女の世紀を旅する
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2001年12月31日(月) 2001年の内外10大ニュース

《2001年の国内・海外10大ニュース 》(共同通信社 )
 
  


まこと,今年は驚愕の年だった! いよいよ始まる2002年も驚きの連続か


●国内は小泉純一郎内閣発足が1位 海外は米同時テロとアフガン報復攻撃
共同通信社は12月24日、加盟・契約社との合同投票で、2001年の内外十大ニュースを選んだ。


●国内では、小泉内閣の発足が2位の狂牛病の牛を初めて確認を大きく引き離してトップ。3,4位は不況深刻化と、大阪・池田小児童殺傷事件であった。
 明るいニュースとしては、5位の雅子さま長女(愛子さま)出産と、8位のイチロー大リーグで大活躍。6位はえひめ丸と米原潜衝突・沈没、7位はテロ対策特別措置法成立、9,10位は外務省機密費流用事件とハンセン病原告団勝訴。


●海外では、米中枢同時テロとアフガン報復攻撃が他を大きく引き離して1,2位を占めた。3位は炭疽(たんそ)菌テロ、4位は中東和平の破綻であった。
続く、ブッシュ共和党政権発足(5位)、ITバブル崩壊(6位)、ABM条約脱退通告(10位)と米国関係のニュースが多かった。7位は中国のWTO(世界貿易機関)加盟、8位は京都議定書発効合意、9位は2008年北京五輪開催決定であった。



《国 内》                    

1 小泉内閣発足(構造改革を断行 )                          

2 国内初の狂牛病の牛が確認        


3 不況深刻化。株価暴落、失業率5.5%台   


4 大阪・池田小児童殺傷事件。8人死亡   


5 敬宮愛子さま誕生 (12月 1日 )   
(としのみやあいこ )

6 えひめ丸がハワイ沖で米原潜と衝突、沈没 


7 テロ対策特別措置法成立。自衛艦インド洋へ


8 イチロー、米大リーグで大活躍       


9 外務省不祥事。田中真紀子外相と官僚対立  


10 ハンセン病訴訟で原告全面勝訴    
(番外)奄美大島西方で北朝鮮不審船銃撃・沈没事件(12月 )    



《 海 外》

1 米同時テロ(世界貿易センタービル2棟倒壊 )
(テロ犯人はオサマ=ビンラディン )


2 米がアフガン報復攻撃。タリバン崩壊


3 米で炭疽(たんそ)菌テロ


4 中東和平の破綻。パレスチナ紛争が激化


5 ブッシュ米政権発足(2001年1月発足 )


6 ITバブル崩壊で米の景気悪化


7 中国のWTO加盟と新ラウンド開始


8 京都議定書発効。米は離脱へ


9 2008年五輪の北京開催が決定


10 米ミサイル防衛推進でABM条約脱退通告





2001年12月30日(日) 知られざる北朝鮮の悲劇

《破局に向かう北朝鮮の動向》     2001年12月30日





●「ワシントン,ソウル,東京を火に海に!」と叫ぶ北朝鮮の真意

1998年12月12日に北朝鮮の国営朝鮮通信が,青年学生大会の演説者らが「敵の牙城であるワシントン,ソウル,東京を火とし,祖国統一の歴史的偉業を成し遂げると述べた」と報じたことがあった。ここで東京もターゲットにされていることに我々日本人は面食らうはずだ。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」っていう塩梅だからだ。実はこの98年の夏,日本の防衛庁は北朝鮮情勢に関して強い危機感が芽生えていた。北朝鮮のテポドン・ミサイルの発射と並んで,米政府(クリントン)が対北朝鮮政策を強硬路線に転換するとの情報が在日米軍を通じて入ってきたからだ。


アメリカは北朝鮮が金昌里に建設中の地下施設が核開発を目的にしている疑いがあり,核査察に応じなければ,強硬手段をとらざるをえない,ということだった。12月に開かれた米朝協議のなかで,アメリカが改めて地下施設の査察を要求すると,北朝鮮は査察の補償金として3億ドルを要求した。当然,アメリカはこれを突っぱね,米朝協議はなんら進展がないまま終わったが,北朝鮮では10万人規模の青年学生大会が開かれ,上記の物騒な宣言が発せられた。中国のマスコミは「北朝鮮は臨戦体制に入った」と報道し,朝鮮中央放送は「日本も北朝鮮の打撃目標になった」と報じるなど,緊張が一気に高まった。


