R女王様の秘密のお部屋...Dr.R

 

 

まんじゅうこわい - 2008年02月01日(金)

平和な昼下がりでした。

あの忌まわしい全館放送が流れるまでは。






『コード・ブルー(※)、●●病棟、コード・ブルー!』
〔※コード・ブルー(code blue):緊急放送の一。患者さんが救命処置を要する状態となったときに使われる。他、患者・患者家族などからの暴力やトラブルはコード・ホワイト(code white)、火事発生の際はコード・レッド(code red)等。病院によって暗号やルールは様々。〕




大急ぎで駆けつけてみると、真っ青な唇をしてぐったりしているのは―――

うわぁああああぁぁぁぁぁぁっっ、

私の患者さん(65才女性・慢性期統合失調症)じゃないかあぁあああっっっ!!



『…差し入れの饅頭をのどに詰めたみたいです、ハイムリックじゃ出てきませんでした!』
『レイナ先生っ、掃除機
(※2)です』
『モニタつけて!』
『喉頭鏡と鉗子ちょうだい!』
『誰か、記録取ってる?』
『あれ、ヘルツ止まってるやん、俺心マ手伝うわー』
『ルート取ります』
〔※2:当然ながらギャグではありません。誤嚥などの際に吸引を行うのに、掃除機に専用のチューブを接続して吸引するのです〕



駆けつけてくれた仲間の力を借りながら、先頭を切って蘇生術を行おうとしていたわけなのですが…、

何か…、

何か…、


何ですかこのやたらべちゃっとしたやつは…?!



奥の方で饅頭の皮とあんこがぐじゅぐじゅに湿って崩れ、吸引できない…
マギル鉗子で摘もうとしてもダメ…
これじゃ挿管しようにもチューブが饅頭で詰まってしまう…

SpO2 68% …65%…、 …62%…

心臓が止まって何分?もう気管切開をするしかない?
でも私には緊急気管切開の充分なスキルがない。
穿刺針を複数本使ってアンビューバッグにつなぐ??

と、アシストに入ってくださっていた内科のN先生が

『あ、待って。掻き出せるかも』

とても華奢な手を手首まで患者さんの口に突っ込んで、憎きぐちゃっとした元・まんじゅうを掻き出して(!)くれました。

『取れた〜!』


気道確保。アンビューバッグを押すと、胸が上下します。

SpO2 75% …81%…、 …86%、 …89%、 …93%、 …98%、…100%。

『あ、自発呼吸が再開した』
『心拍戻ったよ』



――蘇生後の全身管理のため特別病室に移された彼女(65才女性・慢性期統合失調症)でしたが、何かもうみるみるうちに元気になり、
夕食前には歩こうとして
その上『わたしのご飯はないの?(※3)
ぷりぷり怒ってナースを困らせていたのは、まあご愛敬。
〔※3:当面輸液管理とするつもりだったので絶飲食にしていた〕

あぁ、助かってくれて、本当に良かった。みなさんありがとう…(滝涙)




いいですか、皆さん!

人間は、結構簡単なことで死にかけます!!

極端なことを言うとまんじゅうのせいで死にます。



まんじゅうですよ!






《参考画像↑:出来たてホヤホヤのまんじゅう達》




…ものを食べるときは、落ち着いて。

そして、良く噛んで食べてくださいねっ。

いや、ホントに。お願いですから。






それもどうかと思うよ…?



...




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