なんてこった!! 2年以上前の日記を読んだら、 リアルに今の気持ちと同じだ。 きらきらした夏を目前に、 私はあんまりにも無力だ。
成長してないなあ。
梅雨。 朝から降り続ける雨。 一日中、室内も暗い。 止み間を縫っての散歩。 短めのコースを選んだのに、 もどるころにはまた アスファルトを黒く濡らしている。
マンションの前、 風除室の中で、 お父さんと子どもがキャッチボールをしている。 外は雨だから、 こんなガラスに囲まれていればぬれないもんね。 「ここはグランドではありません、 ガラスが割れたら危ないですよ」 という言葉が、なぜかどうしても出せなかった。
マンションの1Fホールで、 自転車と一輪車を乗り回す女の子たち。 入ってくる人を器用に避ける。 外で遊びたいよね。でも。 「ここは自転車乗るとこじゃないよ」 やっぱりどうしても言えなかった。
どんより、暗い気持ち。 外が暗いからじゃなく。
うちの犬は私にとって王子で 朝晩の散歩は最優先事項だし、 おやつはしっかり冷蔵庫に保管されている。
王子は最近、私のストーカーだ。 クッションで器用に丸まって眠っていたのに、 私が立ちあがるとぱっと立ち上がって 先に立って歩こうとする。 デニムに履き替えると、 目をぱっちり見開き首を軽く傾け いっしょに行くとアピールする。
王子を私が溺愛してやまない最大の理由は、 彼の最大限の「おかえり」の表現だと思う。 耳を力いっぱい下げ、 短い尻尾を全速力で振って、 全身うれしさを爆発させる。
このしぐさだけで、 私は彼をいとしく思う。 とにかく絶品なのだ。
昨夜の嵐で、 せっかく紐を伝いはじめたゴーヤのつるが すっかりもどってベランダを這っていた。 もう一度、 紐の位置を直して、少し巻くのを手伝ってあげる。
もう少し成長すれば、 あの程度の風に負けたりはしないでしょう。 沖縄で愛された遺伝子の中に、 いくつもの台風を持っているはずだから。
週末、蛍を探しにいった。
昔、毎年通っていた場所は、 記憶の深い森の奥に消えてしまい、 地図とにらめっこ。 たどり着けるのか不安だらけで 思い出のかけらをひろい集めていった。
記憶の中で残っている最後の目印を右折、 暗い夜闇の中へ心細くなりながら進む。 目的地にたどりつける確率より、 森の中で迷子になってしまう危険性の方がよっぽど高い。 どうかみつかりますように。
たいして進まないうちに、 たくさんの路駐車を発見。 山際の、 田んぼくらいしかない暗い道に、 たくさんの家族連れや恋人たち。 あわてて車を止めて、 私たちもついていく。 少し歩いていくと、 小川があって人、ひと、人。 そしてそれよりたくさんの蛍。 あのころより、 どの年よりたくさんの蛍。
さやさやと流れる水音を聴きながら、 ほんとうはこんなものなのかもしれない、と思う。 もう、 信じるべきはあのころの思い出じゃない。 それがどんなに美しくても、切実でも。
ひらひらと揺れる光を見つめながら、 新しい場所を探さなくては、と ひそやかに強くそう思った。
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