北朝鮮の核疑惑は以前からあり,米国の強い非難に対し,北朝鮮は1993年に核拡散防止条約(NPT)からの脱退を宣言し,94年には国際原子力機関(IAEA)からの脱退も発表した。核を野放しには出ないとする米国は武力行使に踏み切る気配をみせたから,朝鮮半島情勢は緊迫の度合いを深めた。最終的には,北朝鮮が核開発を凍結する一方で,日米韓などが朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を設立し,2003年までに軽水炉型原発2基を建設することで米朝は合意し,間一髪のところで武力衝突を回避した経緯がある。



●朝鮮半島有事への体制整備を急ぐアメリカ

米議会(共和党が優勢)はかねてから,民主党のクリントン政府の北朝鮮政策を「柔軟すぎる」と批判してきた経緯があり,北朝鮮が核査察を受け入れなければ,KEDO関連予算を承認しないはずだ。好戦的なブッシュ共和党政府が登場した現在,アメリカはイラクを武力制裁したのと同様に,武力行使を含めた強硬措置をとることが考えられる。アメリカの北朝鮮政策の転換は,1998年11月ごろから様々な形で日本側に伝えられた。北朝鮮政策調整官のペリー前国防長官をはじめ,キャンベル国防次官補,アミテージ元国防次官補ら安全保障の専門家が相次いで日本を訪れ,北朝鮮がすでに日米にとって脅威となったとの認識を伝え,日本側が早急に対応策を講じることを迫った。具体的には,新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)関連法案の早期成立による朝鮮有事への体制整備である。


アメリカの政策転換で重要なのは,KEDOの事業凍結と経済制裁で,200万人ともいわれる餓死者が出るほど経済破綻にひんしている北朝鮮にとって,特に日米が「経済制裁」に踏み切れば,金正日(キムジョンイル)体制が崩壊する可能性が高い。このため北朝鮮側は「経済制裁が実施されれば宣戦布告とみなす」(朱昌駿 駐中国大使)という厳しい認識も示されている。アメリカ自身も「経済制裁発動時には,戦争を覚悟する必要がある」(ペリー前国防長官)との強い決意を示す。米朝が武力衝突する危険はすぐそこまで迫っている,しかし,日本はまたもや平和憲法との絡みで,米韓が北朝鮮と戦闘状態に至っても,みずからが武力行使に踏み切ったり,武力行使と一体化した行動はとれない。


今回の米軍のアフガン戦争に際して,自衛隊が後方支援できるよう規約が改正されたが,武力行使が出来るのは,日本が攻撃されたときだけである。しかも「専守防衛」が基本であり,朝鮮半島で米軍,韓国軍が窮地におとされても支援の軍隊は派遣できない。傍観しているしかない。日本の平和憲法は朝鮮半島の有事を想定していないのである。


しかし,アメリカのペリーの説得などで,北朝鮮をめぐる危険な状況について,日本の政治家の間にも事態の深刻さがようやく理解され始めた。小泉首相はこのたびのアフガン戦争で示したように米軍への後方支援を積極的にやることを打ちだした。また自由党の小沢一郎党首はもともと防衛問題の積極論者として知られ,国連平和維持活動(PKO)協力法を改正し,国連平和維持軍(PFK)参加凍結解除や,国連決議にもとづく多国籍軍支援でも合意している。民主党の菅直人も朝鮮半島で米軍と北朝鮮の戦闘が起きた場合には,米軍の要請や国連決議にもとづく自衛隊の後方支援を認める考えを示した。公明党の神崎武法も同様の認識を示している。以上は,三陸沖へのミサイル発射を機にようやく日本人の間に危機感が醸成されたことが背景としてあった。


日本政府は,北朝鮮がミサイルを発射した直後,当面,日朝国交正常化交渉に応じないことや,食糧支援を見合わせることなどを決めた。これは北朝鮮に衝撃を与えることとなり,朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は「われわれがもっとも注視しているのは日本」と指摘し,「万一,日本が朝鮮侵略戦争に足を踏み入れた場合,日帝に対する積年の恨みと怒りを合わせて報復攻撃を加える」と反発した。


日本がアメリカの制裁措置に呼応し,北朝鮮に対する貿易をストップさせたり,在日朝鮮人の送金を阻止させるなどしたら,それこそ北朝鮮の緊張状態はピークに達しよう。2001年12月に朝鮮総連の幹部が朝銀の不正融資に関与したことで逮捕されたことは,北朝鮮としては一大事件なのだ。朝鮮総連が主導して北朝鮮への送金がなされてきた経緯を考えればそれもうなづける。今回の北朝鮮の工作船が奄美大島の東方沖合で撃沈された事件も,この朝鮮総連の幹部逮捕が背景としてあると韓国通信が伝えているが,たしかに相関関係はありそうだ。


