A Will
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2015年04月01日(水) 薄花桜。



憧れの人が言っていました。

桜は思い出とともにある花だ、と。



わたしは、なるほど、と頷き
けれども、と首を傾げるのです。


果たしてわたしは、一緒に桜なんて見たかしら?


共に過ごせた春は少なすぎて、そうして幼かったわたしたちが、あらためて見上げた桜も「桜が咲いたね」などと情緒溢れる会話も、記憶の中に存在しないのです。

それでも、咲いた桜の花を見ると、それが夜の桜なら尚更、
わたしは、その男の子の面影を重ねてしまいます。


いつも携えていた赤いパッケージのコーラ。
日に焼けない腕。
気難しく引き結ばれた口。
なのに笑うと驚くほどあどけないのは、まだ低くなりきらない声のせいだったのかもしれません。


ひんやりと冷たい手。


彼を想うときに、浮かぶのは淡い寒色でした。






桜色、と言えば淡いピンクを思うけれど、
夜の桜は更に淡くて、辺りの暗さに紛れて、それはもう昼間の桜色とは明らかに違いがあります。


夜の桜の色。


淡い淡い藍色。



思い出とともに咲く花、の色。

なるほど、それは確かに彼の色でした。






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