一日中、編物をしていた。 音楽など聴きながら、ひたすら編む。 表編み、裏編み、表編み、裏編み。 段数を忘れないように、こまめにチェックする。 「正」の字が、ずらっと紙に並ぶ。
世の中の男性諸君は、 女の子が恋人にセーターを編んでいる時は、 彼氏の顔を思い浮かべるんだろうな、なんて思っているのかもしれないが、 コージ苑は、案外そうでもないと思うのだ。 編物をやっている最中は、 せいぜい「表」「裏」「正」の3文字しか頭にないのだ。
ごめん、アンチロマンチストで。
午前中、残っていた仕事を終え、 さてちょっと休もうか、と思って、 お気に入りのだらだらイスに座った直後、 激しい眠気がコージ苑を襲った。
こういうのを電池切れというんだろうな、と思いつつ、 そのままお昼寝。 気づいたら暗かった。
でもほら、携帯でもデジカメでも、充電には2〜3時間かかるし。
先日注文した大量のコピーが仕上がったというので、 大学のコピールームに取りに行った。 学部教員専用の場所に行けば、 無料でやってくれるらしいのだが、 今回のは完全に私用だったので、 学生が利用する方に頼んだ、 義理堅くて真面目なコージ苑さんである。
コピールームは、 教室一つ分も無いほどの狭いスペースで、 二台のコピー機が据えられている。 部屋の両端は机で仕切られており、 利用者はそこまでしか立ち入りできないようになっている。 おそらく、素人に下手に触られて、 機械が壊れるのを懸念してのシステムだろう。 壁面には、コピーに必要なあらゆるアイテムがずらり。 文房具好きの某友人が見たら、 よだれをたらしそうな品揃えである。
係のお姉さんは、コージ苑を覚えていてくれたらしく、 こちらが用件を言う前に、 仕上がったコピーとオリジナルを持ってきてくれた。
おお、なんと美しい体裁。 表紙は色つきの紙にクリアシート、 裏表紙はエンボス加工の厚紙。 きちんとプラスチックのリングで綴じられている。 書き込みするのがもったいない程である。
この仕上がりにすっかり気を良くしたコージ苑、 大量ゆえに、決して安くは無かった代金も笑顔で払い、 鼻歌でも歌いかねないご機嫌で、 コピールームを後にした。 自分でやった場合の時間と手間、仕上がりを考えると、 ここに頼んでしまった方が余程効率が良い。
常連になろうっと。 (お姉さんのうんざりする顔が目に浮かぶ)
某役所に提出する書類作成の仕事が終わった。 お祝いだ〜、とは実は口実なのだが、 とにかく今日はスペイン料理。
住宅街にあるそのレストランは、 入り口からはちょっと想像のつかない広さである。 コージ苑達は、予約専用であろう奥の部屋に通されたが、 お手洗いが正面に見えるのがちょっと残念。
スペイン料理なら、一杯目はサングリアでしょう。 これは飲みやすいので、ついつい一気にいってしまうが、 アルコール分は当然ワインそのままなので、 注意しなくてはならない。 …と言いつつ、二杯目にワインにいくんなら、 話は同じことである。
料理は少しずつを皆で回す事にして、まず前菜。 オリーブやサラダあたりはお約束だが、 美味しかったのがマグロの小皿。 刺身ぐらいの大きさに切ったマグロを、 オリーブオイルで焼いて、 クリームで和えているのだが、 ソースに砕いたナッツを入れてあるのが絶妙に良かった。
メインは、CSB先生のオススメに従って、 この店初心者のコージ苑はパエリアを。 迷った挙句に「スペインの伝統的な」と銘打たれた一品にしたが、 これが予想以上に豪華だった。 エビからイカから鶏肉から、 要は「入れられるものぜーんぶ突っ込みました」というものなのだ。 鉄皿の上でちょっとだけ焦げ、かつ芯が残っている米を口にし、 同時に幸せをかみしめるコージ苑だった。
最近多忙で、少々食が細くなっているコージ苑であるが、 今日ばかりはデザートをパスするわけにはいかない。 自分はチョコトルテを頼んだが、 他の人のもつまみ食いさせてもらい、 予定もないのに「次はこれにしよう」と騒いでいた。 最後のエスプレッソまでおいしくいただき、 良い感じの満腹感を覚えつつ解散した。
こんな打ち上げがあるんだったら、 年に3回ぐらい書類書いてもいいかもしれない。
授業がない日は、 思いついたことを片っ端からやっていく。
