彼女は人の心配をするようなふりをして、 自分の立ち位置を必死で確保しているように私は見えた。
憎み合った相手にどうしてそう関心が湧くのだろう、 外野としてはそういう風にしか思えないが、 憎しみを持った本人にしてみたら、そうもいかない所なのだろう。 私もその立場にいたら、彼女と同じように去っていく相手を腐したと思う。
それにしても、いつもこんな風に彼女の愚痴を聞いて気分が悪くなる。 きっと彼女が不愉快に思っているだろう私の不健康ネタにも、 私と同じぐらいの真剣さで耳を傾けてほしいものだけど。 それぐらいしたって罰は当たらないでしょ。
昼休憩中に自宅から会社へ戻る途中、信号に引っかかった。
交差点の対角にいる歩行者が横断歩道を渡り始めた。 それを見ていた猫(たぶん野良)が私の車の前の横断歩道を渡り始めた。 猫が渡り切る前に信号は青になっていたけど、猫は人間のルールに乗って、 信号を渡り切った。
歩行者と猫は違う横断歩道を渡っていたので、 ちゃんと信号を守って横断歩道の上を渡るなんて本当に賢い猫だわ、可愛いわ、 と、荒んだ気持ちが少しほぐれたような気がした。
ちょっとしたことで、小さな可愛さだけど、書いて残しておきたかった。
おおっぴらに日記を書くような出来事もなく(書いちゃまずい内容はあるが) 心の中はともかく、生活に全く波が立たない。仕事しかない。
たまーにする水泳は楽しいし、趣味は細々続けているし、 ちょっと妄想が働いてときめくこともあるので、 生きているのにそうでない、みたいなことは一応ないが、 精神的にも肉体的にも疲れが取れなくてすっきりしない。
両親を看取ったら(看取ることになるのは私かもしれない)、 私も後を追うだろう。 未婚なら私のような人間はそんなに少なくないはずだが、どうだろうか。 既婚ならそこは家族がストッパーになっているんだろうなと思う。
私の周りには見事に高齢で未婚で素晴らしい、という人が見当たらない。 未婚者では昔の会社の同僚も昔の事業所の同僚も50歳近いころに、 家族に看取られたのではなく、何か魔がさしたようにあちらへ行ってしまった。 やっぱり疲れてしまったんだろうなと想像してしまう。
遠い先か近い先かはわからないが、次は私がそうなるかな、と思うと少し怖い。 とりあえず甥達に迷惑がかからないようにだけはしなきゃ。
|