがらについて一つの答えだけでは満足できないし、
絶対的に正しい答えがたった一つだなんて信じられない。

僕の思考は、
いろんな僕の要素の中を漂う。
たくさんの正しさがあって、
たくさんの間違いがあって、
そのどれもが大切な「僕」の一部だ。


それを、よく「優柔不断」だと言われる。

そうだろうか。
一つに決め付けることで自分を狭めてしまわないよう、
僕はただ自由に、可能性の海を漂いたいのだ。
久しく留まることのない、泡沫(うたかた)でありたいのだ。




・・・というのが実は、優柔不断の言い訳なのかな?(汗)

2003年01月20日(月) 共同幻想

信じよう、

信じよう、

信じよう。

僕を、

君を、

僕たちを、

この世界を。










2003年01月19日(日) 灰色

薄曇の日曜の朝。

気だるい目覚め。
どことなく重い空気。

寝息を立てる君を残して、そっと布団から抜ける。
インスタントのコーヒーを薄めに入れて、灰色の空を眺める。


何をしているのだろう。


君は目を覚まさない。
僕はもう、君の部屋のどこに何があるのかもわかっていて、
君が寝ていたってこうしてコーヒーを飲み、新聞を読み、
君が目覚めるまでに朝食の支度をしておくことだってできる。


だけど、それがどうした?


結局は日常に埋没しているに過ぎない。
君も、とっくにそれに気付いているはずだ。
口には出さないにしても。

わかっていながら、君は受け入れようとしている。

僕はどうだ。
受け入れる勇気はあるか?

大きな姿見に、自分を映す。
くたびれた顔をした男が、寝癖のついた頭でぼんやり立っている。
その後ろには、君が眠っている。


僕は鏡の中の君をしばらく見つめた後、
振り返って君の枕元に腰を下ろす。

そっと君の髪に顔を近づけると、
君のにおいがする。

君はまだ眠っている。


僕は残ったコーヒーを飲み干して、
また薄曇の空を見上げる。

窓に切り取られた四角い灰色は、
この部屋の外にはまるで何もないような気分にさせる。

いっそのこと、その方が諦めがつくのではないか、と、
僕は思ったりするのだ。


君は、まだ眠っている。


2003年01月17日(金) 繰り返す日々

毎日にそれほどの変化はない。

今日も昨日と同じことをこなして、一日が暮れる。

今週も先週と同じように終わる。

そして今月も、きっと先月と同じように終わり、
いつの間にか今年も去年と同じように暮れるのだろう。

そして僕は思うのだ。

こうして毎週、君の部屋へ電車で通うことも、
すでに繰り返すリズムの中に埋もれている。

そしてやがていつか、
あの人の時と同じように僕等も、
静かに終わりを迎えるのだろうか、と。


時間は河のように、絶えず流れているように見えて、
実は輪のようにぐるぐると同じところを回っているのかも。
河の水も、雲になり雨になって巡っているように。


あと何度、繰り返せばいいのだろう?
あと何度眠って目覚めて、
あと何度週末と月末と年末を迎えて、あと何度君の顔を見ればいいのだろう。


あと何度、僕は繰り返すのだろう。

この果てしない、日常というループを。





2003年01月15日(水) 冬空

星空がとてもきれいだったんだ。
今夜はすごく寒くて、空気がぱりぱりと乾いていて。

星の輪郭までもがはっきりと分かるくらい、
その光は張り詰めた輝きを放っていて、
なぜかこの街の冬の空気はそれを妨げることなく。

遥か彼方の、遥か遠い昔の光を、
今を生きる僕のこの目の中にしっかりと焼き付ける。

それは何と素敵な、素晴らしい偶然。
願っても願っても、きっと今僕が放つ光が誰かに届くことなど、
時間が止まることよりも低い確率でしかないのに。

全てはそこにあるだけなのだと、
それ以外に真実など何もないのだと、
分かってはいても、現実はとても優しく、
ここにいる僕の実在を肯定してくれる。

そこに意味を見出してしまうことは、
結局は果てしない孤独と空虚を生むに過ぎない。

それでも。

それでもなお、求めて止まないのはどうしてだろう。
気付いて欲しいと、見つけて欲しいと、望むのは何故だろう。



あなたは僕に、気付いてくれますか。

あなたは僕を、見つけてくれますか。

あなたは僕を。




2003年01月14日(火) 返信

ここにいます。

僕はここにいます。

何故、幻だなんて思おうとするのですか?