今日やったのは、 古典の授業の「お楽しみ」でやる予定の、 百人一首の下準備。 3年生は人数が多いし、 百首全てやっている時間も無いので、 4グループ、25首ずつに分けてやろうと思っている。 当然、絵札と字札が一致していなくてはならないので、 計200枚を机の上に広げて、 それぞれをマッチングさせる作業。
百人一首は絵もきれいだし、 紙の質もよいものが多いので、 扱っていて気持ちが良いのだが、 さすがにこういう仕事をしていると、 「秘書がほしい」と思ってしまうコージ苑なのである。
家賃を振り込むために、銀行に行った。 ついでに、以前頼まれた「モイツァ」さんに、 プリントアウトした漢字の名前を持っていった。
時刻が遅かったせいか、 すでに彼女は帰宅していた。 仕方がないので、同僚の女性に言付けようとすると、 しげしげと漢字を眺めて、一言。 「私にも、書いてほしいな」
もはやスロ銀行御用達にでもなった感があるが、 別に大した手間でもないので、気軽に引き受けた。 「いいですよ〜。お名前は?」 「ヴヤナ」
…またか。←お前も学べよ この銀行には、簡単な名前の職員はいないのか。
しかも今回、思いつく漢字が男っぽいのばっかりなんですが。 またもや、漢和辞典と首っ引き。
2003年11月24日(月) |
ちょっとだけ休みを下さい |
昨夜、久しぶりに湯船に1時間ほどつかり、 その後軽く仕事をしたせいか、 どうやら湯冷めしてしまったらしく、 目が覚めると熱が出ていた。
かといって、休講にする程のものでもないので、 予定していた授業見学をキャンセルして、 午前中だけ休ませてもらった。
ビタミンの錠剤をのんで、 布団にもぐりこんで昼過ぎまで眠ったら、 あっけなく治ってしまったようで、 熱は下がっていた。
「こりゃ寝込んじゃうかな」という予想を裏切る結果になって、 良かったというか、 ちょっと残念というか。
2003年11月23日(日) |
骨董市と炊き込み御飯とDVD |
金曜日に続いて、 フレンチ嬢と行動を共にする。 本日は、週末恒例の骨董市。 (コージ苑は「がらくた市」と言っているが)
初めてだというフレンチ嬢は、 古い家具やさびた農具、旧ユーゴの地図などに興味津々。 コージ苑も久しぶりだったので、 何か掘り出し物はないかと見てみたが、 結局はっきりした目的がないので、 手を出すまでには至らなかった。
あ、一つだけ、 スロの旅行案内を古本で購入。 「歩き方」だと、せいぜい数ページなので、 国内をうろつくにはちょっと物足りないし、 「ロンリー・プラネット」は詳しいのだが、 カラーじゃないのがちょっと寂しかったのだ。 これは、フルカラーの上に、 スロ語、英語、ドイツ語、イタリア語の4ヶ国語表記。 先日のレストランでもそうだったが、 ここでもブラボー小国である。
昼時に合わせてコージ苑宅に戻り、 日曜日の昼食をゆっくり食べる。 コージ苑提供の、キノコの炊き込み御飯に、 フレンチ嬢作成の、5種類の野菜が入ったサラダ。 ツナ缶を少しだけ使ったが、 ほとんど野菜だけの献立は、とても身体に良さそう。
食事の後は、DVD上映会。 「AKIRA」である。 七味屋氏はこの映画を観た後、 無礼にも「気持ち悪い」とか何とか評したものだったが、 今回初鑑賞のフレンチ嬢は、 「さすが名作と言われる映画」と感心していた。 ね、そうでしょ、面白かったでしょ。 次は原作まとめ買いかな、やっぱり。
残った炊き込み御飯は、 お弁当にしてお持ち帰りいただいて、 週末の有意義な一日はおしまい。 二人以上で過ごす休日も、たまには良い。
ココアパウダーを買ってきて、 コーヒーにちょこっとだけ入れて、 カフェモカ。
夏の間、しまいこんでいた毛糸を出して、 半年振りの編物。
本格的な冬になって、 寒さに嫌気がさしてくる前に、 少しだけ「冬の気分」を楽しんでみた。
スロでの縄張りを広げようとしているフレンチ嬢と、 珍しく昼食を外で食べる。 行き先は、オペラ座の隣にある、 シーフードレストラン。 数年前、教育実習生としてスロに来たコージ苑が、 同じく実習生だったぶっひー嬢と試して、 いたく気に入った店なのである。
入れ替わりの激しいスロで、 レストランを長く経営するのは難しい、と思う。 ここは味もよくて値段もまあまあ、 気取りすぎずくだけすぎず、 ちょうどよいバランスを保っている。