ところで在日朝鮮人の北朝鮮への送金は,公式ルートでは年間十数億にずないが,裏金は数百億円にのぼるといわれている。しかし,近年の日本の深刻な不景気もあり,裏金も減少傾向だ。そこで北朝鮮は近年,国家ぐるみで覚醒剤や偽ドル札を密輸し,日本や西欧など世界各国から警戒されるほどまでに,落ちぶれてしまった。汚い手段を平気でやるようになった。


北朝鮮の独裁体制を支えてきたのは,日本からの豊潤な資金の流入であり,日本との経済的なパイプが断たれれば体制の崩壊につながりかねない。日本当局も裏金の送金を厳しく規制するようになっており,それゆえ北朝鮮が日本にキバを剥いてくるのも当然のことなのだ。北朝鮮の国家存亡の危機は確実に到来しているといえよう。





2001年12月27日(木) アメリカの中国脅威論の背景 (2)

2001年,アメリカの世界戦略は転換した!!  仮想敵国は中国






 2001年3月21日、ホワイトハウスで、アメリカのラムズフェルド国防長官がブッシュ大統領に対し、アメリカ軍の大規模な戦略転換についての計画を説明した。90分間にわたって行われた会合は、ブッシュ政権が初めて米軍の全体的な戦略について検討するものだったが、同時にその内容は、第2次大戦から50年間続いてきたアメリカ軍の戦略を、根本から変えるものだった。

 新戦略の前提となっているのは、1991年にソ連が崩壊し、その後を継いだロシアも弱体化し、もうヨーロッパがソ連からの軍事的脅威を受けなくなったという、冷戦後の変化である。第2次大戦後のアメリカ軍は、ソ連の侵略から西ヨーロッパを守ることを重要な課題としてきたが、もうその可能性はなくなった。

 そして新戦略では、今やソ連に代わって中国がアメリカにとって脅威となり、今後アメリカが他国と戦争せねばならないとしたら、その相手は中国であると予測している。

 アメリカが中国と戦うとすれば、前線基地となるのは沖縄や韓国の米軍基地
だが、近年は世界的に弾道弾ミサイルの精度が上がっており、中国のミサイルがこれらの米軍基地を正確にねらい打ちできる可能性が高まっているため、沖縄や韓国の米軍基地だけを使っていると中国に勝てない可能性がある。そのため、アメリカ領であるグアム島(フィリピンの東方のマリアナ諸島の一つ.現在も米国領)など中国から遠いところにある基地から出撃し、中国まで飛行して爆撃できる長距離型の戦闘機を増やす必要がある、という主旨の主張がなされた。

 沖縄や韓国の米軍基地を使わない理由がミサイル精度との関係になっているが、そのほかに、沖縄や韓国における米軍基地への反対運動の高まりや、日本や韓国を今後長い目で見た場合、アメリカの戦略に協力しない両国の世論の動向を考慮してのことでなかろうか.

 また同様に、これまで米軍の主力だった大型の航空母艦も精度の高いミサイル攻撃を受けやすくなっているため、今後は大型空母・戦艦の建造は宿小し、代わりに小型で高速の戦艦を重視することや、同時に2つの戦争を別々に戦う両面作戦に備えていた従来の方針をやめることなども盛り込まれた。



●二枚舌外交だったクリントン

 アメリカが中国を冷戦後の敵として設定したのは、これが初めてではない。クリントン政権時代の1996年には、アメリカは中国を仮想敵とするかたちに日米安保体制を再編し、日本の軍事力を高めようとした。しかし、日本側では「中国との対立は避けた方がいい」という意志が強かった上、韓国や東南アジアなどの近隣諸国も、日本の軍事力強化を「日本帝国の復活につながる」として反対したため、構想は立ち消えとなった。その後クリントン政権は作戦を変え、日中以外のアジア諸国に対して「米軍が東アジアに駐留するのは、日本と中国の両方を牽制し続けるため」と説明しつつ、冷戦後の一時期縮小していた東南アジア諸国などとの共同軍事演習を復活させた。

