2004年01月31日(土) |
カルプス・アルピス/嶽本野ばら |
++ 僕は友人の代わりにプールの監視員をすることになった。そこで僕が出会ったのは、記憶を亡くし、リハビリのためと言い黙々と泳ぎ続ける彼女だった。 ++ 野ばらさまが、夭折の画家田仲容子の作品からインスパイアされて綴った6作の連作短編集。 このお話、野ばらさまのいつものようなゴスロリ乙女な雰囲気があまりありません(相変わらずお洋服やメゾンの話は出てきますが)。それだけに、野ばらさまが作品(絵)から受けた影響が大きいのだろうな、と思います。 刹那的というか救われない(けど登場人物たちは幸せな)お話の多い野ばらさまですが、こういうお話もあり。精神的に痛いお話ですが、ラストで救われます。 タイトルの「カルプス・アルピス」、実は「カルピス・アルプス」だったのですが、某飲料会社から絶対に駄目と言われて、改題したとのこと。なるほどね。
「(略)人生はファミコンじゃないんだ。リセットなんて出来はしない。否、もしも人生がファミコンだったとしよう。で、上手く展開出来なかったからといってリセットする。そして新たにやり直す時、人はリセットする前の過ちを当然のように回避するだろ。リセットする前の記憶が残っているから。それじゃ、表面的にはリセットしているけれど、本当にリセットしたことにはならないんじゃないか。簡単にリセット可能なファミコンですらそうなのだから、人生のリセットなんてものはね、不可能なんだよ。神様が大洪水を起こして、生きる者も物質も、全て失くしてしまわない限り、リセットはない。俺達はね、汚れたまま、穢れたまま、生きていくしかないんだ。(略)」(Unknown #2 火山の爆発より)
嶽本野ばら:カルプス・アルピス,p.85,小学館.

2004年01月30日(金) |
空ノ鐘の響く惑星で/渡瀬草一郎 |
++ 毎年、ある季節になると、空から鐘に似た音が降ってくる世界。 『御柱(ピラー)』と呼ばれる宙に浮く巨大な柱がある世界。 そんな世界に生じたひとつの噂話――。“深夜をまわる頃、『御柱』の一部に、若い女の姿が浮く――” 事実を確かめに行ったフェリオの前に現れたのは、御柱の中に浮かぶ異装の少女の姿だった――。(表紙折り返しより抜粋) ++ 陰陽ノ京の渡瀬氏の新シリーズ。 魔法も竜も出てきませんが、ファンタジィ。 フェリオの即位(今は第四王子)、もしくは御柱の崩壊がおこるんじゃないかと思っているのですが…。 あまり筆の速い方ではないので、続刊ものんびり待たせていただきます。
「(略)つまり、夢も現実も、その境はひどく曖昧なのさ。いや――境なんて、ないのかな。(略)」
渡瀬草一郎:空ノ鐘の響く惑星で,p.288,メディアワークス.

2004年01月28日(水) |
懐かしい日本の言葉/藤岡和賀夫 |
++ 懐かしい日本語として、父母の口癖、お客様、ご近所・寄り合い・仲間うち、男と女、悪態・軽蔑、大人の常識語などのジャンルに分けて、絶滅の危惧される言葉を紹介。 ++ 思いつきでふらっと購入したのですが、意外とおもしろい。 古くからある日本の言葉(倭ことば)って字面も響きもいい、美しいことばだなと感じました。 この言葉を使いこなせるようなひとになりたいもの。
けぶる →ぼんやりと霞んだ様子/火葬され煙となる くゆらす →香や煙を漂わせる・纏わせる様子 はんなり →上品で華やかなさま たおやか →姿・形・動作がしなやかで優しい様子 まほろば →優れたかけがえのない場所 たまゆら →しばらく、ほんの少しの間
藤岡和賀夫:懐かしい日本の言葉,宣伝会議.