「とりあえずビール」のコージ苑と、 「とりあえず水」のフレンチ嬢は、 いそいそとメニューを開く。 スロ語と英語とドイツ語、それにフランス語が併記。 すばらしき多言語主義である。
シーフードレストランに来ているというのに、 「肉にしようかな」などと言うフレンチ嬢に対して、 コージ苑は最初から「今日はイカを食う」と決めていたので、 「カラマリカラマリ〜」とページをめくる。
あるある、ありますよ。 イカのグリルにイカリング、そして… そして…
この、「イカのパリジャン風」というのは何ぞや。
二人で頭をひねったが、それらしい料理は思いつかない。 大体、「イカ」と「パリ」というのが、 頭の中で結びつかないのだ。
一抹の不安を残しつつ、 怖いもの見たさで注文する。 似たような料理を比べてみようということで、 フレンチ嬢は「イカの地中海風」をオーダーした。
待つ事20分、運ばれてきた皿を覗き込む。 まず、フレンチ嬢の「地中海風」は、 小イカを丸ごと揚げて、 イタリアンパセリのみじん切りとニンニクをたっぷりかけたもの。 ニンニクたっぷり、というあたりが地中海風でございます。
そしてコージ苑の「パリジャン風」は、 イカのぶつ切りを揚げて、 レモン一切れを添えたもの。
…ただのイカフライじゃん。
それでも、フランスだからって、 チーズをまぶしたりしてなくて良かったと、 自分を無理矢理納得させつつ賞味したコージ苑である。
ちなみに、「イカのパリジャン風」のすぐ下には、 「イカのパリジャンヌ風」というのもあったりした。 命名の性差が、調理法にどういう影響を及ぼしているのか、 今後の研究が待たれるところである。
スロに来て2ヶ月ちょっとを過ごした中で、 今日はおそらく一番忙しかった日。
午前中は9時から12時過ぎまで授業。 午後は2時から3時半まで授業。 直後、週に一度の連絡会議。 その後、隔週の勉強会のお当番で、 手がける予定の研究について発表。 6時から8時半まで、スロ語の授業。
帰ってばったり。
すぐ帰るつもりが、結局一日中大学で仕事してしまった。 大学院時代の同級生であるQOO吉嬢と、 学校大好き同盟でも結ぼうかという程、 最近は大学に入りびたっているコージ苑である。
本日、町は大賑わい。 サッカーの試合をやっているのだ。 スロ対クロアチアという、お隣同士の戦いなので、 当然応援も盛り上がるというもの。 ぶっひー嬢が、 「試合が終わるまでに帰った方が安全ですよ」と脅すので、 夜の町歩きもそこそこに自宅に戻った。
常々思うのだが、 サッカーの試合っていうのは、 時に擬似戦争のようだ。 勝てば勝ったでざまあみろ、 負けた日にはむかつくから騒いでやれ。 欧米の人間は激しいなあ、と思っていたら、 昨今は東洋の国々でも、サッカーの応援というと、 その場だけラテン系と化しているようだ。
あ、でも、よく考えてみると、 どんなスポーツでも、応援は熱が入ってるわ。 タタカイの形式をとるものは、やっぱり興奮するんだろうな。
…じゃあ、スポーツではないけれど、 囲碁や将棋の観戦も、やっぱり興奮するんだろうか。 『月下の棋士』は本当なんだろうか。 なんか、久しぶりに『月下の棋士』読みたくなったぞ。 あれ、続きはどうなったんだ。 (主人公がスランプに陥った所までしか読んでいない)
サッカーの応援について考えていたはずなのに、 コージ苑はつくづく、インドア派である。
試験をお祭り、と例えるのは不適当かもしれないが、 とにかく大きなイベントであることは間違いなく、 採点、データ入力、学生への掲示をめでたく終えた昨夜、 コージ苑はぶっひー嬢と連れ立って、 大学近くのピッツェリアに行き、 サラダバーとビールでささやかな打ち上げを催したのであった。 グラス一杯のビールの、なんと美味しかったこと。 この点に関しては、コージ苑は世のお父さん達を全面的に支持する。
ともあれ、一山越えた次の日である今日、 どんより曇った空ですら、心なしかいつもより明るい気がする。
いつもよりどんよりしていたのは、学生の皆様方。 試験の出来が悪くて暗くなっているのか、 はたまた疲れが抜けきれていないのか、 どちらにしても、何だかぼんやりとしている。 おかげで、今日の授業はノリが悪かった。