 アメリカはここ数年、軍事的には中国包囲網を作りながらも、経済的には中国での投資や販売を増やしている多数のアメリカ系企業の安全確保の必要があり、敵視と友好関係の両方を織り混ぜて、複雑な外交を展開していた。しかし,クリントンが中国を敵視するそぶりを全く見せなかったのに対し、現ブッシュ政権はもっとあからさまで,中国敵視を隠そうとしない点が、前政権との大きな違いである。


●わずか10日後の4月1日に起きた軍用機衝突

 アメリカのラムズフェルド国防長官が、これからは中国を最大の敵とみなす、と大統領に説明してからわずか10日後の4月1日に、中国南部の領海ぎりぎりのところで、中国軍の交信電波などを傍受しながら飛んでいたアメリカ海軍の偵察機が、中国軍の戦闘機と空中衝突し、偵察機は海南島の空港に不時着し、中国軍機は墜落してパイロットは行方不明となる事件が起きた。

 偵察機の乗員は約2週間にわたって中国側に留め置かれ、アメリカでは反中国の報道が噴出した。中国では「偵察機は領空侵犯していた」という報道が展開され、反米の世論が強まり、米国防長官が大統領の前で描いたシナリオどおり、米中が敵対するかたちとなった。

 米軍の発表によると、中国軍の戦闘機は以前にも米軍の偵察機に接近する挑発飛行をしていたというが、米軍機が大型で低速のプロペラ機で、中国機が速度を落としにくいジェット戦闘機だったことから、米軍機が意外な方向転換をすれば中国機は避けきれず、中国側のみの挑発から発生した事件ではない可能性もある。

 この後、4月下旬には、ブッシュ大統領が米テレビのインタビューで、中国が台湾を攻撃した場合「どんな手段をとっても断固台湾を防衛する」と答え、「台湾防衛に対して曖昧な態度をとるのが良いとしてきた従来のアメリカの政策を越えた」と報じられた。また、その直後にはブッシュ政権は、アメリカがこれまで台湾に売ることを控えてきた比較的新型の潜水艦8隻などを、台湾に売る決定を下した。


●中国はどの程度脅威になるか

 こうした流れから、アメリカが中国敵視政策を強めているのが分かるが、そ
こで問題となるのが「中国は、日本を含む周辺諸国やアメリカにとって、どの
程度脅威なのか」ということである。

 6月,中国は上海に中央アジア5カ国の首脳を集め、中国と中央アジアとの関係を強化し、協力してイスラム原理主義闘争の鎮圧する「上海協力機構」の会合を開いた。この機構には新たにウズベキスタンが加盟した。またアメリカが経済制裁を加えているミャンマーに経済支援をおこなったり,フィジーなど太平洋諸島にも経済支援をおこなっている.世界的な中国の影響力拡大が急ピッチで進んでいることは,近年の際立った特色となっている.これもアメリカには面白くない.また特に近年経済成長を伸ばしている中国が,日本に代わってアジアの経済支配を狙っていることにも重大な関心を払っており,最近の円安が130円台にのせてきてもアメリカがこれを黙認しているのは,日本経済が没落してしまったら,アメリカの東アジア戦略に支障がきたしてしまうことと関係があるからだろう.

 中国は、台湾にとっては明らかな脅威だ。台湾の人々が自力で築いた繁栄した民主主義体制に対して「中国には、場合によってはそれを壊す権利がある」と主張している。中国の政治体制は共産党の一党独裁制である.
 またチベットに対しても、インドネシアが東チモールに対して行ったような、国内植民地としての圧政(経済開発を進める一方で自治要求を潰し、本土からの移民を大量流入させて、地元の人々を少数派にしてしまう政策)を行っていて国際的な批判を受けている。南沙群島の領土権争いでも、中国は東南アジア諸国(ヴェトナム.フィリピンなど )を威圧する態度が目立ち、周辺国の警戒感をあおっている。

 
 中国が今後、さらに強大な国となったとき、周辺国に対してどのような態度をとるのか、まだ予測がつかない部分が大きい。明・清までの昔の中華帝国を継承するような振る舞いを行うだろうとの予測もあり、これが正しいとすれば、強大化した中国は、日本や韓国、東南アジア諸国を対等な存在とみなさず、見下して扱う可能性が大きい。その場合、アメリカが中国に対抗していた方が、日本・韓国や東南アジア諸国などにとっては都合が良いということになる。