夢だと思えば、傷つかないからですか?

僕のことを、覚えていたくないですか?


僕は、ここにいます。

もし確かめたければ、あなたの手を。

その手を伸ばして、僕に触れればいい。


僕は、ここに、います。



2003年01月09日(木) 朧月

帰り道、夜空にぼんやりと月が浮かぶ。

あの夜の寒さと、記憶がつながる。


ほんの少しの後悔と、罪悪感。

あの時の、君の切ない切ない声。

うつむきがちに僕の話を聞いていた君の横顔。

君のことばかり考えてしまう。

君のことばかり気にしてしまう。

今何をしていますか。

今何を見ていますか。



もう僕のことは、忘れてしまいましたか。


2003年01月04日(土) 雪に思う

雪で飛行機が遅れている。
使用機はなんとか着陸できたものの、雪は強くなる一方。
除雪が間に合わず、離陸の目処が立たない。

もう搭乗口まで来てしまっている。
窓からは、僕が乗る予定の機体が止まっているのが見える。
その向こう、滑走路には何台もの除雪車が走り回っているが、
どうにも埒が明かないようだ。

暇を持て余して、売店を覗く。
見慣れた土産物がぎっしり詰め込まれた狭い店内。

空港で時間が余ったとき、僕は大抵ビールを一杯飲む。
今日も例に漏れず、カウンターに行ってビールを頼んだ。

ぼんやりと窓の外の雪を眺めながらビールを飲んでいると、
これから雪のない街へ戻ることが信じられなくなる。

この街の冬は、雪灯りでいつも明るい。
僕はそんな、白く染まった冬の街が好きだ。
穏やかな冬の夜道を、あのひととただ手をつないで歩いた日を思い出す。

あたりは新雪で真っ白で、
もう人通りも少ない裏道を、
音もなくゆらりゆらり落ちてくる雪の中を、
黙って歩いた。

あの時の風景、あの時の気持ち、
今でもこんなにはっきりと覚えているんだ。
できることなら、君にそう伝えたい。

そして、君の顔を思い出そうとしたのに、
なぜかどうしても、君の顔だけが靄がかかったようにぼやけてしまう。

君を恨もうとした罰なのかな。
そう思って、苦笑いをしていた。

随分と時間は流れた。
もう、あの夜から9年になる。
君はもうとっくに、君なりの幸せを手に入れた。
僕をこんなところに置き去りにしたままで。

出会いも別れも、雪の中ばかりだ。
冷たい雪、暖かい雪、ひりひりと痛い雪、固く凍りついた雪。


雪のない街にいると、寒さも暖かさも忘れてしまいそうだ。


3時間遅れて、やっと飛行機は飛んだ。
雪のない冬が、僕を待っている。

2003年01月01日(水) 節目

あけましておめでとうございます。

なんて、堅苦しい挨拶は苦手なんですけど。

年が変わったからといって、
なにかがカチリと切り替わるわけじゃありませんよね。
カレンダーをめくるくらいしか変化なんてないものです。

正月に限らず、クリスマスとか、バレンタインとか、
雛祭りとか、端午の節句とか、七夕とか、祭りとか、お盆とか、
なんでもそうなんですけどね。
そういうイベントというのは、
「意味を持つ」ものじゃなくて、
僕らが勝手に「意味を見出している」に過ぎない。
定理じゃなくて、定義なんですよね。

文化人類学的に言えば、通過儀礼。
ハレ、というやつです。

いつもと同じように日が昇り、日が沈む。
そんな一日に特別な意味を与えて、
僕等は繰り返しの日々に足掛かりを作る。
そこから次に向かうために、節目を作るのです。


・・・なんだか偉そうに言ってますが、
僕の節目は家族旅行先の温泉で、
しこたまビールを飲んでぼーっとしてるうちに過ぎてしまいました。

(涙)


INDEXPASTNEXTNEWEST
しんMAIL

Click here if you like it...↑

Add to your Favorite