まあ、こんな日もあるさ。 お疲れ様。 とりあえず今週はゆっくりして、 次回もがんばってね。
※※※※※
向田邦子『無名仮名人名簿』文春文庫 「話の切り口が面白い」とは、 この人のためにある言葉だと思った一冊。 エッセイ一つひとつが、意外なところから始まり、 ある箇所にくると、おっとこう来るか、といった転換をする。 しかも、読み終わってみると、 前後のエピソードが見事につながっている。 すごいなあすごいなあ、と感心し放しのコージ苑である。
関係ないが、七味屋氏にメールして、 向田邦子の素晴らしさを称えたところ、 彼もこの日、彼女の本を読んでいたらしい。 こういう、星の軌道が一瞬だけ交差するような偶然は楽しい。
コージ苑がかつて通っていた大学は、 なぜか3学期制を採用していたので、 他の大学では2回であるところの学期末試験が3回あった。 今考えると、その分範囲が狭くなるので、 試験勉強もやりやすかったはずなのだが、 当時は、自分たちだけ苦しみが一回分余計な気がして、 なんだか損をしている様に思っていた。
しかし今、コージ苑は、 そんな事を考えていた自分を恥じる。
なんとオソロシイことに、 コージ苑が現在勤めているスロの大学では、 試験が2ヶ月に一度あるのだ。 おおおおおそろしい。 自分がここの学生でなくて良かったと、 日本人に生まれた事を、つくづく神様に感謝する。
そして、学生を悩ませる試験を作るのは、 当然コージ苑達教員である。
うふ。
学生の皆さん、 神様を呪うがよくってよ。
とはいえ、出来が悪かったら悪かったで、 こちらも胃が痛くなるので、 採点の最中は、まさに祈るような気持ちである。
神様は、やっぱり誰をも平等に扱うのだ。
秋も深まったスロに、 今年できたワインが出回っている。 日本で毎年騒がれている、ボージョレヌーボーというやつである。 ここで飲めるのは、もちろん地元産なので、 特に予約をする必要もなく、 そこらへんのカフェなんかで、普通に飲める。
「今年のワインの出来を見る」イコール「試飲」であるから、 店頭で立ち飲みもできるようになっており、 そういう場合には、大きなプラスチックのサーバーが登場する。 (アウトドアなんかでよく見る、青と白のアレである) 色気も何もあったものではないが、 いかにも「地元のもの!」という感じがして、ちょっとよろしい。
ワインが入れられているビンからも、 「試飲」するためのもの、地元のもの、という印象を受ける。 店に卸された商品には、ラベルは辛うじて貼られているが、 その口にはコルクではなく、王冠がかぶせられている。 おそらく買った人は、自宅に帰って、 あたかもビールを飲むがごとくに、 栓抜きでスポーンと王冠をはずし、 でっかいコップか何かにドボドボついで飲むのだろう。
フランスやイタリア、スペインなんかではどうなのか、 コージ苑は知らないが、 欧州でよく言われる「ワインは水」説が、 ちびっとだけ分った様な気になっている、今日この頃である。
※※※※※
小林信彦『おかしな男 渥美清』新潮文庫 子供の頃、寅さんが怖かった。 大人は面白い面白いといって笑っていたが、 私は寅さんが怖い人に見えてしょうがなかった。 正月の映画興行で、寅さんシリーズは必ずランクインしていたが、 私にはその理由がわからなかった。 みんな、どうしてあの映画を観に行くんだろう。
…といった印象が今さら変わるわけでもないが、 この本は、渥美清と交流のあった著者の視点から、 「寅さん」ではない、役者としての渥美清を描いたフィクションである。 周辺を飾るように、当時のコメディ俳優の肖像も散りばめられており、 昭和の映画・舞台にあった、うずまくような流れを感じられる。
休日に一日中外出しないと、 自分がダメ人間に思えてくる。 ちょうど冷蔵庫は空っぽ。 久しぶりに市場に買物に出た。
土曜日の市場は、平日にはない店も出ており、 当然買い物客も多いので、大賑わいである。 休日のお買物にご家族連れが多いのは、日本と同じ。 厚着をして、小さい大福みたいになった子供を蹴飛ばさないように、 用心しつつ見て歩く。
