長い長い螺旋階段を何時までも何処までも上り続ける
一瞬の眩暈が光を拡散させて、現実を拡散させて、其れから?

私は、ただ綴るだけ。
音符の無い五線譜は、之から奏でられるかも知れない旋律か、薄れた記憶の律動か。








2006年07月19日(水)

 逃げることは、いけないことかしら。


 兄様が退職してから半年経っただろうか。でも、休職から数えれば既に一年以上になる。兄の現状を許しているのは両親なのに、両親自身は其の事に気が付いていない。現状を如何にか打開しよう手奮闘していることを演じているだけだ。そうして、其れに気が付いている姑息な兄は両親に甘えている。唯、其れだけの日常。

 私は、――唯、此処から離れたかっただけなのだ。
 逃げ出したかった。一時でも長く。

 進学は其の為の手段でしかない。就職はいけない。間違って地元に就職しようものなら家から出られない。たとえ一人暮らしが許されたとしても、週末毎に帰宅が義務付けられることになり兼ねない。其れは、いけない。私は、此の北の大地を愛しているけれども、けれども私は此処から海を渡る必要があるのだ。たとえ週末毎に電話での状況確認を義務付けられたとしても、其の身が海を越えることは容易ではない筈だから。兎に角、私は離れなければならない。放れなければ。
 ヘッドセットを買った。朗読の為――其れは一つの事実であり、真実だけれど。其れ以上に、あの疎ましい声色を此の耳から排する為には必要だったのだ。外の音を遮断する為には。



2006年07月07日(金) 灑涙



 かはたれどきまで、雨は続いて。


 北の大地では、七夕は七月七日ではなく八月七日に行うのが通例だ。七月はまだ涼しいから、という理由。それから、旧暦にあわせて、という理由。謂われは様々のようだけれども、兎に角八月七日で、短冊を笹に吊るしたり、花火を楽しんだりする。

 曙に止んだ雨、空に雲は広がった侭。

 蒸した一日だった。北国の夏は遅い。今年は殊に其の訪れは遅々として、日照不足が叫ばれている折だ。短い夏が更に短くなる。それでも季節は移ろうてゆくのだろう。何時しか桔梗が咲き終わり、紫陽花がゆるゆると色付こうと花芽を付け始めた。紫露草が楚々として、地に這っている。

 夕間暮れに、空は変わらずに広がる雲の群れ。

 陽が落ちても窓を開けているなんて、私にしては珍しいこと。其のくらい蒸していたのだろう、気温は然程高くはなかった。満月には少し足りない月だ。十日余月――が、昇る姿は終ぞ見られず、夜半になっても空には星が瞬くこともなかった。世界は確り夜色に染まっていたのに。


 織女の姫と牽牛の君は、ひとときの邂逅を楽しめたのだろうか。










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