●知らないうちに巻き込まれかねない日本

 懸念されるのは、最近のアメリカのやり方は、アジア諸国のために中国を牽制するのが目的ではなく、アメリカの軍部が勢力を維持拡大するために米国内の政治を動かし、中国を敵に仕立てようとする意図が見え隠れしていることである。アメリカ軍は日本人の多くが知らないうちに、日本も「第二次冷戦」に巻き込み始めている。
 しかし、日本ではこうした懸念について、あまり国内で報じられず、語られていない。むしろアメリカを信頼しきった新聞の論調が目立つ。能天気である.外交というものは権謀術数が渦巻く国家のサバイバルゲームであるのに、アメリカが日本を巻き込んで新しい冷戦を始めようとしてことに,多くの日本人は気づいていない。一方,9月の米国同時テロ以来,アメリカでは愛国心と好戦的な風潮が広まり、2002年は「戦争の年」となるというブッシュの発言にも米国のマスコミも当然のなりゆきとみている。

 今後,外交が国家の存亡にかかわってこよう。しかし今の日本は、無知なまま戦争に巻き込まれ、致命的な結果となる可能性があるように思えてならない、日本は経済のみならず政治の面でも影が薄くなっている.日本政府には,国際戦略という指針がまるで欠けているし,外交方針も場当たり的である.







2001年12月25日(火) アメリカの中国脅威論の背景

《近未来の予測 アメリカの最大の仮想敵国は中国 》 
2001.12.25





●北朝鮮の工作船が東シナ海(鹿児島南部の奄美大島の西北)で海上保安庁の巡視船と銃撃戦になり,沈没したが,この地域は中国・台湾・朝鮮半島に近く,かねてから覚醒剤・麻薬の密輸や密入国の取引の舞台となるなど,「海上犯罪の多発地域」として知られており,日本も警戒地域に指定していた場所であり,今回の工作船も密輸関連の疑惑がおこっているのも当然なのだ.


この事件は改めて「ならずもの国家」北朝鮮の悪イメージを再確認することとなり,アメリカとしても中国と並ぶ北朝鮮の脅威論に拍車をかけることになろう.北朝鮮に対する懐柔政策の「太陽政策」を推進してきた韓国にとってはマイナスの事件である.米朝関係・日朝関係に重大ひずみが生じることになったからである.アメリカは今はアフガニスタンや中東パレスチナ問題に忙殺されて,極東の問題に無関心であるかのように見えるが,中東問題が一段落つけば,アメリカはいずれ対中国,北朝鮮と本格的に対峙することとなる.なによりもアメリカにとって最大の仮想敵国は中国であり,そのことに日本人は最大限の注意を払う必要がある.



●米軍,沖縄の空軍基地を強化

 下地島(しもじしま)は、沖縄本島から南西へ約300キロ離れた宮古島の近くにある。
 その下地島空港が今年、アメリカのアジア支配強化の渦の中に巻き込まれた。ことの始まりは今年4月28日、突如として米軍の軍用機とヘリコプターの部隊が空港に飛来したことだった。ヘリ部隊は、沖縄の普天間基地を飛び立ち、フィリピンとの合同軍事演習に向かう途中、給油のために下地島空港に着陸した。
 去年から始まった年中行事にも思える米軍ヘリ部隊の着陸であったが、実はもっと深い意味があることがやがて分かった。今年5月15日、アメリカ国防総省系のシンクタンク「ランド研究所」が発表した報告書「アメリカとアジア」の中に「シモジシマ」の名前が登場したからだった。

 報告書を書いた中心人物は、その後ブッシュ大統領の軍事顧問(国家安全保障会議メンバー)としてホワイトハウス入りしており、この報告書では、北朝鮮の脅威が減る可能性がある一方、アジアでの支配力を強めた中国が台湾を攻撃する可能性が増えていると指摘し、中国が台湾を攻めた場合の米軍の反撃をより効果的なものにするため、台湾海峡に近い場所に米軍の前線基地を新設することを提案している。フィリピンやベトナムに米軍機が離発着できる基地を新設することに加え、「米軍機が下地島をはじめとする琉球列島の各空港を軍事利用できるようにする」という提案が盛り込まれていた。(報告書では台湾海峡有事のほか、インドネシアやパキスタンが内戦に陥った場合に米軍が軍事介入できるよう、東南アジアや南アジアの米空軍拠点を強化することも盛り込まれていた)