売り台に乗せられた野菜や果物が、やけに新鮮に見えたので、 気の向くままに手にとってみる。 ブロッコリーにトマト、ナスとバナナ。 ついでに、おやつ代わりのプルーン。 まるで菜食主義者の買物であるが、 最近のコージ苑の傾向として、 肉や魚は外食の時に限ってうんと食べるようにしている。
重くなった荷物を持って帰り、 冷蔵庫に今日の戦利品をつめてみると、 それだけで豊かになった気分がするあたり、 相変わらずお手軽な幸せを追求しているコージ苑なのである。
※※※※※
長部日出雄『天皇はどこから来たか』新潮文庫 邪馬台国九州説と近畿説、あなたはどっち。 古代朝廷は、日本のどの地方からおこったのか、 記紀の記述を詳細に分析し、仮説をたて、 日本各地をフィールドワーク。 コージ苑、神社仏閣は普通に好き、という程度だが、 こういう本を読むと、現物を見てみたい気分にとらわれる。 きっと、人間のこういう欲求から、 ツーリズムは生まれたのに違いない。
たまには、一日中読書っていうのも良いでしょう。
※※※※※
白州正子『両性具有の美』新潮文庫 薩摩軍人の娘として生まれ、 幼い頃から能を学び、 長じては小林秀雄らと交流を持ったというこの人を、 コージ苑は今まで全く知らなかった。 読んだことはなくても名前は知っているという場合が多いのだが、 今回ばかりは降参。 で、内容はというと、 古典に関する著者の知識を存分に駆使して、 平安から続く日本の男色趣味について評論したもの。 そっち方面に興味がなくとも、 学校で習ったのとはちょっと違った目線で古典が読めて、 思わずにやりと笑ってしまったりする。
辻仁成『海峡の光』新潮文庫 今まで食わず嫌いだった辻仁成であるが、 両親文庫はこういうものも無作為に送ってくるのである。 コージ苑がどうして今まで「食わ」なかったかというと、 理由は単純、 著者近影で格好良さげなポーズをとっている作家が嫌いだからだ。 文学と全く関係ないあたり、 本物の文学好きにとっては言語道断な見方ではあるが、 自分というものを前面に押し出してくる作家の本を読むと、 作品にうまいことのめり込めず、 著者の作為というものがちらつくような気がしちゃうのだ。 今回もご多分に漏れず、 解説で江國香織の言うところの「言葉の世界」に入り損ねてしまった。 いかにも「男」の書く「男」、という印象だけが残った。 あああ、実はすごい作家なんだろうに。 ファンの方にはひたすら謝るしかできないコージ苑である。
週に一回ある会議では、 なにかしらおやつが出ることが多い。 今回は、コージ苑達が持ち帰った、 クロアチアのクッキー3種類。
みんな、会議進めようよ、食べてばっかりじゃなくて。
※※※※※
山田詠美『再び熱血ポンちゃんが行く!』講談社文庫 山田詠美の小説に食傷気味になったら、エッセイをどうぞ。 以前どこかで読んだのだが、 彼女は文章をささーっと書き、 しかも一切読み直さないんだそうだ。 今までは眉唾だなあと思っていたのだが、 このエッセイを見ると、そうかもしんない、なんて思ってしまう。 リズムにのって読めるので、元気のない時に良いかもしれない。
朝食の席で、見慣れないものを見つけた。 バターが入っているにしては大きく、 蓋に七面鳥やら魚やらの絵がある。 開けてみると、パンにつけるペーストだった。 面白がって、三つほど味見をしたのが運のつきというやつで、 朝食には量がありすぎるそれを、 胸焼けがするほどたっぷりパンに塗りつけ、 片づけてしまわなくてはならなくなった二人である。 おかげで、20分の予定の朝食に1時間近くもかけてしまった。
大使館の位置は、あらかじめ地図でチェック済みなので、 元気に朝の町を歩き始める。 とにかく、市内を北の方向に向かって歩けば、 日の丸の旗が見えるはずなのだ。
30分北上しても、見えないとはどういうことだ。
適当な人をつかまえて聞く。 「日本大使館はどこですか」 スロ語とクロアチア語が似ている(らしい)のを良いことに、 スロ語で聞くあたり、失礼極まりない奴らであるが、 地元の人々は、実に親切に教えてくれた。
人によって、言うこと違ったけど。
迷いに迷ってうろついた末に、 やっとのことで大使館の看板を発見したのは、 約束の時間を1時間以上過ぎた後だった。 なのに大使館の人は、 (内心はどうあれ)にこやかにコージ苑達を迎え入れた。 ブラボー、パブリックサーバント。 っていうか、すみません(平謝り)。