2004年01月27日(火) |
QED 龍馬暗殺/高田崇史 |
++ 人の住んでいる家は四軒しかない、高知の山奥にある蝶ヶ谷村。嵐による土砂崩れで、麓への一本道が塞がれる中、殺人と自殺の連鎖が住人の村人たちを襲う。村を訪れていた崇、奈々たちは否応なく事件に巻き込まれるが、その最中、龍馬暗殺の黒幕を決定づける手紙の存在を知り……。(裏表紙より抜粋) ++ QEDシリーズ第7弾。久しぶりの硬い文章に、死苦八苦でした。 そして土佐弁「おまんら」「〜しちゅう」「〜ぜよ」にうはうはでした。土佐弁の響きが好きです。 日本史好きさんにお馴染みかもしれないこの謎、龍馬暗殺。この暗殺の犯人および黒幕が誰かということは現在、歴史の闇の中。崇さんの結論としては黒幕は薩摩藩(≒西郷隆盛)のようですね。私は、「新撰組ではない」とだけ妄信していたので、その結論にほっ。 さて、事件の方ですが、高田氏のパタンにはまりますよ。この方を読むといつも、意識下の作意を感じます。ひとって怖いな、と。 ちょうど映画や大河の影響なのか、幕末ものがよく目につきます。でも、これを読むと(歴史薀蓄が多いだけにうんざりするかもしれませんが)ちょっと幕末の見方は変わるかもしれません。 幕末の志士全てが、私利私欲で動いていたわけではないと信じたいですけど、人間ですからね、そんなに綺麗事だけでは済まされないってことを突きつけられました。
「(略)純粋無垢な思想が、美や正義と結びつくことは、歴史上を見渡しても意外なほどに少ないんじゃないかね。(略)」
高田崇史:QED 龍馬暗殺,p.324,講談社.

++ いろいろなものをあきらめた末、ようやく辿りついた永遠の出口。私は日々の小さな出来事に一喜一憂し、悩んだり迷ったりをくりかえしながら世界の大きさを知って、もしかしたら大人への入口に通じているかもしれないその出口へと一歩一歩、近づいていった。時には一人で。時には誰かと。(帯より抜粋) ++ 久々に小説を読んだので、もう一字一句一文が沁みるようでした。リハビリの一冊にこの本を選んでほんとによかった。 この本は、9作の連作短編で主人公の成長(小学3年生から高校3年生まで)を追ったもの。 この主人公はごくごくどこにでもいるような子で、それ故に過去の自分とかぶるところがいくつもあったりするのです。読みながら、そうそうなんて頷きつつ、でも傍から見ると相当イタいなぁなんて考えたりもしてしましました。 今まで読んだ森絵都さんの本は、若い頃(15歳くらいまでかな)に読むべしと私は思っていたのですが、これは別。20代、30代と過去の自分を振り返ることができるようになってから読むほうがよいかと。 痛々しい幼い自分が、ちょっと微笑ましかったり可愛く思えたりします、きっと。
「でも、心配すんなよ。俺たちも来年は必ずどっかにいるんだから。今はなんにも決まってなくても、いやでも、どっか遠くにいるんだからさ」 「遠くに?」 「おう。だって、宇宙は膨張してるんだぜ」
森絵都:永遠の出口,p.281,集英社.

2004年01月17日(土) |
のだめカンタービレ 1〜7/二ノ宮知子 |
++ のだめ(野田恵)は音大ピアノ科3年生、アパートの隣人・千秋(千秋真一)も音大ピアノ科4年生。 のだめは譜面は読めないが耳で聴いた曲はコピィできてしまう、しかし挙動言動不審のフシギちゃん。 千秋は有名ピアニストの息子、指揮者を目指すがピアノもヴァイオリンも弾きこなす俺さまなエリート。 このふたりが出会ってから巻き起こす音楽コメディ。 ++ 強いキャラクタで笑い、音が聴こえるような演奏場面に感動し、そしてまた笑う。 久々にオーケストラを聴きたくてうずうずしました。
さあ 楽しい音楽の 時間デス(5巻p.74)
二ノ宮知子:のだめカンタービレ 1〜7,講談社.
     
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