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「暗幕」日記

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2006年07月15日(土) NHKドラマ「中学生日記」誰にも言えない前編

「中学生日記」の、男子生徒の性的虐待被害を扱った回を見た。


あらすじ
野球部二年生・秋山の様子がしばらく前からおかしい。ささいな音でパニックを起こし、エースながら突然退部すると言い出す。
秋山とつきあっている野球部マネージャーの少女は、担任の女教師に、彼を救ってくれと訴える。
クラスで男子生徒のベルトが紛失する事件があった。犯人は秋山で、裏庭に隠したベルトを埋めていたところを発見された。
実は秋山は、春休みに臨時コーチとしてきていたOBに、性的虐待を受けていたのだった。プライベートゾーンに侵入されたときのベルトの音をきくとフラッシュバックを起こし、そのたび彼の心は壊れていた。
「俺はもうだめだ、この音がおかしくさせる」叫ぶ秋山を見て、若い女教師は以前屋外で強姦されたときのことを思い出す……


ベルトのかちゃかちゃする音によって引き起こされるパニック症状はよく表現されていたと思う。被害生徒の演技については、リアリティがあるかどうかよくわからない。「こう反応すべき」という話ではないのであるが、実際のサバイバー(被害者のこと。人格が死ぬほどの被害を経て生き延びた人という意味がある)が見て反発を覚えるような表現でないと良い。
それよりも、どう見積もっても十代なかばの生徒役の子役にこんな演技をさせて良いのだろうか?(居残り練習のあとの「あとでマッサージしてやる」という、次のシーンと直接結びつかないコーチの台詞と考え合わせると、問題の虐待シーンはもっと衝撃的な絡みであった可能性もある)

前後編で収める都合上、秋山が問題を抱えている事実は周囲に正しく理解されている。中学生ながらつきあっている彼女がいるし、部活動マネージャーとしてもプライベートにしても彼を支える気持ちがあり、きめ細かい配慮をもった目で彼を見守っている存在がある。ほかにクラスと部活が同じ別の男子生徒も、ベルト紛失事件と春休みを結びつける鍵を正しく把握して教師に相談している。
また、被害者は学校でふつうに活躍の場があるある意味恵まれた生徒でもあり、「秋山が変だ」と周囲に認識されやすいばかりか、異常の原因が彼自身の問題にされることなく「何かが起こった」と正しく理解されている。
「誰にも言えない」被害、加害者によって口止めされる場合も多いこの種の被害を受けたサバイバーの行動は、原因を知らない周囲に理解されづらいことも多いし、「本人の努力不足」「本人が生活態度を改めない」などと間違って理解されて自ら孤立する可能性もあるだろうことは想像に難くない。
ドラマでは、問題の原因と加害者の特定ができたところで前編が終わっている。後編では、被害者の救済がどのような形でどういった経過で導入されるかが興味深い。
前編のテロップで、「男子も性的被害を受けることがある」「被害者は周囲に相談して欲しい。相談を受けた人は被害事実を受け入れて信じてほしい」とあったメッセージがどこまで伝わるだろうか。ドラマでは、被害者が自ら被害を周囲に相談してはおらず、身近な人々の観察と状況証拠によって被害が浮かび上がる経過になっているが、今後秋山が「知られたくなかったのに」と感じるストーリーであっては欲しくない。すでにとりかえしのつかない傷を負っているサバイバーが、周囲に相談(周囲の理解)することでいくらかでも救いを得られた結末であって欲しい。
気が重いが、次回も視聴予定。


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