そんな担当者さんであったが、 「どうしたんですか」と聞いてきたのは当たり前であろう。 「地図ではここになっていたんですが〜」とガイドを示すと、 のぞき込んだ彼はがっくりうなだれた。 「思いっきり間違ってます。」 …まあいいっす、とにかく着いたんだし。
無犯罪証明書申請のために、 かつてはコージ苑も通った道であるところの、 指紋採取にフレンチ嬢も挑戦である。 最初はおそるおそるやっていた彼女も、 回数を重ねるごとに(つまりはうまくいかなかったのである)、 まるで「指紋採取されるマスター」の様に、 「ん〜…やっ!」などと気合いを入れて、 用紙に自らの指紋をうつしている。 その傍らでコージ苑は、 本棚にあった「銀河鉄道999」を読んでいた。
失敗に失敗を重ねて、 終わったのは1時過ぎ。 かわいそうに、コージ苑達につきあった担当者さんは、 昼休みがなくなったに違いない。
行きは1時間以上かけた道のりも、 帰りは迷うことなく30分。 大使館の人お勧めのレストランで昼食をとる。 「そんなに高くもないですよ」とのことだったが、 コージ苑達には十分なお値段だった。 変なところで所得の格差を思い知った次第である。
電車の時間まで、買い物をする二人。 フレンチ嬢は、「寒い国」での冬に備えて、 厚手のコートを購入。 コージ苑は、数週間前に手袋をなくしてしまい、 新しいのを探していたのだが、 ここで焦げ茶の皮のやつを見つけたので、 ついつい買ってしまった。
※※※※※
まだこの国に住んで2ヶ月経っていないというのに、 電車がスロに入ると、なぜかほっとした。 ついでに夕食をとって帰ろうということになり、 コージ苑宅の近くにあるレストランへ。
あまり空腹ではなかったし、疲れてもいたので、 それぞれ単品で注文したのだが、 ここのおばちゃんはサービス精神が旺盛なので、 それだけでは済ませてくれない。 「おいしいから食べてみてよ」とスープが出され、 「これを食べなきゃ損よ」とデザートがつく。 どう見たって、おまけの方が多いのだが、 この気前の良さが人気の秘密なのか、 ここはいつでもお客でいっぱいなのだ。
しかし、「おばちゃんの好意」は、 その時のコージ苑達には、 というかコージ苑達の胃袋には、重かった。 食後のコーヒーを飲み終えたときには、 背筋を伸ばして座っていられないほど、満腹になった二人だった。
ともあれ、小旅行は無事終了。 楽しい二日間でした。
コージ苑と同じく、 フレンチ嬢もビザ取得に手間取っている。 彼女のテキは、無犯罪証明書である。 申請時の居住国発行のものでよいという話だったので、 長らく在住していたフランスの無犯罪証明を提出したら、 今頃「やっぱり国籍を持つ国のじゃないとだめ〜」と言われたんだそうだ。
コージ苑も経験があるからわかるが、 在外公館から無犯罪証明書を申請すると、 届くまでに相当な時間がかかるのだ。 全く、私の時といい、 『長い長いペンギンの話』ならぬ、 「長い長いビザのお話」。
と厭世的になっていてもブツは降ってこないので、 フレンチ嬢は出かけることにした。 しかし、残念ながらスロには日本大使館がない。 ここで本来なら、スロを担当するウィーンに行くべきところ、 「遠いし」というごく単純な理由から、 彼女はクロアチアを選んだ。
そしてコージ苑は、彼の国に行ったことがなかった。 で、ついていくことにした。
※※※※※
古典の授業を終えた後、すぐに駅へ向かう。 フレンチ嬢に切符売り場の列に並んでもらっている間、 コージ苑は現金をおろし、かつ両替する。 ああ、やっぱり二人だと旅行は楽なのである。
スロからクロアチアまでは、 ゆっくり走る急行にゆられて2時間半。 ザグレブに到着する頃にはすっかり暗くなっていた。
中央駅を一歩出て、驚く。 都会だあ。 トラム(路面電車)が走っているせいか、 少なくとも駅から走る中央通りは、 道幅がスロの2倍はあるような気がする。
唐突であるが、フレンチ嬢は食いしん坊だ。 やせているくせに、いつでも何か食べるか飲むかしている。 電車の中でなにも口にしなかったせいか、 降りたとたんに「おなかがすいた」と言い始めた。 普段のゆったりした動作からは想像できないほど、 素早く辺りを見回した彼女が見つけたものは、 焼き栗の屋台であった。 香ばしいにおいに我慢できなくなったフレンチ嬢は、 小さい包みを一つ購入し、食べ歩きをしたのだった。
