シュルデディッヒ
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もうすぐ俺の17歳の誕生日だったりする、とある日。
レイとルナに誕生日プレゼントに何が欲しいかと聞かれた。 にこにこ顔のルナに対し、あからさまに興味のなさそうなレイはルナに無理矢理連れてこられたのだろう。 「何が欲しいと言われてもなあ…」 こうして戦場に出ていると切実に欲しいものも特に思い浮かばない。 「なんかあるでしょ?ほら、遠慮しなくていいから」 「ルナ、そういうものは無理にあげても仕方ないんじゃないか?」 レイはいい奴だけど、こういう情緒的なことへの興味は皆無だ。別に俺の誕生日を祝うのがイヤなわけではないことはわかっているので特別腹は立たない。むしろルナに付き合わされて可哀想だと思うくらいだ。 「そんなんじゃつまんないじゃない!」 やっぱり自分が退屈だから俺の誕生日にかこつけて何かしたいだけなんだな…。 「年に一度の誕生日!それも17歳の誕生日は一生に一度なんだから!」 だから何だと言うのが俺の本音だ。 「女って本当にそういうの好きだよなー…」 アカデミー時代も女子は誰かが誕生日だとわかるとやれパーティだプレゼントだとうるさかったことを思い出す。男同士でプレゼントあげるやつなんか俺の知る限りいない。精々昼飯のおかずをやるとか、ジュースやお菓子をおごるとか、その場でできる程度のことだ。つか男同士でプレゼントのやり取りやるのなんてホモくらいだと俺は思う。別にホモを差別するわけじゃないけど。 「ちょっと!人が折角お祝いしてあげようって言ってるのに、それはないんじゃない?」 だから別に頼んでないんですけど。しかしこれ以上何か言ってもルナの機嫌を損なうだけで、害はあってもいいことはない。大人しく付き合うしかないか。ルナに気づかれないようため息をつき、レイと目を見合わせる。お互い苦労するよな、と。 「そうよ、どうせならパーティもしましょうよ。そうね、メイリンにヴィーノにヨウランも一緒に。あ、非番の時間合うかしら…」 いつの間にやらプレゼントの話からやはりパーティにまで話が飛んでいる。まあ、いいか。折角お祝いしてくれるんだし。レイたちには悪いけど、祝われる俺自身は何もしなくていいだろうし。 「あっ、アスランも一緒にどうですか?」 ふと、たまたま通りかかったアスランにまでルナは声を掛けた。 「一体何のことだ?」 苦笑しながらアスランがこっちへやってくる。 「もうすぐシンの誕生日なんですよ。だから誕生日パーティをやろうと思って。」 「へえ。そうなのか。おめでとう、シン」 「どうも…」 なんか、この人から祝われるなんて、妙な気分だ。 「じゃあ俺からもプレゼントをあげないとな。何が欲しい?」 この人、今なんて言った? 「プレゼント…あんたがくれるの?」 訝しがりながら訊いてみる。 「?ああ。できれば具体的に何が欲しいか言ってくれると助かる。選ぶのは得意じゃないんだ。」 やはり苦笑しながら言うアスラン。ちょっと待て。男のアスランが男の俺に誕生日プレゼント…?それって… 「あと、ペットロボくらいなら少し時間があれば作れるが…」 やばい、こいつ…! 「レイ!ルナ!こいつホモだよ!」 「はあ?」 「えっ?」 「…」 俺の言葉に三者三様の答えが返る。ちなみに上からルナ、アスラン、レイ。ていうかマジやばい。こいつ、マジもんのホモだ。 「だって男のくせに男にプレゼントやるとか言うんだぜ!おかしいよ!」 どうして女でもないのに誕生日=プレゼントになるんだ?絶対おかしい。 「シン、プレゼントくらいで何言って…」 ルナがアスランを気にしながら慌てた様子で口を挟む。 「しかも手作りプレゼントとかマジありえないって!ルナの持ってる少女漫画のヒロインも今時しないよ!」 ジュースを奢るとか、そういうレベルじゃない。そもそも手作りのプレゼントなんてすっげー重くないか?女の子に貰っても重くて正直引くかもしれない。物にもよるだろうけど、だけど…!俺の必死の訴えにルナは何かに気づいたように話し出す。 「…そういえば、あたしがどんなにアスランにアタックしても全然脈なしだったけど、それって…」 「ルナ、アタックは死語だと思うが。それに単にルナに興味がなかっただけ…」 ある意味冷静な突っ込みが入る。レイの突っ込みはいつも容赦ない。 「うるさいわよ、レイ!とにかく、アスランて…!」 と突っ込みを流すルナ。都合の悪いことは耳に入らないようにできてるからね、ルナは。まあ今問題なのはルナの魅力の有無じゃないし。問題は目の前のこの人。プレゼントをやるとか言ったってことは俺狙われてるってことで。そんなの、冗談じゃない。 「ちょっと待ってくれ。シン、ルナマリア。オレは…」 なんか目の前のホモが弁解をしようとするがそんなのは無視だ。今は俺たちの貞操が大切だ。 「レイも早く逃げたほうがいいぞ!ホモの餌食になる!」 「いや、だから…!」 往生際悪く言い訳をしようとするアスランの言葉をレイの静かな声が遮った。 「アスラン」 「レイ、おまえからもなんとか言って…」 最後の頼みの綱だとも言いたげな声音。しかしレイの口から出た言葉は無情の一言に尽きた。 「私は個人の性嗜好に関して何か言う気はありません。それは個人の自由ですから」 「レイ…?」 「ですからアスランがそのような性嗜好の持ち主であっても特別視をしようとも思いません。ただ…」 「いやだから…」 アスランの制止の言葉なんて聞こえないかのようにすらすらと言葉を紡ぐレイ。そして、 「正直、困ります」 「思いっきり特別視してるじゃないか!」 うん、いい突っ込みだ。
「レイ、早く早く!」 既にドアの陰にまで逃げた俺とルナは手招きをしてレイを呼ぶ。 「レイ美人だから襲われるぞ!」 「今行く」 レイもやや、アスランを避けるようにしてドアのほうまでやってくる。 「あ、安心して下さいね、アスラン。私たち言い振らしたりしませんから」 「ルナマリア、目が泳いでるぞ。って、いや、待ってくれ。だから違うって。なんでそうなるんだ!」
アスランのその叫びはミネルバ中に響きわたったとかそうでないとか。 ついでに言えばアスランホモ疑惑はミネルバ艦内中に広まり、クルーとの溝が深まり、ますます孤立したとか、艦長に呼び出されて励まされたとか、副艦長に襲われかけたとか、とにかく色々な噂が飛び交った。
それはさておき。オレの誕生日パーティは無事行われた。父さん、母さん、マユが死んでから、こんな賑やかな誕生日は初めてだったから少し照れくさかったけど。ルナがプレゼントをみんなに持ってくるよう強制したため、結構たくさん貰ってしまった。こういう誕生日も悪くないよな…。
ルナとメイリンが声を揃えて、 『お返しはあたしの誕生日に三倍返しでいいからね』 と言ったことはとりあえず忘れておくことにする。
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あとがき。 思いついて突発SS。実は誕生日だというのを知ったのが今日の昼です(笑)バイトもあって時間がなかったので読みづらいかもしれませんがとりあえずはこれでー。あとで文章もちゃんと修正して再アップ予定。なんか、シンが、というよりまたアスランが可哀想な人になっただけのような気もしますが…。うん、気にしない! とにかく、シンたんお誕生日おめでとう〜☆残り数話、頑張ってねvv私はいつまでもシンの味方ですから!
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