●台湾有事に備えた前線基地になる沖縄西部

 琉球列島には、すでに沖縄本島に普天間基地や嘉手納基地という米軍の飛行場が2つある。それなのに新たに下地島などの民間空港を軍事基地として使おうとする背景には、下地島や石垣島といった沖縄県西部(先島諸島)は、沖縄本島に比べてずっと台湾に近いという地理的な事情がある。
 アメリカと中国との関係が悪化したのは今年(海南島に米偵察機不時着)に入ってからのことだが、実はアメリカは2年ほど前から、中国に対する軍事包囲網を作り始めていた。1990年に冷戦が終わった後、米軍が東アジアに駐留している必要性が低くなり、たとえばフィリピンでは大きな米軍基地が相次いでフィリピン側に返還され、基地が閉鎖された。1999年に入って北朝鮮とアメリカとの交渉が進んだときは、沖縄の米軍基地も縮小すべきだという意見が日米双方で増えた。

 この軍縮の動きを阻止したのが、アメリカの政界でわき上がってきた中国脅威論だった。「中国がアジアでの支配力を強化しており、アメリカを駆逐しようとしている」という見方である。この考え方に基づき、たとえば1995年以来やめていたフィリピンとアメリカの合同軍事演習が昨年(2000年 )から再開されている。
 ただし、日米関係を含めたアメリカの東アジア軍事戦略については、曖昧な点が多い。「中国とアメリカの対立が深まった原因は米中どちらにあるのか」「日本政府はアメリカの軍事戦略に対してどの程度ついていくつもりがあるのか」といった意見などである。事実,日本は中国や北朝鮮と対立は深めたくないという世論が強く,それゆえ日本の支援なしにアメリカの東アジア戦略は進めにくいという背景がある.



●アメリカが見捨てたパキスタンを助けた中国のねらい

 タリバン殲滅のアフガン戦争でアメリカはパキスタン政府と友好関係を回復したが,ここ2〜3年アメリカは、それまで同盟国だったパキスタンに冷たい態度をとっていた。1991年のソ連の崩壊まで、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979〜86年)や、ソ連と親しかったインドに対抗するため、アメリカはパキスタンを軍事的、経済的に支援し、冷戦の重要な駒として使っていた。(パキスタンは1954年に米国がつくった東南アジア条約機構にも参加していた )

 しかし、1990年代に入るとアメリカはパキスタンとの距離を置くようになり,隣国アフガニスタンのタリバン支援などもあり,パキスタンのイスラム原理主義運動が活発化すると、パキスタンへの警戒感をさらに強めた。アメリカの支援漬けだったパキスタンの有力政治家は腐敗し、アメリカの支援が減るとともにパキスタンが国家破綻の危機に陥った一昨年、軍部のムシャラフ将軍が世直し的なクーデターで政権を奪取した。これはアメリカに捨てられた状態からの立ち直りを目指すもので、パキスタン国民の支持も大きかったのだが、アメリカはほぼ一貫して「ムシャラフは軍事政権で民主的でない」という立場をとり続けた。


 極めつけは昨2000年のクリントン前大統領のインド訪問で、「インドはパキスタンの何倍もの人口がある巨大市場だから」という理由で、アメリカはパキスタン支持からインド支持へと立場を変えた。昨年は経済危機も深まり、海外からパキスタンへの直接投資は70%以上も減ってしまった。
 孤立と混乱が深まる中で、パキスタンを支援し続けたのが中国だった。日用品から家電まで、中国からパキスタンへの輸出も増えた。中国は、対立するインドを牽制する上でもパキスタンに接近するメリットがあったが、インドに対してだけでなく、パキスタン南部のグワダル港開発を通じ、アメリカの世界支配にもくさびを打ち込む狙いがあった。

しかし,2001年10月米軍のアフガン戦争を機にアメリカはムシャラフ政権をはっきり支援する姿勢に転じたため,パキスタンの中国依存に変化が現われ始めたが,敵対するインドとの関係もあり,中国との友好を維持する必要があり,12月ムシャラフ大統領は北京に赴き,江沢民と友好関係の再確認をしてきた.インド北西部のカシミールの帰属問題をめぐってパキスタンとインドの敵対は55年間にわたって対立してきたが,このため両国は核兵器を所有して牽制しあっている.恐ろしいことだ.もしも将来インドとパキスタンが戦争を始めたら,アメリカはどちらを支援するのか,これは大変むずかしい選択となろう.もしアメリカがインドを支援することになったら,パキスタンは迷わず中国に支援をあおぐ可能性が高いが,多分アメリカは中立の立場をとらざるをえまい.パキスタンのような友好イスラム国を敵にまわすことは得策でないからだ.

今後とも中国とアメリカとの関係から目が離せない.






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