事前に連絡したホテルのチェックイン時間まで大分あるので、 ゆっくり歩きながら、ウィンドウショッピング。 気の向くままに店に入り、 コートを物色したり、手袋を探したり。 ちょうど通勤ラッシュの時間帯なのか、 中心街は人であふれていた。
ホテルにチェックインして一息いれて、 さて、夕食に行きましょう。 ガイドブックに出ていたレストランを数軒チェックした後で入ったのは、 「家庭料理」を売りにした、気安い感じの店である。
酒の飲めないフレンチ嬢を前にして、 コージ苑は地元のビール。 こいつときたら、気遣いというものが全くないのである。 いかにも接客のプロ、といった印象のウェイターさんの、 お勧め料理を二品注文し、後はおとなしく待つ。 とりあえず出てきたパンは自家製とかで、大変おいしかった。 ディップがチーズでなければなおよかった。←文句言うな
肝心の料理は、この辺に共通の、 「肉!肉!じゃがいも!」という感じだったが、 大変ステキな味付けで、大満足のフレンチ嬢とコージ苑だった。 ゆっくり食べてたくさん喋って、 気づけば閉店間際の時間になっていた。
ホテルに帰っても、やっぱりおしゃべりは止まらなくて、 明日の朝は早いというのに、 しっかり夜更かしした二人である。 コージ苑だけでなく、フレンチ嬢もおそらく、 修学旅行なんかではいつまでも起きていて、 先生に叱られたくちに違いない。
ポケットに手を突っ込んで歩くのは、やっぱり男性が似合う。 裾のだぶついたジーンズに大きいスニーカー、というスタイルも、 やっぱり男性が似合う。
なんて思いながら出勤していたわけです。
ええ、決して若い男性のお尻を眺めていたわけでは。 (背中だろうがどっちだろうが大差ないという意見も)
昨日の休日出勤で、いかにも大量の仕事をした気になっていたが、 冷静に考えると、終わらせたわけではなかった。 マラソンに例えると、やっと15キロ地点といったところ。 コージ苑、足も遅いが仕事も遅いらしい。
まがりなりにも給料をもらってしまったので、 義務は果たさねばならない、だろう、多分。 ということで、本日は在宅でパソコンとにらめっこ。
わき目もふらず仕事を続け、 ふと気づいたのは、画面上に置いてある「秘書君」のメッセージ。 「もう8時間も働いています。」
うおう、8時間やってたのか、私。
昨日、自分が「非」仕事中毒だと分ったと思ったのは、 もしかして勘違い? コージ苑も、新橋あたりで飲んでるお父さん達の仲間入り?
微妙に嬉しいような、微妙に悲しい、いや哀しいような。
2003年11月08日(土) |
仕事中毒、じゃなくて |
休日出勤してみた。 午前中の1・2時間で終わらせる予定だったのに、 気づけば夕方の5時過ぎまで働いていた。
おかしい。 コージ苑は、ワーカホリックではないはずなのに。
…と、よくよく考えてみるに、 そもそも休日に仕事をやらなければならなくなったのは、 自分が平日にのんびり構えていたからであった。
やっぱりコージ苑は、ワーカホリックではなかった。 明らかに。
評判のトルコ料理屋があると、 同僚の先生が夕食を予約してくれた。 講座のメンバーがそろって出かける。
このレストランの最大の売りは、ベリーダンスのショーである。 料理はもちろんおいしいが、 セクシーなお姉さんのセクシーなダンスを目当てに、 市内各地から席の予約が殺到する。 おかげで、改装してからこっち、ほぼ連日満席だそうだ。
店の内装は、もちろんトルコ風。 座席も低くしつらえており、日本人には嬉しい座り心地である。 食前酒から前菜、メイン、デザートまで、 注文は主にベケ教授にお任せして、 私たちは運ばれてきた料理をひたすら賞味。 特に、スウェーデンで粗食を強いられていたコージ苑にとっては、 まるで王侯貴族の夕食であるかのように思えたのだった。
そして、店内の音楽が一段と大きくなり、 照明がぐんと落とされると、 お待ちかねのベリーダンスショーが始まった。 奥から出てきたのは、濃い茶色の髪を波打たせ、 色鮮やかな衣装をつけた、小柄なお姉さん。 おお、腰の動きがいかにもベリーダンス。
