2002年07月31日(水) |
夏と花火と私の死体/乙一 |
そうとう面白かったです。 これが著者のデビュー作だなんて、すごいです。これが17歳の書く文章かと思うと背筋ぞくぞくします。こういう方もいるのですね。 この本には、「夏と花火と私の死体」「優子」が収録。 「夏と花火と私の死体」、この話は、死体を人の目から隠そうとする兄妹の話。 しかも、この話って殺された子(つまり死体自身)の一人称で書かれているんですよね。その微妙な違和感と、死体隠蔽しているという陰惨な行為のわりにちょっと笑いを誘われる流れが、とてもよいです。絶品。 子どもって残酷で、ずる賢くて、それでいて自分が大人から庇護されている存在だという自信があって、天使で悪魔な存在ですよね。
(前略)三人の罪深い人間は静かに微笑んでいた。 自分たちにやって来るはずの未来に、自分たちから去っていった子供の日々に……。(「夏と花火と私の死体」)
乙一:夏と花火と私の死体,p.142,集英社.
2002年07月30日(火) |
暗いところで待ち合わせ/乙一 |
一人きりで生きれば孤独さえなくなると、そう考えたのは間違いだった。ただ、自分の孤独にさえ気づかなくなるだけだった。
乙一:暗いところで待ち合わせ,p.171,幻冬社.
2002年07月29日(月) |
きみにしか聞こえない CALLING YOU/乙一 |
「Calling you」「傷 −KIZ/KIDS−」「華歌」が収録されている短編集。
私たちは皆、そうなのだ。同じような格好で生きている。一方には白い地平が広がり、もう片方には暗闇の地平が広がっている。その境界線の上を、危なげに歩いているのだ。(「華歌」)
乙一:きみにしか聞こえない CALLING YOU,p.187,角川書店.
例の密室本。このタイトル、"しきみ/むろ"って読むんですが、木偏外すと、"密室"なんですよね。すごいなぁ。
死者は完璧なる不在を体現している。だが、死者がもういないという事実が生者をおびえさせるのだ。
殊能将之:樒/榁,p.69,講談社.
2002年07月12日(金) |
ROMES 06/五條瑛 |
新連載、かなり期待しておりますよ。
真正面から照りつける夕陽が、成嶋とハルのシルエットを浮かび上がらせる。黒いシルエットの向こうから輝く金色の光。まるで後光が射しているように見えた。
五條瑛:ROMES 06,問題小説20027月号,p.85,徳間書店.
|