「きれいなお姉さん」が大好きなぶっひー嬢などは、 既に料理そっちのけで、食い入る様に見ている。 はっきり言って、ぶっひー嬢を見ている方が楽しい。 途中、音響のトラブルで、数度ダンスが中断したが、 その時に彼女が発したブーイングは本気だった。
ショーも終盤に入ると、 ダンサーは客席から適当な人間を誘って、踊るよう促す。 あちらのグループからは、いかにも宴会部長のお兄さん、 こちらの席からは、結構ノリのいい女の人。 そして、我が講座からは大物、ベケ教授が呼ばれたのだ。 迷いも見せずに立ち上がった教授は、 世にも怪しい踊りを披露して、 店中の客に大受けしたのだった。 「あれはしばらく夢に出てくる」とは、 ある同僚の先生のコメントである。
最後のトルコ風コーヒーまで堪能して、 4時間に及ぶ夕食会はお開きになった。 おいしいご飯に楽しいおしゃべりは、いつだって大歓迎なのである。
今日のスロ語講座、 先生がちょっとだけイライラしていた。 同業者として、痛いほど分かるなあ、あれ。
なんとなくうまくいかない。 なんとなくイライラする。 なんとなく、投げやりになる。 でも、後で考えると、どうしてなのか分からない。
そして、気持ちを察する事が出来るがために、 今日は生徒のコージ苑は先生に気を遣ってしまい、 それが裏目に出たりして、先生、ますますイライラ。
ごめんなさーい。
本日、スロでの初・給・料、が出ました。 ぱちぱちぱち。
手続き上のちょっとした事情で、 期待値よりもちーっと少なかったけれど、 この場合、「出た」という事実が重要なのである。
ぱちぱちぱち。
ある人に、「コージ苑のアフター5なんて、何もないでしょう」と言われた。 悔しい。
だからというわけでもないが、 授業が終わった後で、フレンチ嬢と町歩きに出た。 彼女の携帯やらコージ苑の辞書やら、 あれこれ探して小一時間。 ちょっと座りましょう、と適当なカフェを探す。
運悪く、知っている店が満席だったため、 大学へ戻る途中でふらっと入った店が、大当たり。 コージ苑、酒を飲む時は、その時々で店を決めるが、 エアポケットのように空いた時間を過ごすカフェは、 できれば2・3件に狙いを定めておきたい。 条件は、大体こんな感じ。
少々奥まった場所にあること。 店内が、居心地よいと感じる程度の狭さであること。 注文を取った後は、ある程度放っておいてくれる店員がいること。 BGMの音量が絞られていること。選曲は、できれば静かめで。 新しすぎない内装(あるいは設備)であること。 他の客が騒々しくない事。 回転がゆっくりであること。 そしてもちろん、おいしいこと。
…こうやって列挙してみると、 うるさいこと言ってるなあ、自分。
ともあれ今日の店は、かなりの程度で合格ライン。 通っちゃおっかな、とその気になりかけているコージ苑であった。
日本では、今日は文化の日。 ということは、ほほう、連休ですな。
…いいなあ(ぼそり)。
午後2時過ぎに起きた。 3時間、仕事をした。 また寝た。 今日が終わった。
本日の活動時間、3時間。 記録達成か?と一瞬思ったが、 そういえば以前、24時間ぶっちぎりで寝たことがあったっけ。
なあんだ、大したことないじゃん。
えへ。
ぶっひー嬢宅におじゃまする。 コージ苑は、今の今まで彼女はイモ好きだと思っていたが、 それに負けず劣らず、栗も大好きだという事実が判明した。
証拠その一。 彼女が「昼食代わりに」とご馳走してくれたのは、自家製の焼き栗だった。
証拠その二。 おしゃべりに興じつつ、彼女の手は休むことなく栗の皮をむいていた。 下ごしらえをした後に冷凍保存し、 旬が終わっても栗ご飯を楽しむためだと、彼女は言った。
証拠その三。 焼き栗にしろ皮むきにしろ、 手慣れた様子が尋常ではなかった。
コージ苑、食に関してはそれほどのこだわりを持っていないので、 彼女の情熱とまめさ加減には、ただ脱帽である。
ぶっひーちゃん。 いつかきっと、貴女に手作りの栗きんとんを御馳走するからね。
いつか、きっとね。
多分ね。
…もしかしたら、ね。
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